競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第41回。今回は、府中で無類の強さを誇った男勝りの女傑「ウオッカ」について熱く語ります。
目次
64年ぶり牝馬のダービー馬
男勝りの女傑
ウオッカと言えば、牝馬としてダービーを制した歴史的偉業が有名だが、それ以外にも当時の歴代タイ記録である7つのG1勝利数など数々の記録を打ち立てた。その7冠のうちダービーを含めて実に5つもの牡牝混合G1を勝った男勝りの女傑である。
府中最強
東京競馬場はホームグラウンド
引用元:JRA日本中央競馬会
また、特に東京競馬場(府中)を大の得意としており、ダービー以降の6つのG1勝利はすべて東京競馬場で勝ち取ったものだ。
逆に東京競馬場以外ではあっさりと負けてしまうレースも多く、これだけ分かりやすく競馬場によって成績が偏っていた名馬も珍しい。ゆえに、牝馬ダービー馬の肩書きもさることながら、府中では歴代最強クラスという個性も彼女の魅力のひとつとして語られる。
血統と馬名
ウオッカは父タニノギムレット、母タニノシスターという血統。母系はウマ娘トレーナーにもお馴染みのシラオキ系。そして父タニノギムレットは2002年の日本ダービーを制した名馬だ。
母父ともにオーナーはウオッカと同じ谷水氏で、タニノギムレットの初年度産駒であるウオッカはオーナーゆかりの血筋の結晶とも言える。
馬名の由来は、父のギムレットがジンベースのカクテルの名前であることから連想して、ジンよりもアルコール度数がさらに高いウオッカと命名された。
2歳時
デビュー前
育成牧場時代から調教が進むにつれて頭角を現し、入厩するころには評判の存在となっていた。2歳春に角居厩舎に入厩すると、同年代の馬では相手にならず厩舎の先輩オープン馬たちと併せ馬を行うほどだった。
メイクデビュー
夏のデビューを目指していたが一頓挫あって立て直し、10月の京都開催でのデビューが決まる。
京都芝1600m新馬戦。2番人気のウオッカは、先手を取るとそのまま後続を寄せ付けず3馬身半差をつけて楽勝でデビュー戦を飾った。
初黒星
新馬勝ちをおさめたあとは中一週で1勝クラスの黄菊賞(京都芝1800m)へ。将来を見据えて中団に控える競馬を試みたが、マイペースで逃げた勝ち馬を捉えることができず2着となった。
阪神ジュベナイルフィリーズ
2戦目で土がついたものの、ウオッカの素質を高く評価する角居調教師は1勝の身でありながらG1阪神ジュベナイルフィリーズに出走登録。抽選を突破して出走が決まる。
ウオッカは4番人気。1番人気には目下3連勝中のアストンマーチャン。
内枠2番から好スタートを決めると、中団ポジションに控える。1番人気のアストンマーチャンは先行勢3番手集団をキープしている。
最終コーナーを周ると、ウオッカは真ん中を割ろうとするが、進路が狭くなって外に持ち直すロス。その間にアストンマーチャンが先に抜け出して後続を突き放しにかかる。そのままアストンマーチャンがリードを広げ勝負あったかと思われたが、ようやく加速のついたウオッカが猛然と迫り、ゴール直前で交わした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
勝ちタイムは芝1600mの2歳レコードという好記録。ウオッカが2戦1勝のキャリアから重賞初挑戦でG1制覇を成し遂げ、2歳牝馬の頂点に立った。
3歳時
エルフィンステークス
阪神ジュベナイルフィリーズ後は放牧には出さず厩舎で調整され、3歳初戦はエルフィンステークスを選択。他馬より負担重量が2キロ重い条件だったが、ほとんど強く追われることなく楽勝し、2歳女王の貫禄を見せつけた。
ダイワスカーレット登場
牝馬クラシック戦線の主役として桜花賞へ向かうウオッカの前に、強力なライバルが登場する。桜花賞トライアルのチューリップ賞。1番人気ウオッカに挑むのは、ここまで3戦2勝のダイワスカーレット。
レースは、この先の2頭のライバル関係を予感させるような一騎打ちとなった。逃げるダイワスカーレットに、中団待機のウオッカが直線で襲いかかる。3番手以下を大きく引き離し2頭のマッチレースとなった結果は、ウオッカがわずかクビ差で競り勝ち3連勝で本番へ向かうこととなった。
桜花賞
チューリップ賞の結果は接戦だったが、本番での評価はウオッカが圧倒的な1番人気。そして2番人気にはフィリーズレビューを勝ってきたアストンマーチャンが続き、僅差の3番人気がダイワスカーレット。まだこの時点ではウオッカの1強+それを追う2頭という感じだった。
桜花賞がスタートすると、揃って外枠に入った有力各馬は先行勢の出方を伺う。やがてアストンマーチャンが一気に前へ上がると、ダイワスカーレットも連れて先行3番手のポジションまで進出。ウオッカは6,7番手のやや下がった位置でそれを見る。
アストンマーチャンとダイワスカーレットが先頭に並らびかけて最終コーナーから直線へ。ウオッカも外目をついて上がってくる。
アストンマーチャンを競り落とし、抜群の手応えで抜け出したダイワスカーレットに、後ろからウオッカも並びかける。しかし、逆に突き放されて1馬身半差をつけられて2着でゴール。ダイワスカーレットの安藤勝己騎手がゴール手前でガッツポーズを出すほど余裕があった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ダービーへ
夢の父娘制覇目指して
桜花賞2着のあと、ウオッカ陣営は日本ダービーへの参戦を表明。タニノギムレット産駒での父仔2代ダービー制覇を狙うオーナーの意向と、角居調教師の判断による選択だった。
この決断には、牝馬の参戦自体が11年ぶりということからも分かる通り、無謀な挑戦だとする厳しい意見も多かった。しかも、桜花賞馬ダイワスカーレットがオークス直前で感冒(カゼ)により回避したこともこれに拍車をかけた。つまり、「オークスに出れば勝てるのに」ということである。
日本ダービー
そんななか、運命のダービーを迎える。1番人気は皐月賞3着、重賞3勝のフサイチホウオーで騎手は奇しくもダイワスカーレットの主戦・安藤勝己騎手。2番人気に皐月賞馬ヴィクトリーが続き、3番人気が紅一点ウオッカである。
皐月賞を逃げ切ったヴィクトリーが出遅れる波乱含みの展開で幕を開けると、伏兵のアサクサキングスが先手を奪い軽快なペースで逃げる展開。ウオッカは中団の馬群の中で脚をためる。
アサクサキングス先頭のまま最終コーナーを周り東京の長い直線へ。出遅れを挽回して4番手で直線へ向いたヴィクトリーは伸びる気配がなく、ウオッカの前でレースを運んだフサイチホウオーも反応が鈍い。
そんな中、一頭だけ次元の違う末脚で東京の直線のど真ん中を切り裂くように上がってきたのがウオッカだった。逃げたアサクサキングスをあっという間に捉えると、あとは独壇場。3馬身差をつけて大歓声の中ゴール板を駆け抜けた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
2着には最後まで衰えることがなかったアサクサキングスが粘り込んだ。ちなみに3着に入ったアドマイヤオーラは、11年前に牝馬としてダービーに挑戦したビワハイジの仔である。
64年ぶりに牝馬としてダービー制覇
牝馬がダービーを制したのは戦後初、実に64年ぶり3頭目の快挙だった。大半の競馬ファンが初めて目撃する出来事である。それをやってのけた瞬間に、ウオッカは競馬史に残る競走馬となったのだ。
もちろん父娘によるダービー制覇は史上初で、オーナーの描いた夢は現実のものとなった。
凱旋門賞挑戦プラン
偉業を成し遂げたウオッカには、さらなる夢がかけられた。フランス・凱旋門賞への挑戦である。ダービーで見せた走りからすると、もはや無謀な挑戦とは思われなかった。凱旋門賞では負担重量の軽い3歳馬の活躍が多く、3歳牝馬の優勝馬も少なくないのだから、むしろ期待のほうが大きかった。
しかし残念ながらこのプランが実現することはなかった。
渡仏前に出走した宝塚記念では3歳牝馬ながら1番人気に支持されたものの、見せ場なく8着に沈む。そしてフランス遠征に向けて調整されていたが、脚元に不安が発生。症状は軽かったが、万全の状態で出走できないということでフランス遠征は断念となった。
3歳秋の戦い
秋華賞
秋は国内のレースに専念することが決まったウオッカの次なる目標は、牝馬同士の戦いに戻って最強を証明することだった。
ところが、体調を立て直してぶっつけで挑んだ秋華賞でウオッカの前に立ちはだかったのはまたしてもダイワスカーレットだった。
ダイワスカーレットが2番手追走から抑えきれない手応えで抜け出すと、そのままリードを保ったまま危なげなく勝利して牝馬2冠を達成。ウオッカも後方待機策から猛然と追い込んだが、2着争いでもわずかに遅れを取り3着までだった。これでダイワスカーレットに対しては2連敗で負け越しとなった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
狂った歯車
逆転を期して臨んだエリザベス女王杯は、前売りオッズで1番人気だったものの当日の朝に右関節跛行(外傷や捻挫などによる歩様の異常)の診断で出走を取り消し。ウオッカのいないエリザベス女王杯を勝ったのは、断然の1番人気になったダイワスカーレットだった。
勝ち星から遠ざかる
仕切り直して参戦したジャパンカップでは、最後方から直線だけでよく追い込んだが届かず4着。
ファン投票1位で選出された年末のグランプリ有馬記念は、長い間牝馬が勝っていない難関レース。ライバルのダイワスカーレットが2着に健闘したのとは対象的に、11着と大敗を喫した。
4歳時
最後の右回り
4歳になったウオッカの初戦はG2京都記念。ここでも不振から抜け出すことはできず6着に終わった。
これまでの敗戦の原因を右回りコースにあると考えた陣営は、これ以降左回りのレース(国内は東京競馬場、海外はドバイ)に絞って出走させる方針を決める。
徹底した左回り
海外初挑戦となったドバイデューティーフリー(現・ドバイターフ)では、武豊騎手との新コンビで後方から追い込んで4着。
帰国後、東京開催のG1レースに狙いを定めヴィクトリアマイルから安田記念というローテーションが組まれる。
ヴィクトリアマイル
第3回ヴィクトリアマイルには、ダイワスカーレットのような強力なライバルも見当たらず久しぶりの1番人気。ダービーを制した東京競馬場での復活が期待された。
しかし同世代の新鋭エイジアンウインズに敗れて2着。ダービー以来の勝利はならなかった。
安田記念
勝ち星から遠ざかってはいたものの、左回りでは安定した成績を残してきた。ジャパンカップ4着、ドバイデューティーフリー4着、ヴィクトリアマイル2着。そして遂にその時が訪れる。
初騎乗の岩田康誠騎手を背に、好スタートから積極的な先行策で好位につけたウオッカは、4,5番手で最後の直線を迎える。進路の空いたインコースに潜り込むと、あっという間に抜け出して2馬身、3馬身と後続を突き放す。
最後は2着に3馬身半差をつける会心の勝利でダービー以来となる3つ目のG1を手にした。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ダービー馬がその後勝てなくなってそのまま引退というケースはいくつも見てきた。ウオッカにも、ダービーですべてを出し尽くした感が漂っていたのは否めない。しかし、その懸念はこの安田記念快勝により払拭されただけでなく、むしろこれはウオッカの真骨頂の幕開けに過ぎなかったのだ。
秋の東京3連戦
毎日王冠
秋初戦のG2毎日王冠では意外な逃げを打って僅差の2着。敗れはしたものの、自ら作ったペースで好タイム決着のアタマ差2着は敗けてなお強しという内容ではあった。
伝説の名勝負
天皇賞(秋)
そして、前年の有馬記念以来となるダイワスカーレットとのライバル対決最終章を迎える。舞台は得意の東京競馬場、天皇賞(秋)。
ダイワスカーレットは怪我から回復してここが復帰戦。4月の産経大阪杯以来となる7ヶ月ぶりの長期休養明けである。そしてもう一頭、当年のダービー馬ディープスカイを加えた三つ巴が予想されていた。
レースは、休み明けのダイワスカーレットが果敢に先手を奪い逃げる展開。ディープスカイが5,6番手、ウオッカがその直後につけて追走する。
休み明けにも関わらず軽快なペースで飛ばすダイワスカーレットはさすがに厳しいかと思われたが、こちらも並大抵の牝馬ではない。
直線に入ると、まったく先頭を譲る様子のないダイワスカーレットのリードはまだ2馬身ほど。そして外からウオッカとディープスカイが並んで追い込んでくる。内で粘るダイワスカーレットに対し、馬場の外目をついてウオッカとディープスカイが交わし、外2頭の叩き合いで決するかと思われたが、闘志に火のついたダイワスカーレットが驚異的な勝負根性で差し返す。
勝負は内のダイワスカーレットか、ディープスカイとの叩き合いをわずかに制したウオッカか。長い写真判定の末、わずか2センチ差でウオッカが勝っていた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
上位5頭までがハナ、クビ、ハナ、クビ差で並ぶ史上稀に見る大接戦となった天皇賞は、ウオッカとダイワスカーレットが最後の直接対決で見せた伝説の名勝負となった。
引用元:JRA日本中央競馬会
際どい写真判定の写真などを含むレース回顧を下記のリンク先から閲覧することができる。
数々の記録
勝ちタイムの1分57秒2は、従来記録を0.8秒更新するレースレコード。ウオッカはこれで4つ目のG1制覇。そのうち東京競馬場の異なる距離(1600m,2000m,2400m)のG1級競争を制覇した。また牡牝混合G1を3勝目で牝馬としての最多記録を更新。牝馬による天皇賞1,2着決着は50年ぶりだった。
ジャパンカップ
激戦の天皇賞のあとはジャパンカップへ。3番手につける先行策をとったが、持ち前の末脚はいつもほどの切れ味はなく、後ろから来たスクリーンヒーローとディープスカイに差されて3着止まりだった。
5歳時
ウオッカ流ローテーション
ファン投票1位の有馬記念は回避して5歳シーズンに備えたウオッカ陣営。春はドバイ→東京開催という左回りに狙いを定めたウオッカ流ローテーションが貫かれた。
ドバイでは結果出せず
G1ドバイデューティーフリー(芝1777m)を目標に現地入りし、同距離で行われるG2のステップレースを使って本番へ向かう入念な遠征プランが敢行されたが、5着、7着と海外での初勝利はならなかった。
ヴィクトリアマイル
帰国したウオッカは前年と同じくヴィクトリアマイルから安田記念というローテーション。まずは前年惜敗のヴィクトリアマイルだ。単勝1.7倍の1番人気に支持されたウオッカは、圧巻の走りを披露する。
好スタートから5,6番手をスムーズに追走すると、直線では抜群の手応えで早々と先頭に立ち、あとは突き放す一方。独走状態となったウオッカが2着につけた着差は7馬身。時計にして1.2秒もの差をつけた。
直線では強い向かい風という条件だったにも関わらず、レコードタイムを叩き出す圧巻のパフォーマンスだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
また一つ東京競馬場で勲章を追加したウオッカは、牝馬としてG1級競争5勝はメジロドーベルに並んで歴代最多となった。
府中マイル
府中のマイルはウオッカにとって最適の舞台だった。東京競馬場であれば2400mのダービーを勝ち、ジャパンカップでも好走できることは証明済みだったし、2000mの天皇賞ではレースレコードを樹立した。
それでもやはり、スローペースでは決め手を削がれることがあったため、ある程度速いペースで流れる1600mはベストの条件だった。
安田記念
ヴィクトリアマイル圧勝の勢いのまま、同じく府中のマイルを舞台に安田記念の連覇に挑む。このレースはウオッカが東京競馬場で見せた数あるレースの中でもひと際強烈なインパクトを残すことになる。
相手はこちらも東京巧者ディープスカイ。ウオッカとは過去2度の対戦でいずれも僅差の接戦を演じた相手だ。
ウオッカは先行グループのやや後ろ6,7番手のインにつけると、じっと脚をためて最終コーナーを周る。ディープスカイはすぐ後ろだ。
直線に入って先に抜け出したのは、ウオッカのインをついたディープスカイ。ウオッカは馬群の中でなかなか進路が開かず追い出すことができないでいる。このままでは間に合わない。
残り200mを切ったところで、ようやくわずかな隙間を強引にこじ開けたウオッカはそこから驚異的な加速を見せ、瞬く間にトップスピードにのって先に抜け出していたディープスカイをも捉えてしまった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
固有発動
ウマ娘のウオッカが持つ固有スキル「残り200mを切って前の方にいると競り合いに強くなり速度が上がる」はまさにこのレースを再現したものと思われる。
連覇達成
安田記念の連覇はヤマニンゼファー以来となる史上2頭目。また、6勝目のG1制覇で牝馬としての単独トップの記録を達成。獲得賞金も牝馬初の10億円を突破した。
秋の東京3連戦(再)
連敗
ファン投票1位の宝塚記念を見送ったウオッカは、秋も前年と同じローテーションを貫く。毎日王冠→天皇賞(秋)→ジャパンカップの東京3連戦だ。
秋初戦の毎日王冠は、前年と同じように先手を取って逃げたもののカンパニーに交わされて2着。連覇を狙った天皇賞では追い込んで届かずまたしてもカンパニーの3着まで。東京競馬場での連敗は初めてだった。
ジャパンカップ
年内引退が発表されていたウオッカにとって、東京競馬場でのレースはこれが最後となるジャパンカップ。記録と記憶に残る数々の名勝負を見せてきた東京競馬場で有終の美を飾ることができるか。
初騎乗のルメール騎手とウオッカは、好スタートをきると4,5番手の位置で折り合いをつける。武豊騎手騎乗のリーチザクラウンが軽快に逃げる展開は、ハイペースが合うウオッカ向きのレース展開だった。
3番手集団で最終コーナーを周ると、いつでも抜け出せるという手応えで最後の直線へ。追い出しを我慢して残り300mあたりで先頭に躍り出ると、2馬身、3馬身とリードを開く。しかし、最後の100mで脚が止まると、追い込んできたオウケンブルースリに並ばれ際どい勝負にもつれ込んだところがゴールだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
伝説の天皇賞を思い起こさせる長い写真判定の末、1着はハナ差で凌いでいたウオッカ。着差はダイワスカーレットとの激戦と同じくわずか2センチだった。
引退
最後まで左回りで
ファン投票1位の有馬記念は、さすがに引退レースとして出走する可能性があったが、ジャパンカップのレース中に鼻出血をしていたことが判明して出走は叶わなかった。
これで引退のはずだったが、最後に3月のドバイワールドカップに挑戦するプランが持ち上がる。そして年が明けた6歳の3月、ドバイワールドカップの前哨戦として出走したG2マクトゥームチャレンジラウンド3に出走(8着)後にふたたび鼻出血が認められ、ドバイワールドカップ回避および引退が決まった。
稀代の個性派
最後にジャパンカップを勝ったことでシンボリルドルフやテイエムオペラオー、ディープインパクトらに並んで歴代最多の7冠を達成。そのうちの6冠を東京競馬場で積み重ねた。
ウオッカの勝ったレースはレコードや史上初など記録に残るものばかりだが、同時にどれもが記憶に残るレースばかりだ。圧勝のダービーや安田記念、ヴィクトリアマイルはもちろんだが、長い写真判定にもつれ込むほどの大接戦を制する勝負強さもウオッカの真骨頂と言える。
東京競馬場に偏った極端な競走成績は、どんな条件でも強かった歴代の7冠馬たちと比べると個性が際立つ。数々の記録のうちのいくつかはのちに9冠馬アーモンドアイに塗り替えられたが、史上唯一、有馬記念のファン投票で3年連続1位に選ばれるほど愛されたウオッカの個性はこれからも語り継がれるだろう。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、ウオッカ。
史実のウオッカ
基本情報 | 2004年4月4日生 牝 鹿毛 |
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血統 | 父 タニノギムレット 母 タニノシスター(父ルション) |
馬主 | 谷水雄三 |
調教師 | 角居勝彦(栗東) |
生産牧場 | カントリー牧場(静内町) |
通算成績 | 26戦10勝(うち国内22戦10勝,海外4戦0勝) |
主な勝ち鞍 | ’06阪神ジュベナイルフィリーズ、’07日本ダービー、’08,’09安田記念、’08天皇賞(秋)、’09ヴィクトリアマイル、’09ジャパンカップ |
エピソード① ヒーロー列伝
JRAポスター「ヒーロー列伝」のキャッチコピーを見てみよう。(ポスター画像はリンク先で見られる)
引用元:JRAポスター ヒーロー列伝(No.65)
ポスターには、64年ぶりに牝馬として日本ダービーを制した時の写真が用いられている。当時の皇太子殿下(現天皇陛下)に向かって、馬上で脱帽し最敬礼する四位騎手の姿も美しい。
エピソード② 府中の申し子
以前、番外編でも紹介したことがあるが、改めてウオッカの東京競馬場◎ぶりを振り返ってみよう。
7つのG1勝利のうちの6勝が東京競馬場で、3歳限定戦のNHKマイルカップとオークス以外、東京競馬場の芝で行われるG1レースをことごとく制覇。ダービー以降は東京競馬場でしか勝っていないという筋金入りの東京巧者である。
ウオッカが愛した東京競馬場内の庭園には、オーナーが寄贈したウオッカの銅像が建てられている。
エピソード③ タニノギムレット実装!
ウマ娘の4thライブイベント内で、タニノギムレットの登場が発表された。ウオッカの父として知られる同馬だけに、愛娘ウオッカとどんな絡みを見せてくれるか楽しみだ。
ウオッカ&ギムレットとダスカ&タキオン
ウマ娘でもウオッカとダイワスカーレットのライバル関係は史実に勝るとも劣らないほど濃厚に描かれている。そしてここにウオッカの父タニノギムレットが加わることで、さらに深いドラマが繰り広げられることに期待したい。
タニノギムレットとダイワスカーレットの父アグネスタキオンはひとつ違いで対戦することはなかったが、どちらも故障なく無事だったら・・・のIFのストーリーも含め、ウオッカ父娘とダスカ父娘から目が離せない。
なおタニノギムレットは23歳を迎える今年も健在で、繋養先のYogiboヴェルサイユ・リゾート・ファームの公式サイトやTwitter、Youtube公式チャンネルで元気な姿を見ることができる。
牧柵や飼葉桶などを壊しまくる破壊王として知られるタニノギムレットのバースデードネーションには、牧柵基金などユニークな企画もあるのだ。
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