競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第132回。今回は、名牝エアグルーヴを母に持つ良血馬にして出遅れ癖の個性派として愛された、「ルーラーシップ」について熱く語ります。
目次
名家出身の個性派
秘めた才能とゲート難

5周年で発表されたウマ娘から、ついにルーラーシップが育成ウマ娘として実装された。エイシンフラッシュ、ヴィクトワールピサに続いてこの世代屈指の個性派がベールを脱いだ。
女帝エアグルーヴの息子という超良血として一身に期待を集めながら、なかなか手が届かないビッグタイトル。ゲート難という己の内なる敵を克服し真価を発揮する時は訪れるのか!?「ルーラーシップ」の史実を追っていく。
ウマ娘のルーラーシップ
ウマ娘のルーラーシップは、案の定というべきか期待通りと言うべきか、かなりの個性派ウマ娘である。育成ウマ娘として実装されたことでその全貌が明らかになったばかりだが、メンタルの浮き沈みの激しさはウマ娘随一と言っていいだろう。

公式プロフィール

リバーシ等の古典的なものから現代的なものまで、ボードゲーム全般を愛する重度のボドゲーマー。 策を用いて盤面を支配するのを得意とする頭脳派。レースでもその知略を武器とするが……メンタルが激烈に弱いのが弱点。うっかり策が外れると途端にベッコベコに凹み、部屋に籠って出てこなくなる。
史実のルーラーシップ
血統
ルーラーシップは、ウマ娘でもお馴染みの女帝・エアグルーヴの産駒。現役時代にダイナカールとの母娘オークス制覇を成し遂げ、さらには天皇賞・秋を勝つなど牡馬に一歩も引けを取らない走りで牝馬として26年ぶりの年度代表馬に選出された名牝は、母としても凄かった。
初仔にしていきなりエリザベス女王杯連覇を果たしたアドマイヤグルーヴを送り出し、その後の産駒もコンスタントに勝ち星を挙げて名繁殖牝馬としての地位を確立していった。

そんなエアグルーヴの仔、とりわけ牡馬に期待されるのはG1勝ちというビッグタイトル。そしてゆくゆくは母の遺伝子を受け継ぐ種牡馬となるような活躍が求められていた。
父にキングカメハメハを迎えたルーラーシップも産まれた時から大きな期待をかけられ、注目を集める存在に違いなかった。

2歳時
メイクデビュー
2歳になると、ウオッカやシーザリオなど名だたる名馬を育てた角居勝彦厩舎に入厩。角居厩舎の同世代にはウマ娘でも同期の間柄であるヴィクトワールピサの名前もあった。

ルーラーシップのデビュー戦は2歳の暮れ12月27日。中山では年末のグランプリ有馬記念が行われる同日、阪神競馬場でデビューを迎えることとなった。
阪神芝2000mの新馬戦に岩田康誠騎手とのコンビで登場すると、単勝オッズ1.5倍の圧倒的な1番人気に支持された。
スタートすると、中団後方からスローな流れの中をゆったり追走。スローペースにもムキになって引っかかるようなところも見せずスムーズに追走し徐々に進出すると、手応え十分に最後の直線へ。そのまま抜け出すと後続をまったく寄せ付けず3馬身半差をつけて快勝。大物感を感じさせる走りでデビュー戦を見事勝利で飾った。

3歳時:不完全燃焼のクラシック
クラシックへ向けての歩み
デビュー戦の圧勝ぶりから、クラシックへ向けての歩みが注目されるルーラーシップ。明けて3歳となり、2戦目はオープン特別の若駒ステークス(芝2000m)が選ばれた。重賞ではないが、過去にはトウカイテイオーやディープインパクトといった名馬たちも蹄跡を刻んだ伝統のあるレースだ。
ルーラーシップもここを飛躍の足がかりとしたいところだったが、2番人気のヒルノダムールに先着を許し2着。連勝はならなかった。

不利を跳ね返して2勝目
その後、メンタルをやられたわけではないと思うが、立て続けに熱発やフレグモーネ(外傷からくる炎症の一種)を発症するなど順調さを欠いて使いたいレースを使えないままクラシック開幕が近づいてくる。
そしてようやく態勢が整い、皐月賞をおよそ5週後に控えた3月7日の阪神競馬場で1勝クラスのアルメリア賞(芝1800m)に出走。単勝1.4倍の圧倒的支持に応えて2勝目を挙げた。4コーナーで大きな不利を受けたもののそこから立て直しての勝利は、母エアグルーヴのいちょうステークス(直線で急ブレーキをかけてからの差し切り勝ち)を思い出させるようなレースぶりであった。

一進一退
ルーラーシップがクラシック一冠目の皐月賞出走を確実にするためには賞金が足りない。トライアルでの権利取りかさらなる賞金加算が求められる。
そこでG3毎日杯に出走したが、痛恨の出遅れに加えて故障を発生してしまった他馬の落馬による影響を受けて5着に終わる。これによりルーラーシップの皐月賞出走は断念せざるを得なくなった。

また、このレースで落馬負傷した武豊騎手がクラシックの有力馬ヴィクトワールピサに乗ることができなくなり、クラシック戦線にも大きな影響を与える結果となってしまった。
ダービーへ
群雄割拠の皐月賞では、ヴィクトワールピサが武豊騎手に代わって手綱を任された岩田康誠騎手渾身の騎乗に導かれて一冠目を制覇した。

一方、ルーラーシップはダービートライアルのプリンシパルステークスに出走。京都で騎乗していた岩田康誠騎手に代わり、横山典弘騎手との初コンビでダービーの権利取りに挑んだ。
五分のスタートから中団につけ、馬群の外から早めに進出を開始すると、直線では上がり3ハロン33.7秒の豪脚を繰り出して難なく抜け出す。その後は他馬を全く寄せ付けず、4馬身差の圧勝で本番への切符を掴み取った。

日本ダービー

迎えたクラシック二冠目、3歳馬の頂点を決める日本ダービー。皐月賞の上位組に加え、青葉賞を無敗で制して駒を進めてきたペルーサや、ようやく大舞台に辿り着いた良血馬ルーラーシップらも加わり「史上最高レベル」と評されるほどの好メンバーが集まった。

そんな最高峰の舞台で至高の輝きを見せたのは皐月賞を11番人気で3着に好走したエイシンフラッシュだった。レースは思いのほかスローペースとなり、直線の瞬発力勝負となったレースで上がり3ハロン32.7秒という究極の切れ味を発揮し、ローズキングダムとの一騎打ちを制して世代の頂点に立った。

ルーラーシップは道中中団でスムーズに運んだものの、直線で馬群を捌くのに苦労して前2頭には離されてしまった。それでも3着のヴィクトワールピサからはクビ・アタマ差の5着に食い込み素質の片鱗を見せて春のクラシックを終えた。

鳴尾記念で重賞初制覇
ダービー後は休養に入り、じっくりと心身の成長を促しながら実りの秋を迎える。復帰戦は12月の阪神競馬場、G3鳴尾記念(芝1800m)。

3戦ぶりに岩田康誠騎手とのコンビで出走したルーラーシップは、同世代のライバルの1頭ヒルノダムールと人気を分け合った。
無難にゲートを出ると好位で折り合って最後の直線勝負へ。ヒルノダムールが後ろから迫り、追い比べとなったが、この競り合いを半馬身差で退けて先頭でゴール。
のちに天皇賞・春を勝つことになるヒルノダムールとの同期対決を制して待望の初重賞制覇を果たしたのだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
その余勢をかって出走した有馬記念では同厩のエース、ヴィクトワールピサの6着。はじめて掲示板を外す結果となったが、3歳馬たちが上位に食い込んで世代の力を示した。
4歳時:才能と「ゲート難」の片鱗
日経新春杯
年が明けて4歳シーズンに入ると、G2日経新春杯から始動。1番人気ローズキングダム、2番人気ルーラーシップ、3番人気ヒルノダムールと4歳勢が人気上位を占め、ここでも同世代が火花を散らした。

イタリアのリスポリ騎手に乗り代わったルーラーシップは、ゲートが開くとスタートを決めて3,4番手につけ好位で折り合いをつける。
そして直線に入ると追いすがるローズキングダム、ヒルノダムールを寄せ付けず2馬身差をつけて快勝。世代上位の力を印象づける重賞2勝目であった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ドバイ遠征
3月、僚馬ヴィクトワールピサやブエナビスタらと共にドバイへ遠征。ドバイシーマクラシックに出走した。
出国後に東日本大震災に見舞われた日本へ勝利を届けるべく好スタートを決めたルーラーシップだったが、道中抑えが効かず引っかかってしまい途中から先頭に立つ苦しい展開。
さすがに最後の直線で余力がなくなり6着に敗れた。

その後に行われたドバイワールドカップにおいて、ヴィクトワールピサが劇的な日本馬初勝利を収めた出来事は、日本の競馬史に残るワンシーンとして永遠に語り継がれるだろう。
金鯱賞:出遅れから豪快な勝利
帰国後は遠征と検閲の疲れを癒し、5月末の金鯱賞で復帰。大規模改修工事のため中京ではなく京都で行われた金鯱賞で、ルーラーシップの個性が久しぶりに顔をのぞかせる。

福永祐一騎手との初コンビでレースに挑んだルーラーシップは、スタートで大きく出遅れてしまった。それでも、道中でまくり気味にポジションをあげていくと、直線に入って前を行くアーネストリーを捉え、最後は逃げ粘る皐月賞馬キャプテントゥーレを交わして先頭でゴール。出遅れをものともせず重賞3勝目を挙げた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
G1ではあと一歩
女王ブエナビスタに次ぐ2番人気で出走した宝塚記念では、前走ほどではないにしても出遅れ気味のスタートから後方を追走。勝負どころから徐々に順位を上げていくのは金鯱賞と似た展開に見えたが、そこから弾けるような末脚を繰り出すことはできずアーネストリーの5着。同期のエイシンフラッシュ、ローズキングダムにも先着を許した。
三冠馬オルフェーヴル登場
秋は予定していた天皇賞・秋を爪の不安で回避し、暮れのグランプリ・有馬記念にぶっつけで挑んだ。

そこには当年の三冠馬オルフェーヴルが出走しており、古馬勢との初対戦に大きな注目が集まる。女王ブエナビスタに、層が厚い4歳勢が三冠馬に対してどのような走りを見せるか。

ルーラーシップはスタートをまずまず決めて後方待機。序盤はオルフェーヴルを見る位置でレースを進めるが、向正面からオルフェーヴルが早めに動いたタイミングでは無理についていかず脚を溜めた。
そして最終コーナーから最後の直線勝負にかける。オルフェーヴルに食い下がるのはエイシンフラッシュ、トゥザグローリーの4歳勢、そして最後はルーラーシップもメンバー中最速の上がり33.2秒で追い込んで4着に食い込んだ。
休み明けということもあり11番人気の低評価に甘んじたが、改めて一線級で通用する能力があることを証明する走りを見せた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
5歳時:運命の香港、そして集大成へ
AJCC圧勝
休み明けの有馬記念を好走したルーラーシップは、年明け早々にアメリカジョッキークラブカップで5歳シーズンの始動を迎える。
金鯱賞以来3戦ぶりに福永祐一騎手とコンビを組むと、まずまずのスタートから中団で折り合ってスムーズなレース運び。勝負どころで早めに進出して前を射程圏に捉えると、オルフェーヴル世代の実力馬ナカヤマナイトを並ぶ間もなく交わし最後は3馬身差をつけて圧勝した。
これで重賞は4勝目とし、今年こそはビッグタイトルに手が届きそうに思える強い内容だった。

香港でレースの支配者と成る
クイーンエリザベス2世カップ

日経賞3着を経て、ルーラーシップは香港へ遠征。世界から強豪が集う国際G1クイーンエリザベス2世カップに出走。かつて日経新春杯を勝ったリスポリ騎手との再コンビで挑む。

ゲートが開くとスタートを決めてすんなり好位につける。スローペースにも3番手のインで我慢して脚をためる。そして最後の直線、最内の進路が空いたところを突いて抜け出すと、後続を寄せ付けない脚で突き抜けた。2着に3馬身3/4差をつける圧倒的なパフォーマンスを見せての完勝。

ルーラーシップがレースを完全に支配して、ついに悲願のGIタイトルを掴み取った。

宝塚記念

帰国後は春のグランプリ・宝塚記念に出走。海外G1の勲章を引っ提げて、有馬記念で敗れたオルフェーヴルと相対する。オーストラリアの名手C.ウィリアムズ騎手との初コンビで国内G1制覇に挑む。
全馬がゲートインしてレースがスタート。ルーラーシップが出遅れたが、ウィリアムズ騎手に促されて5,6番手まで押し上げて折り合いをつける。
後方に構えるオルフェーヴルを待たずに最終コーナーで仕掛けて上がっていくと、最後の直線でアーネストリー、マウントシャスタらを交わして先頭に躍り出ようかという態勢。そこへ内ラチ沿いから金色の暴君が襲いかかると、あっという間に置き去りにされてしまった。
最後は2馬身差をつけられて2着。三冠馬にさすがの走りを見せつけられて国内G1制覇はまたもお預けとなった。
ゲート難も集大成の秋
天皇賞・秋
ルーラーシップの現役生活最後の秋は、王道の古馬G1の3連戦。国内G1のタイトルが欲しいルーラーシップにとって大事な秋だったが、別の意味で強烈な存在感を放つことになる。ここへきて課題だったゲート難もさらに磨きを増してしまうのである。

まずは休み明けの天皇賞・秋。スペインのI.メンディザバル騎手を背に出走したルーラーシップはスタートで1馬身ほど出遅れると、後方待機を余儀なくされる。
シルポートの大逃げに湧く最後の直線、内ラチ沿いを鋭く伸びたエイシンフラッシュが抜け出してダービー以来の栄冠を掴もうという直前、大外から凄い脚でルーラーシップが3着争いまで突っ込んできた。上がり3ハロンはエイシンフラッシュと並んでメンバー中最速の33.1秒を叩き出していた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ジャパンカップ

続いてジャパンカップではウィリアムズ騎手が宝塚記念以来の騎乗。オルフェーヴルとジェンティルドンナの三冠馬対決の間に割って入る2番人気に支持されたが、またもやスタートで出遅れて最後方からとなった。

最初のコーナーまでに内に入れポジションを少し上げながら後方を追走。ジェンティルドンナが積極的に好位からレースを進める中、同じ勝負服のローズキングダム、ルーラーシップ、オルフェーヴルと後方を並んで進む。

最後の直線に入ると、ジェンティルドンナとオルフェーヴルの熾烈な叩き合いが繰り広げられる。すべての視線が二頭に集中する中、ルーラーシップが大外から豪脚を使って3着に追い込んできたところがゴールだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
有馬記念で歴史に残る大出遅れ
そして極めつけが有馬記念。ルーラーシップと言えばこのレースが真っ先に挙げられるほどのインパクトを残したレースである。

ウィリアムズ騎手の継続騎乗、馬具の試行錯誤。出遅れ対策でできることはすべて陣営が施した。そして運命のゲートが開く瞬間、ルーラーシップはゲート内で立ち上がっていた。。。
ルーラーシップがゲートをピョンと飛び出た時には、さり気なく出遅れをかましていたゴールドシップを除く他馬は10馬身近くも前を行っている。絶望的な大出遅れである。

それでも、1周目のスタンド前でどうにか遅れを取り戻して後方集団に追いついていく。ここからは終盤までスタミナを温存して馬群を追走。
そしてレース終盤。3,4コーナーでゴールドシップがまくっていくタイミングでルーラーシップも仕掛けて上がっていく。
最後の直線に入ると、インから抜け出したエイシンフラッシュを目掛けて出遅れた2頭、ゴールドシップとルーラーシップが外から並んで追い込んでくる。
最後はわずかに末脚が鈍ったルーラーシップに対し、力強く伸びたゴールドシップが先頭でゴールイン。伏兵のオーシャンブルーを捉えることができなかったが、大出遅れから驚異的な走りを見せたルーラーシップはこの秋3度目の3着でゴールした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
有馬記念のあと、ルーラーシップの引退種牡馬入りが発表された。最後の秋に悪癖のゲート難を極めてしまい、結局国内G1には手が届かなかった。しかし、これぞルーラーシップの魅力が凝縮された3連戦であったとも思う。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、ルーラーシップ。
史実のルーラーシップ概要
| 基本情報 | 2007年5月15日生 牡馬 鹿毛 |
|---|---|
| 血統 | 父キングカメハメハ 母エアグルーヴ(父トニービン) |
| 馬主 | サンデーレーシング |
| 調教師 | 角居勝彦(栗東) |
| 生産者 | ノーザンファーム(北海道安平町) |
| 通算成績 | 20戦8勝(JRA18戦7勝,海外2戦1勝) |
| 主な勝ち鞍 | 12’クイーンエリザベス2世カップ(香港) |
| 生涯獲得賞金 | 約6億3,745万円(JRA約5億4,976万円,海外約8,769万円) |
エピソード:父として
ルーラーシップは、エアグルーヴ直仔の種牡馬として大きな期待をかけられた。そして初年度から200頭を超える繁殖牝馬を迎える人気ぶり。その初年度産駒の中からキセキが菊花賞を制し、父が叶えられなかったクラシック制覇をプレゼントした。

2世代目からは4歳夏に驚異的な成長力を見せたメールドグラースが重賞3連勝の勢いのまま、オーストラリアのG1コーフィールドカップを勝ち、父仔海外G1制覇を成し遂げた。
その後もコンスタントに重賞勝ち馬を輩出し、5世代目となる2018年産まれの世代からはソウルラッシュがマイルチャンピオンシップを勝って産駒3頭目のG1ウィナーに。その後に挑んだドバイターフでは世界的名馬ロマンチックウォリアーを破って父仔海外G1制覇をも成し遂げた。
他にも朝日杯FSを勝ったドルチェモアや天皇賞・春を勝ったヘデントールなど産駒はマイラーからステイヤー、早熟だったり晩成だったり実に多様だ。

現役時代は出遅れてばかりで母にたわけと言われたかも知れないが、偉大なエアグルーヴの血を種牡馬として継承するという大役を立派に務めているルーラーシップは間違いなく孝行息子である。

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