競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第133回。今回は、シーザリオとシンボリクリスエスの仔にして、運命に導かれた名馬「エピファネイア」について熱く語ります。
運命のウマ娘エピファネイア
有り余る前進気勢とパワー

5周年で発表されたウマ娘の中でも注目度が高かったキャラクターの一人、エピファネイア。5.5周年を迎えたタイミングでついにそのエピファネイアが育成ウマ娘として登場した。
シーザリオとシンボリクリスエスを両親に持つウマ娘でもお馴染みの良血馬にして、有り余る前進気勢とパワーでターフを駆け抜けた、運命に導かれしウマ娘「エピファネイア」の史実を追っていく。
ウマ娘のエピファネイア
どうやらウマ娘のエピファネイアに関するキーワードは『運命』。無料で見られるウマ娘ストーリーの4話までを視聴すると、彼女にしか聞こえない『運命の声』に導かれて猪突猛進する様子が見られる。
エピファネイアと『運命』の繋がり。その決定的な由来はわからないのだが、筆者なりに史実のエピファネイアが持つ運命的な部分にも触れていきたい。

公式プロフィール

常に善き方へ自分の背中を押してくれる不思議な声、曰く『運命の声』が聞こえる……らしい。『そんな自分がみんなを導くのは天命!』と信じ、圧倒的な推進力で皆を引っ張っていくバイタリティに溢れたウマ娘。勢いがありすぎて、あらぬ方向へ引っ張りまわす大暴走になりがちなのはご愛嬌。
史実のエピファネイア
運命に導かれた血統
エピファネイアの母は現役時代に日米オークス制覇という偉業を成し遂げた名牝シーザリオ。ウマ娘ではラインクラフトとともにヒロインを務めた『チームアスケラ』の物語で知られる。

ケガで早期引退を余儀なくされたシーザリオは繁殖牝馬としても偉大な功績を残すことになるのだが、初期の産駒はいずれも体質面の弱さを抱えていた。キングカメハメハを父に持つ初年度産駒はデビュー戦で勝利を収めたものの脚元の問題で1戦のキャリアのみ。同じく父キングカメハメハの第2仔はデビューすることができなかった。
そして体質の強い仔をと願って配合されたのがシンボリクリスエス。シーザリオとシンボリクリスエスの『運命的な出会い』によりのちのエピファネイアが誕生したのである。

名前の由来
シーザリオの2010の牡馬は2歳を迎えると『エピファネイア』と名付けられる。母シーザリオと同様にW.シェイクスピアの『十二夜』から「公現祭」や「主の顕現日」という意味のギリシャ語が由来とされる。同作の副題が『or What You Will(御意のままに・お気に召すまま)』といったところがウマ娘のエピファネイアが運命の声に従うことに関連しているように思われる。
2歳時
運命的なデビュー戦
2歳になると、母シーザリオも管理した栗東の角居勝彦厩舎へ入厩。

2012年10月21日の京都開催。第73回菊花賞が行われるその日の芝1800m新馬戦に出走。かつて母シーザリオの主戦を務めた福永祐一騎手とのコンビで登場すると、単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され発走を迎える。
スタートすると、中団の内ラチ沿いで折り合いをつけて追走。最終コーナーを抜群の手応えで回ってくると、進路を外へと持ち出して最後の直線へ。軽く仕掛けられるとあっという間に前を捉えて突き放し、3馬身差をつけて圧勝した。

時に大物が出ることで知られる菊花賞当日の新馬戦で、まさにこの日エピファネイアが大物感たっぷりの走りを披露したのだった。因みにこの日の菊花賞を勝ったのはのちに大舞台で相まみえることになるゴールドシップである。
連勝
2戦目は新馬戦から約1月後の11月24日。ジャパンカップウィークの土曜日に京都で行われた京都2歳ステークス(京都芝2000m)である。
初戦の圧勝ぶりが評価されてここは単勝1.2倍の断然1番人気。スタートすると序盤は行きたがって前の方へ。福永騎手がなだめて2,3番手で我慢してレースを進めると、良馬場の発表ながら力のいる馬場を力強く駆け抜けて1着でゴールした。
3連勝で重賞制覇
2戦2勝でG3ラジオNIKKEI杯(阪神芝2000m)に出走。初重賞制覇に挑む。相手筆頭には同じく2戦2勝のキズナ。こちらも素質を高く評価されるディープインパクト産駒だ。
ゲートが開くと、押し出されるようにハナに立ったバッドボーイに外からキズナ、エピファネイアと続く。少頭数の2歳戦らしく超スローペースでレースが進む。行きたがる気性が課題のエピファネイアにとって我慢の強いられる展開だが、福永騎手が手綱を緩めず3番手をキープ。
3コーナーから徐々に馬の行く気に任せるように進出を開始すると、直線入口でキズナ、バッドボーイに並びかける。最後の直線は3頭の追い比べとなったが、キズナを競り落とし、さらに粘るバッドボーイを交わして先頭に立つとそのまま力強くゴールまで駆け抜けた。エピファネイアがデビューから3連勝で重賞初制覇を達成してクラシック戦線の主役候補に名乗りをあげた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
運命のクラシック戦線へ
弥生賞
3歳シーズンの初戦は皐月賞トライアルの弥生賞から始動。クラシック候補が集まった一戦、エピファネイアは騎乗停止中の主戦・福永騎手にかわり、短期免許で来日中だったW.ビュイック騎手との初コンビでどんなレースを見せるか注目が集まった。
しかしレースでは今まで以上に行きたがる面が出てしまい、終始力んで走るエピファネイアに対していくら名手と言えどもセーブが効かない状態。結果、ラストの決め手を発揮できず4着に敗れることとなった。
万全の態勢でクラシック開幕を迎えたいところだったが、心配された気性面の課題が浮き彫りとなり、痛恨の初黒星を喫した。
皐月賞

牡馬クラシック第一戦の皐月賞。主戦の福永騎手に手綱が戻り、巻き返したいところ。1番人気は朝日杯の覇者ロゴタイプ。トライアルも勝って順調な過程を歩んできた2歳チャンピオンに対し、僅差の2番人気にエピファネイアが続く。

ところが、弥生賞で露呈した気性面の課題がここでも出てしまう。スタートしてある程度控える競馬を試みるも、外枠も災いしたか馬群の外で抑えがきかず前へと行きたがるエピファネイア。福永騎手が手綱を引っ張り通しでどうにかなだめながらレースは終盤へ。
最終コーナーでエピファネイアとロゴタイプが併せ馬のように上がっていくと、最後の直線勝負へ。二頭のマッチレースになるかと思われたが、ロゴタイプが一瞬の切れ味を見せて抜け出すと、追いすがるエピファネイアを振り切ってそのまま先頭でゴール。エピファネイアは半馬身差の2着でフィニッシュした。
エピファネイアにとっては母シーザリオとの母仔クラシック制覇が、福永騎手にとっては悲願の牡馬クラシック初制覇がかかっていたが、大きな半馬身差となった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
日本ダービー

続いて迎えるクラシック二冠目の日本ダービー。距離が2400mに伸びるだけに気性面の課題が心配なエピファネイアは3番人気評価。距離に一抹の不安がある皐月賞馬ロゴタイプが2番人気。皐月賞の上位二頭を差し置いて1番人気の支持を集めたのは、皐月賞には不出走も毎日杯、京都新聞杯と重賞を連勝して軌道に乗ったキズナと武豊騎手のコンビだった。
ゲートが開くと、真ん中9番枠からスタートを決めたエピファネイアは中団に控えて折り合いをつける。馬群の内に入れたものの、心配された通り終始引っかかって力みが見られる走り。それでもなんとか向正面でも我慢して勝負どころを迎えたが、ここでエピファネイアが躓いてしまうアクシデント。落馬は免れて福永騎手も態勢を立て直し、最後の直線を迎える。
進路を探しながら馬群を縫うように上がっていくエピファネイア。最終的に外へと持ち出されると一気に抜け出して単独先頭に立つ。そのままエピファネイアが押し切ると思われたのも束の間、さらに外から白い帽子のキズナが襲いかかり、ゴール直前で測ったように差し切った。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
無念の春を乗り越える夏
無冠に終わった春のクラシック。陣営はエピファネイアの前向き過ぎる気性に対して試行錯誤を重ねて操縦性の改善を試みた。主戦の福永祐一騎手もエピファネイアを乗りこなすべくトレーニングを見直し肉体改造に取り組むなど、並々ならぬ覚悟で秋を迎えたというエピソードはのちに自身で語られていることもあり有名な話だ。

神戸新聞杯
そうして迎えた秋初戦の神戸新聞杯。エピファネイアが1.4倍の圧倒的1番人気に支持される。
スタートを決めて中団につけると、道中も鞍上の福永騎手とぴたりと折り合いがついてこれまでになくスムーズな競馬を披露。
消耗することなく脚が溜まったエピファネイアは最後の直線でも余裕を持って抜け出すと、楽な手応えのまま後続に2馬身半のリードをつけてゴール。
レース後には福永騎手の口から「やっと乗りこなせた」と安堵の交じるコメントが聞かれた。

運命の菊花賞
悲願達成なるか

いよいよ迎える大一番、クラシック最後の一冠・菊花賞。皐月賞馬ロゴタイプは距離適性を重視して中距離路線へと進み、ダービー馬キズナは凱旋門賞挑戦のため不在。必然的に春二冠ともに2着のエピファネイアが抜けた存在としてファンの支持を集めた。単勝オッズは1.6倍。
前日から降り続いた雨の影響で、あいにくの不良馬場でスタートの時を迎えた。
運命のゲートが開くと、エピファネイアは好スタートから3番手につけて折り合いをつける。力む様子もなく前目でレースを進めるエピファネイアと福永騎手。春のクラシック戦線で常に見られたような気性面の課題はこの時点でクリア。となれば、あとはこの馬本来の能力を発揮するだけだった。
抜群の手応えのまま最終コーナーを回って最後の直線に入ると、まだ鞍上の手はほとんど動かない。それでも見る見る後続を引き離して完全に独走状態。最後は2着サトノノブレスに5馬身差をつけて圧勝したのだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
1年前の菊花賞当日にこの京都競馬場でデビューしたエピファネイアが、1年の時を経て大輪の花を咲かせ、母シーザリオとの母仔クラシック制覇という偉業を達成したのである。

前走で「ようやく乗りこなせた」と話した鞍上が、再びエピファネイアと息の合った会心のレース。福永騎手にとって、これが悲願の牡馬クラシック初制覇であり、同時に父・福永洋一元騎手と親子二代での菊花賞制覇も成し遂げた。

菊花賞後はレース中に負っていたという左目付近の外傷を考慮してジャパンカップを回避。有馬記念も調整中に軽い捻挫が見られたため馬の状態を優先して回避。年内休養して翌年に備えることとなった。
4歳時
同期対決
年が明けて4歳のシーズンを迎えると、休み明け初戦としてG2産経大阪杯に出走。菊花賞以来久々のレースとなるエピファネイアが1番人気を集めるも、フランス遠征(ニエル賞1着、凱旋門賞4着)ぶりの日本競馬となるキズナ、前年にG13勝(オークス、秋華賞、エリザベス女王杯)の牝馬メイショウマンボといった豪華な顔ぶれ。2017年に大阪杯がG1に昇格する前の、いわゆるスーパーG2である。
ここでは同期のダービー馬と菊花賞馬、世代最強の牝馬に明暗が分かれた。
8頭立ての少頭数だったが、逃げたカレンミロティックら先行勢三頭と後続の差が大きく開く縦長の展開。エピファネイアは道中やや行きたがる素振りを見せるも後方三番手くらいの位置をキープ。キズナは最後方待機。
前が粘り込みを図る展開を、エピファネイアも最終コーナーで仕掛けて上がっていく。2番手から抜け出したトウカイパラダイス目掛けて末脚を繰り出したが、届きそうにない。逆に最後方からワンテンポ遅れて上がってきたキズナが切れ味を発揮して先頭まで突き抜けた。
4歳の初戦はダービー馬に軍配が上がった。
海外遠征
その後、エピファネイアはクイーンエリザベス2世カップ出走のため香港へ遠征。レースでは心配された折り合い面はクリアしたものの末脚不発で4着まで。帰国後は遠征の疲労がなかなか抜けず春のレースを使わず秋に向けて立て直しが図られた。
本領発揮の時を待つ
夏場を放牧先で過ごしてリフレッシュ。一時は寂しく写った馬体もすっかり回復し、秋は天皇賞・秋からの始動が決まった。
ジェンティルドンナやフェノーメノといった上の世代の一線級とは実質的にこれが初対戦となったエピファネイア。前年の菊花賞馬として存在感を見せたいところだったが6着に終わり、はじめて掲示板を外す結果となった。
世界に認められた運命のレース
ジャパンカップ
菊花賞以降の結果が思わしくないエピファネイア。ジャパンカップではここまで主戦を務めてきた福永騎手がジャスタウェイに乗ることが決まり、エピファネイアの鞍上はC.スミヨン騎手へ乗り替わりが発表された。乗り難しいエピファネイアを世界の名手がどう乗りこなすか注目された。

ジャパンカップ3連覇を目指すジェンティルドンナや、凱旋門賞にも挑戦した3歳牝馬ハープスター、そしてドバイDF、安田記念と国際G1競走を連勝しワールド・ベスト・ホース・ランキング1位のジャスタウェイら錚々たる顔ぶれとなった。

エピファネイアはレース前のパドックから入れ込みが激しく、発汗も目立つ。折り合いがつくのか疑問な状態に見えたが、レースでもその不安が的中してしまう。
スタート直後から前へ前へと行って2,3番手につけると、その後も終始かかり気味の走りにスミヨン騎手が必死に手綱を引っ張って抑え込む。淀みのないペースの中でも前の馬に突っかかりそうなほどの前進気勢で前を追走してレースは終盤を迎える。
さすがにこれでは直線で余力がなくなりそうなものだが、ここからエピファネイアが衝撃の走りを見せつける。
抑えきれない手応えで府中の長い直線の坂上で早めに抜け出すと、荒れ気味の馬場をものともせずグングン加速。世界No.1のジャスタウェイを置き去りにして独走態勢に持ち込むと、そのまま最後まで脚色は衰えることなくゴールまで駆け抜けた。2着のジャスタウェイには4馬身差をつけていた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
衝撃的な強さを見せたエピファネイアの走りに、鞍上のスミヨン騎手も驚きを隠さなかった。「今までに乗った日本馬で一番強い」と言わしめるほどのレースだった。このレースにおけるエピファネイアのレーティングは同年2位となる129という高い評価を受けたことも頷ける。

有馬記念とドバイでは本領発揮せず
ジャパンカップ後は有馬記念5着、ドバイワールドカップ9着とエピファネイアの本領発揮とは言えない結果をもって引退・種牡馬入りが決定した。
運命の継承者として
菊花賞後の走りに精彩を欠いていたエピファネイアにとって、ジャパンカップでの激走がなければその後の種牡馬としての評価も大きく異なっていたことだろう。そういう意味でも、あのジャパンカップがエピファネイアにとって運命のレースであったと思うのである。

母シーザリオ。その父スペシャルウィーク。父がシンボリクリスエス。生粋のウマ娘血統でもあるエピファネイアが今、運命の継承者として次なる世代を導く役目を果たしている。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、エピファネイア。
史実のエピファネイア概要
| 基本情報 | 2010年2月11日生 牡馬 鹿毛 |
|---|---|
| 血統 | 父シンボリクリスエス 母シーザリオ(父スペシャルウィーク) |
| 馬主 | キャロットファーム |
| 調教師 | 角居勝彦(栗東) |
| 生産者 | ノーザンファーム(北海道安平町) |
| 通算成績 | 14戦6勝(JRA12戦6勝,海外2戦0勝) |
| 主な勝ち鞍 | 13’菊花賞、14’ジャパンカップ |
| 生涯獲得賞金 | 約6億9,858万円 |
エピソード①種牡馬として
種牡馬入りしたエピファネイアは今更説明不要なくらいの大成功を収め、第二の馬生で更に輝きを放つこととなった。母系に名牝シーザリオ(父スペシャルウィーク)、そして父シンボリクリスエスという血統背景はディープインパクトやダイワメジャーなど多くのサンデーサイレンス系種牡馬を含む主流血統と相性がよく、質・量ともに申し分のない繁殖牝馬が集まった。

そして初年度産駒にあたる2017年産の産駒から、いきなり無敗の三冠牝馬デアリングタクトが出現。

2年目以降の産駒からは年度代表馬エフフォーリア、ブローザホーンなど毎年のようにG1馬を排出。

そして5世代目にしてダノンデサイルが日本ダービーを制覇。父があと一歩のところで果たせなかったダービー馬の歴史にもその名を刻んだ。
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