競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第130回。今回は、日本馬初の快挙で日本に希望を届けた、「ヴィクトワールピサ」について熱く語ります。
ドバイから希望を届ける
日本馬初の快挙

今年も近づいてきたドバイワールドカップデー。毎年この時期になると思い出される名馬がいる。2011年のあの日、震災直後の日本に届けた希望の勝利。彼の地で日本馬初の快挙を成し遂げた「ヴィクトワールピサ」の史実を追っていく。
ウマ娘のヴィクトワールピサ
5周年で発表されたウマ娘の中から、ヴィクトワールピサがドバイワールドカップデー前のタイミングに実装された。
2010年のダービー馬エイシンフラッシュの世代はウマ娘において長らくライバル不足が続いていたが、ローズキングダム、ルーラーシップとともに待望の登場。ヴィクトワールピサの育成シナリオで濃密に描かれる同世代のライバル関係、物語にも注目だ。

そして多くの競馬ファンの記憶に刻まれたドバイでの走り。ウマ娘では、これまでにもトランセンドやブエナビスタといったウマ娘の育成シナリオにおいてたびたび描かれてきたレースが、ついにヴィクトワールピサ目線で描かれている。

まるで天使のようなヴィクトワールピサの育成ストーリーを堪能するならば、是非ともゆこま温泉シナリオなどで育成してみてほしい。
公式プロフィール

純粋で温かな心を持ち、『ひとりぼっち』や『孤独』を嫌うウマ娘。そんな状況に陥っている人を見かけたらすかさず駆け付け、その心が『希望』へと繋がるまで寄り添うのをやめない。その姿を『まるで天使のよう』と評する者も多いとか。趣味は天体観測と芸術鑑賞。
史実のヴィクトワールピサ
血統
ヴィクトワールピサの母ホワイトウォーターアフェア(父Machiavellian)は現役時代にはおもにイギリスやアイルランドで走り重賞2勝、G1でも2着など活躍したのちに繁殖入り。産駒からは初子のアサクサデンエン(安田記念)やスウィフトカレント(小倉記念)など活躍馬を出し、2007年に産まれた7番仔がのちのヴィクトワールピサである。
父はウマ娘でもお馴染みのネオユニヴァース。現役時代に皐月賞、ダービーを制した二冠馬は種牡馬としても初年度産駒から皐月賞馬アンライバルド、ダービー馬ロジユニヴァースを出し一躍トップ種牡馬の仲間入り。ヴィクトワールピサはその二世代目の産駒である。

2歳時
メイクデビューでいきなり激突
ウォッカやシーザリオなどを育てた名門・角居厩舎に入厩したヴィクトワールピサは、10月の京都競馬場でデビューを迎える。
メインレースにG1菊花賞を控えた京都の5レース。芝1800メートルの2歳新馬戦には注目の良血馬が顔を揃えた。兄に重賞勝ち馬を持つ良血馬ヴィクトワールピサはデビュー前から評判も高く、デビュー戦の鞍上には武豊騎手を迎えて単勝1.8倍と1番人気の支持を集めた。
一方、僅差の2番人気(2.2倍)には薔薇一族で知られるローズキングダム。この2頭に人気が集中した注目の一戦は、いきなりの名勝負となった。

ともに好位からレースを進めた2頭は、直線に入るといずれも劣らぬ末脚を発揮してマッチレースを繰り広げる。最後は切れ味で上回ったローズキングダムに3/4馬身差届かず2着に敗れた。
2戦目で初勝利
中1週で臨んだ未勝利戦(京都芝2000m)で1.2倍の圧倒的な支持を集めたヴィクトワールピサは、2番手から抜け出して危なげなく勝利。初勝利を挙げた。
連勝で重賞へ
その後、5頭立ての少頭数となったオープン特別の京都2歳ステークスを制して連勝。暮れのラジオNIKKEI杯で初の重賞の舞台に挑む。
単勝オッズ1.6倍と1頭抜けた1番人気はヴィクトワールピサ。前走オープン勝ちの2勝馬コスモファントムが6.4倍、未勝利を快勝してきたヒルノダムールが8.1倍で続く。
スタートすると、これまでいずれも好位からの先行策で勝ってきたヴィクトワールピサは中団後方という位置取り。前半1000m61秒7のゆったりとした流れにも折り合いがついて外から追走。中盤から徐々に前との差を詰めて上がっていく。
最終コーナーを外目8番手あたりで通過して最後の直線に入ると、2番手から早めに抜け出したコスモファントム目掛けて追い出しを開始。粘り込みを図るコスモファントムとの差を一完歩ごとに詰めると、最後はきっちりとクビ差捉えて先頭でゴール。3連勝で重賞タイトルをゲットした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
2着コスモファントム(中山金杯)、3着ダノンシャンティ(NHKマイルC)、4着ヒルノダムール(天皇賞・春)と、上位入賞馬はいずれものちにG1、重賞の勝ち馬に名を連ねるハイレベルな一戦であった。
3歳時:クラシック路線へ
弥生賞で始動
明けて3歳になると、クラシック戦線に向けて皐月賞トライアルの弥生賞から始動。ここも1番人気に応えて本番に繋げたいところ。
相手筆頭は2歳G1の朝日杯フューチュリティSでローズキングダムの2着に入ったエイシンアポロン。
ゲートが開くと、1枠1番から中団のインにつけるヴィクトワールピサと武豊騎手。終始内に閉じ込められて直線でも前が開かず苦しい展開となったが、先に抜け出していたエイシンアポロンを最終的に捉えて差し切り勝ち。これで未勝利から4連勝。堂々クラシックの主役として本番へと歩みを進める。
盤石なはずだったが
本番と同じ舞台のトライアルで自身初めて経験した揉まれる競馬で底力を示したことで、いよいよ皐月賞に向けて不安材料はなくなった、かに見えたヴィクトワールピサ。
ところが、デビューから騎乗してきた武豊騎手にアクシデントが発生。皐月賞まで3週間と迫っていた週の毎日杯で落馬事故により負傷、長期離脱を余儀なくされてしまったのだ。
皐月賞
乗り替わりで暗雲も

そうして迎えたクラシック一冠目の皐月賞。1番人気は4連勝中のヴィクトワールピサ。岩田康誠騎手に乗り替わりでクラシック制覇に挑む。
対するは新馬戦以来の対戦となる2歳チャンピオンのローズキングダム。ほかにも各トライアルから勝ち進んだアリゼオら有力馬、そして京成杯勝ちからぶっつけで参戦のエイシンフラッシュなど伏兵勢も侮れないメンバー構成となった。

スタートすると、後方から4番手あたりのインで折り合いをつけたヴィクトワールピサと岩田康誠騎手。平均ペースの流れを内で追走しながら、空いたスペースを突いて徐々に順位を上げていく。
3,4コーナーを7,8番手で通過。最後の直線に入ると迷わず最内に進路を取って一気に末脚を爆発させる。内ラチ沿いを鋭く伸びたヴィクトワールピサが先に抜け出したゲシュタルトを交わし、外から伸びてきたアリゼオを置き去りにする。

熾烈な二着争いとなったヒルノダムール、エイシンフラッシュ、ローズキングダムら後続の追い込みも封じて先頭でフィニッシュ。鞍上の岩田騎手は渾身のガッツポーズを見せた。

レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
未勝利から破竹の5連勝でG1皐月賞を制覇。見事、父ネオユニヴァースとの父子皐月賞制覇を達成した。
日本ダービー

二冠がかかる日本ダービーでは皐月賞組に加えてトライアルで切符を獲得してきた別路線組も参戦。中でも青葉賞まで4戦無敗のペルーサ、プリンシパルステークスを圧勝した角居厩舎の同厩ルーラーシップが人気の一角を担うこととなった。

ゲートが開くと、ヴィクトワールピサは好スタートから5番手の内につけて折り合いをつける。ルーラーシップ、ローズキングダム、エイシンフラッシュあたりが続いて中団馬群を形成した。

大けやきを抜けて最終コーナーに差し掛かると外から各馬仕掛けて上がっていく。内で脚を溜めていたヴィクトワールピサはやや反応が鈍いか。
最後の直線に入ると、真ん中から抜け出しを図るトゥザグローリーの外からエイシンフラッシュ、さらに外からローズキングダムが襲いかかる。ヴィクトワールピサも馬群の中から懸命に追う。

しかし優勝争いはエイシンフラッシュとローズキングダムの一騎打ちとなり、上がり最速の脚で伸びたエイシンフラッシュがローズキングダムをクビ差凌いで先頭でゴールした。

レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ヴィクトワールピサも最後までしぶとく伸びたが、トゥザグローリーを交わして3着に上がったところがゴールだった。ダービー後は休養に入り、秋のローテーションとして凱旋門賞挑戦プランが発表された。
凱旋門賞へ
8月にフランスへ渡ったヴィクトワールピサは、シャンティイ調教場で調整を進めてまずは9月12日に行われたステップレースのG2ニエル賞に出走。ケガから復帰した武豊騎手とのコンビもここで復活した。7頭立ての少頭数を後方から進んで追い込んだが伸びきれず4着止まりに終わった。
ニエル賞の3週後、10月3日に迎えた凱旋門賞。日本からはヴィクトワールピサの他にナカヤマフェスタが参戦。

同年の宝塚記念を8番人気の人気薄で制したナカヤマフェスタは、ヴィクトワールピサとは別の前哨戦であるG2フォワ賞2着から参戦していた。
ヴィクトワールピサ、ナカヤマフェスタともに五分のスタートをきると、ナカヤマフェスタは中団、ヴィクトワールピサも中団馬群後方につけた。
馬群は一団のまま終盤に突入。フォルスストレート過ぎから最後の直線に向けて各馬が徐々に仕掛けて上がっていく。ナカヤマフェスタも外から手応えよく進出開始。ヴィクトワールピサはまだ後方、前が壁になっている状態で直線に入る。
直線に入ると、ヴィクトワールピサは進路を求めて追い出しを待つがなかなか前が開かない。一方ナカヤマフェスタは先頭を伺う勢いでワークフォースの外に馬体を併せていく。
優勝争いはワークフォースとナカヤマフェスタの2頭による長く熾烈な叩き合いとなり、わずかにワークフォースが前に出たところでゴールを迎えた。
ヴィクトワールピサはようやく進路が開けて追い込んできた時にはすでに遅し。7着という結果に終わった。
ジャパンカップ
女王ブエナビスタ登場

帰国後は検疫を経てジャパンカップに出走。ここでヴィクトワールピサの主戦・武豊騎手が同世代のローズキングダムの先約により再び乗り替わりとなった。ローズキングダムはこの秋、武豊騎手を新パートナーに迎えて神戸新聞杯1着、菊花賞2着の成績を収めていた。
鞍上がフランスのM.ギュイヨン騎手に決まったヴィクトワールピサは帰国初戦ということもあり国内レースでは初めて1番人気を譲り8番人気の伏兵評価にとどまった。なお同期のエイシンフラッシュ、ローズキングダム、ペルーサら国内レースを順調に使われた組は上位人気を集めた。
1番人気は女王ブエナビスタ。前走天皇賞・秋で5つ目のG1タイトルを獲得した絶対女王だ。そして凱旋門賞2着以来のナカヤマフェスタが2番人気。豪華メンバーが顔を揃えた。

ヴィクトワールピサはスタートを決めて好位2,3番手のインにつけると逃げるシンゲンのペースを少し離れた2番手集団でスムーズに追走。最後の直線ではエイシンフラッシュと併せ馬で上がっていきシンゲンを交わして早め先頭に立つ。

エイシンフラッシュを競り落として先頭に立ったヴィクトワールピサがゴールを目指す。そこへ、後ろからローズキングダムが迫り、さらに大外から豪快に追い込んでくるのはブエナビスタ。ここで、ブエナビスタが内に斜行してローズキングダムがエイシンフラッシュとブエナビスタの間に挟まれて武豊騎手が立ち上がるほどの不利が発生。ブエナビスタがそのまま突き抜けたが、結果的にこの斜行により降着処分となった。

ヴィクトワールピサは最後まで懸命に食らいつき、立て直して伸びてきたローズキングダムと差なくゴールした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
繰り上がりでローズキングダムが1着となり、薔薇一族に2つ目のG1タイトルをもたらしたのだった。
有馬記念
新たな名コンビ誕生

暮れのグランプリ有馬記念。ジャパンカップで騎乗する可能性があったM.デムーロ騎手と改めて新コンビ結成。直前で出走取消となったローズキングダムとの再戦はならなかったが、再びブエナビスタに挑む。

最内1枠1番に入ったヴィクトワールピサは好スタートから4,5番手の位置取り。先手を取って逃げるのはトーセンジョーダン。オウケンブルースリ、トゥザグローリー、ヴィクトワールピサと続く。ブエナビスタはちょうど中団のあたり。

中盤でヴィクトワールピサが動いてトーセンジョーダンに並んでいきレースを引っ張る流れに。そのまま4コーナーで先頭に立って直線に入ると、後続を引き離して逃げ切り態勢に入る。

中団からただ一頭、ブエナビスタが末脚を繰り出してゴール前強襲。2頭がまったく並んでゴールに到達した。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
写真判定の結果、ハナ差でヴィクトワールピサが勝利。皐月賞以来となるG1制覇を達成した。

4歳時
中山記念からドバイへ
4歳になると春のローテーションとしてヴィクトワールピサ陣営からドバイワールドカップへの挑戦が発表された。ジャパンカップ、有馬記念で激闘を演じたブエナビスタとともに日本馬として初制覇を狙う。

2月27日。古馬となって初戦の中山記念がドバイ遠征前の壮行レースとなった。単勝オッズ1.4倍と断然の1番人気に支持されたヴィクトワールピサは、序盤後方待機から早めに動いて大外をまくって豪快に差し切るという圧巻のパフォーマンスで快勝。ドバイへ向けて視界は良好だった。

ドバイワールドカップ
希望の勝利

ヴィクトワールピサ、ブエナビスタに加えてトランセンドがドバイワールドカップ参戦を表明。これにドバイシーマクラシックに出走するルーラーシップを加えた4頭がUAEに向けて出国し現地で調整に入った。

そして周知の通り3月11日にあの未曾有の大災害が日本を襲った。

東日本大震災発生からおよそ2週間、3月26日の日本時間深夜に行われたドバイワールドカップには、予定通りブエナビスタ、ヴィクトワールピサ、トランセンドの3頭が出走。

その前に行われたドバイシーマクラシックのルーラーシップは6着だった。

そして迎えたドバイワールドカップが発走を迎えた。
スタートすると、ヴィクトワールピサは珍しく後手を踏んで最後方に位置する。トランセンドは好スタートからハナを奪って逃げる展開に持ち込んだ。ブエナビスタは後方で脚をためる。
ヴィクトワールピサは序盤の最後方から向正面で動いて一気前へ進出。逃げるトランセンドに馬体を併せていき、二頭が馬群を率いて最終コーナーを上がっていく。

抜群の手応えのまま最後の直線に入ると、トランセンドを競り落として単独先頭に立つ。そしてそのまま後続を振り切って先頭でゴール。トランセンドも2着を確保し、日本馬のワンツーフィニッシュとなった。
それまで日本馬は述べ18頭が出走して最高着順は2002年トゥザヴィクトリーの2着。1996年の初挑戦から15年越しの悲願が達成された。
3月11日に東日本大震災が発生した後は、日本中が競馬どころではないという状況となっていたが、遠くドバイの地から届いたヴィクトワールピサ優勝の報は多くの競馬ファンに一筋の希望を届けたことだろう。

ウマ娘でもたびたびシナリオに盛り込まれてきた震災時の状況。今回ヴィクトワールピサの育成シナリオではヴィクトワールピサ、ブエナビスタ、トランセンド、ルーラーシップらが日本に希望の勝利を届けるためにチーム・ジャパンとして一丸となって挑む様子が描かれている。

ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、ヴィクトワールピサ。
史実のヴィクトワールピサ概要
| 基本情報 | 2007年3月31日生 牡馬 黒鹿毛 |
|---|---|
| 血統 | 父ネオユニヴァース 母ホワイトウォーターアフェア(父Machiavellian) |
| 馬主 | 市川義美 |
| 調教師 | 角居勝彦(栗東) |
| 生産者 | 社台ファーム(北海道千歳市) |
| 通算成績 | 15戦8勝(JRA12戦7勝,海外3戦1勝) |
| 主な勝ち鞍 | 10’皐月賞,有馬記念,11’ドバイワールドカップ |
| 生涯獲得賞金 | 約10億8,504万円(JRA約5億9,595万円,海外4億8,908万円) |
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