競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第118回。今回はメインストーリー第2部 後編「種を貴方に、希望は巡る」公開と第2部完結を記念して、物語のキーとなるウマ娘、フサイチパンドラについて熱く語ります。
メインストーリー第2部後編、公開!
チームアスケラの物語が完結

ウマ娘プリティーダービーのメインストーリー第2部 後編「種を貴方に、希望は巡る」が公開され、ついに「チームアスケラ」編が完結を迎えた。
今回は、チームアスケラの新メンバーであり物語を締めくくるうえで重要な役割を担うウマ娘、フサイチパンドラの史実を追っていく。
チームアスケラについて

まず、メインストーリー第2部について軽くおさらいしておこう。メインヒロインのラインクラフトと、親友であり良きライバルのシーザリオが所属するのがチームアスケラ。
そして彼女たちのお姉さん的な存在でトレーナーの相談役でもあるキングヘイローを含め、史実ではいずれも福永祐一騎手が主戦を務めたことが共通点として知られている。
フサイチパンドラは第2部中編の終盤、ラインクラフトのレースを観戦する場面で初登場し、その関係性が注目されていた。

ここからは、第2部後編のシーンを交えつつフサイチパンドラの史実を見ていくが、まだストーリーを見ていないというトレーナーはぜひ先に本編をお楽しみいただきたい。
ウマ娘のフサイチパンドラ
育ちのよさと持って生まれた才能。その自覚を隠そうともせずあっけらかんと天才を自称する天真爛漫なウマ娘といった印象のフサイチパンドラ。
第2部後編は、そんな彼女の挫折と成長の物語と言っていいだろう。

公式プロフィール

生まれた時から周りに『天才』と褒めそやされ、すくすく健やかに、身も心も自信も成長したラブリーウマ娘。入学後もその自信と素質が陰ることなく、のびのびと過ごしているが……ちょっぴり自分に甘すぎるのかもしれない。嫌いなものは反省会。
幼少期~デビューまで
血統
フサイチパンドラは大種牡馬サンデーサイレンスの最終世代の一頭。母ロッタレース(父Nureyev)の母系を辿れば世界各国の活躍馬が多数名を連ねる名牝系の出身。ウマ娘のフサイチパンドラが生まれたときから「天才」と囁かれるのも納得がいく良血なのである。

2歳時
メイクデビュー
デビューは11月の京都競馬場、芝1800m新馬戦。期待の良血馬としてデビュー前から注目されていたフサイチパンドラは断然の1番人気を集めた。
コンビを組むのは角田晃一騎手。ノースフライトやフジキセキ、ジャングルポケットなど数々の名馬の背中を知るジョッキーだ。

フサイチパンドラはこのデビュー戦を先行策から楽々と抜け出して快勝。2着に6馬身差をつける圧巻の走りでデビュー戦を勝利で飾り、噂に違わぬ素質の高さを見せつけた。
阪神ジュベナイルフィリーズ
続いてフサイチパンドラが挑むのはG1阪神ジュベナイルフィリーズ。キャリアわずか1戦で2歳牝馬の頂点を狙う。ファンもフサイチパンドラの素質と新馬戦の内容を高く評価して2番人気の支持を集めた。

外枠8枠16番からスタートしたフサイチパンドラは、新馬戦とは打って変わって後方からのレースを強いられる。最終コーナーでもまだ12,3番手という位置取りから末脚を伸ばしてよく追い込んだものの勝ち馬までは2馬身ほど離れた3着まで。キャリア2戦目での戴冠とはならなかった。
まさかの敗北
そして必勝を期して出走した自己条件の1勝クラス(阪神芝1600m)。単勝1.3倍という圧倒的な人気を背負ったがまさかの3着と勝ちきれず、2歳シーズンを終えた。
3歳時
桜花賞へ
年が明けて3歳のシーズンを迎えると、2月の京都競馬場で行われるエルフィンステークス(芝1600m)から始動。格上挑戦で2勝目を目指したが4番手追走から最後の直線で思うように伸びず6着に敗れた。
続いて中山の1勝クラス、きんせんか賞(芝1600m)に出走し、こんどは2番手から抜け出して快勝。ようやく待望の2勝目をあげた。

フラワーカップ
G3フラワーカップでは、4戦連続となる1番人気となったフサイチパンドラ。ここは賞金を上積みして桜花賞出走を確実なものにしたいところ。
スタートを決めて先行2番手につけたフサイチパンドラは、最終コーナーで早め先頭にたちそのまま押し切りを図ったが、最後の直線でキストゥヘヴンに差されて2着でゴール。重賞初制覇はならなかったが、桜花賞への出走を手繰り寄せた。

桜花賞
足踏みしながらも辿り着いた牝馬クラシック路線の一冠目・桜花賞。

もともと期待の高かったフサイチパンドラはここでも2番人気と上位人気をキープ。しかしながら、中団待機から見せ場をつくることもできずまさかの14着と惨敗を喫してしまった。

桜の女王はキストゥヘヴン。前走のフラワーカップから連勝で桜花賞を制した。
チームアスケラへ
福永祐一騎手に乗り替わり
牝馬クラシック二冠目のオークスは、デビューからコンビを組んだ角田晃一騎手から福永祐一騎手へ乗り替わりで挑むことが決まった。

ここが、ウマ娘のメインストーリー第2部後編の序盤のシーンに繋がるところ。フサイチパンドラがチームアスケラへ移籍する場面の由来である。つまり、元の所属チーム(角田晃一騎手チーム)からアスケラ(福永祐一騎手チーム)へ、というわけだ。


カワカミプリンセス登場
オークス

そして迎えたオークス。桜花賞組に加えて、別路線から駒を進めてきたカワカミプリンセスにも注目が集まっていた。

桜花賞上位のアドマイヤキッス、キストゥヘヴンが人気を分け合い、3番人気にここまで3戦無敗のカワカミプリンセス。桜花賞大敗のフサイチパンドラはさすがに5番人気まで人気を落としていた。

ゲートが開いてスタートすると、人気薄ヤマニンファビュルの果敢な大逃げで縦長の展開に。フサイチパンドラ、カワカミプリンセスともに中団で脚をためる。

ハイペースで飛ばした逃げ馬との差が一気に縮まり、最後の直線へ。2番手を追走していたアサヒライジングが先頭に立つと後続を振り切ろうと懸命に粘る。

そこへフサイチパンドラとカワカミプリンセスの二頭が襲いかかると、内のカワカミプリンセスが力強く前に出た。

フサイチパンドラも食らいつくがその差は縮まらず、カワカミプリンセスが先頭でゴールを駆け抜けた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
カワカミプリンセスはこれで4戦4勝。無敗のまま樫の女王の座に就いて世代の頂点に立ってみせた。
この世代最強のライバルとしてフサイチパンドラの前に立ちはだかるカワカミプリンセスがキングヘイロー産駒というところが、ウマ娘のメインストーリー第2部後編の物語をより一層面白くしているのは間違いないだろう。

秋華賞へ向けて
オークスのあとは夏休みを挟んでリフレッシュ。秋は秋華賞へのステップとしてトライアルのG2ローズステークスから始動しアドマイヤキッスの3着となった。
秋華賞
カワカミプリンセスふたたび

牝馬三冠のラストを飾る秋華賞。1番人気は桜花賞2着、オークス4着から逆転を狙うアドマイヤキッス。オークスからぶっつけで臨むカワカミプリンセスが2番人気。そして桜花賞馬キストゥヘヴン、フサイチパンドラと続いた。
スタートすると、フサイチパンドラは中団で折り合いをつける。直後にカワカミプリンセス、キストゥヘヴン、アドマイヤキッスと人気馬はいずれも中団から。

3,4コーナーに差し掛かると、先に仕掛けたのはカワカミプリンセス。徐々に順位を上げていくと、先行する前の3頭を射程に入れて最後の直線へ。
そして一気に先頭に躍り出たカワカミプリンセスが後続の追撃を寄せ付けずそのまま先頭でゴール。見事に無敗のまま二冠を達成した。

フサイチパンドラも懸命に脚を伸ばしたがアサヒライジングを捉えられず3着までだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
エリザベス女王杯
意外な結末

牝馬三冠路線の戦いが終わり、次なる舞台はエリザベス女王杯。牝馬二冠のカワカミプリンセスも出走し、世代を超えて牝馬の頂点を狙う。

対する古馬勢からは、連覇を狙うスイープトウショウがカワカミプリンセスと人気を分け合い二頭の一騎打ちムードとなっていた。

オークス、秋華賞ではカワカミプリンセスに完敗だったフサイチパンドラも悲願のG1制覇を狙う。

運命のゲートが開いて各馬一斉にスタート。フサイチパンドラは8番手あたりの中団につけ、直後にカワカミプリンセス、それをマークするように後方からスイープトウショウと続いた。

縦長の馬群のまま終盤に差し掛かると、中団から有力各馬も動いて徐々に上がっていく。
最後の直線に差し掛かると、フサイチパンドラは馬場の外目をついて抜け出しを図る。一気に突き抜けそうな手応えで先頭に並びかける。

外からはスイープトウショウも凄い脚で迫ってきたが、内へ進路を取ったピンクの勝負服、カワカミプリンセスがまとめて交わして先頭へ。
そのままカワカミプリンセスが1位入線、続いてフサイチパンドラ、スイープトウショウとゴールした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ところが掲示板には審議のランプが点灯し、結果はカワカミプリンセスが最後の直線で斜行して他馬の進路を妨害したとしてまさかの降着に。G1レースでの1位入線馬の降着は91年の天皇賞・秋のメジロマックイーン以来、15年ぶり2回目というレアな事象であった。
繰り上がりでフサイチパンドラが1着となり、G1初制覇ということになった。

ウマ娘のメインストーリーでは異なる展開で描かれていることもあり、史実を知らなかったトレーナーにとっては驚くところかも知れない。

4歳時
メインストーリーのその後
ウマ娘のメインストーリー第2部は、フサイチパンドラがエリザベス女王杯を勝つところでエンディングへと向かっていく。
史実のフサイチパンドラはというと、翌年4歳のシーズンいっぱいまで現役を続行。地方交流重賞のエンプレス杯でダートに初挑戦して2着と惜敗して以降は、なかなか優勝争いにからめず勝ち星に恵まれない時期を過ごす。
夏競馬の風物詩、札幌記念で復活の勝利をあげて嬉しい重賞2勝目をマークすると、秋にはエリザベス女王杯でダイワスカーレットの2着と惜しくも連覇は成らずも意地を見せた。
引退レースになるはずだった有馬記念は無念の出走取消でそのまま繁殖入りとなった。
繋ぐ、ということ
最後に、完結を迎えたメインストーリー第2部を今一度振り返ってみる。前編・中編・後編を通じて描かれたのは「繋ぐ」ということの尊さ。シーザリオは次の世代の育成に自身の使命を見出し、ラインクラフトはチームアスケラの後輩ウマ娘であるフサイチパンドラに未来を託し、繋いだ。

第2部は完結したが、どうやらチームアスケラの物語にはまだまだ先がありそうだ。

ラインクラフト、シーザリオ、エアメサイア、デアリングハートという同世代ウマ娘たちから始まった物語は、それぞれが繋いだ次の世代、そのまた次の世代へと、想像以上の広がりを見せてこれからも続いていくことだろう。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、フサイチパンドラ。
史実のフサイチパンドラ
基本情報 | 2003年2月27日 牝 栗毛 |
---|---|
血統 | 父サンデーサイレンス 母ロッタレース(父Nureyev) |
馬主 | 関口房朗 |
調教師 | 白井寿昭(栗東) |
生産牧場 | ノーザンファーム(北海道早来町) |
通算成績 | 21戦4勝 |
主な勝ち鞍 | 06'エリザベス女王杯 |
エピソード①9冠馬の母に
現役時代にG1を勝ったことはもちろん立派な成績だが、フサイチパンドラの最大の功績は繁殖牝馬になってから。9冠馬アーモンドアイの母となったことだろう。

ウマ娘でもすでに圧倒的な存在感を放っているアーモンドアイが、今後のストーリーや育成ウマ娘として本格的に描かれるのが実に楽しみである。

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