競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第51回。今回は黄金世代に現れた皇帝の血筋「ツルマルツヨシ」について熱く語ります。
黄金世代に出現した皇帝の血筋
体質に出世を阻まれた
先日メインストーリー最終章の後編が追加され、ついにスペちゃんたち黄金世代を主軸としたメインストーリー第一部が完結した。今回当コラムで取り上げるのは、その最終章前編から登場したツルマルツヨシ。体質が弱いのに反して元気いっぱいの前向きな性格で、重厚な物語においてツルちゃんの明るさは貴重な存在だ。
最終章とともに史実を追う
さらに、後編では主人公であるスペちゃんの物語に重要な変化をもたらすキーマン的な役割も担っている。今回はメインストーリー第一部の最終章・前後編のシーンも混じえつつツルマルツヨシの史実を追っていく。
※そのため本稿にはメインストーリーのネタバレも含むため、まだプレイしていないというトレーナーは先に最終章の前後編を堪能されることをオススメする。
玉座に集いし者たち
皇帝の血筋
ツルマルツヨシの父は皇帝シンボリルドルフ。新しく追加されて話題のグループサポートカード「玉座に集いし者たち」にトウカイテイオーと一緒に描かれているのはそのためだ。固有衣装も皇帝の血を継ぐ者に相応しく威厳を感じさせる中に、ツルマルツヨシらしいハツラツさもあって好評のようだ。
3歳時
デビューはクラシック真っ只中
体質の弱さからデビューは遅れ、すでに新馬戦も終了した3歳の5月。同世代の有力馬たちはクラシックの本番を戦っている最中だった。
そして1998年と言えば黄金世代である。2週間前にはセイウンスカイが皐月賞を勝ち、これからダービーでスペシャルウィークやキングヘイローと世代の頂点を決するという5月の初旬。ツルマルツヨシは藤田伸二騎手を背に、京都競馬場のダート1400m未勝利戦でスタートから先手を取り逃げ切って初勝利を挙げた。
体質の弱さ
デビュー戦で勝利を飾ったあとはレースのダメージが残ってしまい、続けて出走できないツルマルツヨシ。次に登場したのは、クラシック戦線の最終戦である菊花賞が行われるまさに当日の京都競馬場だった。
1勝クラスの芝1800m、菊花賞の行われるほんの数時間前に登場したツルマルツヨシは、初の芝レースで中団からまずまずの脚で追い込んで5着。久々という事も考えると芝での目処が立つ内容だったと言える。
2勝目
3戦目は、11月28日の中京競馬場。翌日の東京競馬場ではエルコンドルパサーが世界へ羽ばたく前にスペシャルウィークやエアグルーヴを圧倒したジャパンカップが行われるという日だった。
中京芝2000mの1勝クラス犬山特別。一戦一戦が勝負のツルマルツヨシが後方から豪快に追い込んで大事な2勝目をあげた。
4歳時
長期休養を経て
1月のレースを体調不良で取り消すと、約半年の長期休養を経て6月に復帰する。その頃、同世代のエルコンドルパサーは海を超えて海外競馬へ挑戦中、スペシャルウィークは古馬になって三連勝で天皇賞(春)を制していた。
復帰戦の三河特別(中京芝1800m)で3勝目を挙げると、夏競馬の小倉へ転戦して格上げ挑戦でG3北九州記念(芝1800m)へ出走。これが重賞初挑戦だったが中団から追い上げて3着と善戦。レース後の体調も安定していた。
充実の秋
間隔を開けて順調に夏を過ごしたツルマルツヨシの秋初戦は、G3朝日チャレンジカップ(阪神芝2000m)。中団から鋭く伸びたツルマルツヨシが、同じく黄金世代の名脇役メイショウオウドウやジョービッグバンらを下して勝利。二度目の重賞挑戦をものにした。
この勝利は、シンボリルドルフ産駒にとって久しぶりの重賞勝利となった。
ようやく追いついた
そして、ツルマルツヨシが同期の黄金世代たちにようやく追いついて同じ舞台に立つ日が訪れた。
10月10日の京都大賞典は、春の天皇賞馬スペシャルウィークの秋初戦であり、一つ年上のメジロブライトや年下の皐月賞馬テイエムオペラオーなど、これから秋のG1戦線へ向かう強豪たちが集まっていた。
ウマ娘の最終章ではこのレース前後に、スペちゃんが「日本一のウマ娘」を目指す意味を見失ってしまった様子が描かれる。
レースでは、先行策をとって前よりのポジションにつけたスペシャルウィークを有力各馬がマークし、ツルマルツヨシも直後の4番手あたりを追走。そして、最終コーナーから直線に入ると伸びあぐねるスペシャルウィークをしり目に、ツルマルツヨシが力強く抜け出し、メジロブライトやテイエムオペラオーの猛追を振り切って1着でゴールした。
スペシャルウィークはキャリア最低着順の7着と惨敗した。
レース後、勝ったツルマルツヨシが不甲斐ない負け方をしたスペちゃんに向かって痛烈な言葉を投げかけたシーンが印象的だ。
このシーンを見てようやく気づいた。そうか、目標を見失いかけたスペシャルウィークに喝を入れて目を覚まさせる役目は、これまで戦ってきたセイウンスカイやグラスワンダーではなく、ここで初めて対戦したツルマルツヨシこそが適任だ。
体質の弱さを克服して這い上がってきたツルちゃんは、スペちゃん復活の物語を加速させるために欠かせないピースだったということか。深い・・・。
天皇賞(秋)
並み居る強豪を破って重賞連勝を飾ったツルマルツヨシは、この秋に現れた新星としてG1天皇賞(秋)に臨む。
札幌記念を快勝してきたセイウンスカイが1番人気、ツルマルツヨシは2番人気の支持を集めた。そしてメジロブライト、スペシャルウィークと続く。
レースはセイウンスカイが枠入りを嫌がり発走時刻が大幅に遅れるアクシデントがあったが、そのセイウンスカイがスタートダッシュがつかず中団からという波乱含みの展開。ツルマルツヨシは中団10番手付近、スペシャルウィークはさらに後方の13,4番手といったところ。
直線に入ると、逃げたアンブラスモアが粘り込みを図るところへ差し・追い込み勢が襲いかかる。最後は大外を追い込んだスペシャルウィークが目の覚めるような末脚でまとめて差し切った。ツルマルツヨシは中団から伸びずに8着に終わった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
有馬記念
年末のグランプリ・有馬記念は、ジャパンカップも勝って完全に立ち直ったスペシャルウィークと、そのジャパンカップは回避したものの春のグランプリ宝塚記念でスペシャルウィークを一蹴した栗毛の怪物グラスワンダーの対決に注目が集まった。
ツルマルツヨシは天皇賞の敗戦でやや人気を落として6番人気。しかしながら、体質が弱くて続けてレースに使えなかった馬がついにこのグランプリレースにまでたどり着いた。果たして2強に割って入れるか。
ツルマルツヨシは6枠10番から好スタートを決めると、抑えて中団までポジションを下げて馬群の外目を追走。年末の中山の馬場は内のほうは芝が剥げて荒れていた。注目の2頭、グラスワンダーは後方集団の外、スペシャルウィークは最後方待機となっていた。
3コーナーから最終コーナーにかけて、グラスワンダーが進出を開始するとスペシャルウィークも大外を周って上がっていく。ツルマルツヨシもグラスワンダーの動きに合わせるようにゴーサインに反応し、そのまま先頭に並びかける勢いで最後の直線へ。
直線に入ると、馬場の真ん中を突いたツルマルツヨシが先に抜け出す。外から追うグラスワンダーを突き放し勝利は目前に思えたが、中山の急坂を登り切ったあたりでもはや余力はなかった。大外を怒涛のごとくスペシャルウィークが追い込んでくると、グラスワンダーも馬体を併せてもうひと伸び。さらにはテイエムオペラオーも加わり一気に大勢が変わった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
写真判定にもつれ込んだ激戦を制していたのはグラスワンダー。確信のガッツポーズとウィニングランを見せていたスペシャルウィークはわずかに及ばず2着、クビ差でテイエムオペラオーと続き、ツルマルツヨシはそこから半馬身差の4着に入った。
完結
この有馬記念史上に残る激闘の様子が、渾身のクオリティで描かれている今回の最終章後編。ウマ娘のアニメ第一期から続いてきた黄金世代の物語だが、完結に至って改めてその完成度に唸らされた。
6歳時
長期休養を経て引退へ
スペシャルウィークが引退し、黄金世代の主役たちに代わってテイエムオペラオーが覇権を握る2000年。有馬記念ではあわやという場面を作ったツルマルツヨシは現役を続行したが、脚元に異常(骨瘤)をきたして長期休養に入る。
そして6歳の秋、1年前にスペシャルウィークに喝を入れた京都大賞典で復帰して6着のあと、2年連続で有馬記念に出走。しかしながら最後の直線で脚を痛めて競争を中止しそのまま引退となった。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、ツルマルツヨシ。
史実のツルマルツヨシ
基本情報 | 1995年4月6日生 牡 黒鹿毛 |
---|---|
血統 | 父 シンボリルドルフ 母 スィートシエロ(父Conquistador Cielo) |
馬主 | 鶴田任男 |
調教師 | 二分久男(栗東) |
生産牧場 | シンボリ牧場(北海道沙流郡) |
通算成績 | 11戦5勝 |
主な勝ち鞍 | 99'京都大賞典(G2),朝日チャレンジカップ(G3) |
生涯獲得賞金 | 1億7428万円 |
エピソード① ツルマルツヨシの会
ツルマルツヨシは引退後は京都競馬場で誘導馬に転向。2007年まで活躍しファンに愛された。
その後は「引退名馬けい養展示事業」の助成を受けて乗馬クラブで余生を過ごし、2012年からは元担当厩務員や競馬ライターの花岡貴子さんら有志によって「ツルマルツヨシの会」が設立されて支援を続けており、ツルマルツヨシは今も元気に過ごしている。
エピソード② 皇帝ルドルフの孝行息子
皇帝シンボリルドルフにとって、最後の重賞勝ち馬がツルマルツヨシである。意外なことに、種牡馬シンボリルドルフの産駒でJRAの重賞を勝ったのはトウカイテイオー、アイルトンシンボリ、キョウワホウセキ、そしてツルマルツヨシの4頭しかいない。その最後の一頭がツルマルツヨシなのだ。
テイオーは初年度産駒、他の2頭が2世代目の産駒だったことから、種牡馬としても超一流の活躍が期待されたシンボリルドルフだったが、その後は目立った活躍馬はしばらく現れず。そんな皇帝にとって、8世代目から現れたツルマルツヨシは久しぶりに重賞勝ちをプレゼントした孝行息子だった。
今週の一枚
有馬記念の最終コーナー。先頭に立つツルマルツヨシに、テイエムオペラオー、グラスワンダー、そして大外からオーラを放ってスペシャルウィークが襲いかかる。
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