競馬好きのライターが送るウマ娘コラム、今回は番外編。チャンピオンズミーティングでも注目の緑スキルについて史実を交えて語ります。
コラム記事一覧はこちら実際の競馬で緑スキルはある?
注目される「緑スキル」
今回は、いつものコラムとはちょっと違った趣向の記事をお届けする。一人のウマ娘に焦点を当てて、その史実を紹介してきた当コラム。たまには息抜き的な話題もどうだろう?ということで番外編をお届けしたい。
「緑スキル」は特定のレース条件下で効力を発揮するスキル。ウマ娘においてスキルは重要な要素となっているが、緑スキルは特にチャンピオンズミーティングなどを勝ち抜くために重視されている注目のスキルである。
右回り○、XX競馬場◎、冬ウマ娘○などなど種類は多数ある。これらの緑スキルは、実際の競馬にも存在する概念なのか?そんな素朴な疑問について史実を交えながら考察してみる。
緑スキル持ちの競走馬は存在する
結論から言えば、これら緑スキルは実際の競走馬に当てはめることができるものが多い。右回り、左回りの得意不得意や、特定の競馬場が得意な馬もいれば、道悪が得意、夏が好き、などなど、これらは馬の適性や個性を見極める上でも大事な要素となっている。もちろん、予想をする上でも非常に重要なファクターである。
○=功者、◎=鬼
では、それぞれの緑スキルには、実際の史実で見るとどんな馬が当てはまるのか?それをウマ娘のモデル馬に当てはめてみよう、というのが今回の趣旨だ。
実際の競馬用語的には例えば、東京競馬場○=府中巧者、道悪◎=道悪の鬼。こんな具合に表現されることがある。
左回り○
サイレンススズカ
競走馬には、右利きと左利きがあると言われている。走る時にどちらかの前脚が先に着地するのだが、それを右手前とか左手前とか言う。両方が得意な馬もいれば、どちらかが苦手という馬もおり、それによって右回りのレースのほうがスムーズだったり左回りでしか力を発揮できないこともある。
幼少期から左回りに旋回する癖があったサイレンススズカも左利きと言われる馬の一頭だ。G1勝利は右回りの宝塚記念だが、むしろ伝説として語られるのは中京競馬場のG2金鯱賞と東京競馬場のG2毎日王冠、どちらも左回りのレースである。
東京競馬場◎
エアグルーヴ
東京競馬場での戦績は5戦3勝(2着2回)。オークスと天皇賞(秋)の2つのG1勝ちを含む3勝を東京競馬場で挙げている。ジャパンカップでも世界の強豪牡馬を相手に2年連続の2着と、得意の東京競馬場では男勝りの女傑ぶりを遺憾なく発揮した。
1997年 天皇賞(秋)
引用元:JRA公式チャンネル
また、G2札幌記念を連覇するなど札幌競馬場も4戦3勝と得意としていたため、札幌競馬場◎でもある。
ウオッカ
ウオッカほど競馬場の得手不得手が成績に反映されている馬にはなかなかお目にかかれない。なにせ、7つのG1勝利のうちの6勝を東京競馬場であげているのだ。その内訳はこうだ。日本ダービー、安田記念(2勝)、天皇賞(秋)、ヴィクトリアマイル、ジャパンカップ。なんと、古馬(4歳以上の馬)になって出られる東京競馬場の芝コースで行われるG1をすべて勝っている。東京競馬場で無類の強さを誇ったウオッカは、まさに府中の鬼であった。
個人的に印象に残っているレースは2009年の安田記念。直線半ばまで内に閉じ込められてしまい、思うように進路が取れないまま馬群に沈むかと思われたが、わずかな隙間を縫うように抜け出してきたレースぶりには驚かされた。
2007年 日本ダービー
引用元:JRA公式チャンネル
2009年 安田記念
引用元:JRA公式チャンネル
阪神競馬場◎
ゴールドシップ
阪神競馬場を得意としていた馬と言えば、ゴールドシップが有名だ。G1宝塚記念の連覇、G2阪神大賞典3連覇を含む6勝と大得意にしていた。阪神競馬場で唯一大敗したのは3連覇を目指した宝塚記念での大出遅れ。これも別の意味で伝説的なレースであるから、ゴルシと言えば阪神なのである。
2013年 宝塚記念
引用元:JRA公式チャンネル
2014年 宝塚記念
引用元:JRA公式チャンネル
2015年 宝塚記念
引用元:JRA公式チャンネル
道悪◎(道悪の鬼)
タイキシャトル
タイキシャトルは、生涯成績が13戦11勝(2着1回、3着1回)とほぼパーフェクト。この戦績で得意も不得意もないではないか。という意見もあるかも知れない。また、そのうち重馬場のレースはたった2回(国内1戦、海外1戦)しか走っていないのだが、強烈な印象を残したのが不良馬場で行われた安田記念なのだ。
降り続く大雨のなか、東京競馬場の芝コースは大きな水たまりのような不良馬場。前年のマイルチャンピオンシップとスプリンターズステークスを制して短距離王に君臨していたタイキシャトルは、この安田記念をステップにフランスに遠征するプランだった。この大事な壮行試合となる不良馬場の安田記念を、タイキシャトルは水しぶきをあげながら直線で力強く抜け出して圧勝。海外遠征に弾みをつける鮮烈な勝利だった。
1998年 安田記念
引用元:JRA公式チャンネル
その後フランスに遠征したタイキシャトルは、欧州のマイルレースで最高峰の1つであるジャック・ル・マロワ賞(G1)を重馬場の条件で勝利。こうして世界のマイル王となったタイキシャトルは紛れもなく道悪◎だった。
夏ウマ娘
ゲーム内で初期スキルに夏ウマ娘を所持する育成ウマ娘は今の所いないようだ。ヒントを取得できるサポートカードでも、フジキセキのみとかなりレアなスキルとなっている。実際の競馬では、夏が得意な馬や夏に力をつけて秋に飛躍する馬というのは結構多い。ウマ娘のモデル馬から2頭ピックアップしてみよう。
カレンチャン
カレンチャンの育成ストーリーでもイベントが発生するサマースプリントシリーズというものがある。実はカレンチャンは夏のレースでの勝利数が特別多いわけではないが、サマースプリントシリーズで重賞を連勝し、その勢いのまま秋のスプリンターズステークスを制したことで夏が得意という印象がある。ちなみにこの年のサマースプリントシリーズは2位となりチャンピオンは逃している。
イクノディクタス
大きな故障をすることなく51戦ものレースを戦い抜いた「鉄の女」イクノディクタスは、全9勝のうち8勝を5月〜9月の期間にあげており、「夏女」の異名も持つ。競馬には「夏は牝馬を狙え」という格言もあるが、人気の有無に関わらず暑い夏のレースで好成績を残したイクノディクタスはこれを体現していた夏大好き牝馬だった。
1993年 宝塚記念(2着)
引用元:JRA公式チャンネル
非根幹距離
グラスワンダー
ウマ娘における非根幹距離とは、400mの倍数ではない距離のレースという定義である。この定義に得意とか不得意とか無さそうなものだが、不思議なことにこれに該当するような馬はけっこういる。わかりやすい例としてはグラスワンダーが挙げられるだろうか。
グラスワンダーは有馬記念(2500m)と宝塚記念(2200m)という、どちらも非根幹距離で行われるグランプリレースで3勝を挙げている。さらに言えば、全9勝のうち根幹距離である400の倍数のレースは朝日杯(1600m)の1勝だけである。そもそもグラスワンダーはこの朝日杯と安田記念(2着)の2戦しか根幹距離のレースに出走していないため、根幹距離が不得意なわけでは決してないのだが、怪我や調子など色々な要因が重なって非根幹距離に偏っていたのだ。
1998年 有馬記念
引用元:JRA公式チャンネル
1999年 宝塚記念
引用元:JRA公式チャンネル
因みに1600でも2000でもなくピンポイントで1800mが得意という馬も割と多く、「1800mのG1があればあの馬もG1馬になれるのに」そんなことを言われることもある。200mの違いは大きいのだ。
今後も注目の緑スキル
このように実際の競走馬はそれぞれに個性、適性があり、それが史実として競走成績やエピソードに現れている。ウマ娘に登場する個性的なキャラクター達にも少なからず反映されており、育成ストーリーや目標レース、取得可能なスキルなど様々な要素でそれらの史実を垣間見ることができるのだ。
推しウマ娘には「史実に近づけるためにこのスキルを取得させたい!」といったこだわりの強いトレーナーもいることだろう。チャンピオンズミーティングで勝つためのストイックな育成に疲れてしまった時、たまにはそんな育成を試してみるのも面白いかもしれない。
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