競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第27回。今回は、短距離界をリードした可憐な快速乙女「カレンチャン」について熱く語ります。
短距離を極めた快速乙女
カプリコーン杯でも大活躍
カワイイの求道者、カレンチャン。ウマ娘界のインフルエンサーは、カワイイだけじゃなくレースでも手を抜かないストイックな努力家だ。そんなカレンチャンの史実は、徹底的に短距離路線を追求してトップスプリンターに上り詰めた、その道を極めし快速乙女だった。
カプリコーン杯で主軸に据えたトレーナーも多かったことだろうカレンチャンの史実を追っていこう。#ウマ娘 #カレンチャン #史実
デビュー前
スピード豊かな良血
引用元:JRA日本中央競馬会
カレンチャンの父クロフネは、NHKマイルカップを制した芝向きのスピードも高次元のものを持っていたが、ダートに転向してからの怪物ぶりが印象深い名馬である。最近の産駒では白毛のアイドルホース、ソダシが現役で活躍中だ。
そんなクロフネから非凡なスピード能力と美しいグレーの毛色(芦毛)を受け継いだカレンチャン。母スプリングチケットもJRAで6勝してオープンクラスまで出世した活躍馬だった。
メイクデビュー
カレンチャンがデビューしたのは3歳の12月最終週。阪神のダート1200m戦で1番人気を背負ってデビュー。結果は中団から追い込んで惜しくも2着に終わっている。
3歳時
初勝利
2戦目は年が明けて3歳になった1月の京都。再びダート1200mの未勝利戦に出走し、今度は1番人気に応えて初勝利を挙げた。
初の芝で連勝
そして、次戦は初の芝レースとなる1勝クラスの萌黄賞。中京競馬場の1200mで、4,5番手から抜け出す危なげないレースぶりで2勝目をマーク。芝の短距離レースへの高い適性を示してみせた。
桜花賞トライアル
3歳の春、多くの牝馬が目指すのは春のクラシックG1桜花賞。2勝目を挙げたカレンチャンも例にもれず桜花賞トライアルのG2フィリーズレビューに出走。阪神の芝1400m戦だ。
レースでは、中団から直線で追い込むものの上位には届かず8着に終わる。余談になるがこのレース、カレンチャンのほかにラブミーチャン、ハニーメロンチャンと、馬名に「チャン」のつく馬が3頭も出ていた。
短距離路線へ
フィリーズレビューのあと、春のクラシック戦線を横目にひと息入れたカレンチャン。ここからは自身の適性を見極め短距離路線をまい進する。5月に葵ステークスで復帰して僅差の2着、つづく潮騒特別を快勝して3勝目を挙げて休養に入る。
4歳時
復帰
半年ほどの休養期間を経て復帰したのは4歳の1月。復帰初戦こそ3着と足踏みしたものの、そこから快進撃が始まる。2月に準オープンクラスの山城ステークスで2馬身半差をつけて快勝してオープン入りを果たすと、4月のG2阪神牝馬ステークスでいきなりの重賞に挑む。
阪神牝馬ステークス
前年に8着と敗退したフィリーズレビューと同じ舞台設定、阪神の芝1400m。ここまで4勝をすべて1200mで挙げているカレンチャンにとって、200mの距離延長を克服できるかが勝負の鍵だった。
最内の1番枠から好スタートを決めると、4,5番手のインコースでロスのないレース運び。直線の追い比べを制して半馬身抜け出してゴール。接戦をものにして重賞初制覇となった。
サマースプリントシリーズ開幕
阪神牝馬ステークスのあと、2ヶ月の間隔を開けてカレンチャンが挑むのはサマースプリントシリーズ。夏競馬を盛り上げるために2006年から行われている距離別の重賞シリーズ戦だ。現在は全6戦で争われているが、カレンチャンが参戦したこの年、2011年当時は全5レースのポイントで競われていた。
函館スプリントステークス
サマースプリントシリーズの第1戦、G3函館スプリントステークスに登場したカレンチャン。得意の1200mで真価を発揮し、中団5,6番手のポジションから短い直線で末脚を伸ばして差し切り勝ち。コースレコードに並ぶ好タイムで1番人気に応えて10ポイントを獲得した。
キーンランドカップ
そしてカレンチャン陣営が選んだのはキーンランドカップ。サマースプリントシリーズ第2戦・アイビスSDと第3戦・北九州記念はパスして第4戦にエントリーした。
ここまでシリーズのトップはアイビスSD1着(10P)と北九州記念3着(4P)で14ポイントを獲得しているエーシンヴァーゴウ。10ポイントで追うカレンチャンはポイントを加算したいところだ。
函館では2戦2勝と北海道は得意としていたカレンチャンは、ここ札幌競馬場でも力を発揮。2番手から抜け出して後続を振り切り、1着でゴール。サマースプリントシリーズ2勝目を飾り、ポイントでもトップに躍り出た。
サマースプリントシリーズ王者ならず
しかし、最終戦のセントウルステークスを制したエーシンヴァーゴウに再びポイントで抜かれ、サマースプリントシリーズ女王には残念ながらあと一歩およばなかった。
スプリンターズステークス
夏の短距離女王は逃したが、短距離の頂点を狙うカレンチャンの最大目標はG1スプリンターズステークス。いよいよ初のG1挑戦まで辿り着いた。ここまで間隔を開けながら大事に一歩ずつ勝ち上がってきて目下4連勝中。重賞3連勝の勢いがG1の舞台で通用するか注目だった。
1番人気はオーストラリアから鳴り物入りで参戦してきたロケットマン。カレンチャンは3番人気。
スタートすると、カレンチャンは先行勢を見る形で中団を追走。最終コーナーで外をついて上がっていくと、直線で鋭い末脚を繰り出して並ぶ間もなく差し切って1馬身3/4差をつけ完勝。5連勝で短距離界の頂点を勝ち取った。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
香港遠征
スプリンターズステークス制覇の後、国際G1である香港スプリントに招待されたカレンチャンはこれを受諾。海外G1制覇が期待されたが、輸送中のトラブルに巻き込まれるなどの不運もあり5着に終わった。
最優秀短距離馬
この年、G1スプリンターズステークスを含む短距離重賞4勝の実績が評価され、最優秀短距離馬に選出された。
5歳時
オーシャンステークス
香港遠征の疲れを癒やして3月に復帰したカレンチャン。スプリンターズステークスを同じ中山競馬場芝1200mのG3オーシャンステークスから、高松宮記念を目指すローテーションだ。
そのオーシャンステークスでは1番人気に支持されるものの、4着。5歳の初戦を勝ち星で飾ることができなかった。
高松宮記念
香港スプリントに続いて、得意の1200mで連敗を喫したカレンチャンだったが、G1高松宮記念では最優秀短距離馬の実力を発揮する。
最大のライバルと見られたのは同厩舎の後輩ロードカナロア。これがG1初挑戦だったが、目下5連勝中。のちの最強スプリンターとなる馬だ。
しかし、先輩G1馬のカレンチャンは強かった。2番手から直線早めに抜け出すと、直後から迫るロードカナロア以下を抜かせない勝負根性で競り落とし、サンカルロの急襲を凌いで1着でゴール。秋春スプリントG1連覇を果たした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
秋
再び短距離路線のトップについたカレンチャンは、秋のスプリンターズステークスで連覇を目指す。夏を休養にあてて秋はG2セントウルステークスから始動。ロードカナロアと2回目の対戦となったが、カレンチャン4着、ロードカナロア2着とともに勝ちを逃した。
スプリンターズステークス
そしてスプリントG13連覇に挑む大一番スプリンターズステークス。カレンチャンはこれまでG12勝の実績、そして快挙達成への期待もあり1番人気。厩舎の後輩ロードカナロアがこれに続く。
好スタートから5,6番手に控えると、ハイペースを刻む先行集団を虎視眈々と狙う。そして最終コーナーで仕掛けられるといい手応えで外から上がっていく。直線で一旦先頭に抜け出すと、外からロードカナロアが馬体を並べてくる。
最後はロードカナロアの勢いの前に力尽き、3/4馬身差の2着でゴール。スプリントG13連覇は成らなかったが、ロードカナロアの勝ちタイムは中山1200mのコースレコードを更新するタイム。2着とは言えまだまだ健在な力は示した。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
香港スプリント
スプリンターズステークスでのG1初勝利を皮切りに、ロードカナロアは最強スプリンターの道を歩んでいく。勢いそのままに国際G1の香港スプリントを日本馬として初めて制覇。一気に世界のトップスプリンターまで登り詰めた。
その香港スプリントに2年連続で出走したカレンチャンは、短距離では痛い出遅れがひびき7着。このレースが引退レースとなり、翌春から繁殖牝馬として第2の馬生をスタートさせることとなった。
#ありがとう、ウマ娘。
#ありがとう、カレンチャン。
史実のカレンチャン
基本情報 | 2007年3月31日生 牝 芦毛 |
---|---|
血統 | 父 クロフネ 母 スプリングチケット(父 トニービン) |
馬主 | 鈴木隆司 |
調教師 | 安田隆行(栗東) |
生産牧場 | 社台ファーム(千歳市) |
通算成績 | 18戦9勝 |
主な勝ち鞍 | ’11スプリンターズS、’12高松宮記念 |
生涯獲得賞金 | 4億4,906万円 |
エピソード① 愛娘カレンモエ
カレンチャンは引退後、繁殖牝馬としてこれまでに5頭の仔馬を産んでいる。そのうち2番目の仔が、現役で活躍中のカレンモエ。厩舎の後輩で史上最強の短距離馬に数えられるロードカナロアとの間に産まれたロマンあふれる配合の牝馬である。
母カレンチャンの芦毛を受け継ぎ、短距離を得意とする高いスピード能力も備える。昨年は秋にオープン入りを果たすと1200mのG3で3戦連続で2着に入り、重賞制覇まであと一歩というところで手が届かなかった。
カレンモエは今年で6歳。体質が強くないため今まで出走したレース数は少なくまだまだ若々しいが、この血統を繋いでいくためにも無事に過ごして欲しいものだ。
今週はG3シルクロードステークスに出走予定で、順調にいけばそのあとは高松宮記念だろうか。母、父が同じレースを走り、それぞれ歴代の優勝馬に名を連ねるG1高松宮記念に出走する姿が見られるかも知れない。
エピソード②お兄さん
カレンチャンの二つ年上の兄にスプリングソングという競走馬がいた。こちらも短距離で活躍した馬だが、まだ現役中だった2011年に急病により早逝している。
ウマ娘でもこの史実を元にしたと思われるセリフが確認できる。
スプリングソングは2010年のG3京阪杯を勝っている。そしてその翌年の勝ち馬はロードカナロア。2021年にカレンチャンとロードカナロアの娘カレンモエが初めて重賞に挑戦したのがその京阪杯。
結果は惜しくも2着だったが、こういった歴史を知ると競馬がブラッドスポーツ(血統のスポーツ)と呼ばれることに深く納得してしまう。
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