競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第4回。破天荒な黄金の不沈艦「ゴールドシップ」について熱く語ります。
[uma_column_header]黄金の不沈艦 ゴールドシップ
史実を知ればもっと愛せる
引用元:JRA日本中央競馬会
当コラムもついに最大の難敵を迎える日が来た。破天荒、気まぐれ、クセ馬。この馬の枕詞にはそんなワードが付けられることが多い。言わずと知れたウマ娘界随一の破天荒枠にして人気者、ゴルシちゃんである。ウマ娘プリティーダービーのアニメではセグウェイを乗り回し、ゲーム内でも謎の言動を連発、レースに勝つとトレーナーにドロップキックとやりたい放題である。
なぜこんなキャラクターが生まれたのか。やはりそのヒントはモデル馬ゴールドシップの史実にある。史実を知れば、もっとゴルシちゃんが好きになってしまうかも知れない。
優等生、のち気まぐれ
はじめは優等生だった?
ゴールドシップの成績を見ると、ある時期を境に成績の傾向がガラッと変化する。
4歳春までは実に安定した成績で、まるで優等生である。ところが4歳秋の京都大賞典以降、勝ちと負けが極端になってくる。勝つ時は圧倒的に強い勝ち方をするのだが、負ける時はまるで別の馬のようにアッサリと大敗をする。どちらかと言えば後者のゴールドシップの印象が強く残っているのだが、ここでJRAポスター「ヒーロー列伝」を紹介しよう。
JRAポスター「ヒーロー列伝」のキャッチコピー。(ポスター画像はリンク先で見られる)
『黄金の航路』
見る者の想像を遥かに超える仕掛けと それを可能にする豪脚で、誰よりも先にゴールを駆け抜ける。
圧巻のロングスパートで、次々とライバル達を抜き去る ゴールドシップの辿った道筋は、まさに黄金に輝く航路。
それは、ただひたすらに勝利へ向かっている。
引用元:JRAポスター ヒーロー列伝(No.74)
ポスターが制作されたのは2013年春、当時10戦7勝(2着2回)という優等生時代であった。もしも2年後にもう一度制作されたらどんなコピーになっていたか見てみたかった気もする。
誕生〜育成時代
小柄な仔を期待して…
母馬のポイントフラッグ(父メジロマックイーン)は現役時代に500kgを超える大型馬で、繁殖牝馬として産んだ子ども達も大きな馬が多く、もう少し小さくしたいということで選ばれたのが、小柄な種牡馬ステイゴールドだったそうだ。そして産まれたのがゴールドシップである。産まれてきたのは母に似て大きな芦毛馬だった。
手のかからなかった仔馬時代
仔馬時代(2歳になって厩舎に入るまで)は、意外にも(?)手がかからない馬だったという。実は2歳になってから入厩する前に福島県の育成牧場※で調整されていたが、3.11東日本大震災で牧場が被災してしまう。そのため、一度北海道に戻されるなどデビュー前に頻繁な長距離移動と予定変更を余儀なくされたが、当のゴールドシップは体調を崩すこともイライラすることもなかったという。引退するまで大きな怪我もなかったのだから肉体的なタフさは理解できるが、精神的にもタフで落ち着いていたというのはのちの破天荒ゴルシからは想像しづらい。
主にデビュー前に調教を行うための牧場。
2歳時
メイクデビュー
育成が進むと栗東の須貝尚介厩舎に入厩。奥手のイメージがある血統(父ステイゴールドも母父メジロマックイーンも晩成タイプ※だった)とは異なりゴールドシップの仕上がりは早く、7月の函館競馬場の芝1800m戦でデビューを迎える。
能力の開花が遅いこと。3歳の秋または古馬になってから活躍する馬を晩成タイプとか大器晩成と表現する。奥手とも言う。
調教でもいい動きを見せていたゴールドシップは、2番人気に支持され、結果は後方から短い直線で先行勢を捉えて差し切り勝ち。勝ちタイムは函館競馬場芝1800mの2歳コースレコードだった。
この「一着のポーズ」も、ゴルシが大きく立ち上がった瞬間を捉えた写真があり、それを元ネタにしていると思われる。
堅実な2歳戦
2戦目のコスモス賞(札幌芝1800m)を1番人気に応えて2連勝すると、続くG3札幌2歳ステークスでは後方からの追い込みがわずかに届かず2着。しかし直線の短い札幌競馬場でするどい追い込みを見せた。十分に間隔を開けて臨んだ年末のG3ラジオNIKKEI杯(阪神芝2000m)では、後方から早めに仕掛ける「波乱注意砲!」的なレース運びを初披露するものの、前を捉えきれず2着となる。2歳戦は4戦2勝、2着2回で終えた。
3歳時
クラシックへ向けて
年が明けて3歳のクラシックシーズンを迎えると、少しずつ破天荒なゴルシが顔を覗かせる。初戦のG3共同通信杯の最終追いきり※の後に調教助手を振り落として大怪我を負わせるなど、この頃から時々暴れたりしたそうだ。徐々に自己主張が激しくなってきたのだろう。
レース直前の調教のこと。レース当週の追い切りを最終追い切りと言う。だいたい水曜日か木曜日に行われる。
その共同通信杯では、それまでの後方待機策から一転、3,4番手をスムーズに追走すると先手を取った1番人気ディープブリランテを直線で交わして快勝。このレースで初コンビだった内田博幸騎手は大怪我から復帰して初めての重賞制覇。須貝厩舎にとっても開業4年目にして初重賞制覇だった。この後ゴールドシップは、内田騎手と共にクラシックに挑むこととなる。
皐月賞
クラシック第1冠の皐月賞は、ゴールドシップの出走全レースの中でも伝説となっているレースのひとつである。前日の雨で馬場状態は稍重。しかしそれ以上に当時の中山競馬場の芝コースはかなり荒れたコンディションで、特にインコースは芝がはげるほどボコボコの状態だった。
伝説のゴルシワープ
ゴールドシップは4番人気。レースは序盤から2頭が競り合って縦長の展開※となる。ゴールドシップは最後方を2番人気のワールドエースと並走するように進む。
先頭から最後方までの距離が離れて長くなること。逃げ馬がレースを引っ張ったり前で競り合うと縦長になりやすい。
3,4コーナーの勝負所に差し掛かり各馬ラストスパートの体勢。ほとんどの馬が荒れたインコースを避けて大きくコーナーを回ってくる。すると直線の入り口、他馬が避けてポッカリと空いたインコースを突いてくる馬がいた。ゴールドシップだ。「え、いつの間に!?」という一瞬の出来事だった。常識はずれのショートカットをして抜け出したゴールドシップは、そのまま力強くゴールまで駆け抜けた。ほぼ同じ位置から外側を大きく回って2着まで追い上げてきたワールドエースには2馬身半の差をつけていた。
のちに内田騎手はこの皐月賞について「今までで一番上手くいったレース」と語っている。内田騎手の一瞬の判断と、それを勝利に結びつけたゴールドシップのパワフルな走りが見事に噛み合ったからこそ可能だったゴルシワープは皐月賞史に残る伝説となった。アニメ1期のオープニングでもゴルシワープらしき描写が再現されている。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
日本ダービー
クラシック第2冠の日本ダービーでは、皐月賞2着のワールドエースが1番人気、皐月賞馬ゴールドシップは2番人気、3着のディープブリランテが3番人気となった。ディープブリランテとは共同通信杯、皐月賞に続いて3度目の対戦。
レースは4番手で先行したディープブリランテが先に抜け出し、ダービートライアルのG3青葉賞を勝ってきたフェノーメノが寸前まで追い詰めたところでゴール。ハナ差でディープブリランテがダービー馬に輝いた。ワールドエースとゴールドシップは中団から直線勝負で追い込んできたものの、届かず4,5着という結果だった。5着のゴールドシップは初めて連対※をはずす悔しいレースとなった。
2着以内に入ること。つまり馬券の馬連に絡むことを言う。連対を外した、と言うと2着以内にはいらなかったという意味。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ライバル不在の秋冬
それぞれの秋
夏を休養にあてリフレッシュしたゴールドシップは、秋初戦のG2神戸新聞杯を快勝。菊花賞に向けて順調なスタートを切った。その頃、春に凌ぎを削ったライバル達は、それぞれの事情で菊花賞には不在となっていた。ダービー馬ディープブリランテは、英国のG1に挑戦後、菊花賞を目指す途中で怪我を発症し引退。ワールドエースも怪我の療養中、ダービー2着のフェノーメノは天皇賞に矛先を向けていた。
菊花賞で不沈艦炸裂
クラシック第3冠、菊花賞。春の主役たちの離脱により、ゴールドシップは単勝1.4倍の圧倒的な1番人気である。いつもどおり、スタート後はダッシュがつかず最後方へ。1周目のスタンド前で1頭かわして後方2番手で1,2コーナーを回ると、徐々に進出を開始。はやくも3コーナー手前の上り坂※で仕掛けて一気に先団まで順位を上げ、直線入り口では先頭に躍り出る。まさにゲーム内の固有スキル『不沈艦、抜錨ォッ!』で再現されている常識はずれのロングスパートである。そのまま失速することなくゴールを駆け抜けて菊花賞を制覇。圧巻のクラシック2冠達成だった。
菊花賞のコース
引用元:JRA日本中央競馬会
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
有馬記念
この頃になるとゴールドシップの実力は疑いようもなく、その豪快な勝ちっぷりも相まってすっかり人気者の1頭となっていた。そしてファン投票6位で年末のグランプリ有馬記念に出走する。1つ上の三冠馬オルフェーヴルと、当年の牝馬三冠を達成しジャパンカップでオルフェーヴルとの激闘を制したジェンティルドンナがともに有馬記念を回避。押し出される形でゴールドシップは1番人気の支持を集める。
直線の急坂も何のその
初対決となる古馬勢では、2年前のダービー馬エイシンフラッシュが3番人気、エアグルーヴの息子ルーラーシップが2番人気。ゲーム内のゴルシ育成ストーリーにおいてエデンを探す手がかりを持って度々同じレースに登場するエイシンフラッシュとの初対戦である。
レースは、2番人気のルーラーシップがゲート内で立ち上がってしまい大出遅れをかます波乱のスタート。ゴールドシップはいつもどおりダッシュがつかず後方から。後方待機から3,4コーナーで得意のロングスパートを仕掛けたゴールドシップは、まだ前とは差のある10番手くらいの順位で直線を迎えると、持ち前のスタミナと直線の急坂をものともしないパワフルな末脚を繰り出し、短い直線で豪快に差し切って快勝。3つめのG1タイトルを手にした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
有馬記念のコース
有馬記念が行われる中山芝2500mは小回りで直線の短いコース形状だが、直線の急坂などスタミナとパワーを要求されるコースである。
引用元:JRA日本中央競馬会
4歳時
圧勝と不可解な負け
4歳となったゴールドシップは、初戦のG2阪神大賞典を快勝すると、次戦の天皇賞春では1.3倍の1番人気に応えられず5着に敗れる。いつもどおりのレース運びに見えたのだが、最後の直線で伸び切ることができなかったのだ。ゴールドシップが連対(2着以内)をはずしたのは5着だった日本ダービー以来2度めだったが、この頃から次第に圧勝と大負けを繰り返すようになる。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ダービー以来の再戦
勝ったフェノーメノとはダービー以来の再戦だったが、着順はその時と同じ5着。クラシックを争った同期の中では古馬になってからも幾度となく対戦するこの馬が最大のライバルだったかも知れない。
宝塚記念圧勝
天皇賞(春)は不完全燃焼にも見えた不可解な負けを喫したゴールドシップ。短期放牧でリフレッシュすると、次の宝塚記念では余すところなく能力を発揮する。
同世代の三冠牝馬ジェンティルドンナとの初対決が注目され、これまで対戦成績で分の悪いフェノーメノを加えた3強と目されたレースはゴールドシップの独壇場だった。内田騎手はいつもの後方待機策をとらず、気合をつけて前目のポジションを取りに行く強気な作戦を選択。3番手を進むジェンティルドンナをぴったりマークする好位置につけることに成功すると、4コーナーでともに上がっていった3強の勝負から早々と抜け出す。あとはスピードに乗ったゴールドシップが止まることはなかった。2着に3馬身半の差をつける圧勝だった。4つ目のG1勝利を有馬記念に続くグランプリ連覇で飾った。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
宝塚記念のコース
宝塚記念が行われる阪神芝2200mはスタートしてから最初のコーナーまでが長く、直線に急坂のあるコース。ゴールドシップがもっとも得意とした(8戦6勝2着1回)のが阪神競馬場だった。ゲーム内でもゴルシのイベントで阪神レース場◯を獲得できる。
引用元:JRA日本中央競馬会
失意の秋
はじめての連続大敗
宝塚記念の快勝で春のシーズンを締めくくったゴールドシップは、休養を挟んで臨んだ秋に大きく低迷してしまう。G2の京都大賞典で1.2倍の断然人気を5着と裏切ると、つづくジャパンカップではまったくいいところがなく15着。デビュー以来初めての二桁着順に終わった。ちなみに勝ったジェンティルドンナは史上初のジャパンカップ連覇を達成。同世代の最強牝馬に水を開けられてしまった。
内田騎手、乗り替わり
これまでゴールドシップが獲得した4つのG1タイトルすべてでその背に乗っていた内田騎手は、この連敗の後に主戦騎手から外れることとなる。外国人ジョッキー、ライアン・ムーア騎手とコンビを組んだ暮れの有馬記念は、ようやく実現した三冠馬オルフェーヴルとの最初で最後の対決。この秋不振のゴールドシップはオルフェーヴルに次ぐ2番人気に支持されたが、終わってみればこれがラストランとなったオルフェーヴルの独り舞台だった。直線入り口から早々と独走状態のオルフェーヴルが2着につけた着差は8馬身。自らの引退をド派手に飾ったのだった。その陰でゴールドシップも中団からしぶとく追い込んで3着と復調の兆しは見せた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
5歳時
久々の勝利
秋シーズンで未勝利に終わったゴールドシップは5歳となり、前年と同じG2阪神大賞典から始動する。鞍上は岩田騎手に替わり、1.7倍の1番人気に応えて前年の宝塚記念以来となる勝利を収める。2番手から早めに抜け出す危なげのない完勝。これで阪神大賞典は2連覇、得意の阪神競馬場で復活を印象づけた。
自分との闘い
しかし前年と同じローテーションで挑んだ天皇賞(春)では、またしても気まぐれぶりを発揮してしまう。ゲートに入るまでは落ち着いた様子に見えたのだが、ゲート内で怒りだし、唸り声をあげて立ち上がる様子がTV中継にも映し出されていた。
これが影響してスタートで出遅れると、得意のロングスパートを見せることもなく7着止まり。前年に続いて天皇賞春を連覇したフェノーメノとは対照的な結果だった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
このレースで騎乗したウィリアムズ騎手はレース後にゴールドシップから下馬して心配させたが、結果として軽い肉離れという診断。スタートのアクシデントといい、天皇賞とは相性が悪いのだろうか。
宝塚記念
短期放牧でリフレッシュし、舞台は相性のいい阪神競馬場へ。前年の覇者として迎える2度めの宝塚記念だ。内田騎手からの乗り替わり以降定まらない鞍上には、新しいパートナー横山典弘騎手。スタートはダッシュがつかず最後方となるが、スタンド前の直線を利用して加速すると1コーナー手前で4番手まで順位を上げる。そのままスムーズにレースを運ぶと、最後の直線で力強く抜け出し、ゴール手前の急坂でさらに後続を引き離して勝利。海外遠征帰りのジェンティルドンナ以下を寄せ付けなかった。宝塚記念の連覇(2勝目も)は史上初の快挙だった。また、芦毛馬としてのJRAG1レース5勝はオグリキャップとメジロマックイーンの4勝を抜いて歴代トップとなった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
レース後、勝利騎手インタビューで横山騎手は「よくゴールドシップ、ちゃんと走ってくれました」「最後まで頑張ってくださいとお願いしました」と語り、パートナーをねぎらった。
海外挑戦の夏
凱旋門賞
宝塚記念の勝利を受けて、ゴールドシップの海外挑戦が表明された。夏の札幌で行われるG2札幌記念をステップにフランス凱旋門賞というプランだった。札幌記念2着のあとに挑んだ凱旋門賞では、後方のまま最後まで伸びることが出来ずに14着と大敗。前年2着(2年連続)だったオルフェーヴルに続く好結果が期待されていたが、残念な結果に終わってしまった。
最強牝馬と最後の激戦
海外挑戦を終えたゴールドシップは、ファン投票1位に選ばれた暮れのグランプリレース有馬記念に出走する。何度も激闘を繰り広げてきた同世代のジェンティルドンナやフェノーメノ、ともに凱旋門賞に挑戦したジャスタウェイなど豪華メンバーが揃った一戦。1番人気のゴールドシップは、中団の後ろめから最終コーナーで仕掛けると、直線はしぶとく追い込んで3着。先に抜け出したジェンティルドンナを捉えることはできなかった。ジェンティルドンナは前年のオルフェーヴルと同じく自身のラストランで見事な勝利だった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
6歳時
目指すはエデン
G15勝の実績からすると5歳いっぱいで引退して種牡馬入りという選択肢もあったと思うが、陣営から現役続行が表明されたことはファンには嬉しいニュースだった。現役続行の最大目標は宝塚記念の3連覇。JRAの平地G1(障害レースを除くG1)の3連覇は未到の大記録である。ゲーム内のゴルシ育成エピソードの主軸となる『エデン』とは、このことではないかと筆者は思っている。
三度目の天皇賞(春)
これまで2年連続で5着と相性のよくない天皇賞(春)に同じローテーションで挑むのはこれで三度目になる。鞍上は凱旋門賞以来のコンビとなる横山典弘騎手。ゲート入りで強烈な嫌々をして大幅にスタート時刻を遅らせヤキモキさせたが、どうにか無事にスタートを切る。やる気の現れなのか果たして…。
お願いしました!
スタート後はやる気なさげにポツンと最後方を進むゴールドシップだったが、1週目の直線でスタンド寄りに進路を取ると、大歓声に応えるかのようにジワジワと順位を上げていく。そしてレースは中盤に差し掛かり、向こう正面※の直線で早めに動き出すと、3コーナー手前で一気に4番手まで進出。久しぶりに見るゴールドシップらしいロングスパートにスタンドも湧いた。
スタンドから見てコース奥の直線
先頭を捉えるのに手こずったものの、直線もしぶとく伸びて後続の追撃を凌いでゴール。宝塚記念以来となる6つ目のG1タイトルを獲得した。天皇賞春は三度目の挑戦にして初制覇となった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
レース後のインタビューで横山騎手は「お願いしました!」と宝塚記念以来のフレーズを交えてファンを沸かせた。
エデンは遠く
前人未到の三連覇はいかに
天皇賞春の勝利で、がぜん現実味を帯びてきた宝塚記念の3連覇。堂々のファン投票1位でその日を迎えた。得意の阪神競馬場、天候晴れ、馬場状態は良馬場、舞台は整った。かに思われたのだが。
この大一番で、まさかまさかの大出遅れ。今回は大人しくゲートに入ったものの、隣のトーホウジャッカルが気に入らなかったのかゲート内で立ち上がって威嚇。体勢が整う前にゲートが開いてレースが始まってしまったのだ。大きく遅れたゴールドシップは、ほとんどレースに参加できずに15着と惨敗。ゴールドシップの馬券に賭けられた金額になぞらえて120億事件と呼ばれた。
実際の様子(公式レース映像より)
この画像からも分かる通り、大きく立ち上がり大幅に出遅れている。より詳細な場面は以下の動画を参照してほしい。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
この出遅れエピソードを元にしたと思われるシーンが、アニメ版ウマ娘の第1期(OVA)で描かれている。レースも相手(アニメではエアシャカール)も異なるが、猛獣のごとく隣のエアシャカールを威嚇する様子は、信じがたいことにほぼ史実の完コピなのだ。
稀代の個性派
長い航海の終わり
勝つときは圧勝、負ける時はあっさり。優等生的な成績だったクラシック期の記憶は薄れ、すっかり破天荒で気まぐれな印象になってしまったゴールドシップ。それが個性として認められ「ゴルシだから」と許されるほどの愛され系名馬となった。そんなゴールドシップの長い航海もいよいよ終盤に差し掛かっていた。
残り2戦
6歳秋、ゴールドシップはジャパンカップと有馬記念の2戦に出走して引退することが決まっていた。ジャパンカップでは最後方から早めに仕掛けるいつものロングスパートが見られるかと思いきや、直線では伸びずに10着に終わる。
引退レースはゴルシらしく
引退レースの有馬記念、ゴールドシップの背中の上にはともに4つのG1を制した内田騎手が跨っていた。多くのファンが最後にこのコンビを見られることを喜んだ。オーナーや調教師の粋なはからいだったと思う。かつての相棒と知ってか知らずかゴールドシップは、菊花賞を勝った時と同じような早めのスパートで観客を大いに沸かせた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
結果は8着だったが、最後までゴールドシップはゴールドシップだった。レース後に行われた引退式では、関係者の輪に加わるのを嫌がり暗くなるまで残っていたファンをさらに長時間待たせたのだった。
のちに、ゴールドシップの関係者へのインタビューや対談でのコメントを拝見して、突然怒り出したり、猛獣のような荒々しい振る舞いをしたりするのは繊細さと賢さからくるものだということを初めて知った。繊細さゆえに周囲のちょっとした変化に気が立ったり怒ったりする。賢さゆえに納得がいかないと言うことをきかなかったりやる気を出さなかったりする。そんな風に考えながら史実のゴールドシップを振り返り、ゲーム内での数々の奇行を観ているうちに、ますます愛おしく思えてきた。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、ゴールドシップ。
史実のゴールドシップ
基本情報 | 2009年3月6日生 牡 芦毛 |
---|---|
血統 | 父 ステイゴールド 母 ポイントフラッグ(父 メジロマックイーン) |
馬主 | 小林英一ホールディングス |
調教師 | 須貝尚介(栗東) |
生産牧場 | 出口牧場(北海道・日高町) |
通算成績 | 28戦13勝(うち国内27戦13勝、海外1戦0勝) |
主な勝ち鞍 | ’12皐月賞、’12菊花賞、’12有馬記念、’13,’14宝塚記念、'15天皇賞(春) |
エピソード
黄金配合
父ステイゴールドx母父メジロマックイーンの組み合わせは、三冠馬オルフェーヴル(G1 6勝)やその兄ドリームジャーニー(G1 2勝)、ゴールドシップ(G1 6勝)と立て続けに大物を排出し、その相性の良さから黄金配合とかステマ配合※と言われている。
父『ステ』イゴールドと母父メジロ『マ』ックイーンの組み合わせが相性がいいことを表す
伝説の大出遅れの舞台裏
ゴールドシップが3連覇を目指した2015年の宝塚記念。120億事件と呼ばれた伝説の大出遅れの裏話が最近になって明かされた。事件が起きたゲートのすぐ近くで中継をしていた元ジョッキーで、ウマ娘でもご本人役で登場する細江純子さんが、自身のYouTubeチャンネル「スナックズンコ」とウマ娘のコラボ動画で語られている。
引用元:スナックズンコちゃんねる
この動画はゴールドシップ役の上田瞳さんとサイレンススズカ役の高野麻里佳さんとの対談となっているので、興味のある方は観てみて欲しい。
種牡馬として
ゴールドシップの産駒がデビューしてから、今年で3年目のシーズンとなる。産駒の成績は初年度産駒から重賞勝ち馬を排出するなど上々で、ついに今年の春、念願のG1ウィナーが誕生した。牝馬クラシックであるオークス(優駿牝馬)を、2年目世代のゴールドシップ産駒ユーバーレーベンが制覇したのである。ゴールドシップの第2の航海はまだ船出したばかりだ。
ユーバーレーベンのレース映像
引用元:JRA公式チャンネル
小ネタ
走り方の特徴
繋(つなぎ)※という脚の部位の造りがゆるく、回転の早いピッチ走法ができないゴールドシップは、スタート直後や仕掛けどころの瞬発力を求められる場面でダッシュがつかなかった。
競走馬の馬体の仕組み
引用元:JRA日本中央競馬会
スタート後は後方に置かれることが多いのはそのためだったと言われる。しかし、一旦スピードに乗るとバテない持久力と坂をものともしないパワーを武器に、他馬が真似できないロングスパートで数々のレースを制覇したのである。ウマ娘でゴルシが見せるダイナミックな走法は、このような馬体の特徴からくる実際の走り方を再現しているものと思われる。
この記事を書いたライター
ライターE | |
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BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。 持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。 |
ライターEについて
- 年齢:マルゼンスキーの1コ下らしい
- 初恋の相手:エアグルーヴ
- 推しウマ娘:ミホノブルボン、マルゼンスキー、会長、ビコーペガサス・・・みんなかわいい
- 好きな競馬場:東京競馬場、大井競馬場(トゥインクル最高)
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