第10回:エイシンフラッシュの物語~競馬史に残る名シーン ~

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【ウマ娘】第10回:エイシンフラッシュの物語~競馬史に残る名シーン ~

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【ウマ娘】第10回:エイシンフラッシュの物語~競馬史に残る名シーン ~

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第10回。今回はドイツから来たウマ娘「エイシンフラッシュ」について熱く語ります。

目次

ドイツから来た礼儀正しいウマ娘

先日実装されたドイツウマ娘

エイシンフラッシュ

8/20、育成ウマ娘として待望の実装となったエイシンフラッシュ。黒髪に意志の強そうな青い瞳が印象的な彼女は、固有衣装の可愛さも相まって高い人気を誇るウマ娘の一人だ。ドイツからの留学生という設定でもあるエイシンフラッシュとは、史実ではどんな馬だったのか。今回もウマ娘でのキャラクター設定に関係すると思われるエピソードなどを紹介しつつ史実を振り返っていく。

ドイツからの持ち込み馬

エイシンフラッシュ

引用元:JRA日本中央競馬会

ウマ娘ではドイツからの留学生という設定だが、競走馬のエイシンフラッシュとは少しニュアンスが異なる。母馬がドイツ産で、繁殖牝馬としてお腹に仔を身ごもった状態で輸入されたため、お腹の仔は日本で産まれている。それがのちのエイシンフラッシュであり、このように母馬が受胎した状態で輸入されて産まれた馬のことを「持ち込み馬」と言う。他のウマ娘で持ち込み馬として有名なのはマルゼンスキーやビワハヤヒデ、ニシノフラワーなどだ。

2歳時

メイクデビュー

デビューは7月と早かったが、新馬戦(芝1800m)は5番人気で6着という結果で、この時はまだ注目されるような存在ではなかった。そしてじっくりと間隔を開けて3ヶ月後の10月。調教の動きも良くなり、芝2000mの未勝利戦を2番人気で勝ち上がる

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

1800-2000mを選んで出走

2戦目で勝ち上がったエイシンフラッシュは、萩ステークス(芝1800m)で3着のあと、エリカ賞(芝2000m)で2勝目をあげる。ここまで2000mで2勝、通算4戦2勝という戦績で2歳戦を終える。

エイシンフラッシュは、ウマ娘では中距離と長距離の適性がAとなっているが、特に中距離レースを得意としていた印象が強い。とりわけ2000mという距離は全6勝のうちの4勝をあげ、3着が5回、掲示板を外したのは1回(芝レースのみ)だけだから大得意と言っていいだろう。エイシンフラッシュは2000mである。

3歳時

クラシック三冠レースへ

1戦ごとにレース内容もよくなり評価を上げてきたエイシンフラッシュ。年が明けて3歳の初戦は、皐月賞と同じ中山競馬場の2000mで行われるG3京成杯に堂々の1番人気で挑む。このレースを2着馬とハナ差接戦の末にモノにすると、クラシック有力候補の1頭に数えられるようになる。

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

皐月賞

第10回:名シーンの天皇賞馬 エイシンフラッシュの物語の画像

京成杯のあと、皐月賞のトライアルレースに出走するべく調整されていたが体調を崩して回避。皐月賞に直行することとなった。休み明けで人気を落としたエイシンフラッシュは11番人気の低評価。しかしここまで3戦全勝と得意にしている2000mの舞台で3着と健闘。勝ったヴィクトワールピサには1馬身半離されたが、激しい2着争いに加わってみせた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

日本ダービー

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

クラシック1戦目の皐月賞で3着と上位に入ったエイシンフラッシュだったが、続く日本ダービーでは7番人気と伏兵扱い。この年のダービーは群雄割拠。皐月賞の上位組に、別路線からきたルーラーシップ(エアグルーヴの息子)など評判の馬も加わりかなりハイレベルと言われるメンバーとなった。

エイシンフラッシュの物語の画像

レースは前半が超スローペースの展開となり、最内1番枠から中団10番手あたりにつけたエイシンフラッシュは馬群の中でじっと脚をためている。固まった集団のまま最終コーナーを抜けると、直線の瞬発力争いとなる。

エイシンフラッシュの物語の画像

そして直線の中ほどで進路が開けると、外を通ったローズキングダムと一緒に馬群の真ん中を割るようにエイシンフラッシュが抜け出してくる。2頭の叩き合いを制したエイシンフラッシュがダービー馬となった。

エイシンフラッシュの物語

この時、エイシンフラッシュが記録した上がり3ハロンのタイムは32.7秒というダービー史上最速のものだった。この記録は今でも塗り替えられていない。

【用語解説】上がり3ハロン
1ハロン≒200mという長さの単位。競馬で言う上がり3ハロンとは最後の600メートルのタイムを指す。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

菊花賞回避

皐月賞3着、ダービー1着の好成績で春のクラシック二戦を戦い終えたエイシンフラッシュは、夏を休養に当てた後、菊花賞を目指して前哨戦の神戸新聞杯に出走する。春に激戦を演じたローズキングダムに敗れ2着となったが、悲観する内容ではなかった。そしてクラシック最後の一冠・菊花賞へ向かうのだが、直前で筋肉痛を発症したため出走を断念した。

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ジャパンカップ 上位争いに入れず

菊花賞回避のあと、立て直して参戦したジャパンカップで8着と、新馬戦以来久しぶりに掲示板を外してしまう。つづく年末の有馬記念では出遅れて見せ場も作れず7着と敗け続きで3歳シーズンを終えた。

4歳時

長いトンネル

ダービー以来勝ち星をつかめないエイシンフラッシュは、ここから5勝目となる1着を取るまでに長い長いトンネルに入ってしまう。4歳時は怪我もなく順調に古馬中長距離の王道を歩むものの6戦して勝てず。とは言え全然ダメというわけでなく、春の天皇賞で2着、宝塚記念3着とG1でも好レースを演じている。そしてこの年のハイライトは、暮れの有馬記念である。

有馬記念

この年にディープインパクト以来となるクラシック三冠を達成したオルフェーヴルや、これが引退レースとなるG16勝の名牝ブエナビスタ。そして同世代の皐月賞馬でこの年、当時の世界最高賞金だったドバイワールドカップを日本馬として初めて勝ったヴィクトワールピサなどの好メンバーが揃った。

第10回:名シーンの天皇賞馬 エイシンフラッシュの物語の画像

超ハイレベルな一戦と言われたこのレースを勝ったのは三冠馬オルフェーヴル。エイシンフラッシュは、他の並み居る強豪たちを相手に2着という結果を残し、ダービー馬も健在であることを示した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

5歳時

海外挑戦

有馬記念でまだまだ衰えていないということを証明したエイシンフラッシュは、5歳となった春に海外へ挑戦する。当時の世界最高賞金レース、ドバイワールドカップである。同レースにはスマートファルコンも出走しており、ゲーム内ではルームメイトであり何かと仲が良さそうなのはこのためと思われる。

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

得意の2000mとはいえ、慣れない海外でのレースということも影響してか直線で伸びを欠き6着。それでも日本馬では再先着だった。
※こちら、当初ダートと記載しておりましたが、正しくはオールウェザーの誤りでしたので、お詫びして訂正します。ご指摘いただいた方に感謝いたします!

【用語解説】オールウェザー
芝でもダートでもない、水はけの良い人工素材を使った全天候型のコース。ドバイワールドカップでは、2010年~2014年の期間はオールウェザーで行われた。

帰国後

日本へ戻ってからは宝塚記念に出走してオルフェーヴルの6着。そして夏場は休養して海外遠征からの疲れを癒やし、秋はG2毎日王冠から秋の天皇賞を目指すこととなった。休養明けのG2毎日王冠、2番人気に推されたエイシンフラッシュだったが結果は9着と大きく敗けてしまう。これで12戦連敗。ダービー以来、およそ2年半もの間勝ちから遠ざかっていた。

競馬史に残る名シーン

天皇賞(秋)

そして迎えた秋の天皇賞。この第146回天皇賞(秋)は、天皇皇后両陛下が観戦される約7年ぶりの天覧競馬だった。勝利から遠ざかっていたエイシンフラッシュの鞍上は、イタリアから短期免許で来日していたミルコ・デムーロ騎手。6枠12番に入ったエイシンフラッシュは5番人気でレースを迎える。

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好スタートから中団につけると、インコースで虎視眈々と脚をためるエイシンフラッシュ。大逃げを図るシルポートが引っ張る縦長の展開の中、直線までじっと追い出しを我慢していたエイシンフラッシュとデムーロ騎手。直線に向くと、内ラチ沿いに空いた1頭分のスペースを突いて動き出す。そして目の醒めるような末脚を繰り出して先頭に躍り出ると、そのままゴールまで一直線に突き抜けた。得意の2000mの舞台で最高の走りを見せた。

【用語解説】内ラチ
コース内側に設置された柵のこと

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ウイニングラン、そして

ダービー以来となる勝利を味わうようにウイニングランをしてスタンド前に戻ってくると、デムーロ騎手とエイシンフラッシュは立ち止まる。観客はどうしたのかと見ていると、デムーロ騎手はエイシンフラッシュの背から下馬をして芝の上に降り立った。そして天皇皇后両陛下が見守られるスタンドに向かってエイシンフラッシュと並び、ヘルメットを取って片膝を突き最敬礼をしたのである。競馬史に残る、とても美しいシーンだった。

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

この時のデムーロ騎手の紳士的な行為が、ウマ娘におけるエイシンフラッシュの礼を重んずる騎士のようなキャラクターに反映されているのは言うまでもないだろう。
(※本来レース後検量前の下馬は禁じられているため、この行為は審議の対象となったが、不問となった。)

強い3歳世代と

天皇賞を勝ったエイシンフラッシュは、ジャパンカップ、有馬記念に出走。勝てなかった時期から常に中長距離レースの王道を歩む姿はかっこいい。ジャパンカップではトリプルティアラを達成した3歳牝馬のジェンティルドンナと凱旋門賞帰りの現役最強馬オルフェーヴルの熾烈な争いの影で9着。有馬記念では直線で抜け出し勝ったかに思われたが、最後に後ろから差してきた3歳馬ゴールドシップらに交わされて4着。強い3歳世代に圧倒されて5歳のシーズンを終えた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

6歳時

王道をゆく

天皇賞で2つ目の勲章を手に入れ、6歳となるエイシンフラッシュ。引退して種牡馬入りという選択肢もあっただろうが、現役続行。春はG2産経大阪杯3着のあと、香港へ遠征してG1クイーンエリザベス2世カップで3着。6歳になっても得意の2000mで堅実な走りを見せる。

そして秋はこの馬らしく王道をゆく。G2毎日王冠でジャスタウェイを破って約1年ぶりの勝利をあげると、連覇を狙って天皇賞へと駒を進める。

連覇を狙う

6勝目をあげて万全の状態で迎えた天皇賞(秋)。前年の覇者として迎え撃つ相手は、前年のジャパンカップを制した女傑ジェンティルドンナ。エイシンフラッシュはいつもどおりの中団待機から直線を迎えると、前をゆくジェンティルドンナに引き離されてしまう。そこへ、後ろから毎日王冠で負かしたジャスタウェイが破格の末脚で飛んでくる。それでもしぶとく伸びて3着を確保した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

1着のジャスタウェイはこのあと、翌年の海外G1ドバイデューティフリー、安田記念を含む4連勝と快進撃。2着のジェンティルドンナは続くジャパンカップを制し、史上初の同レース連覇を達成。そのジャパンカップで10着と敗れたエイシンフラッシュは、引退レースに予定していた有馬記念を前に脚元に不安を発症して同レースを回避。そのまま引退となった。

引退後

引退して種牡馬となったエイシンフラッシュは、5世代目となる今年までにG1馬こそ出ていないものの堅実な成績をあげており、これからの産駒の活躍が期待される。そんな中でウマ娘ファンに注目されているのが、今年の3歳世代にいるアンブレラデートという名の牝馬。母はあのダイワスカーレットである。日本ゆかりの血筋を引くダイワスカーレットと、重厚なドイツの名門血統であるエイシンフラッシュ。これからどんな成長を見せてくれるか楽しみな1頭である。

※アンブレラデートはその後11戦2勝の戦績で2022年4月末に引退し繁殖入りした。これだけの血統馬。また次の世代の登場を楽しみに待ちたい。

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

祝、産駒G1初勝利!!

ヴェラアズールがジャパンカップ制覇

2022年秋、ジャパンカップでエイシンフラッシュ産駒のヴェラアズールが優勝。父に産駒G1初制覇をプレゼントした。父がダービーを勝ったのと同じ舞台で目の覚めるような末脚を繰り出しての勝利に、現役時代を思い出したファンも多かったのではないだろうか。

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ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、エイシンフラッシュ。

史実のエイシンフラッシュ

基本情報2007年3月27日 牡 黒鹿毛
血統父 キングズベスト
母 ムーンレディ(父 プラティニ)
馬主平井克彦
調教師藤原英昭(栗東)
生産牧場社台ファーム(北海道・千歳市)
通算成績27戦6勝(うち海外2戦0勝)
主な勝ち鞍’10日本ダービー、’12天皇賞(秋)

エピソード① 几帳面な性格

ウマ娘のエイシンフラッシュは、とても几帳面な性格のようだ。育成ストーリーでもしばしばきっちりしないと気が済まないようなシーンが見られる。これにもいくつか元となるエピソードがある。

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

馬体重

エイシンフラッシュの物語

ひとつは、馬体重。競走馬のエイシンフラッシュは、現役時代に国内だけでも25戦のレースに出走しているが、すべて484キロ〜496キロで出走している。4年以上におよぶ現役生活で12キロしか変動がないというのは、かなり少ない方である。

身だしなみ

エイシンフラッシュの物語

そしてもうひとつ、身だしなみである。漆黒の馬体と端正な顔立ちでイケメンとしても有名だったエイシンフラッシュの誇る黒光りする馬体は常に手入れが行き届いており、尻尾の先端をきれいに切り揃えられるほどのこだわりだった。パツっと整えられた尻尾はゲーム内でも再現されているので確認してみて欲しい。

エピソード② あの衣装

ウマ娘のエイシンフラッシュと言えば、あの衣装に触れないわけにはいかないだろう。魅力的な固有の勝負服のことである。

エイシンフラッシュの画像

黒髪で清楚な雰囲気のエイシンフラッシュとこの勝負服の組み合わせは破壊力抜群である。これにやられたというトレーナーも多いことだろう。この衣装デザインの元となっているのは、アルプス地方(ドイツ〜オーストリア辺り)に由来するディアンドルという民族衣装だ。

ビール好きにとっては、オクトーバーフェストなどのイベントで実際に目にする機会もある素敵な衣装である。赤と黒のストライプは、エイシンの冠名で有名な馬主の勝負服が元となっている。

エピソード③ ドイツ血統

第10回:礼儀正しいドイツ娘 エイシンフラッシュの物語の画像

エイシンフラッシュの母ムーンレディはドイツ産まれ、競走馬としてもドイツセントレジャー(ドイツ版の菊花賞)など重賞4勝と活躍した。その父プラティニもドイツで産まれ、ドイツ馬としてジャパンカップにも出走したことがある活躍馬だ。また、エイシンフラッシュの父キングズベストはアメリカ産であるが、こちらも母系にはドイツの血が入っている。このように、エイシンフラッシュは両親からドイツ系の血統を色濃く受け継いでいる。

この記事を書いたライター

ライターE
すっぴんちゃんBNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

ライターEについて

  • 年齢:マルゼンスキーの1コ下らしい
  • 初恋の相手:エアグルーヴ
  • 推しウマ娘:ミホノブルボン、マルゼンスキー、会長、ビコーペガサス・・・みんなかわいい
  • 好きな競馬場:東京競馬場、大井競馬場(トゥインクル最高)

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