競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第18回。今回は、最強マイラー「タイキシャトル」について熱く語ります。
数々の金字塔を打ち立てた最強マイラー
芝でもダートでも条件問わず
引用元:JRA日本中央競馬会
史上最強の短距離馬、というとサクラバクシンオーやロードカナロアなどの名前が上位に挙がるかと思うが、最強マイラーというとこの馬を挙げないわけにはいかない。タイキシャトルは、マイル戦(1600m)で7戦負け無し。芝、ダート、不良馬場、フランス・・・とにかく1600mのレースであればどんな条件でも圧倒的な強さで勝ち続けた生粋のマイラーである。(ただし1400m以下の短距離も相当に強い)
海外G1制覇の先駆者
先週、アメリカ競馬の祭典・ブリーダーズカップで日本馬が初勝利&2勝目を挙げる快挙が成されたばかりだが、日本馬による海外G1への挑戦の歴史を語る上でタイキシャトルの名前は外せない。1998年、シーキングザパールとともに日本調教馬による海外G1の重い扉を開いたのがタイキシャトルだからだ。
3歳時
デビュー前
アメリカ産まれのタイキシャトルは、まだ仔馬の段階でアイルランドの育成牧場に移されて調教されている。そして2歳の夏に日本に輸入され、美浦の藤沢厩舎に入厩することが決まっていた。しかし脚元や蹄が弱く、思うように調整が進まなかったために入厩は翌年、3歳の2月になってからだった。
メイクデビュー
入厩してからも脚元の不安を残したままの調整となり、ゲート試験をパスするのにも苦労したためにデビュー戦は4月に入ってからと遅かった。
脚元に負担の少ないダートの1600m戦でデビューしたタイキシャトルは、4馬身差をつけて楽勝。2戦目もダートで連勝すると、徐々に脚元の不安も解消していった。
芝でもOK
ダートで連勝後、3戦目にして初めて芝のレースに出走。東京競馬場の芝1600mで行われる菖蒲ステークスに出走すると、先手を奪ってそのまま逃げ切り3連勝。芝でも通用するスピード能力を見せつけた。
初黒星
続く阪神芝1400mの菩提樹ステークスは、伏兵の逃げ馬を捉えきれず2着となり、初黒星。そしてデビューから連戦の疲れを癒やすために、夏場を休養に当てる。
快進撃
およそ3ヶ月の休養後、復帰戦はダート1600mの重賞ユニコーンステークス。現在とは開催時期が異なるが、当時も3歳馬限定のダートレースだった。重賞初挑戦となるこのレースで、5番手から抜け出して2着馬に2馬身半の差をつけて快勝すると、ここからタイキシャトルの快進撃が始まる。
舞台を再び芝に移したG2スワンステークス(1400m)を初の古馬との対戦をものともせず勝ち、重賞レース2連勝。これでデビューからの成績を通算6戦5勝とした。
マイルチャンピオンシップ
芝のG2を制覇していよいよ短距離・マイル路線の有力馬に名乗りを挙げたタイキシャトルは、マイルチャンピオンシップで初G1獲りに挑む。G1馬6頭が顔を揃える好メンバーとなったが、重賞連勝中と充実しているタイキシャトルは2番人気。
同世代の桜花賞馬キョウエイマーチが逃げ、同じく同世代のサイレンススズカがこれに続くハイペースな展開となる。タイキシャトルは3番手のヒシアケボノを見る4,5番手の位置取りで追走。直線に入ると、粘るキョウエイマーチを外から捉えて堂々と抜け出す。そのまま2馬身半にリードを広げて1着でゴール。G1初制覇を成し遂げた。
引用元:JRA公式チャンネル
スプリンターズステークス
秋のマイル王の座についたタイキシャトルは、続くスプリンターズステークスで短距離界の制圧を狙う。当時、同一年のマイルチャンピオンシップとスプリンターズステークスを制した馬はまだいなかったが、この馬はそれをあっさりとやってのけた。
好スタートから4番手を追走すると、直線で前を行く快速逃げ馬勢を余裕たっぷりに交わし、あとは危なげなくゴールまで駆け抜けるだけだ。抜け出す時の一瞬の脚、ダイナミックで力強い走りはもはや完成の域に達していた。
引用元:JRA公式チャンネル
年度代表馬に?
秋の短距離G1を連勝したタイキシャトルは、破竹の重賞4連勝でこのシーズンを締めくくった。そしてこの年、ほかに複数のG1を勝つなど抜けて目立った馬がいなかったため、年度代表馬の候補にタイキシャトルの名前が挙がった。
いわゆる短距離馬から年度代表馬に選ばれた馬は歴史上いなかったためその行方が注目を集めたが、結果的には牝馬として17年振りに天皇賞を制した女傑エアグルーヴが選出された。
4歳時
蹄のトラブルを乗り越え
年が明けて4歳になったタイキシャトル。春の目標レースを安田記念に据えて前哨戦の京王杯スプリングカップから始動する。この時、もともとのウィークポイントであった蹄にヒビが入ってしまうトラブルが発生していたが装蹄師の判断と巧みな技で回復に成功した。そして迎えたレースではまったく危なげなく勝利し、前年から続く連勝を5に伸ばして順調な滑り出しを見せた。
安田記念
この年、海外遠征を計画していたタイキシャトル陣営にとって、安田記念はその最終判断とも言えるレースだった。そんな重要な位置づけの大一番は、稀に見る不良馬場での開催となった。大雨の影響で東京競馬場の芝コースは水たまりのような状態となり、さすがのタイキシャトルでもこんな馬場状態で力を発揮できるだろうか?この安田記念は何が起きるか分からない。そんな状況だった。
しかし、タイキシャトルにとって馬場状態など小さな問題だったようだ。水たまりのような芝コースを、他の馬が苦労しているのを尻目に力強く抜け出して快勝。3つ目のG1勝利、秋→春のマイルG1連勝を決めた。
引用元:JRA公式チャンネル
いざ、フランスへ
ジャック・ル・マロワ賞
タイキシャトルは、日本馬初の海外G1制覇という夢を乗せてフランスへと旅立った。狙うレースは仏ドーヴィル競馬場で行われるマイルの国際G1ジャック・ル・マロワ賞。
馬場状態は重馬場。ただでさえパワーを要するヨーロッパの芝だが、不良馬場でもダートでも力を発揮できるタイキシャトルにとっては関係ない。1番人気に支持されたタイキシャトルは、いつもどおり好位置につけて抜け出すスタイルで勝利を収めた。
これで日本馬による海外G1初勝利!とはならなかった。実は、この1週前に行われた同じフランスのG1モーリス・ド・ゲスト賞に出走したシーキングザパールが優勝し、日本調教馬初の海外G1制覇を達成していたのだった。
帰国
マイルチャンピオンシップ
世界のマイル王となったタイキシャトルは、凱旋帰国後にマイルチャンピオンシップ連覇を目指す。そして1番人気タイキシャトル、2番人気シーキングザパールのレースでは独壇場となる5馬身差圧勝を披露。最強マイラーの力をまざまざと見せつけた。
引用元:JRA公式チャンネル
これでフランスのG1を含む重賞8連勝。この記録はJRAの重賞連勝タイ記録である。(ほかにテイエムオペラオー)
スプリンターズステークス
マイルチャンピオンシップではデビュー以来もっとも重い馬体重で出走しており、この頃から走るのを嫌がるようになっていたというタイキシャトル。このマイルチャンピオンシップで引退する予定だったが、JRAから異例の引き止めがあり、引退レースとしてスプリンターズステークスに出走することになった。
そして、マイルチャンピオンシップより更に重い馬体重での出走となり、1.1倍という圧倒的な1番人気を裏切る3着。最後にらしくない競馬を見せてしまったが、やはりマイルチャンピオンシップの時点で走ることが嫌になっていたのだろうか。それでもタイキシャトルの最強マイラーとしての評価が変わることはない。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、タイキシャトル。
史実のタイキシャトル
基本情報 | 1994年3月23日生 牡 栗毛 |
---|---|
血統 | 父 Devil's Bag 母 ウェルシュマフィン(父 Caerleon) |
馬主 | 大樹ファーム |
調教師 | 藤沢和雄(美浦) |
生産牧場 | Taiki Farm(米国) |
通算成績 | 13戦11勝(うち海外1戦1勝) |
主な勝ち鞍 | ’97,’98マイルチャンピオンシップ,’97スプリンターズステークス,’98安田記念,’98ジャック・ル・マロワ賞(フランス) |
生涯獲得賞金 | 6億1548万(JRA) |
エピソード
タイキシャトルは羊飼い?
種牡馬引退後、2021年の6月まで繁養されていたヴェルサイユリゾートファームでは、なぜか羊と同じ放牧地で過ごす時間が多かった。筆者も、多くの羊たちと同じ柵の中でのんびりしているタイキシャトルがかわいくて同ファームのYouTubeチャンネルをお気に入り登録したほどだ。
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