第121回:遅咲きのスプリント女王、ビリーヴの物語

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【ウマ娘】第121回:遅咲きのスプリント女王、ビリーヴの物語

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【ウマ娘】第121回:遅咲きのスプリント女王、ビリーヴの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第121回。今回は、コツコツと1勝を積み重ねながらその血に宿るスピード能力を開花させた遅咲きのスプリント女王、ビリーヴについて熱く語ります。

目次

遅咲きのスプリント女王

祝・実装!

第121回:遅咲きのスプリント女王、ビリーヴの物語の画像

夏競馬も終わったというのにまだまだ厳しい猛暑が続く中、競馬界はもうすぐ秋のG1シリーズが始まる。その開幕を告げるのが秋の短距離王者決定戦・G1スプリンターズステークスだ。本稿執筆時点では育成ウマ娘としては未実装だったが、そのスプリンターズSを前にめでたく実装が発表されたビリーヴ。

今回は、コツコツと1勝を積み重ねながら、ついにはその血に宿るスピード能力を開花させた遅咲きのスプリント女王、ビリーヴの史実を追っていく。

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ウマ娘のビリーヴ

ウマ娘のビリーヴは、同じ短距離を主戦場とするデュランダルやカルストンライトオといったクセの強いライバル達の中で、一人冷静で常識的なキャラクターとしてバランスを取っているように映る。

ただし、実装されたばかりのビリーヴの育成ストーリーによってはその印象も変わるのかもしれない。

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公式プロフィール

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確固たる信念を持つ、職人気質のウマ娘。黙々と努力を重ね、丁寧かつ完璧な仕事をこなす忍耐力、持続力の持ち主である。スピードにはこだわりがあり、『持続してこそ速さ』という信念のもと、短距離路線を邁進する。実は、かなりのおじいちゃん子なのだとか。

血統

ビリーヴの父は大種牡馬サンデーサイレンス。この米二冠馬は日本での種牡馬入り初年度からSS旋風を巻き起こして日本競馬を席巻しており、ビリーヴは7世代目の産駒にあたる。

母グレートクリスティーヌ(父Danzig)もまた現役時代は米国で走り、短距離で14勝を挙げた活躍馬。さらに、半姉にはBCディスタフなどG1競争11勝を挙げた名牝レディーズシークレットがいるという良血馬。母の父Danzigはノーザンダンサー系の中でも短距離向きの豊かなスピードを伝える名種牡馬で、日本ではビコーペガサスなどの父として有名だ。

このように、ビリーヴは母系、父系ともに米国血統の超良血馬と言える。

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2歳~3歳:下積み時代

メイクデビュー

2歳の11月、京都の芝1200m新馬戦にエントリー。鞍上は福永祐一騎手。デビュー前から血統や調教の動きから素質を高く評価されていたビリーヴは1番人気で出走を迎えた。

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スタートして先手を奪うと、スピードを活かしてそのまま逃げる展開。そして最後まで後続の追随を許すことなく押し切ってデビュー戦を勝利で飾った。

2勝目を目指して

続く2戦目は距離を伸ばして阪神芝1600mの自己条件500万下(現在の1勝クラス)。好位からレースを進めたが直線では伸びを欠いて6着に敗れた。余談だがこのレースの1番人気の馬の名はポイントフラッグ。のちにゴールドシップの母になる芦毛の牝馬であった。

模索が続く

3歳になり、3戦目のダート1200m戦で9着と大敗を喫すると、新馬勝ちと同じ芝1200mに戻すも不良馬場に苦しんで4着。格上挑戦、距離延長のG3フラワーカップ(中山芝1800m)は8着に終わり、続く自己条件のマイル戦でも3着。

ここまで様々な条件で走ったが好走に繋がらず、適性の見極めに苦労した時期と言える。これには父サンデーサイレンス産駒の多くがマイル以上を得意としていたことも一因だったのかもしれない。

待望の2勝目

そして通算7戦目、5月の中京開催で芝1200mの自己条件(500万下)に出走すると好位から抜け出す競馬で逃げ馬を交わすと先頭でゴール。7戦目にしてついに待望の2勝目を掴んだ。

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続く3歳限定の短距離重賞G3ファルコンステークスでは初めて後方からの競馬となったが、見せ場なく9着に沈み、休養に入った。因みにこのレースに出走していたカルストンライトオは3着。

復帰、3勝目

5ヶ月の休養を経て11月に復帰すると、1000万下条件(現在の2勝クラス)の醍醐特別に出走。6番人気ながら先行から抜け出して快勝し、1年前に新馬勝ちしたのと同じ京都の1200mで3勝目をマークした。

続いて昇級初戦となる1600万下条件(現在の3勝クラス)の逆瀬川ステークス(阪神芝1600m)で再びマイルに挑戦するも3着。ここまで通算10戦3勝で3歳シーズンを終えた。

4歳時:コツコツと前進

オープン入り目指して

年が明けて4歳のシーズンを迎えたビリーヴ。1600万下条件を突破してオープン入りを目指す。

2月、年明け初戦となった山城ステークス(京都芝1200m)では新馬戦以来の1番人気に支持されたが、惜しくも2着に敗れる。このレースを勝ったショウナンカンプはこのあと連勝を重ねて高松宮記念へと駒を進め、一気にG1馬へと駆け上がった。

圧勝で4勝目

その後はマイルの武庫川ステークス3着、中山1200mの船橋ステークス3着と惜敗が続き、春のG1シーズンを迎えた4月の阪神、淀屋橋ステークス(阪神芝1200m)に出走した。

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ここで乗り替わりで初騎乗したのは岩田康誠騎手。当時まだ地方の園田競馬所属だった岩田騎手とのコンビでレースに臨むと、1番人気に応えて好タイムで勝利。6馬身差の圧勝に加え、出走メンバー中の上がり3ハロン最速を記録したのは自身初で、ようやく本格化の兆しを見せ始めた一戦であった。

ここまで通算14戦4勝。一歩ずつ階段を登ってついにオープン入りを果たした。

束の間のオープン

オープン入り初戦に挑んだのはG2京王杯スプリングカップ。府中の1400mで重賞級の相手にどこまで通用するか試金石の一戦。

スタートから先行して4番手につけるとスムーズに流れに乗って最後の直線へ。逃げた人気薄のゴッドオブチャンスを追って粘りを見せたが逃げ切りを許し、最後は後ろから交わされて3着でゴールした。

惜しくも連対を逃したものの、前年の春秋スプリント王者トロットスターやこのあと宝塚記念を勝つダンツフレームらに先着して重賞でも通用する力を見せた。

ところが京王杯スプリングCの後に出走したテレビ愛知OP(中京芝1200m)で断然の1番人気に応えられず7着となり、夏競馬突入とともに降級制度(現在は廃止)により1600万下クラスに逆戻りしてしまった。

夏競馬で存在感

しかしここから夏の小倉を皮切りにビリーヴの快進撃が始まる。

まずは佐世保ステークスで危なげなく5勝目を挙げると、続く北九州短距離ステークスでも2馬身半差をつけて快勝。小倉の芝1200m戦で秋の飛躍を予感させる連勝をおさめ、今度こそ1600万下を卒業して再オープン入りを果たした。

セントウルステークス

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秋競馬の開幕初戦、G3セントウルステークスから始動してスプリンターズステークス出走を目指す。

夏競馬で本格化を印象付けたビリーヴが1番人気の支持を集め、2番人気には同世代の快速馬カルストンライトオ。

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ゲートが開くとカルストンライトオが飛び出してハナを奪う。ビリーヴは控えて5,6番手につけてこれを追走。最後の直線に入ると、逃げ込みをはかるカルストンライトオ目掛けて各馬スパート。ビリーヴは岩田騎手のゴーサインに応じて瞬時に加速すると、並ぶまもなく先頭に躍り出てあとは突き放す一方。最後は2着に4馬身差をつけて圧勝して重賞初制覇を果たした。勝ち時計1分7秒1のレコードで一躍スプリンターズステークスの主役候補に名乗りを上げた。

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一気に頂点へ

スプリンターズステークス

いよいよビリーヴがG1の大舞台に辿り着いた。この年のスプリンターズSは新潟競馬場での変則開催。鞍上にはこれが初コンビとなる武豊騎手を迎える。

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破竹の3連勝で勢いのあるビリーヴが、ショウナンカンプやアドマイヤコジーンといったG1馬を抑えて堂々の一番人気に支持された。

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スタートすると、高松宮記念を逃げ切ったショウナンカンプが好スタートからハナを切って軽快に逃げる。アドマイヤコジーン、ビリーヴが2,3番手からこれを追う展開。

前3頭の隊列は変わらないまま最終コーナーから直線へ向かう。逃げるショウナンカンプの脚色はまだまだ衰えないが、外からアドマイヤコジーンが並びかけていく。ビリーヴと武豊騎手はすかさず進路を内に切り替えてショウナンカンプのインを突く。

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ラスト100mほどでついにショウナンカンプを交わして先頭に立つと、そのままアドマイヤコジーンも振り切って先頭でゴール。名手武豊騎手がガッツポーズを繰り出す会心の走りで、ビリーヴが一気に短距離界の頂点に立ってみせた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ビリーヴの戦歴はここまで通算20戦目。勝利が遠い時期も過ごしながらコツコツと積み重ねた勝利の数は8勝目となり、ついにG1馬の仲間入りを果たした。

また、この年に亡くなった父サンデーサイレンスにとって短距離G1はこれが産駒初勝利。偉大な父にまた新たなタイトルをもたらしたのだった。

海外も経験

スプリンターズS制覇のあとは海外G1制覇を狙って香港スプリントに挑戦したが、使い詰めだった影響か-20kgの馬体減での出走となり12着に終わった。

5歳時:秋春スプリントG1制覇へ

高松宮記念

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休養明けの阪急杯でよもやの9着のあとはG1高松宮記念へ。不安な臨戦過程だったが、秋春スプリントG1を狙う。

ドバイ遠征と重なった武豊騎手に代わって鞍上を任されたのは安藤勝己騎手。ちょうどこの年、2003年に中央へ移籍して間もない笠松の名手にビリーヴの手綱が託された。

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1番人気は阪急杯Vからこのレース連覇を狙う1枠2番ショウナンカンプ。1枠1番ビリーヴは3番人気。下積み時代から続くライバル2頭が最内枠に並んだ。

ゲートが開くと、いつもよりダッシュが遅れたショウナンカンプが予想通りハナを主張して逃げに持ち込む。ビリーヴも最内枠から2番手集団の一角へ加わっていく。

ショウナンカンプのペースで最終コーナーから直線へ。押し切り態勢で突き放そうとするショウナンカンプに、馬なりで並びかけるビリーヴ。直線半ばまで続いた2頭のマッチレースを制したビリーヴが単独先頭に立つと、セーフティリードをとってゴールまで駆け抜けた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

2着には追い込んだ2番人気サニングデール。ショウナンカンプは最後に失速して7着。のちに屈腱炎が判明してこれをラストランに種牡馬入りした。

勝ったビリーヴは秋・春のスプリントG1制覇を達成。安藤勝己騎手にとってはこれが悲願の中央G1初勝利となった。

マイルでは結果出ず

その後は距離延長で京王杯スプリングカップから安田記念を目指したが、それぞれ8着、12着と結果が出ず。これまでもマイル戦に挑戦してきたが、どうしても1400m以上で勝利をあげることはできなかった。

10勝目

これまでの9勝すべてを記録している1200mに戻り、G3函館スプリントSに出走。断然の1番人気を集めると、スプリント女王の貫禄を見せて快勝。

さすがに得意の1200mなら格が違うという走りで通算10勝目となる勝ち星をあげた。

デュランダル登場

秋はセントウルSからスプリンターズSという前年と同じローテーションで両レースの連覇を目指す。

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ここでは現短距離女王のビリーヴが単勝1.7倍の断然人気だったが、勝ったのは同期の牝馬で2番人気に支持されていたテンシノキセキ。ビリーヴはカルストンライトオの逃げを3、4番手追走から11勝目のゴールを目指したが、先に抜け出したテンシノキセキを捉えきることができずハナ差の2着で惜しくも連覇を逃した。

そして最後に後方から追い込んで3着に入ったのはデュランダル。この秋から短距離路線に本格参戦して上位に食い込んできた。

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スプリンターズS

連覇がかかるスプリンターズSがビリーヴにとって引退レースとなる。1番人気に応えて有終の美を飾れるか注目が集まる。

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スタートすると、逃げると思われたカルストンライトオはダッシュがつかず替わりにハナを奪ったのはテンシノキセキ。ビリーヴは4番手で馬群の外を追走。末脚注目のデュランダルは最後方から。

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ビリーヴと安藤勝己騎手のコンビは最終コーナーで外から先頭に並びかけると、抜群の手応えで最後の直線へ。早めに抜け出して中山の急坂を越えたところで連覇が見えたかに思えたが、大外からデュランダルの末脚一閃。内外離れて二頭が並んだところがゴールだった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

結果はハナ差デュランダルの聖剣がビリーヴに届いていた。デュランダルの脅威の末脚の前に惜しくもスプリンターズS連覇はならなかったが、短距離女王の走りはラストランでも健在であることを印象付ける白熱のレースだった。

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引退、米国で繁殖入りへ

激闘の2週間後に行われた引退式にはビリーヴとコンビを組んだ岩田康誠騎手、武豊騎手、安藤勝己騎手らが顔を見せ、まだまだG1戦線でやれそうな遅咲きのスプリント女王の引退を惜しみつつ見送った。

引退後はアメリカでの繁殖入りが決まっており、引退式が行われた約1ヶ月後には競争生活を送った日本に別れを告げて渡米した。

ビリーヴにとっては、父サンデーサイレンス、母グレートクリスティーヌの故郷であるアメリカは第二の故郷のようなもの。何年後かにアメリカから日本へ渡ってくるであろう産駒に思いを馳せると、壮大な競馬のロマンを感じずにはいられなかった。

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、ビリーヴ。

史実のビリーヴ

基本情報1998年4月26日 牝 鹿毛
血統父サンデーサイレンス
母グレートクリスティーヌ(父Danzig)
馬主前田幸治
調教師松元茂樹(栗東)
生産牧場上水牧場(北海道鵡川町)
通算成績28戦10勝(国内27戦10勝、海外1戦0勝)
主な勝ち鞍02'スプリンターズS,03'高松宮記念

エピソード①母として

超良血の血統背景からも当然のごとく期待を集めたアメリカ産まれのビリーヴ産駒は、初仔のファリダット(牡・父Kingmambo)が安田記念3着をはじめ芝・ダートを問わない走りでいきなり活躍した。

その後も芝の短距離でオープン特別2勝の快速馬フィドゥーシア(牝・父Medaglia d'Oro)などコンスタントに活躍馬を輩出。産駒はいずれも母と同じように晩成傾向のゆったりした成長曲線を描くスピードタイプが多かった。

そして7番仔のジャンダルム(牡・父Kitten's Joy)が22年のスプリンターズステークスを優勝。見事に同一G1母子制覇の快挙を達成した。ジャンダルムは翌23年から種牡馬入りして母譲りのスピード能力を伝えることが期待されたが、残念ながらわずか2年の種牡馬生活を経て早逝。それでも、残された二世代の産駒からビリーヴのスピードと成長力を受け継ぐ産駒たちの登場を期待したい。

エピソード②孫がデビュー

先に紹介したフィドゥーシアの仔がちょうど今週末(9/20)にデビュー予定になっているようだ。名はグッドピース(牡馬・父Kingman)。母系にビリーヴを持つ孫の走りにも注目したい。

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この記事を書いた人
ライターE
ライターE

BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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いただいた内容は担当者が確認のうえ、順次対応いたします。個々のご意見にはお返事できないことを予めご了承くださいませ。


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