競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第15回。今回は、天才を育てた名馬「スーパークリーク」について熱く語ります。
強い菊花賞馬
「強い菊花賞馬」で思い出す一頭
リアル競馬の世界では秋のG1シーズンが始まった。ウマ娘のゲーム内では次のチャンピオンズミーティングであるライブラ杯の舞台設定である菊花賞ももうすぐだ。「強い馬が勝つ」と言われる菊花賞。歴代の勝ち馬の中でも「強い菊花賞馬」で思い出す一頭がスーパークリークだ。菊花賞を境にどんどん強くなっていったという印象がある。
今回は、芦毛のアイドルホースことオグリキャップと同世代であり、イナリワンとともに平成の三強と呼ばれて競馬ブームを盛り上げたスーパークリークの史実を語っていく。
天才騎手の原点
逆指名から始まった物語
いきなりだが、JRAポスター「ヒーロー列伝」のキャッチコピーを見てみよう。(ポスター画像はリンク先で見られる)
逆指名。
引用元:JRAポスター ヒーロー列伝(No.30)
逆指名とはなんのことか。その答えは説明文に詳しく書いてある。以下、抜粋。
僕がデビュー2年目の秋のことです。菊花賞をどの馬で行くか迷ってた。結局1頭ずつ見て回ることにして、最後がスーパークリークだったんです。無意識のうちに最後まで残しておきたかったんでしょうね。あの時僕が行ったら、袖をくわえてぐいぐいと何度も引っ張るんです。「どこへ行くんだ。もうほかに見る馬はいないんだろう。自分と一緒にいればいいじゃないかって。」そんな感じでした。向こうのほうが、一足先に僕を乗せることに決めてたようです。ともかく僕の初めてのG1タイトルは、スーパークリークがもたらしてくれた。
引用元:JRAポスター ヒーロー列伝
そう、デビュー2年目の武豊騎手を逆指名し、その天才ジョッキーに初めてのG1勝利をプレゼントした馬こそスーパークリークだったのである。
2歳時
デビュー前
生まれつき左前脚が少し外側に曲がっていたため、なかなかセリでは買い手がつかなかった。しかし、競争能力には影響が少ないと踏んだ伊藤修司調教師が素質を見込んで馬主に推薦したという。そして自身のもとでデビューまでじっくり焦らずに調整され、2歳の12月にデビューを迎える。
メイクデビュー
12月の阪神競馬場でデビューしたスーパークリークは、初戦では気難しい面を見せて2着と惜敗したものの年末に出走した2戦目で勝ち上がる。1,2戦目ともに芝2000m。長距離向きの血統を考慮し、一貫して2000m以上のレースを選んで出走させた。武豊騎手との出会いはもう少し先のことである。
3歳時
小さなほころび
年が明けて3歳となったスーパークリークは、福寿草特別4着、G3きさらぎ賞3着と惜しくも2勝目を挙げられずにいた。勝ったのはともにマイネルフリッセという馬。騎乗していたのは武豊騎手だった。
そして春のクラシックに出走するにはギリギリの時期となる3月中旬、すみれ賞で待望の2勝目を挙げる。これが武豊騎手との初コンビだった。しかし、ダービーを目指して調整していた矢先に左前脚の骨折が判明。ダービーはもとより春シーズンの休養を余儀なくされた。ゲーム内の育成シナリオですみれステークス後に必ず発生してしまうステータス異常「小さなほころび」はここからきているのだろう。
復帰
春から夏にかけておよそ半年の療養期間を経て、復帰戦となったG2神戸新聞杯で3着。そして菊花賞の優先出走権をかけてG2京都新聞杯に出走するも6着。レース中に不利を受けたこともあり、菊花賞の優先出走権を取ることができなかった。
菊花賞出走への執念
その結果、菊花賞は賞金順で除外対象となり、2頭が回避をしないと確実に出走できない状況になってしまった。復帰後の2戦では結果が出なかったものの、スーパークリークの長距離向き血統ともともと見込んでいた素質から菊花賞での好走に自信を持っていた伊藤調教師。どうしてもスーパークリークを菊花賞に出走させたかった。そして、出走を予定していたマイネルフリッセのオーナー故・岡田繁幸氏に直談判して出走を回避するよう説いたという逸話は有名である。
菊花賞
こうして出走叶ったクラシック最後の一冠、菊花賞。皐月賞1,2着のヤエノムテキとディクターランドが1、2番人気。スーパークリークはそれに続く3番人気におされた。長距離向きの血統に加え、「逆指名」の武豊騎手は2年目にして早くも天才と認められており、その武豊騎手が「クリークがだめなら菊花賞に出られなくても仕方ない」とスーパークリークへの騎乗にこだわったこともあったかも知れない。
レースはスーパークリークと武豊騎手の独壇場となった。外枠17番からスタートしたスーパークリークは序盤は無理せず中団につける。そして、馬場状態のいいインコースに潜り込むと、徐々に進出。最終コーナーで早めに仕掛けて先頭に並びかける勢いで直線を迎えると、あとは後続を引き離して圧勝。2着に5馬身差をつけていた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
武豊騎手はこれが初のG1制覇となり、同時に史上最年少での牡馬クラシックレース制覇を成し遂げた。
芦毛の怪物との初対決
菊花賞を制したスーパークリークは年末のグランプリレース有馬記念に登場。ここで、この年の競馬界の主役となっていた二頭の芦毛馬と初対決を果たす。一頭は同世代のスター、オグリキャップ。そしてもう一頭が白い稲妻ことタマモクロスである。3つのG1を含む8連勝という驚異的な連勝で一躍頂点に君臨したタマモクロス。そのタマモクロスに敗れるまで無敵の強さを見せつけてきたオグリキャップ。この二頭の三度目となる対決に注目が集まった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
結果は、オグリキャップがタマモクロスを下して中央G1初優勝を決め、スーパークリークは二頭に続く三位で入選したものの斜行による進路妨害で失格となった。スーパークリークと武豊騎手にとっては苦い敗戦となった。
4歳時
天皇賞(秋)
4歳となったスーパークリークは、筋肉痛によるコンディション不良が長引いて春シーズンを棒に振る。そして満を持して復帰した秋、G2京都大賞典を快勝すると、再び芦毛のアイドルホースと対戦する。舞台は秋の天皇賞。同じく春シーズンを休んだオグリキャップはG3オールカマーとG2毎日王冠を連勝し、万全の状態でここに臨んでいた。
この大一番でスーパークリークと武豊騎手は会心のレースを見せる。大外14番枠から好位3番手につけると、直線で並んだメジロアルダンとの先頭争いを競り落とし、外から猛然と追い上げるオグリキャップを1/2馬身凌ぎきってゴール。菊花賞以来、二つ目の栄冠を手中に収めた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
長距離向き血統のスーパークリークが2000mの天皇賞でも戦える、一流のスピードも兼ね備えていることを証明したレースとなった。
平成の三強対決
この時6着に入ったイナリワンは同年の春に天皇賞(春)と宝塚記念を制しており、オグリキャップとイナリワン、スーパークリークで平成の三強と言われた。実際には三頭が揃い踏みとなったのはこの秋の三連戦、天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念だけであり、翌年までにいずれか二頭の対決が数多く行われた。
そんな三強対決の二戦目ジャパンカップは、驚異的な世界レコードで勝ったオーストラリアの牝馬ホーリックスとオグリキャップの激闘が繰り広げられ、スーパークリークは2頭から3馬身遅れての4着、イナリワンはいいところがなく11着に沈んだ。
有馬記念
そして暮れの有馬記念で三たび三強が激突。こんどはスーパークリークとイナリワンのマッチレースとなった。オグリキャップが2番手につける積極的な戦法を取ると、それをピタリと3番手でスーパークリークがマーク。この2頭のマッチレースになるかと思われたが、直線でスーパークリークが楽々と抜け出し、ジャパンカップの疲れが残ったのかオグリキャップは優勝争いから後退。そのままスーパークリークが押し切るかに思われたが、最後の100mからイナリワンが強襲して二頭並んだところがゴールだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ハナ差で制したのはイナリワン。秋は不振続きだったが、これで3つ目のG1制覇となりこの年の年度代表馬に輝いた。
5歳時
史上初
5歳となったスーパークリークは、G2産經大阪杯から始動。これを難なく勝って順調な滑り出しで天皇賞(春)へと駒を進める。有馬記念で激闘を演じたイナリワンは前哨戦の阪神大賞典でまさかの5着。スーパークリークが断然の1番人気に支持され、離れた2番人気にイナリワン。
長丁場の3200m。スーパークリークと武豊騎手は2コーナーまでに落ち着いて4,5番手のポジションにつけると、インコースの荒れた芝を避けて最終コーナーから直線では大きく外に持ち出す。そしてそのまま抜け出すと追いすがるイナリワンを振り切って先頭でゴール。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
秋→春の天皇賞連覇は史上初だった。因みに春→秋の天皇賞連覇はタマモクロスが達成している。
引退
快挙を達成し、宝塚記念からフランス凱旋門賞というプランも浮上していたが、筋肉痛で宝塚記念を回避。海外遠征も消えた。そして休養明けのG2京都大賞典を危なげなく勝って秋の活躍が期待されたのもつかの間、左前脚の繋靭帯炎を発症してそのまま引退となった。
天才を天才にした馬
3歳のすみれ賞で初コンビを組んで以来、引退するまでスーパークリークを手放さずに騎乗した武豊騎手は、スーパークリークを自身の原点だと言い、スーパークリークとの出会いがなかったらのちの活躍はなかったとすら語る。天才騎手を育てた偉大な名馬スーパークリークは、今ではみんなの「ママ」として多くのトレーナーとウマ娘に慕われている。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、スーパークリーク。
史実のスーパークリーク
基本情報 | 1985年5月27日生 牡 鹿毛 |
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血統 | 父 ノーアテンション 母 ナイスデイ(父 インターメゾ) |
馬主 | 木倉誠 |
調教師 | 伊藤修司(栗東) |
生産牧場 | 柏台牧場(北海道・門別町) |
通算成績 | 16戦8勝 |
主な勝ち鞍 | ’88菊花賞,’89天皇賞(秋),’90天皇賞(春) |
生涯獲得賞金 | 5億5,610万円 |
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