第60回:華麗なる一族、ダイイチルビーの物語

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【ウマ娘】第60回:華麗なる一族、ダイイチルビーの物語

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【ウマ娘】第60回:華麗なる一族、ダイイチルビーの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第60回。今回は華麗なる一族「ダイイチルビー」について熱く語ります。

目次

華麗なる一族

その名に恥じぬ名牝

第60回:華麗なる一族、ダイイチルビーの物語の画像

一流の血統から期待通りの活躍馬が出ることは容易いことではない。少なくともこの時代はそうだった。だが華麗なる一族と呼ばれデビュー前から注目を浴びたダイイチルビーは、見事にその期待に応えて見せた一頭である。

タレント豊富な短距離路線で輝いた

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先日、ハーフアニバーサリーのタイミングでお披露目となったダイイチルビーがさっそくサポートカードとして登場してくれた。

そのハーフアニバーサリー時に当コラムで取り上げたダイタクヘリオスの回でも紹介したように、この時代の短距離・マイル路線にはタレント性豊かなライバル達がひしめき合っており、互いに凌ぎを削っていた。

その時代に華麗に輝いたダイイチルビーの史実を追っていく。

華麗なる一族とは

血統背景

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ダイイチルビーの母系を辿ると、生産者の荻伏牧場がかつて英国から導入した一頭の繁殖牝馬・マイリーから脈々と受け継がれて、母の母イットーの代で「華麗なる一族」と呼ばれるようになった名牝系の繋がりを見ることができる。

詩人で競馬解説者だった志摩 直人氏が同名小説「華麗なる一族/山崎豊子」になぞらえてそう表現したのが始まりと言われている。

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母ハギノトップレディは、並外れたスピードを武器に桜花賞やエリザベス女王杯を制し、その弟であるハギノカムイオーもまた宝塚記念などを制した。この血統をもっとも繁栄させた姉弟として知られる。

そのハギノトップレディと、天馬トウショウボーイとの間に産まれたのがダイイチルビーである。当時「夢の配合」と言われた一流馬同士の配合に加えて、1億円で取引されたことからも注目を浴びた。

デビュー前

脚元の不安と素質の片鱗

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のちにダイイチルビーを管理することになる伊藤雄二調教師は、仔馬時代のダイイチルビーを見た際に脚の爪に不安があることを懸念したが、動きの良さを認めて預かることを決めたという。

伊藤雄二調教師といえば、馬の成長を促すためにはデビューの遅れや長期休養も辞さないというスタイルでエアグルーヴやファインモーションなど数々の名馬を育てた。ダイイチルビーも爪の不安を見極めつつじっくりと育成された。

3歳時

メイクデビュー

デビューは3歳の春も近づく2月下旬。阪神競馬場の芝1600m新馬戦でベールを脱いだダイイチルビーは、デビュー戦から破格の単勝1.2倍という圧倒的な人気を背負った。

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スタートから先頭に立つと、武豊騎手を背に楽々と逃げ切って勝利を収めた。2着には5馬身差をつけており、噂に違わぬ素質を見せつけた。

連勝も桜花賞出走叶わず

初戦の勝ちっぷりから桜花賞でも好勝負になると予想して登録したトライアル(現フィリーズレビュー)は抽選で除外となり、1勝クラスのアネモネ賞(阪神芝1600m)に出走。

桜花賞と同じ舞台で連勝を決めたが、本番でも再び賞金順の抽選に漏れて桜花賞出走は叶わなかった。

忘れな草賞

桜花賞の抽選に漏れてしまったダイイチルビーは残念桜花賞とも呼ばれる忘れな草賞へ。2000mの距離がどうかと思われたが、母も父も中距離をこなした実績の持ち主。それよりもあいにくの重馬場の影響が大きかったか、逃げたトーワルビーを捕まえきれず2着に敗れた。

オークスへ向けて

優先出走権を得るためオークストライアルの4歳牝馬特別に出走。4番手追走から直線で抜け出して先頭に立ち勝利は目前というところで、伏兵キョウエイタップの追い込み強襲にあってクビ差の2着となった。

オークス

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ようやくクラシック出走の権利を掴んだダイイチルビーはオークスに出走。ここまで4戦すべて1番人気で2勝2着2回と安定した成績を残してきたダイイチルビーは、無敗の桜花賞馬アグネスフローラ(のちにアグネスタキオンの母になる)に次ぐ2番人気。初めてのG1の舞台でも期待を集めた。

スタートで出遅れたダイイチルビーは、直線でよく追い込んだが5着まで。豪快に追い込んだエイシンサニーがアグネスフローラの無敗二冠を阻止した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

同世代のイクノディクタスの名前も。直線半ばまで見せ場を作り9着だった。

3歳秋

オークス後は放牧に出され、秋はエリザベス女王杯を見据えてトライアルのG2ローズステークス(京都芝2000m)から始動。1番人気に支持されるものの先行策から伸びきれず、前を行くイクノディクタスらに離された5着に終わる。

休養

ローズステークス後には、フレグモーネ(感染症の一種)を発症したこともあってエリザベス女王杯を回避。ここで伊藤雄二調教師は復帰を焦らず翌年以降に備えるため、年内を休養させることとなった。

4歳時

マイル路線で復帰

充分な休養を経たダイイチルビーは、4歳の1月にマイル戦のオープン洛陽ステークス(京都芝1600m)で復帰。このレースから鞍上は河内洋騎手に乗り替わり、コンビは引退レースまで継続することとなる。

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スタートで出遅れて後方からの競馬となったが、直線で追い込んで2着。負けはしたものの3歳時のアネモネ賞以来となるマイル戦で適性を示した。

京都牝馬特別

そして1月末のG3京都牝馬特別(京都芝1600m)に出走。マイルチャンピオンシップ3着のサマンサトウショウ(スイープトウショウの祖母)や連勝中のメインキャスターらに次ぐ3番人気だった。

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今度は好スタートを決めて中団からレースを進めたダイイチルビーは、直線でインから抜け出してそのまま先頭でゴール。念願の重賞初制覇を飾り、その血統に相応しい輝きを取り戻した。

京王杯スプリングカップ

中山牝馬ステークスで牝馬限定重賞の連勝を狙ったがトップハンデを背負い、ユキノサンライズに逃げ切りを許して3着。続くG2京王杯スプリングカップでは初めて牡馬の一線級を交えて今後を占う大事な一戦を迎える。

前年のスプリンターズステークスで2つ目のG1を獲得し、かつてはオグリキャップとも死闘を演じてきた歴戦の雄バンブーメモリーや同世代の個性派ダイタクヘリオスなど強敵が揃った。

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スタートしてダイタクヘリオスら先行勢を見ながら好位4,5番手につけたダイイチルビーは、直線に入ると前走で捕まえられなかったユキノサンライズら逃げ・先行勢を今度はきっちり交わして先頭でゴール。

重賞2勝目を挙げ、マイル路線の本命候補に名乗りをあげた。後方から追い込んだ1番人気バンブーメモリーは4着までだった。

安田記念

追い込み一閃

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バンブーメモリーにダイタクヘリオスと、京王杯スプリングカップの再戦のようなメンバーとなった安田記念。ダイイチルビーにとってはオークス以来となるG1挑戦。

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前に行きたい馬が揃ったメンバーの中、普通のスタートから抑えて後方に待機するダイイチルビーと河内洋騎手。脚をためて直線の末脚にかける。

先行勢が競り合い、息の入らないハイペースのレース展開。直線に向くと、道中5,6番手の位置につけていたダイタクヘリオスが馬場の中央から抜け出す。そのまま後続を突き放そうかというところを、大外に持ち出したダイイチルビーの末脚が炸裂。追い込み自慢のバンブーメモリーをも凌ぐ抜群の切れ味でレースを制した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

快挙達成

自身のG1初制覇と同時に、JRAにグレード制が導入されてから初めて牝馬として安田記念を勝った。

一族伝統のレース

安田記念後は、高松宮杯に出走。2000mのG2高松宮杯は、マイルで開花したダイイチルビーにとってベストな条件ではなかったかも知れないが、目指すべき理由があった。

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夏の中京競馬場の名物レースとして定着していた高松宮杯は、母ハギノトップレディ、その弟で叔父にあたるハギノカムイオー、祖母イットーが優勝馬に名を連ねる一族ゆかりの重賞レースだった。ダイイチルビーには三代にわたる同一重賞制覇という偉業がかかっていた。ちなみに父トウショウボーイも勝っているという縁の深さだ。

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8頭立ての少頭数となったレースは、3歳時に重馬場の忘れな草賞を逃げきったトーワルビーが先頭で逃げ、2番手に安田記念2着から参戦のダイタクヘリオス、ダイイチルビーは3番手につけた。

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ハイペースで飛ばしたトーワルビーが脱落し、ダイタクヘリオスが粘り込みを図る。ダイイチルビーはギリギリの距離に加え荒れ気味の馬場で決め手を削がれたか、じりじりとダイタクヘリオスとの差を詰めて馬体が並んだところがゴールだった。

写真判定にもつれこんだ結果はハナ差でダイタクヘリオスが粘っており、惜しくも三代同一重賞制覇は成らなかった。

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ケイエスミラクル登場

秋はマイルチャンピオンシップとスプリンターズステークスのG1を目標に、G2スワンステークスから始動。

お馴染みのバンブーメモリーやダイタクヘリオスに加え、新星の3歳牡馬ケイエスミラクルが登場する。

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そしてそのケイエスミラクルが1番人気のダイイチルビーを差し切って重賞初制覇。通算成績8戦5勝として一躍秋のマイル路線の主役候補に躍り出た。

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ケイエスミラクルという馬

苦難を乗り越えた奇跡の先に

ウマ娘では青い眼の儚げな少女として登場したケイエスミラクル。史実ではどんな馬だったのか、ここで少し触れておく。

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ウマ娘でのキャラクター設定にも反映されているように、デビューまでに二度の競争生命にかかわる危機を乗り越えたとされる。

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デビューできることすら奇跡ということでケイエスミラクルと名付けられた本馬は、3歳の4月という遅いデビューから類まれなスピード能力を発揮して順調に階段を駆け上がり、秋には前述のスワンステークスで重賞のタイトルまで獲得した。

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競走馬としてこれからさらなる奇跡を見せる未来はすぐそこにあったが、残念ながらそれは叶うことなくターフに散った悲運の馬としてファンの心に刻まれることとなる。

それだけに、ウマ娘に登場したケイエスミラクルがこれからどんなifの物語を見せてくれるのか見届けたい。

マイルチャンピオンシップ

マイルチャンピオンシップは、春のマイル女王ダイイチルビーに、予測不能のダイタクヘリオス、古豪バンブーメモリー、そして新星ケイエスミラクルが加わり見どころの多いマイル王決定戦となった。

1番人気はダイイチルビー、2番人気にケイエスミラクルが続く。

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ゲートが開くと、互いに様子をうかがう先行勢の中からダイタクヘリオスがかかり気味に先頭に並んでいく。ダイイチルビーは後方から4番手、その直後ケイエスミラクルも後方集団から。

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抑えきれない手応えのダイタクヘリオスが直線入り口で差を拡げ、そのまま逃げ込みを図る。まんまと自分の型に持ち込んだダイタクヘリオスがそのまま逃げ切ってG1初制覇。追い込んだダイイチルビーは2馬身半差の2着まで。さらに半馬身差の3着にケイエスミラクルが追い込んだ。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

栄冠と悲劇

スプリンターズステークス

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この年のスプリンターズステークスは、ダイイチルビーとケイエスミラクルの一騎打ちが予想され、終盤までそのとおりのレース展開で進み素晴らしいレースになるはずだった。

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しかし、抜群の手応えで最後の直線を迎えたケイエスミラクルが突如失速して後退していく姿が。

ライバルを失ったダイイチルビーは難なく抜け出してレコードタイムで圧勝。ダイイチルビーが2着馬につけた4馬身という大きな着差が、よりケイエスミラクルの存在を際立たせることとなった。

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華麗なる一族のダイイチルビーが二つ目の栄冠を獲得した影で、ケイエスミラクルの奇跡の物語が突然終わってしまったレースとしてファンの記憶に刻まれた。

※レース映像にはケイエスミラクル号の故障発生のシーンがあるため、視聴する際は自己判断でお願いします。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ダイイチルビーはこの勝利によって牡牝混合のG1を史上初めて2勝した牝馬となった。同時に獲得賞金も牝馬として初めて4億円を超え、この年のJRA賞で最優秀5歳以上牝馬と最優秀スプリンターをダブル受賞。華麗なる一族の血に相応しく歴史にその名を刻んだ。

5歳時

もうひと花は叶わず引退

充実期真っ盛りだったダイイチルビーは5歳シーズンも現役を続行。マイル・短距離路線の中心を担うはずだったが、マイラーズカップ6着、京王杯スプリングカップ5着とたて続けに1番人気を裏切ってしまったあとの安田記念で自身ワーストの15着と大敗。これを最後に引退が決まった。

この頃ダイイチルビーは、すでに発情期を迎えて心身ともに母になる準備に入っていたのだという。華麗なる一族の血を繋ぐという自らの使命を知っていたかのような逸話である。

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、ダイイチルビー。

史実のダイイチルビー

基本情報1987年4月15日生 牝 黒鹿毛
血統父 トウショウボーイ
母 ハギノトップレディ(父サンシー)
馬主辻本春雄
調教師伊藤雄二(栗東)
生産牧場荻伏牧場(北海道浦河町)
通算成績18戦6勝
主な勝ち鞍91’安田記念、91’スプリンターズステークス
生涯獲得賞金4億3171万円

エピソード① 繁殖牝馬として

引退後、華麗なる一族の血を後世に残すべく繁殖牝馬として第二の馬生をスタートしたダイイチルビー。初仔のダイイチシガー(父トニービン)がオークス3着など春の牝馬クラシック戦線を賑わせる活躍を見せ、さすがは偉大な血統と思わされたものだ。

しかしその後は体質的なものか受胎率がよくなく、仔馬も体質の弱い傾向が続き大舞台で見ることは叶わなかった。

今週の一枚

第60回:華麗なる一族、ダイイチルビーの物語の画像

逃げるダイタクヘリオスにデバフスキルを発動するお嬢。

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この記事を書いた人
ライターE
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BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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いただいた内容は担当者が確認のうえ、順次対応いたします。個々のご意見にはお返事できないことを予めご了承くださいませ。


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