【ウマ娘】第100回:祝3.5周年！最強の貴婦人、ジェンティルドンナの物語

剛毅な貴婦人

牝馬最強から現役最強へ

今回は、ウマ娘プリティーダービーの3.5周年に合わせて実装されたジェンティルドンナを取り上げる。

三冠馬オルフェーヴルにすら臆することなく堂々と渡り合う剛毅な貴婦人が刻んだ、牝馬最強から現役最強への歩みとは。

3.5周年を飾るにふさわしい最強の貴婦人、ジェンティルドンナの史実を追っていく。

幼少期

血統

ジェンティルドンナの母ドナブリーニ(父Bertolini)は現役時代にイギリスのスプリントG1を勝ったスピード馬。繁殖牝馬としてノーザンファームが購入して日本に輸入されると、種牡馬入りしたばかりのディープインパクトと交配された。

初年度から多くの活躍馬を輩出したディープインパクト産駒のうちの一頭、ドナブリーニの初仔はのちにドナウブルーと名付けられてマイル路線で活躍することになる。そして、ドナブリーニは2年続けてディープインパクトとの間に牝馬を産んだ。

2歳時

馬名の由来

2歳になったドナブリーニの次女は、イタリア語で『貴婦人』を意味するジェンティルドンナと名付けられた。

牧場時代から元気いっぱいに駆け回っていたやんちゃな牝馬は、その名にふさわしく心身ともに成長していく。2歳秋に姉のドナウブルーと同じく栗東の石坂正厩舎に入厩すると、すぐに素質の片鱗を見せ、師に「いつでも勝てる」と思わせるほどであった。

メイクデビュー

11月の京都競馬場、芝1600mの2歳新馬戦でデビューを迎えたジェンティルドンナ。前評判どおりに1番人気の支持を集めたが、あいにくの不良馬場の中で後方からよく追い上げたものの逃げ馬をとらえることができずデビュー戦は2着に終わった。

そして続く阪神の未勝利戦(芝1600m)では断然の1番人気に応えて危なげなく快勝。初勝利を挙げて翌年の牝馬クラシックに向けて歩み始めた。

3歳時

シンザン記念へ

初勝利のあとは年明けの牡馬混合G3シンザン記念(京都芝1600m)を選択。朝日杯フューチュリティステークス4着のトウケイヘイローに次ぐ2番人気に支持されると、好位から抜け出して1着でゴール。牡馬勢を相手に重賞初勝利を挙げた。

このとき4着に退けたトウケイヘイローはのちに札幌記念など重賞4勝をあげ、G1香港カップでも2着するなど一線級で活躍する。

桜花賞へ向けて

春のクラシックを前に賞金加算に成功したジェンティルドンナ陣営は、前哨戦として桜花賞トライアルのチューリップ賞を選択。鞍上には岩田康誠騎手を迎え、これがのちに数々の名勝負を演じる名コンビの誕生となる。

本番に向けて本命候補も登場。名牝ブエナビスタの妹で2歳女王のジョワドヴィーヴルとの初対戦が注目を集めた。父はともにディープインパクト。

しかし勝ったのはどちらでもなく4番人気のハナズゴール。ジェンティルドンナはチューリップ賞の前に熱発の影響でやや調整に遅れが生じていたうえに、レースではスムーズさを欠く場面も響いて4着まで。ジョワドヴィーヴルは僅差の3着であった。

桜花賞

ヴィルシーナ登場

牝馬三冠の一冠目、桜花賞。ジョワドヴィーヴルが引き続き1番人気、ジェンティルドンナが2番人気で続く。トライアルでは共に敗れたものの、かたや2歳女王、かたや牡馬相手に重賞を勝った実績はここでも実力上位と見込まれていた。

3番人気は阪神ジュベナイルフィリーズ2着のアイムユアーズ、そしてここまで4戦3勝のヴィルシーナは4番人気。前走でG3クイーンカップ勝ちの同馬もディープインパクトを父に持つ良血馬である。

5枠10番からスタートしたジェンティルドンナは、先行争いを見ながら中団に待機して脚をためる。外から出していったヴィルシーナは4番手の好位から、スタートで出遅れたジョワドヴィーヴルは最後方付近の位置取りから末脚勝負にかける。

勝負どころに差し掛かると、馬群が横に広がって最後の直線へ。どの馬が抜け出すかというところでまずは内からアイムユアーズが抜け出しを図り、さらに内からヴィルシーナ、馬場の中央を通ってジェンティルドンナも差を詰める。

内のヴィルシーナが前に出たところを最後は外からジェンティルドンナが差し切ってゴール。まずは一冠目、桜の女王の座を射止めた。

レース映像

引用元：JRA公式チャンネル

半馬身差の2着にヴィルシーナ、ジョワドヴィーヴルは追い込んだものの6着まで。しかも後日骨折が判明して長期離脱を余儀なくされた。

オークス

二冠達成

桜花賞馬ジェンティルドンナにとって二冠目のオークスは未知の距離との戦いとなる。ここまですべて1600mのレースに使われてきたジェンティルドンナにとって、2400mのオークスでは一気に800mの距離延長。さらに血統背景的にも短距離で活躍した母を持つジェンティルドンナには距離不安説が囁かれていた。

騎乗停止中の岩田騎手から初コンビの川田騎手に乗り替わりとなっていた点も、気難しさを併せ持つ貴婦人にとってマイナスになり得るとみられた。これらの不安要素が重なった結果、桜花賞馬は3番人気である。

逆に桜花賞2着から逆転の目があると見られたのがヴィルシーナ。デビューから1800m、2000mと長めの距離を経験してきた強みがあった。そしてトライアルを強い勝ち方で制して駒を進めてきた新興勢力のミッドサマーフェア(父タニノギムレット)も人気を集め混戦模様となっていた。

のちにディープインパクトの最高傑作とすら言われるこの貴婦人にとって、距離不安など杞憂に終わる。蓋を開けてみれば2着のヴィルシーナに5馬身もの差をつける圧勝劇でジェンティルドンナがいともあっさりと二冠を達成してみせたのだ。

レース映像

引用元：JRA公式チャンネル

ジェンティルドンナが記録した勝ちタイムは従来の記録を1秒7も上回るレースレコード。同世代の牝馬では敵わないと思わせるほど圧倒的な強さを見せつけたのだった。

秋華賞へ向けて

夏場は休養して英気を養い、秋はローズステークスから秋華賞で牝馬三冠を目指すプラン。秋初戦のローズステークスではまたしてもヴィルシーナとの対戦となったが、同世代の牝馬No.2からの挑戦を危なげなく退けて三冠達成に向けて盤石の態勢であることを強く印象付けた。

秋華賞

激闘の末に

いよいよ三冠のかかる秋華賞。勢力図に大きな変化はなく、偉業達成に期待がかかる。ジェンティルドンナの単勝オッズは1.3倍。桜花賞、オークスは1番人気ですらなかったので、三冠目にしてようやく断然の1番人気に支持された。

返し馬でジョッキーが落馬するアクシデントもありながらも、無事にゲートインを迎える。ゲートが開くと、内からヴィルシーナが積極的に位置を取りに行く。7枠14番のジェンティルドンナも無難にスタートを決めて中団あたりにつける。

レースはスローペースで淡々と進むかに思われたが、業を煮やした小牧太騎手とチェリーメドゥーサが向正面で仕掛けて後方から一気に先頭まで進出してそのまま大逃げの構え。勝負どころで2番手以降の集団も仕掛けてレースは終盤に差し掛かり、ジェンティルドンナはというと岩田騎手が大きなアクションで進出を促すが反応は今ひとつに見える。

15番人気の伏兵チェリーメドゥーサ先頭で最後の直線に入ると、まだスタンドがどよめくほどの大きなリードを保っている。京都内回りの2000mは直線が短い。残り300メートル。200メートル。とても届かないと思われる位置取りから、エンジンが掛かった人気二頭が猛然と追い上げる。

ヴィルシーナとジェンティルドンナが馬体を併せて直線の攻防。最後に脚が上がったチェリーメドゥーサを一気に抜き去ると、互いに一歩も譲らぬままゴールになだれ込んだ。

レース映像

引用元：JRA公式チャンネル

激しい叩き合いの末、決勝線ではジェンティルドンナの鼻面がわずかに出ていた。驚異的な勝負強さを発揮してハナ差先着したジェンティルドンナが見事三冠を達成。

一方、またしてもジェンティルドンナに敵わなかったヴィルシーナにとってはとてつもなく大きなハナ差だった。

父子三冠達成

史上初の快挙

牝馬三冠はメジロラモーヌ、スティルインラブ、アパパネに続いて史上4頭目。父ディープインパクトとの父子三冠達成は史上初の快挙となった。

ジャパンカップへ

三冠馬となったジェンティルドンナは次なる戦いに照準を合わせる。次走はエリザベス女王杯でなくジャパンカップへ出走することが発表され、前年のクラシック三冠馬オルフェーヴルとの三冠馬対決が大きな注目を集めることとなった。

加えて、同年の凱旋門賞でオルフェーヴルを退けた牝馬のソレミアも出走を表明。エイシンフラッシュやトーセンジョーダン、ルーラーシップなど国内組の層も厚く、史上稀に見る好メンバーが府中に集結する見込みとなった。

ジャパンカップ

三冠馬対決

立ちはだかるのは国内現役最強を誇る前年のクラシック三冠馬オルフェーヴル。凱旋門賞制覇まであと一歩というところから先着を許した相手ソレミアへの雪辱を期す一戦でもある。

人気は1番人気オルフェーヴル、2番人気は香港G1勝ち馬のルーラーシップ、そして当年の三冠牝馬ジェンティルドンナと続いた。

ともに8枠に入ったジェンティルドンナとオルフェーヴル。スタートすると、ジェンティルドンナは前へ。オルフェーヴルは中団に控えて折り合いをつけた。春の天皇賞で波乱を演出したビートブラックが軽快に逃げる展開の中、道中3番手のインを進むジェンティルドンナ。ビートブラックが徐々に後続を引き離しつつ最後の直線へ差し掛かる。

大きなリードで逃げ込みを図るビートブラック目掛けて各馬が仕掛ける。道中後方に構えていたオルフェーヴルはいつの間にか外から馬なりのまま2番手に並びかける。トーセンジョーダンを挟んで内にジェンティルドンナ。

二頭がトーセンジョーダンを置き去りにすると、失速したビートブラックとの差が一気に詰まる。すると、内にいたジェンティルドンナの進路が狭くなり、オルフェーヴルを外に押しのけるように馬体をぶつけながらパワフルに進路を切り開きビートブラックを交わす。

ジェンティルドンナがわずかに前に出ると、そこからは二頭のマッチレース。オルフェーヴルとの壮絶な叩き合いの末、最後まで抜かせない勝負根性を見せたジェンティルドンナがハナ差を死守してゴール。

レース映像

引用元：JRA公式チャンネル

ゴール板には審議のランプが灯り、ジェンティルドンナがオルフェーヴルを弾き飛ばしたシーンが審議の対象となった。長い審議の末、岩田騎手に2日間の騎乗停止処分が下されたが着順に変更はなく確定した。

審議結果の是非はともかく、自身の進路を切り開くためにオルフェーヴルに噛みつかんかというほどのジェンティルドンナの闘志と、牡馬を弾き飛ばしてしまうパワーには感嘆せざるを得なかった。

記録的な勝利

こうして壮絶な三冠馬対決を制したジェンティルドンナが3歳牝馬として史上初めてジャパンカップを制覇。牝馬三冠を達成した馬が牡馬混合のG1を勝ったのもこれが初めてで、思えばここからがジェンティルドンナの真骨頂の幕開けだったというジャパンカップであった。

牝馬三冠に加えて最強馬を倒してのジャパンカップ制覇が認められ、この年の年度代表馬に選出された。これまた3歳牝馬としては初の受賞であり、ディープインパクトとの父娘年度代表馬というのも史上初(牡馬を含めると3組目)であった。

4歳時

王道を歩む

古馬となったジェンティルドンナは、年度代表馬にふさわしい王道を歩んでいく。4歳のローテーションは、春はドバイシーマクラシックと宝塚記念の2戦。その結果次第で凱旋門賞挑戦というプラン。

ドバイシーマクラシック

まずは初の海外遠征となるドバイシーマクラシックだったが、惜しくも2着に敗れる。初めての海外輸送と慣れない環境でナーバスになっていたのか、普段の彼女からすると道中の走りには力みが見られ最後のひと伸びが足りなかった。

ゴールドシップ登場

国内に戻ったジェンティルドンナは、春の目標レース宝塚記念に向けて立て直す。同世代の牡馬クラシック二冠馬ゴールドシップとの初顔合わせが待っていた。

前年のゴールドシップは、皐月賞・菊花賞の二冠を制した勢いそのままに暮れのグランプリ有馬記念をも制覇。年度代表馬こそジェンティルドンナに譲ったが、同世代の最強牡馬であることに疑いの余地はない。

宝塚記念

春のグランプリは、ジェンティルドンナ、ゴールドシップに、春の天皇賞連覇のフェノーメノを加えた三強の構図。

ゲートが開くと、好スタートをきったジェンティルドンナが外から2番手まで進出。ゴールドシップも気合をつけてジェンティルドンナをマークするように4番手の好位をキープした。

快速逃げ馬のシルポートがハイペースの逃げでレースを引っ張る。大きく離れた2番手集団にはオルフェーヴル世代のダノンバラード、ジェンティルドンナ、そしてゴールドシップといった隊列。

シルポートの大逃げを追いかけて各馬が最終コーナーに差し掛かる。まだ手応えのよさそうなジェンティルドンナに対して、追い通しのゴールドシップだがこれはいつも通り。加速を開始したゴールドシップに食らいつくジェンティルドンナだったが反応に余裕は見られない。

オルフェーヴルを弾き飛ばしたジェンティルドンナのパワーのさらに上を行くのがゴールドシップ。ジェンティルドンナをねじ伏せてそのままダノンバラードを並ぶ間もなく抜き去るとゴールまで突き抜けた。

レース映像

引用元：JRA公式チャンネル

雨を含んだ力のいる馬場状態だったこともいくらか影響しただろうか。ゴールドシップの厳しいマークで消耗したジェンティルドンナは前にいたダノンバラードを交わすことができず3着に終わった。宝塚記念での敗戦をうけて凱旋門賞挑戦のプランは撤回され、秋は国内レースに専念することが決まった。

天皇賞(秋)

夏を休養にあてたジェンティルドンナは、秋の始動戦となる天皇賞(秋)へ直行。休み明けの一戦となるが、オルフェーヴルやゴールドシップが不在のレースとあってジェンティルドンナが1番人気の支持を集めた。シンザン記念以来の対決となるトウケイヘイローが重賞3連勝で駒を進めてきて人気を集め、東京コース得意のエイシンフラッシュも侮れない存在だ。

レースは、トウケイヘイローの逃げをかかり気味に追走したジェンティルドンナが、そのまま2番手から抜け出して勝利を掴むかと思われたが、脚が鈍ったところを直線で目の覚めるような末脚を繰り出したジャスタウェイにかわされ、最後は4馬身離されて2着でゴールした。

ジャパンカップ連覇へ

世界の名手に導かれ

前年のジャパンカップ以降、あと一歩のところで勝ちきれない競馬が続き、気づけば勝ち星から1年遠ざかっていた。

連覇のかかるジャパンカップ、ここで長らくパートナーを務めてきた岩田騎手から世界的名手のR.ムーア騎手に乗り替わりとなる。岩田騎手はこの秋から継続騎乗中のヴィルシーナとのコンビで臨んだ。

スタートすると、確たる逃げ馬が不在の中エイシンフラッシュが押し出されるように先頭に立ち、トーセンジョーダン、ヴィルシーナと続く。緩いペースに落ち着く中でうまく4番手で折り合いをつけたジェンティルドンナとムーア騎手。

迎えた最後の直線。ギリギリまで追い出しを我慢して残り400m過ぎたあたりで先頭に立つと、食い下がるトーセンジョーダンを競り落とし、追い込み勢から急襲するデニムアンドルビーが目前まで迫ったところがゴールだった。

レース映像

引用元：JRA公式チャンネル

先行勢と差し・追い込み勢がゴール前で交錯する大熱戦をものにしたジェンティルドンナが、ジャパンカップ史上初となる連覇を達成。本来の勝負強さを発揮して1年ぶりの勝利を挙げたジェンティルドンナは、前年同様に有馬記念には出走せずこれにて4歳のシーズンを締めくくった。

5歳時

ドバイシーマクラシック

5歳春のローテーションは、再びドバイシーマクラシックを目標に据えながら京都記念でひとたたき。ここはデビュー以来初めて掲示板を外す6着と不可解な敗戦を喫してしまうが、状態に問題はなく予定通りドバイの地へ。

休み明け、長距離輸送、初めての環境。前年の敗因として考えられる不安要素を解消して臨む二度目のドバイシーマクラシックは、陣営の思惑通りに結果に結びつく。

お退きなさい

絶体絶命の不利も何のその

イレ込む様子もなくレースに臨んだジェンティルドンナは、ジャパンカップでハナ差の接戦を演じたもう一頭の日本馬デニムアンドルビーが果敢に逃げる展開を中団で折り合い追走。途中外へ逸走する馬に接触されるなどヒヤッとする場面もあったものの、鞍上のムーア騎手に導かれて落ち着いてこれを克服。

驚くべきは、直線の攻防。馬群に突っ込む形で進路を探すジェンティルドンナだったが、行く先行く先で進路が狭くなる大ピンチ。一度はブレーキをかけて下げるような致命的な不利を受けながらも、不屈の闘志とパワーで立て直して再加速。最後は完全に抜け出して完勝してしまったのだ。

こんな競馬で勝てる牝馬など世界中探してもそうそうお目にかかれるものではないと、改めてこの馬の凄さを思い知らされたレースだった。

公式映像が見つからなかったのでリンクは控えるが、興味のある方は是非検索して視聴してみてほしい。

有終の美へ

天皇賞・秋

宝塚記念後は夏休みに入りじっくり立て直したジェンティルドンナは、現役生活を締めくくる最後の秋を迎える。

秋初戦の天皇賞は、戸崎騎手との初コンビで挑んだ。同年の皐月賞馬イスラボニータが1番人気、ジェンティルドンナは2番人気でスタートを迎える。

道中3番手から正攻法の競馬で進め、最後の直線でイスラボニータを競り落として勝利を手中に収めたかと思われたが、伏兵スピルバーグの強襲に屈して2着。父に並ぶ7つ目のG1タイトルはお預けとなった。

3連覇ならず

3連覇を狙ったジャパンカップでは、来日したムーア騎手の腕に託された。

この年、世界一位のレーティングを獲得したジャスタウェイや、3歳牝馬ハープスター、ひとつ下の菊花賞馬エピファネイアなど多彩な日本馬の顔ぶれとなったが、3連覇の期待がかかるジェンティルドンナが1番人気となった。

レースでは中団より前目に位置取り、いつもどおりのレース運びをしているように思われたが、直線の伸びが案外。先に抜け出したエピファネイアに引き離され、ジャスタウェイとスピルバーグに差されて4着に終わり、3連覇は成らなかった。

これまでも水分を含んだ馬場を苦手としてきたジェンティルドンナにとっては前日に降った雨がうらめしい結果となってしまった。

こんにちは、さようなら

有馬記念

ジャパンカップが引退の花道となるはずだったが、一転して有馬記念への参戦が決定。ファン投票2位の後押しも受けて、貴婦人が中山競馬場に初めて降臨。ラストランの鞍上は戸崎騎手が務めることとなった。

同期の牡馬2頭ゴールドシップとジャスタウェイ、勢いのあるエピファネイアが上位人気を集め、初の中山が未知数なジェンティルドンナは4番人気。

スタートすると、同じくこれが引退レースのヴィルシーナが果敢に先頭に立つ。エピファネイア、ジェンティルドンナがこれに続き、ゴールドシップとジャスタウェイは後方から。

一時は2番手のエピファネイアと大きく離れた3番手を追走し、縦長の隊列となるが、最終コーナーで一気に差が詰まって最後の直線へ。

先に抜け出したエピファネイアをジェンティルドンナがとらえにかかる。後ろからはジャスタウェイとゴールドシップ、そして3歳馬トゥザワールドも追いすがる。しかし、初めて駆ける中山の急坂を力強く伸びたジェンティルドンナの脚色は最後まで衰えることなく、後続を振り切って先頭でゴールした。

レース映像

引用元：JRA公式チャンネル

見事に自身のラストランを勝利で飾ったジェンティルドンナ。「なんという牝馬！」このひと言に尽きる劇的な勝利であった。中山競馬場のファンの前で初めてその走りを披露した貴婦人は「こんにちは、さようなら」と華麗にターフを去っていった。

最後に、当コラムも今回で節目の100回(番外編を入れるととうに超えていたが…)となり、これもひとえに飽きずに読んでいただいているトレーナーの皆さんのおかげです。感謝を申し上げるとともに、今後もウマ娘と競馬のどちらも末永く楽しめる環境が続きますように。

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、ジェンティルドンナ。

ありがとう、トレーナーさん。

史実のジェンティルドンナ

エピソード①母として

引退後は自身の生まれ育ったノーザンファームで繁殖牝馬として過ごし、3番仔のジェラルディーナ(父モーリス)が2022年のエリザベス女王杯を勝って母子G1制覇を成し遂げた。

現役時代に自身が出走しなかったエリザベス女王杯を娘が制してジェンティルドンナにまた一つ勲章が加わることとなった。母としてのジェンティルドンナはまだまだ続いており、今後も姉ジェラルディーナに続き貴婦人の血を引く仔が大舞台で活躍する姿を楽しみに待ちたい。

エピソード②ヴィルシーナ、トレーナーに弟子入り志願？

同世代のライバルとして牝馬三冠レースのすべてでジェンティルドンナの2着に入ったヴィルシーナ。ヴィルシーナの主戦騎手を務めたのは内田博幸騎手だったが、重賞初勝利となった3歳のクイーンカップおよび4歳秋の3連戦では岩田康誠騎手が手綱をとっており、岩田騎手はジェンティルドンナとヴィルシーナどちらの背中も知るジョッキーである。

ウマ娘でのジェンティルドンナの育成シナリオでは、トレーナーがヴィルシーナから指導を懇願される場面があるのはこのことが元になっていると思われる。

今週の一枚

新しく追加されたダイナミックカメラが面白い。まるで近年JRAでも一部で導入されて人気の高いジョッキーカメラのような映像が早くもウマ娘で見られるとは！

熱心なトレーナー諸君がXなどでシェアしてくれる「あのレースのあの馬の視点を再現してみた」みたいな動画を見るのも最近の楽しみの一つとなっている。