競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第122回。今回は、引退後のセカンドキャリアも話題となったグランプリホース、ブラストワンピースについて熱く語ります。
セカンドキャリアが話題
引退後は馬術競技も

アーモンドアイと同世代の牡馬であり、牝馬優位の時代の真っ只中を駆け抜けたグランプリホース、ブラストワンピース。現役引退後のセカンドキャリアも話題となった、ブラストワンピースの史実を追っていく。
ウマ娘のブラストワンピース
ウマ娘のブラストワンピースは、元気いっぱいでヒト懐っこいウマ娘。アーモンドアイと仲が良いのは、史実でともに美浦所属の同期にあたり、同じ勝負服を身につけて同レースで競ったこともあることなどが関係していると思われる。執筆時点では育成ウマ娘未実装のため、アーモンドアイとともにこれからの活躍が期待されるところだ。
公式プロフィール

人懐っこさ全開の天真爛漫ウマ娘。ヒトの姿を見つけると、嬉しさいっぱいにワフワフと駆け寄ってくる。小さい頃、脚のケアをしてもらったため、ウマ娘と繋がりのあるヒトがとくに大好き。ヒトの文化、歴史などなどに興味津々!
幼少期~デビューまで
血統
ブラストワンピースは父ハービンジャー母ツルマルワンピースという血統。父は現役時代に英G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを歴代最大着差(11馬身)で大差勝ちしたもののその後骨折で早期引退を余儀なくされた未完の名馬。
日本で種牡馬入りして3年目の産駒からディアドラ、ペルシアンナイトらがのちにG1ホースとなり、そこからコンスタントにG1馬を送り出して大成功を収めている。2025年現在も現役で活躍中のチェルヴィニア(牝馬二冠)やアルマヴェローチェ(阪神JF)の父として知られている。ブラストワンピースはそんなハービンジャー産駒の4年目の1頭にあたる。
脚元のケア
生まれつき脚が内向気味で牧場スタッフのケアによって無事に成長しデビューに至ったという経緯があり、この事はブラストワンピースの公式プロフィールにも反映されている。因みに立派な馬体の持ち主としても知られており、デビュー時の馬体重が520キロで5歳時の最高馬体重は550キロ。これだけの大型馬のため脚元の不安ということに対してはより一層の慎重さが求められたことだろう。

メイクデビュー
美浦の大竹正博厩舎へ入厩してからも慎重に育成が進められた。脚元に負担の少ないダートでのデビューも視野に入れながら調教を積み、芝でも問題なしと判断されて11月の東京競馬場の芝1800m新馬戦にエントリーした。

このときは調教師が「一度使ってから」と考えていたくらい、まだ余裕残しの仕上げであったという。デビュー戦のコンビを組むのは池添謙一騎手。5番人気で発走を迎えた。
無難にスタートを出て4,5番手で折り合いをつけて追走。直線に入ると、進路が塞がれてなかなか出られない場面もありながらも前が開くと一瞬の瞬発力を見せて抜け出し快勝。
蓋を開けてみれば、伏兵評価を覆す走りでデビュー戦を勝利で飾った。
3歳時
連勝
レース後も脚元に問題はなかったが、背中と腰に疲れが残りやすい体質を考慮して連戦はさせずに間隔を取るローテーション。2戦目は明け3歳の2月、1勝クラスのゆりかもめ賞に出走することになった。

舞台はダービーと同じ東京2400m。ここを勝って春のクラシックへという足がかりとなるか。
スタートすると後方から4,5番手というポジションで折り合いをつける。稍重馬場の中、スローペースでも馬群の後方で折り合ってレースを進める。

直線に入ると池添騎手のゴーサインに素早く反応してあっという間に抜け出し、後続を突き放す。最後は2着に4馬身差をつけて圧勝した。
ダービーへ
2連勝でオープン入りを果たしたブラストワンピース陣営は早々に皐月賞へは向かわずダービーを目標に定める。そしてレース後に疲れが残りやすく2ヶ月の間隔が欲しいというブラストワンピースの体質優先で逆算した結果、3戦目はダービートライアルではなく3月に行われるG3毎日杯となった。
毎日杯
3月の阪神で行われるG3毎日杯(阪神芝1800m)。2連勝の内容を評価され、1番人気で重賞初制覇に挑む。

ゲートが開くとスタートの出はそれほど良くなかったが最内枠からスーッと2番手につけていく。そして抜群の手応えで直線を迎えると一瞬内ラチにぶつかる場面がありながらも立て直して一気に加速。抜け出してからは後続を寄せ付けず2馬身差をつけて先頭でゴールを駆け抜けた。

ダービー出走のためには賞金加算が必須となる状況を見事にクリアしてダービー戦線に名乗りを上げた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
出走メンバーはのちに出世
なお、このレースの3着馬インディチャンプはのちに安田記念とマイルチャンピオンシップを勝ってトップマイラーに成長。
さらに2着ギベオンと6着ユーキャンスマイルはのちにそれぞれ重賞を勝って長く活躍することになるのだが、引退後に揃って馬術競技にも挑戦するという点で、ブラストワンピースにとっては同士とも言えるかもしれない。
ダービー

晴れてダービーの舞台へ駒を進めたブラストワンピース。異例とも言えるローテーションはブラストワンピース陣営にとっては予定通りの最短コース。単勝2番人気と高い支持を集めた。
1番人気はこちらも4戦全勝のダノンプレミアム。前年の朝日杯フューチュリティステークス覇者であり、皐月賞トライアルの弥生賞まで無敗だったが皐月賞を右前脚挫石のアクシデントで回避。それでも世代トップという評価は変わらず1番人気でダービーに挑む。
皐月賞組からは優勝馬エポカドーロや1番人気で7着に終わったワグネリアンらが出走してきたものの、人気では不出走の2頭を下回るという異例のオッズとなった。

レースでは、スタートで後手を踏んで馬群の後方から。ポジションを押し上げながら中団で折り合い、レース中盤から徐々に進出を開始。最終コーナーを4、5番手でまわって最後の直線を迎える。
直線では前が壁になり進路を切り替えるロスがありながらも懸命に立て直して前を追う。しかし先に抜け出したワグネリアンを捉えることができず、際どい2着争いの一角に入るのがやっとだった。
結果は5着。デビュー以来初黒星を喫した。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
新潟記念
ダービー後は休養を挟んで新潟記念(新潟芝2000m)から始動。秋の大一番に向け、古馬との初対戦でどんなレースができるか注目された。

道中は後方待機策で気分よく追走。直線に入ると池添騎手は進路を大外に持ち出して満を持してゴーサイン。まるで新潟名物の千直のように外ラチ沿いを疾走し、楽な手応えのまま一気に先頭まで突き抜けて快勝した。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ブラストワンピースが2つ目の重賞タイトルを手にして堂々クラシック最後の一冠・菊花賞へと向かった。
菊花賞
牡馬クラシック最後の一冠、菊花賞。

新潟記念での余裕のある勝ちっぷりから菊花賞では1番人気の支持を集める。2番人気には1勝馬ながらダービー4着など大崩れのない善戦ホース・エタリオウ。そして皐月賞馬エポカドーロと続いた。

スタートすると、中団馬群の後方外目につけてスローペースをなだめながら折り合いをつける。3,4コーナーで外に膨れながらも立て直して進出を開始。最後の直線では先に抜け出したエタリオウを追って外から伸びたが、前との差がなかなか詰まらず4番手でゴールした。
勝ったのは7番人気のダークホース、フィエールマン。ブラストワンピースはあと一歩クラシック制覇には届かず同世代との戦いを終えた。
グランプリで大仕事
有馬記念

年末のグランプリ有馬記念。この年牝馬三冠とジャパンカップ制覇を達成したアーモンドアイは不出走。ブラストワンピースは唯一の3歳馬として出走し、一つ上のダービー馬で前走天皇賞・秋を制した1番人気レイデオロや同菊花賞馬のキセキら一線級の古馬に挑む。

4枠8番から好スタートを決めると中団に控えて折り合いをつける。障害チャンピオンのオジュウチョウサンが武豊騎手を背に果敢に前に出る。それを制してキセキがハナに立ってペースを握ると、ブラストワンピースは道中6,7番手の外でこれを追走した。
軽快に逃げるキセキが単騎先頭のまま終盤に差し掛かると、ブラストワンピースは最終コーナー手前から早めに仕掛けて上がっていく。

最後の直線に入ると、逃げ粘るキセキとの差を一完歩ごとに詰めて並びかける。ついに先頭に躍り出ると、外からは1番人気レイデオロも猛追してくる。それでもブラストワンピースがクビ差凌いで1着でゴール。池添騎手が会心のガッツポーズを繰り出して喜びを爆発させた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
4歳時
春は不完全燃焼
グランプリホースとして迎えた4歳のシーズン。春は休み明けぶっつけでG1大阪杯から始動。1番人気に推されたブラストワンピースだったが、後方待機から直線で思うように伸びきれず6着。初めて掲示板外に沈んだ。
大阪杯のあとは宝塚記念には向かわず目黒記念から札幌記念へ。凱旋門賞挑戦プランから逆算したローテーションだった。
必勝を期して臨んだG2目黒記念(東京芝2500m)だったが、よもやの8着と大敗を喫してしまう。

札幌記念

立て直して予定通りG2札幌記念(札幌芝2000m)に出走。デビューからコンビを組んだ池添騎手から川田騎手に乗り替わり、凱旋門賞に向けて結果を出したいところ。
春の2連敗で人気を落として3番人気となったが、これを覆して復活の勝利。道中中団追走から直線では馬群の狭いところをこじ開け、古馬となってからの初勝利をもぎ取った。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
凱旋門賞

この年は3頭の日本馬が凱旋門賞に挑戦。スタミナ豊富な2頭の菊花賞馬フィエールマンとキセキ、そして復活を遂げたブラストワンピースがフランスへと渡った。
しかしパリロンシャンの重馬場に日本馬は3頭とも苦戦。最先着はキセキが12頭立ての7着。ブラストワンピース11着、フィエールマン12着と惨敗という結果になってしまった。
帰国後は年内を全休して疲労回復に努めた。
5歳時以降
AJCCで復帰
リフレッシュしたブラストワンピースは5歳のシーズン初戦としてアメリカジョッキークラブカップに出走。

ゲートが開くと、好スタートを決めて外枠から3,4,番手の好位をキープ。荒れた馬場に加え稍重の渋った馬場も手伝ってペースは超スローの展開。
中盤からレースが動く展開になるも、慌てず内ラチから2頭目の経済コースをキープしながら最後の直線へ。先に抜け出していたステイフーリッシュを追うブラストワンピース。馬場の荒れた内を通った2頭が後続を突き放し、最後はブラストワンピースがきっちり交わして先頭でゴールした。

ブラストワンピースにとってはこれで5つ目の重賞タイトル。3年連続の重賞制覇となった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
牝馬の時代へ
その後前年の雪辱を期して挑んだG1大阪杯だったが、同期の牝馬ラッキーライラックの7着に敗れる。次戦、宝塚記念ではその大阪杯で2着だったクロノジェネシスが圧勝し、ブラストワンピースは16着と大敗。アーモンドアイを筆頭に台頭してきた強い牝馬たちが時代を牽引し始めていた。

秋になっても、天皇賞・秋でアーモンドアイの7着と巻き返すことができないまま年末の有馬記念へ。2年ぶりのグランプリ出走だったが、レース中に心房細動を発症して3コーナーを過ぎたあたりで競争を中止。
勝ったクロノジェネシスは牝馬ながらグランプリ春秋連覇を成し遂げ、牝馬の時代を象徴する1年の締めくくりとなった。

久々の好走、そして引退
ブラストワンピースは6歳シーズンも現役を続行し復帰を目指した。そして6月にG3鳴尾記念で復帰すると、ここを3着と好走して復活を期待させるレースを見せてくれた。
続く札幌記念で3番人気の支持を集めたが、白毛のアイドルホース・ソダシとオークス馬ラヴズオンリーユーの牝馬2頭による決着。ブラストワンピースはこのレース5着となり、レース後に右前球節を痛めていることが判明。治療のため休養に入ったが翌年1月に引退が発表された。
引退後のセカンドキャリア
種牡馬入りならず
ブラストワンピースは3歳時の有馬記念を含め、重賞5勝、生涯獲得賞金は5億円を超える実績を残して引退。これだけの実績をもってすれば当然のごとく種牡馬入りするものと思われたが、関係者による協議の結果は、なんと乗馬。引退後の進路はノーザンホースパークで乗馬になると発表されたのだ。
有馬記念優勝馬が種牡馬入りできなかった前例は、無事に引退することができなかった悲劇の名馬テンポイントまで遡るほど異例ということで、当時は大きな話題というか波紋を呼ぶ発表であった。
RRC引退競走馬大会にて
ブラストワンピースは乗馬転身後、思いのほか早く表舞台にその姿を見せることになる。馬術競技馬としてのリトレーニングを積んでRRC引退競走馬の大会にエントリー。見事に北海道地区の予選を勝ち抜いて全国大会にお目見えしたのである。
RRCとは
RRC引退競走馬について、全国乗馬倶楽部振興協会の公式HPより以下引用して紹介する。
RRC』とは、Retired Racehorse Cupの略であり、引退競走馬杯と名付けた競技です。当協会では、引退競走馬が乗馬・馬術への入り口としての活躍の場とセカンドキャリアの形成、人材育成のためのリトレーニング技術の向上のほか、乗馬・馬術ファンの拡大を図ることを目的として、『RRC』を2018年度より開催しています。競走馬登録されていたサラブレッドが引退し、リトレーニング後に乗用馬として用途変更した際、条件を満たしている場合に出場できる馬術競技です。引用元:全国乗馬倶楽部振興協会
競走馬時代とはまったく違う能力が要求されるはずの馬術競技でも抜群のセンスを発揮してファンを喜ばせる活躍を見せるブラストワンピース。さすがはグランプリホースという勝負強さの成せる業だろうか。

そして引退後も新たなファン層を獲得した人気者はウマ娘にも登場。同じシルクレーシングの勝負服をモチーフにした衣装を身にまとう絶対的アイドル・アーモンドアイとともに育成ウマ娘として益々の活躍が期待される一人となっている。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、ブラストワンピース。
史実のブラストワンピース
| 基本情報 | 2015年4月2日 牡馬 鹿毛 |
|---|---|
| 血統 | 父ハービンジャー 母ツルマルワンピース(父キングカメハメハ) |
| 馬主 | シルクレーシング |
| 調教師 | 大竹正博(美浦) |
| 生産牧場 | ノーザンファーム(北海道安平町) |
| 通算成績 | 18戦7勝(国内17戦7勝、海外1戦0勝) |
| 主な勝ち鞍 | 18'有馬記念 |
エピソード①ブラストワンピース第二の馬生
乗馬としてリトレーニングされたブラストワンピースは前述の通り引退競走馬による馬術競技の大会にもエントリー。

2023年、2024年にはRRC(Retired Racehorse Cup・引退競走馬杯)に出場して北海道予選を突破。JRA馬事公苑で行われた全国大会へ駒を進めて注目を集めた。
JRAによる引退競走馬の紹介ページにはブラストワンピースのプロフィールも載っている。
また、Youtubeなどで検索すると様々な動画でブラストワンピースの活躍を見ることができるだろう。
エピソード②名馬たちのセカンドキャリア
引退後のセカンドキャリアとして馬術競技に参加している引退競走馬の中には、ブラストワンピースのように現役時代にG1や重賞で活躍したような著名な馬も多い。
つい先日ノーザンホースパークで行われた大会では、香港の英雄ゴールデンシックスティや芦毛の人気者シルヴァーソニックといった競馬ファンなら誰もが知るような名馬も参加。様々な理由で種牡馬入りできなかった名馬たちが、こうして乗馬、馬術ファンの拡大および馬事振興に一役買っている。
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