第36回:三冠馬まであと7cm、エアシャカールの物語

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【ウマ娘】第36回:三冠馬まであと7cm、エアシャカールの物語

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【ウマ娘】第36回:三冠馬まであと7cm、エアシャカールの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第36回。今回は、三冠馬まで7センチの二冠馬「エアシャカール」について熱く語ります。

目次

クールなDJ・エアシャカール

激しい気性と波乱万丈の史実

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

ウマ娘のアプリでは開始当初からサポートカードの性能のおかげで何かといじられてしまう少し残念なキャラクター。彼女の名前はエアシャカール。開催中のイベントでのクールなDJと、優秀な配布サポートカードでの名誉挽回ぶりも話題だ。

今回は、持って産まれた激しい気性を投影したかのようなエアシャカールの史実を追っていく。

準三冠馬

不遇な世代の二冠馬

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

引用元:JRA日本中央競馬会

準三冠馬。エアシャカールを評するとき、必ずと言っていいほど使われる表現だ。つまりクラシック三冠まであと一歩というところだった二冠馬ということなのだが、これには少し補足が必要だ。

というのも、「あと一歩で三冠」というと皐月賞とダービーの二冠を制し、菊花賞で惜しくも2着。という成績を思い浮かべる。そう、ミホノブルボンのようなパターンだ。しかし、エアシャカールがあと一歩届かなかったのは菊花賞でなく日本ダービーなのだ。だから、ミホノブルボンにとってのライスシャワーのように三冠を阻止した相手が大きくクローズアップされることもあまりない。

デビュー前

血統と気性

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

エアシャカールの父は偉大な種牡馬サンデーサイレンス。自身の闘争心を受け継ぐ気性の激しい産駒が多いことでも有名だ。その中でもエアシャカールは激しい気性の持ち主だった。名手・武豊騎手をもってしても「真っ直ぐ走ってくれないし、乗りにくいことこの上ない※」だそうだからよっぽどである。

※引用元:『Sports Graphic Number』より

名前の由来

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

馬名の由来は、冠名の「エア」に「シャカール」。シャカールとは、アメリカの伝説的なラッパーだった2Pacの本名からとられたそうだ。ウマ娘のエアシャカールがファンキーなDJとなったのはそれが元になっているのだろう。因みに同じエア軍団ではエアエミネムなどミュージシャンからとられた名前の馬がちらほら存在する。

2歳時

メイクデビュー

エアシャカールがデビューしたのは1999年の10月31日。スペシャルウィークが天皇賞(秋)を勝ったその日の東京競馬場でデビュー戦を迎えた。鞍上はスペシャルウィークと同じ武豊騎手。距離も天皇賞と同じ芝2000mだったが、結果は2番人気で5着だった。

勝ち上がり

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

2戦目の京都競馬場・芝1600m未勝利戦を1番人気に応えて初勝利。つづく1勝クラスの阪神・芝1600m戦で2着のあとは、当時まだG1でなくオープン競争だったホープフルステークスへ。

初戦5着に敗れた2000mの距離だったが、こんどはうまく折り合って中団から抜け出し勝利。2勝目をあげた。

3歳時

弥生賞

クラシック候補の一頭として3歳になったエアシャカールは、皐月賞のステップとしてG2弥生賞に出走。確固たる中心馬不在の混戦模様となり、エアシャカールは4番人気。

レースでは、最後方から徐々に前へ進出し、1番人気の勝ち馬フサイチゼノンに1馬身1/4届かずの2着だった。

皐月賞

クラシック一冠目の皐月賞。本来であれば弥生賞を快勝したフサイチゼノンが中心となるはずだったが、脚元の不安により皐月賞を回避。1番人気はスプリングステークスを勝って5戦4勝のダイタクリーヴァ。フジキセキ産駒の2世代目から現れた期待のクラシック候補生だったが、1800mまでしか経験していなかった点が不安視されていた。

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

スタートすると、人気の一角ラガーレグルスがゲートから出られないアクシデントで幕を開けた。エアシャカールと武豊騎手は、後方から3番手あたりの位置でレースを進める。そして最終コーナーで外から順位を上げて最後の直線へ。

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

先行勢の争いから抜け出したのは、1番人気のダイタクリーヴァ。エアシャカールは大外から末脚を繰り出し、最後は鋭く内に切れ込みながらダイタクリーヴァに並び、交わした。見事な差し切り勝ちでクラシック一冠目を手中に収めた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

海外挑戦発表

皐月賞後、エアシャカール陣営はダービー参戦後の海外挑戦を発表。欧州のビッグレースのひとつ、英国のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスへの挑戦だ。

日本ダービー

クラシック二冠目の日本ダービー。皐月賞馬エアシャカールが1番人気。ダイタクリーヴァが2番人気で続いたが、別路線から進んできた一頭がエアシャカールのライバルとなった。

皐月賞には不出走で、京都新聞杯からダービーへ駒を進めてきたアグネスフライトだ。同じサンデーサイレンスの仔で、母は桜花賞馬アグネスフローラ。あのアグネスタキオンの兄である。

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

レースはエアシャカールとアグネスフライトの壮絶なマッチレースとなる。後方待機策から直線で外へ持ち出し、抜け出したエアシャカール。そのままゴールまで突き抜けると思われたが、さらに外からアグネスフライトが強襲。ゴール寸前で並びかけ、アグネスフライトがわずかに態勢有利でゴール。着差は7センチ。ハナ差でダービー馬に輝いたのは、武豊騎手の兄弟子・河内騎手とアグネスフライトだった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

結果的に、エアシャカールにとってはこの7センチ差が大きかった。

海外へ

ダービー後、エアシャカールは予定通り英キングジョージへの挑戦のために英国へ渡った。ダービーから2ヶ月後の欧州のレースにぶっつけで参戦するというのは厳しいローテーションだったが、日本のクラシックホースが3歳で海外の大レースに挑戦するのは稀で期待のほうが大きかった。

7頭立てと少頭数となったが、非常にハイレベルなメンバーが揃った。その筆頭格は前年の凱旋門賞でエルコンドルパサーを退けたモンジュー。先日、ウマ娘のメインストーリー最終章・後編でまさかの実名登場が示唆されたことでも話題となった。

レースはモンジューが快勝し、エアシャカールは上位からは大きく離されての5着だった。

帰国、菊花賞へ向けて

イギリスから帰国したエアシャカールは休むことなく菊花賞へ向かう。夏にイギリス遠征を挟んでクラシック三冠レースにフル参戦するなど、よほどタフな馬でないとこなせる芸当ではない。その点、エアシャカールは強靭な肉体と精神力を兼ね備えていたということだろう。

菊花賞トライアルの神戸新聞杯ではさすがに疲労があったか3着に敗れた。

菊花賞

クラシック最後の一冠・菊花賞。ダービー馬アグネスフライトが1番人気、エアシャカールは2番人気。

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スタートすると、エアシャカールは中団のインコースにつける。アグネスフライトはそれをマークする中団後ろの位置取り。長丁場の3000m、先に仕掛けたのはアグネスフライトだった。3コーナーから一気にペースを上げて進出を開始する。対するエアシャカールはまだ内でじっとしている。

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最後の直線に入ると、早めに仕掛けたアグネスフライトが伸びあぐねる中、馬群の中からインコースの狭い隙間を突いて伸びてきたエアシャカール。溜めていた脚を直線一気に爆発させて差し切った。ゴールまで際どく競り合った2着トーホウシデンとの着差はクビ差。エアシャカールが皐月賞、菊花賞の2冠を制して世代の頂点に立った。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ジャパンカップ

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2冠馬となったエアシャカールは、さらに休むことなくジャパンカップに参戦。強豪古馬勢との初対戦となったが、14着と惨敗。勝ったのは世紀末覇王テイエムオペラオー。そして2着はメイショウドトウ、3着にキングジョージでモンジューの2着だった米国のファンタスティックライトが入った。

このレースでエアシャカールと同世代のG1馬が軒並み下位に沈んだことで、世代間のレベル差が指摘されるきっかけとなったが、エアシャカールに関してはさすがに過酷なローテーションによる疲労もあっただろう。

4歳以降

勝ち星に恵まれず

ジャパンカップの敗戦後は有馬記念には出走せずに休養し、4歳となったエアシャカール。G2大阪杯2着を皮切りに、天皇賞(春)はテイエムオペラオーの8着、宝塚記念ではメイショウドトウの5着と結果を残すことができなかった。

この年、海外へのフル参戦により日本を離れた武豊騎手とのコンビは解消となり、気性に難しいところがあるエアシャカールにとってはこれも少なからず影響しただろう。

5歳になっても

宝塚記念のあと、4歳の秋シーズンは肺炎を患い不出走。明けて5歳となったエアシャカールは前年2着の大阪杯から復帰し、2着。復調の兆しを見せた。

久しぶりの武豊騎手とのコンビとなったG2金鯱賞では、1番人気に支持されたが勝ち切ることはできず2着。2年連続での参戦となった春のグランプリ宝塚記念では先行策から伸びを欠いて4着に敗れた。

天皇賞(秋)

菊花賞で2冠馬に輝いて以来、すっかり勝利から遠ざかってしまったエアシャカールだったが、5歳秋の天皇賞は久しぶりにこの馬らしい競馬を見せてくれた。

武豊騎手とエアシャカールは後方待機策。馬群の中でじっと脚をためると、最後の直線ではナリタトップロードらとともにしぶとく追い込んで4着だった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

引退

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

天皇賞のあとは、ジャパンカップ12着、有馬記念9着。最後まで勝ち星を掴むことはできなかったが、王道を歩んで競争生活を終えた。

谷間の世代と呼ばれて

たしかに、エアシャカールの世代は他の世代に比べて古馬になってからの活躍は地味だったかも知れない。二冠馬のエアシャカール自身、菊花賞を最後に勝ち星を挙げることはできなかったし、ダービー馬アグネスフライトもダービーのあとは一つも勝てなかった。

第36回:激しい気性の準三冠馬、エアシャカールの物語の画像

ただ、クラシックの戦いを終えた次の瞬間に、覇王テイエムオペラオーやメイショウドトウらに圧倒されてしまったことには同情してしまう。エアシャカールの同期にはアグネスデジタルという不滅のオールラウンダーがおり、3歳時のマイルチャンピオンシップでは皐月賞2着のダイタクリーヴァと優勝争いを繰り広げた。

そして、エアシャカールが同世代のサラブレッド8,668頭の頂点に立ったということは紛れもない事実である。

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、エアシャカール。

史実のエアシャカール

基本情報1997年2月26日生 牡 黒鹿毛
血統父 サンデーサイレンス
母 アイドリームドアドリーム(父 Well Decorated)
馬主ラッキーフィールド
調教師森秀行(栗東)
生産牧場社台ファーム(千歳市)
通算成績20戦4勝(うち海外1戦0勝)
主な勝ち鞍’00皐月賞、菊花賞

エピソード①短すぎた種牡馬生活

産駒はわずか4頭

エアシャカールは引退した翌年から種牡馬入りし、当然ながらクラシック二冠を制したサンデーサイレンスの仔として期待されていた。

しかし、種牡馬生活が始まって間もなく、放牧中の事故が原因で早逝してしまった。残した産駒はわずかに4頭のみ。血統的にもクラシック向きの名牝系の一族だっただけに、自身と同じくクラシックで活躍する大物の誕生を見てみたかった。

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この記事を書いた人
ライターE
ライターE

BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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