第77回:芦毛のミラクルステイヤー、ヒシミラクルの物語

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【ウマ娘】第77回:芦毛のミラクルステイヤー、ヒシミラクルの物語

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【ウマ娘】第77回:芦毛のミラクルステイヤー、ヒシミラクルの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第77回。今回は、人気を覆す意外性のあった芦毛の名ステイヤー「ヒシミラクル」について熱く語ります。

目次

意外性の名馬

いつも人気薄

第78回:意外性の名ステイヤー、ヒシミラクルの物語の画像

G1レースを3つも勝っているのに、なぜかいつも人気薄。派手な勝ち方や人気はなくとも、豊富なスタミナと大レースでの勝負強さを武器に意外性のある走りを見せた芦毛のステイヤー、ヒシミラクルの史実を追っていく。

芦毛のステイヤー

多くの名馬と共通点

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ウマ娘のヒシミラクルの髪の色からも分かる通り、ヒシミラクルの毛色は芦毛。芦毛で長距離に強いステイヤーと言えば、メジロマックイーンやビワハヤヒデ、ゴールドシップなど多くの名馬たちと共通する。

これだけの共通点がありながら、この馬の場合はレースであまり人気にならなかった点で異なるのだが、それでいて大レースであっと言わせる真の実力を秘めていた。

仔馬時代

血統

ヒシミラクルの父はサッカーボーイ。ヒシミラクルは父の栗毛ではなく、母シュンサクヨシコから芦毛を受け継いだ。芦毛のサッカーボーイ産駒というのはなかなか珍しかった印象がある。

父サッカーボーイの代表産駒としては、アニメ「Road To The Top」が完結したばかりでウマ娘でも人気キャラクターの一人、ナリタトップロードがいる。

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ヒシミラクルの無料ストーリー4話までにトップロードが登場するのは、サッカーボーイを父に持つ者同士という関係性からだろう。主人公然とした快活なキャラクターで人気者のトップロードに対し、自分の実力に気づいてすらいない控えめなヒシミラクルという対比が史実馬の特徴を反映していて面白い。

2歳時

佐山厩舎に入厩

2歳のセリに出された芦毛のサッカーボーイ産駒は、「ヒシ」の冠名でお馴染みの阿部雅一郎氏によって落札される。その後「ヒシミラクル」と名付けられ、この時のセリにも帯同していた佐山優調教師のもとに預けられた。同師はヒシアケボノなども手掛けた旧知の関係である。

メイクデビュー

8月の小倉競馬場でデビュー。芝1200mの新馬戦に登場すると、9番人気で7着という結果に終わった。騎乗した角田晃一騎手はヒシアケボノをはじめ「ヒシ」の冠名の主戦ジョッキー。初戦の走りから、距離が伸びた方がいいという印象を伝えた。

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連敗

その後1200mの短距離で11、8、9着と見せ場なく大敗を続けた。5戦目の未勝利戦で距離が2000mに伸びると5着に入り、初めて掲示板を確保してからは2着、3着と惜しいレースを続けるも初勝利は遠かった。

7戦目のあと骨膜炎により長期休養に入り、2歳時は7戦未勝利に終わった。

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3歳時

復帰

休養中に年が明けて3歳になると、すでに3歳クラシックが開幕した4月に約5ヶ月ぶりに復帰。安田康彦騎手に乗り替わり、復帰初戦は4着とまずまず好調な出だしを切った。

10戦目で初勝利

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通算9戦目を6着としたあと、角田晃一騎手に手綱が戻った10戦目にようやくその時が訪れる。3歳未勝利戦の実施も残りわずかとなった5月下旬の中京開催。芝2000mの未勝利戦はフルゲート18頭立てとなった。ヒシミラクルは5番人気。

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エンジンのかかりが遅く加速する頃には時すでに遅しといったこれまでのレースぶりから一変。中団の位置取りから早めに仕掛けられて速度に乗ると、直線に入ってもそのままバテずにゴールまで走り抜けて3馬身差をつけて快勝した。

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順調に階段を昇る

10戦目で待望の初勝利を挙げたヒシミラクルは、見違えるように安定した走りを見せ始める。1勝クラスの初戦ぶっぽうそう特別でハナ差2着と惜敗すると、宝塚記念と同じ阪神芝2200mの売布特別を5馬身差で楽勝した。

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2勝クラスに上がると、2戦続けて3着を経て野分特別(阪神芝2000m)を勝利して3勝目。夏の上がり馬として、秋の菊花賞戦線へ名乗りを上げるまでに成長した。

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菊花賞へ向けて

菊花賞への優先出走権を求めてトライアル神戸新聞杯に出走。ダービー2着のシンボリクリスエスや皐月賞馬ノーリーズンら春の実績馬たちが名を連ねていた。

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7番人気の伏兵ヒシミラクルは、後方集団からジワジワとしぶとい末脚で追い込んで6着(7位入線で繰り上がり)と善戦したものの、菊花賞の権利を取るにはあと少し至らなかった。

波乱の菊花賞

ミラクル起こす

トライアルで出走権を確保できなかったヒシミラクルだったが、長距離適性を見込んだ佐山調教師はなんとか出走させたい思いで出走登録に踏み切る。3/8の抽選を突破しないと出走できないにも関わらず、追加登録料200万円を支払っての強行策は吉と出た。まずは抽選を突破して出走が叶ったのだ。

レースでも

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そうして迎えた菊花賞。同年のダービー馬タニノギムレットは屈腱炎により引退。ダービー2着から秋初戦のトライアルを快勝したシンボリクリスエスは天皇賞へ向かうため不在という中、皐月賞馬のノーリーズンが1番人気に推された。

あいにくの雨が降り続く中でスタートが切られる。その直後、信じられないアクシデントが発生する。1番人気ノーリーズン騎乗の武豊騎手が落馬してしまったのだ。大波乱の幕開けにより予測不能となった菊花賞の行方はいかに。

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ざわつく1周目のスタンド前をほぼ最後方のポジションで通過したヒシミラクルと角田晃一騎手は、スローペースを見越して2周めの向正面から徐々に進出を開始。馬群の外を回って3コーナーでは中団、最終コーナーでは早くも先行集団へと取り付く。

加速のついたヒシミラクルは先頭に並びかける勢いで最後の直線へ入ると、そのまま抜け出して先頭に立つと、最後に猛然と追い込んできたファストタテヤマの急追をわずかに凌ぎきって先頭でゴールした。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

追い込んで2着に突っ込んだファストタテヤマは16番人気。ヒシミラクルとの馬連は96,070円の高配当となり、大波乱の立役者となった。

3/8の抽選を突破したヒシミラクルが、レースでも文字通りミラクルと言えるような結果をもたらした。レース後の勝利騎手インタビューで角田晃一騎手は「奇跡というしかない」と語ったのが印象的だった。

有馬記念

菊花賞馬として年末のグランプリ有馬記念に駒を進めたヒシミラクル。無敗の2冠牝馬ファインモーションや3歳にして天皇賞馬となったシンボリクリスエス、1つ上のダービー馬ジャングルポケットら一線級に入っての5番人気は菊花賞優勝を正当に評価されてのものだっただろう。

そこにはナリタトップロードの姿も。サッカーボーイ産駒の菊花賞馬同士、ヒシミラクルとナリタトップロードの最初で最後の対戦となった。

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結果は、同世代のシンボリクリスエスが天皇賞に続いて古馬勢を撃破してグランプリホースに輝いた一方で、ヒシミラクルは終始後方のまま11着と見せ場を作ることはできなかった。

4歳時

大敗続き

4歳になり古馬中長距離路線を歩むヒシミラクルだったが、阪神大賞典12着、産経大阪杯7着と惨敗。菊花賞馬らしさを見せることができないまま春の天皇賞へと向かった。

天皇賞(春)

人気落ちで激走再び

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G1馬は自身と前年の宝塚記念優勝馬ダンツフレームの2頭のみという顔ぶれにも関わらず7番人気と低評価のヒシミラクル。すっかり人気が落ちてしまったヒシミラクルだったが、菊花賞を制した京都の長丁場で再び輝きを取り戻す。

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スタートすると、中団に控えたヒシミラクルは集団の外を追走。スタミナに不安のないヒシミラクルは2周めの3コーナーから早めに気合をつけながら上がっていくと、徐々にスピードに乗って最終コーナーから最後の直線へ。

角田騎手が懸命に手綱を動かしてトップスピードに加速したヒシミラクルは止まらない。追いすがる後続を振り切って再び淀のゴール板を先頭で駆け抜けた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

2着に8番人気のサンライズジェガーが入り、またしても馬連万馬券の波乱を演出。

終始いっぱいいっぱいに見える手応えにも関わらず、一度スピードに乗るとバテずに走り切るヒシミラクルのレースぶりは、菊花賞を彷彿とさせるものだった。

豪華メンバーの宝塚記念

三たび低評価を覆す

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古馬長距離の頂点、春の天皇賞馬に輝いたヒシミラクルだったが、条件が変われば相変わらずの低評価。距離が2200mに短縮される宝塚記念では6番人気に甘んじた。

しかし今度は史上最高とも言われるほどの豪華メンバー。年度代表馬シンボリクリスエスや芝ダート兼用のアグネスデジタル、有馬記念2着から連勝中のタップダンスシチーら強豪古馬勢が集結。そこへ当年のクラシック二冠馬ネオユニヴァースが電撃参戦してきたことでさらに注目の一戦となった。

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スタート直後から角田騎手が気合をつけて、中団後ろの集団につけたヒシミラクル。シンボリクリスエスは中団のやや前、ネオユニヴァースは後方3番手あたりを進む。

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3~4コーナーで有力角馬が仕掛けてレースが動き出す。シンボリクリスエスとタップダンスシチーはそれぞれ内と外から早くも先行集団を捉え、ヒシミラクルとネオユニヴァースも外から上がってくる。

第78回:意外性の名ステイヤー、ヒシミラクルの物語の画像

先に抜け出したシンボリクリスエスにタップダンスシチーが並びかけるが、加速の付いたヒシミラクルが鋭く伸びて先頭に躍り出る。後方からツルマルボーイが飛んできたが、ヒシミラクルが先にゴール板を駆け抜けた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

中距離でも能力を出し切ったヒシミラクルが豪華メンバーのグランプリを制して古馬の頂点に立った。心配された距離不足どころか、むしろ自身最高の切れ味を発揮しての勝利に、カンテレ実況の杉本さんも「またまたミラクルだ!天皇賞も菊花賞も伊達ではない」とこの馬の実力を認めたのだった。

秋初戦

夏場は休養して激戦の疲れを癒やした王者ヒシミラクルは、秋は京都大賞典から始動。こちらも宝塚記念3着以来のタップダンスシチーに次ぐ2番人気、という人気順は相変わらず。

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秋の古馬中距離路線を占う注目の一戦はタップダンスシチーに逃げ切りを許して2着。1キロの斤量差もあり秋初戦として悲観するような内容ではなかった。

故障

長期休養へ

いざ、秋のG1戦線へというところだったが、京都大賞典のレース後に右前脚の腫れを発症。精密検査の結果、右前繋靭帯炎の診断により長期休養を余儀なくされた。

5歳時

1年ぶりの復帰

長い療養を経てヒシミラクルがターフに戻ったのは1年以上が経過した秋の天皇賞。5歳の秋、本来であれば1年前に歩むはずだった秋古馬三冠レースに挑んだ結果は、天皇賞秋16着、ジャパンカップ9着、有馬記念14着。3レースともに勝ち馬はゼンノロブロイ。

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ヒシミラクルが不在の間に新しい世代も台頭してきていた。

引退

6歳の春、京都記念で3着と復帰後の最高着順で完全復活の期待がかかったが、続く天皇賞春で16着の直後に繋靭帯炎の再発が認められて引退が決まった。

結果的に引退レースとなった春の天皇賞は3番人気の支持を集め、ヒシミラクルがG1レースで背負った最高人気順だったことからも、この芦毛のステイヤーの復活を期待したファンの多さが窺える。

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ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、ヒシミラクル。

史実のヒシミラクル

基本情報1999年3月31日生 牡馬 芦毛
血統父サッカーボーイ
母シュンサクヨシコ(父シェイディハイツ)
馬主阿部雅一郎
調教師佐山優(栗東)
生産牧場大塚牧場(北海道三石町)
通算成績28戦6勝
主な勝ち鞍02’菊花賞、03’天皇賞(春)、宝塚記念

エピソード① ミラクルおじさん

ヒシミラクルが勝った宝塚記念では、もうひとつのミラクルなエピソードがとても有名だ。前日投票が行われていた土曜日の場外馬券売り場でヒシミラクルの単勝馬券に大金を投じた人物がいると話題となった。その金額はなんと1222万円。

のちにミラクルおじさんと名付けられたその人物は、安田記念でアグネスデジタルの単勝馬券に130万円を投じて見事的中。そして的中馬券の払い戻しを行い、そのまま全額をヒシミラクルの単勝に投じたというのだ。このような買い方をコロガシ馬券と呼ぶが、宝塚記念の払い戻し額は約2億円と算出され、壮大なコロガシ馬券成功に驚くばかりだ。

安田記念130万円の資金の出どころ(コロガシ始め)についても考察がされており、元手は5万円か50万円という説が有力のようだ。

この件は宝塚記念前日から当日にかけての単勝オッズを激しく変動させたことで大きな話題となり、優勝騎手インタビューで角田晃一騎手が「いっぱい馬券買ってくれてた人もいるそうで…おめでとうございます」と締めくくるほどだった。

エピソード② プールが苦手

ヒシミラクルが怪我で休養していた頃に発覚したのが「プールが苦手」ということ。怪我を負った際や脚元に不安がある場合に、脚元に負担をかけずに負荷をかける調教法として取り入れられることが多いのがプール調教。

ヒシミラクルはプール調教があまりに下手で、あの手この手で前進を促したものの一向に上手く進むことができなかったそうだ。

今週の一枚

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好メンバーの宝塚記念でまたしても激走したヒシミラクル

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ライターE
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BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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