第42回:19万人が熱狂したダービー馬アイネスフウジンの物語

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【ウマ娘】第42回:19万人が熱狂したダービー馬アイネスフウジンの物語

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【ウマ娘】第42回:19万人が熱狂したダービー馬アイネスフウジンの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第42回。今回は、ダービーでの決意の逃げに19万人が熱狂した「アイネスフウジン」について熱く語ります。

目次

19万人が熱狂

記憶に残るダービー馬

第42回:19万人が熱狂したダービー馬アイネスフウジンの物語の画像

現実の日本ダービーを前に、ついにアイネスフウジンが育成ウマ娘として実装された。歴代ダービー馬の中でもファンの記憶に残る一頭に数えられるアイネスフウジン。

1990年当時はオグリキャップの時代に巻き起こった空前の競馬ブーム真っ只中で多くのファンが競馬場へ足を運んでいた。

19万6517人。この年のダービー当日の入場者数だ。東京競馬場には過去最高の人員を集め、その記録は未だに破られていない。19万人超が熱狂したダービー馬アイネスフウジンの史実を追っていく。

デビュー前

血統

第42回:19万人が熱狂したダービー馬アイネスフウジンの物語の画像

引用元:JRA日本中央競馬会

父シーホーク 母テスコパール(父テスコボーイ)という血統のアイネスフウジン。母は期待された良血馬だったが、デビュー前に原因不明の体調不良に陥り、一時は命の危険もあったほど衰弱したものの奇跡的に回復。未出走のまま繁殖牝馬となった。

そしてテスコパールの7番目の仔がのちのアイネスフウジンである。父シーホークはテスコパールと交配される頃には産駒の成績も下がり気味ではあったが、血統的な相性から交配相手に選ばれた。

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そして父シーホーク晩年の代表産駒となったのがアイネスフウジンと、一つ年上のダービー馬ウィナーズサークル。二頭が立て続けにダービーを制したことで一躍注目を集めたが、すでに高齢だったためにその後の種付け頭数はごくわずかに限られた。

2歳時

メイクデビュー

アイネスフウジンは、2歳の9月中山競馬場でデビューを迎える。芝1600m新馬戦。2番人気のアイネスフウジンは、中野英治騎手を背に2番手からそのまま逃げ馬との差を詰めることができずに2着でゴールした。

中1週で同条件の新馬戦(かつては同開催で複数回新馬戦に出ることができた)に出走すると、1番人気に支持されたがクビ差の2着。新馬戦で勝ち上がることはできなかった。

初勝利

3戦目は東京開催に変わって芝1600m未勝利戦。今度こそ1番人気に応えて逃げ切り勝ちを収め初勝利を挙げた。

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馬体の特徴

アイネスフウジンは後躯(お尻から後ろ脚にかけて)の発達に対して、前躯(胸や肩、前脚)が頼りないという特徴から前後のバランスが悪く、「前輪のパンクした自転車」と形容されるような乗り難しい走り方だったそうだ。

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その身体的特徴と走法からは切れる末脚を使うことができず、スピードと持続力で押し切る「逃げ」戦法が合っていると判断された。

朝日杯3歳ステークス

格上挑戦

未勝利戦を勝ち上がったアイネスフウジンは疲れが出て間隔を開けて回復に努める。そして1勝クラスの葉牡丹賞またはホープフルステークスで2000mのレースに出走するプランもあったが、中野騎手の勧めでG1朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)に格上挑戦することが決定。

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朝日杯はフルゲートに達しなかったため、抽選もなく出走が叶った。4戦2勝のカムイフジや3連勝で果敢に挑戦してきた牝馬のサクラサエズリが人気を集めるなか、未勝利を脱したばかりのアイネスフウジンは5番人気。

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好スタートを切ったサクラサエズリが逃げ、アイネスフウジンもそれを追う。前3頭がハイペースで飛ばし、しだいにサクラサエズリとアイネスフウジンが後続を引き離してレースを引っ張る。

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そのまま直線へ入ると、サクラサエズリが先に抜け出す。アイネスフウジンは抜群の手応えで追い出しのタイミングを図る。いよいよ仕掛けられるとサクラサエズリを捉えて引き離し、2馬身半差をつけてゴール。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

勝ちタイムは13年前にマルゼンスキーが樹立したレコードに並ぶ好記録となり、一躍世代ナンバーワンの座についた。サクラサエズリとともに自らハイラップを刻んでのタイレコードは価値のあるものだった。

中野騎手はこれがG1初制覇。また加藤修甫調教師もG1初制覇となった。

3歳時

共同通信杯4歳ステークス

クラシック候補となったアイネスフウジンは共同通信杯4歳ステークス(現・共同通信杯3歳ステークス)から始動。

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出遅れ気味のスタートからスピードの違いで先頭に立つと、そのまま後続を寄せ付けず2着に3馬身差をつけて余裕の逃げ切り勝ち。陣営は距離が伸びるクラシックに向けてあえてスタートをゆっくり出して控える競馬を試したかったが、天性のスピードがそれを許さなかった。

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前年のJRA賞最優秀3歳牡馬がその実力を発揮して、クラシックシーズンへ順調な滑り出しを見せた。

不良馬場の弥生賞

皐月賞トライアルのG2弥生賞。初めて距離が2000mに伸びる重要な前哨戦になるはずだったが、あいにくの不良馬場での開催となってしまった。

同世代のライバルたちも出揃い始め、若き横山典弘騎手を背に連勝中のメジロライアンがその筆頭格と見られた。

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極端に悪化した馬場状態はアイネスフウジンには合わないと見ていた中野騎手は、距離のロスを承知で少しでも馬場のいいコース外目を選択。逃げて直線までリードを保ったが、さすがに苦しくなって内から伸びてきたメジロライアンらに交わされて4着。それでも食い下がるアイネスフウジンの根性に中野騎手は本番での自信を深めたという。

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皐月賞

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クラシック一冠目の皐月賞。弥生賞では負けてなお強しの内容、そして絶好の1枠2番に入ったアイネスフウジンが一番人気を守り、3連勝のメジロライアンが差のない2番人気。そして別路線で破竹の5連勝中だった芦毛馬ハクタイセイを加えた三つ巴の様相だった。

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各馬ゲートインしてスタートを待つ。そしてゲートが開いた直後だった。1枠2番アイネスフウジンの隣、2枠3番のホワイトストーンが内側によれてアイネスフウジンの前をカットしてしまったのだ。戦前から逃げ宣言をしていたアイネスフウジンと中野騎手だったが、この不利によってスタートダッシュに遅れて2番手からの競馬となった。

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スローペースの2番手で折り合いに苦労するアイネスフウジンは、最終コーナー手前で早めに先頭に立つと、最後の直線で驚異の粘りを見せる。そのまま粘り切るか、というゴール直前で外から白い馬体のハクタイセイの強襲にあってクビ差の2着。

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ハクタイセイは6連勝で皐月賞馬に輝き、メジロライアンは追い込んで3着だった。

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レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ダービーへ向けて

常に全力疾走

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皐月賞後は疲労が見られたアイネスフウジン。前向きな気性でレースに対して真面目なアイネスフウジンは、いつも全力疾走で力を出し切るタイプだった。惜敗した皐月賞後も疲労が見られ、大事を取って2週間ほどの休養が与えられた。

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日本ダービー

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そして迎えた5月27日の日本ダービー当日。東京競馬場には過去最高の入場人員数となる19万6517人が来場(JRA発表。現在も破られていない)。

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人気は皐月賞の上位3頭。追い込みの脚が目立ったメジロライアンが距離延長と直線の長い東京競馬場に向くと見られて1番人気、続いて皐月賞馬のハクタイセイ、不本意な敗戦で人気が落ちたアイネスフウジンは3番人気となった。

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22頭立ての真ん中、12番枠に入ったアイネスフウジン。スタートで不利を被った皐月賞とは対象的に、今度は自身のスタートミスを枠順に救われることになる。

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ゲートが開くと、飛び出した直後に右によれてしまうアイネスフウジン。しかし、12番と13番の間だけはゲートの繋ぎ目にあたり間隔が大きくなっていたことが幸いして事なきを得る。

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態勢を立て直してスピードに乗ると、そのまま先頭を奪いペースを握る。

自ら淀みのないラップを刻みつづけ、2400mのダービーとしては速いペースでレースを引っ張る。3,4馬身のリードを保ちつつ、馬場の悪化したインコースを避けてあえて大きく外を通って最終コーナーに差し掛かるアイネスフウジンと中野騎手。

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ハクタイセイとカムイフジの2頭がアイネスフウジンに並びかけるが、先頭をキープして最後の直線へ。メジロライアンも早めに仕掛けてやや離れた5番手まで上がってきている。

直線の入り口ではハクタイセイに詰め寄られたアイネスフウジンは逆に突き放し、リードを広げる。エンジンのかかったメジロライアンが外から追い込むが、残り100mを切ってまだリードは3,4馬身。

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最後はアイネスフウジンの脚が止まってメジロライアンとの差が急速に縮まったが、目一杯粘って1馬身1/4差を守り先頭でゴールを駆け抜けた。

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電光掲示板に表示された走破タイムはサクラチヨノオーの従来記録を1秒も更新するダービーレコード。自ら逃げて作った大記録だった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

最後に脚が止まった様子からも分かる通り、全力を出し尽くしたアイネスフウジンはゴール後に脚元が覚束なくなるほどに消耗していた。アイネスフウジンと中野騎手が他馬より引き上げるのが遅かった理由は、余韻に浸っていたわけでもウィニングランの機会を伺っていたわけでもなく、疲れ切ったアイネスフウジンの歩調に合わせた結果である。

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ナカノコール

伝説の騎手コール

ほどなくして、勝者の帰還を見届けるように会場から沸き起こったのは、アイネスフウジンと中野騎手を称える掛け声だった。どこからか始まった「ナカノ、ナカノ」のコールは次第にスタンド全体に波及し、19万人の大合唱となった。

騎手デビュー19年目のベテランは、朝日杯で初めてのG1勝利をもたらしてくれたアイネスフウジンとともに今度はダービージョッキーの仲間入りを果たし、これを目撃した19万6517人の大観衆とこの年のダービーは、バブル期に起こった競馬ブームの象徴的な1ページとして競馬史とファンの記憶に刻まれた。

引退

ダービー後に左前脚の屈腱炎が判明。温泉療養などで復帰を目指したが、本格的な調教を再開する前に再発。完治は難しいと判断され、秋に引退が決まった。ダービーで最高潮の熱狂を生み出したアイネスフウジンは、その姿をファンの目に焼き付けたまま静かにターフを去った。

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、アイネスフウジン。

史実のアイネスフウジン

基本情報1987年4月10日生 牡 黒鹿毛
血統父 シーホーク
母 テスコパール(父 テスコボーイ)
馬主小林正明
調教師加藤修甫(美浦)
生産牧場中村幸蔵(浦河町)
通算成績8戦4勝
主な勝ち鞍’89朝日杯3歳ステークス、’90日本ダービー

エピソード① ラッキーナンバー12

アイネスフウジンがダービーを逃げ切った際の12番は、ゲートの連結部分によるラッキーがあったことは本文中に記した。実はこの12番枠はこの他にも様々な数字と一致するラッキーナンバーだったという逸話がある。

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枠順抽選で5枠12番枠を引き当てたのは代理で引いた弟弟子の高市圭二元騎手(当時は騎手を引退して調教助手に転身したて)だったが、中野騎手の結婚記念日5月12日と一致していることに気づいて本人に伝えたという。

エピソード② 種牡馬として

種牡馬としてはなかなか目立った活躍馬が出ずに苦戦したが、3世代目のファストフレンドが5歳になってからダートで素質を開花させる。帝王賞や東京大賞典など南関東の大レースを制覇する活躍を見せた。

ファストフレンドを管理したのは前述のラッキナンバー12を引き当てた高市圭二調教師だった。

今週の一枚

撮影機能にどハマリ!

ところで、アップデートで追加された撮影機能は活用されているだろうか?筆者もコラム中に挿入するスクショの取得などで重宝しており、大いに活躍してくれている。UI表示のオン/オフなどは便利この上ない神機能だと思っている。願わくば枚数制限など気にせず、端末の画像フォルダに直接保存したいくらいだ。

そこで、コラムのために撮影したスクリーンショットの中からお気に入りの一枚をセレクトするという新コーナーを勝手に追加してみた。題して「今週の一枚」。ひねりなど微塵もないタイトルだが、筆者お気に入りの一枚をどうぞ!

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無料で見ることができるウマ娘ストーリーから、ライバルのメジロライアンと競うシーン。レトロフィルタをかけると、当時のTV中継のような少し色あせた雰囲気が出たところが選んだポイントだ。

アイネスフウジンがレース後に倒れ込むシーン(シャッターチャンスが一瞬のため、撮影するのに20回くらい再生を繰り返した!)やちょうど東京競馬場の大欅前を先頭で駆けるシーンと迷ったが、スピード感のある構図と楽しそうに駆けるアイネスフウジンの表情が気に入ってこちらをセレクトした。

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この記事を書いた人
ライターE
ライターE

BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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