第43回:女帝、エアグルーヴの物語

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【ウマ娘】第43回:女帝、エアグルーヴの物語

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【ウマ娘】第43回:女帝、エアグルーヴの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第43回。今回は、女帝「エアグルーヴ」について熱く語ります。

目次

近代名牝の礎を築いた女帝

偉大な功績

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

女帝。エアグルーヴがなぜそう呼ばれるのか?それは、牝馬として成し遂げた数々の功績に対する最大級の敬意からきたのだろう。

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

戦績だけを見ると近年の歴史的な名牝たちほどでもないようにも思えるが、当時は牝馬が牡馬に混じって第一線で対等に活躍するということが非常に難しい時代だった。

常に王道

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そういう時代に、常に王道のG1路線を歩み続け、牡馬を相手にしても互角以上に渡り合った男勝りの女傑として、後に続く名牝たちの礎を築いた一頭だった。

今回は、エアグルーヴがいかにして女帝たる道を歩んだのか、その史実を追っていく。

デビュー前

血統

エアグルーヴは父トニービン、母ダイナカール(父ノーザンテースト)という血統。父のトニービンは、凱旋門賞などを制覇したイタリアの名馬。オグリキャップとタマモクロスが激闘を繰り広げたジャパンカップに参戦し、その後日本で種牡馬となった。コミック「シンデレラグレイ」でもトニビアンカとして描かれている。

種牡馬としても大成功を収め、代表産駒には牝馬2冠のベガやダービー馬ウイニングチケット、ジャングルポケットなどがいる。産駒は東京競馬場に強く「府中ではトニービンを買え」などと言われるほどだった。

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母はオークス馬ダイナカール。ウマ娘の育成ストーリーでもエアグルーヴの物語にたびたび登場する。この母もまた有馬記念4着など牡馬に混じって善戦した実績の持ち主だ。

幼駒時代

産まれたばかりのダイナカールとトニービンの仔(のちのエアグルーヴ)を牧場で見た伊藤雄二調教師は、「ものすごい衝撃」と本馬に惚れ込んだという。伊藤雄二調教師は同じトニービン産駒のウイニングチケットをすでに管理しており、エアグルーヴの産まれた1993年のダービーを勝つことになる。

2歳時

デビュー前

順調に成長したエアグルーヴは2歳になり伊藤雄二厩舎へ入厩。伊藤雄二調教師が惚れ込んだ素晴らしい馬体は460キロ台の均整の取れた体つきに成長していたが、元来からゆっくりと馬の成長を促す伊藤雄二厩舎の方針に則って大事に育成された。

メイクデビュー

デビューは夏の札幌開催。芝1200m新馬戦で武豊騎手を背にデビューを果たす。単勝1.6倍の1番人気に支持されたが、クビ差届かず2着に敗れた。

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初勝利

2戦目はデビュー戦から3週間後の札幌開催で同条件の新馬戦に出走。今度は1.1倍の断然人気に応えて5馬身差をつけて快勝。初勝利をおさめた。

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衝撃のいちょうステークス

初勝利から間もなくして、最初の衝撃が訪れる。エアグルーヴを知る人にとって忘れがたいレースの一つと言えるだろう。それが、3戦目に出走したオープン特別のいちょうステークスだ。現在のG3サウジアラビアロイヤルカップの前身にあたるレースである。

エアグルーヴは4,5番手のインコースを進み直線へ差し掛かる。抜群の手応えで最内から抜け出そうと加速したところで、前を行く馬が急に内側へよれて進路がカットされてしまう。内ラチにぶつかるのを回避するために武豊騎手が体を起こし、手綱を引いて急ブレーキせざるを得ないほどだった。

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並の馬ならここで万事休す。ところが、エアグルーヴの闘志は消えていなかった。驚くことにここから態勢を立て直して進路を確保すると再度加速。一旦は交わされた馬たちをあっという間に差し返してしまったのだ。

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筆者も大興奮

この様子をTVで目撃した筆者も、「なんだ今のは!!?」と大きな衝撃を受けて大興奮したのを覚えている。とんでもない馬が現れたと直感し、このいちょうステークス以降エアグルーヴという牝馬を追いかけ続けることになる。

阪神3歳牝馬ステークス

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2勝目を挙げたエアグルーヴはG1阪神3歳牝馬ステークス(現阪神ジュベナイルフィリーズ)に参戦。武豊騎手が1番人気イブキパーシヴに騎乗したため代打騎乗はアイルランドの名手マイケル・キネーン騎手。

レースはこちらも武豊騎手から角田晃一騎手に乗り代わった2戦2勝のビワハイジが先手を取って逃げる展開。その2番手につけたエアグルーヴ。人気のイブキパーシヴは4番手あたりを追走した。

スローペースに落としてマイペースで逃げるビワハイジがあれよあれよとそのまま逃げ切り、捕まえきれなかったエアグルーヴは半馬身差の2着まで。武豊騎手のイブキパーシヴは3着だった。

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レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

3歳時

チューリップ賞

3歳になると、桜花賞トライアルのG3チューリップ賞から始動。阪神3歳牝馬ステークスで後塵を拝した1番人気ビワハイジとの再戦となったが、今度はエアグルーヴが5馬身差をつけて圧勝。前走の借りを返した。

桜花賞へ向けて

チューリップ賞の快勝によりエアグルーヴの評価は急上昇し、桜花賞候補の筆頭となった。しかし本番を前に熱発(風邪などによる発熱)を発症し、症状は重くなかったが大事を取って回避することが決まった。

オークス

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桜花賞参戦を見送ったエアグルーヴは仕切り直し、13年前に母ダイナカールが勝ったオークスで母娘2代制覇を目指す。

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混戦の桜花賞を制したのが伏兵のファイトガリバーだったこともあり、熱発から回復したエアグルーヴが1番人気となる。いちょうステークスを勝った東京競馬場はトニービン産駒の得意舞台でもある。

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外枠15番に入ったエアグルーヴは好スタートから先行6,7番手の外目につける。最終コーナーで徐々に進出し前を射程圏内に捉えると、直線で馬場の外へ持ち出す。仕掛けられてさあ加速、というところで、先行していた内のノーズサンデーが大きく外へ斜行。外側にいた3,4頭がドミノ倒しのように次々に接触してエアグルーヴもよろめくアクシデント。

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しかし、またしても不屈の闘争心で立て直して加速すると、力強く抜け出して先頭でゴール。外から迫った桜花賞馬も抑えて世代の頂点の座をもぎ取った。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

史上2例目の快挙

母娘2代でのオークス制覇は史上2例目、42年ぶりの快挙だった。

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秋華賞

オークス後は休養し、秋はぶっつけで秋華賞に出走。しかしながら、断然の1番人気に応えることができず10着と初めて大きく負けてしまう。レース後には右前脚の骨折が判明して長期休養を余儀なくされる。

また、このレースではエアグルーヴはパドックから神経質でイレ込んだ様子を見せていた。レース後に伊藤雄二調教師は「絶対に負けられないという気持ちで仕上げすぎてしまった」と語り、それも精神面に微妙な影響をおよぼしたようだ。あとになってみると、エアグルーヴがらしくない姿を見せたのはこの秋華賞が唯一だったのではないか。

4歳時

長期休養明け

骨折の治療を経てエアグルーヴが戦列に復帰したのは3歳の6月。牝馬限定の重賞として前年に新設されたマーメイドステークスがエアグルーヴの復帰戦に選ばれた。

先行策から早めに進出して抜け出して1着でゴール。オークス以来となる勝利をあげ、長期休養明けの不安と骨折の影響を払拭してみせた。

札幌記念

マーメイドステークス後は、G2に格上げされて好メンバーが揃った札幌記念へ出走。皐月賞とマイルチャンピオンシップを勝ったジェニュインを筆頭に、秋華賞2着の同期エリモシックや重賞2勝のアロハドリームらが相手だ。

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エアグルーヴと武豊騎手は中団につけると直線で楽に抜け出し、後続のエリモシック、アロハドリーム、ジェニュインらを完封。

前年の牝馬クラシックから前走のマーメイドステークスまでは牝馬限定戦を戦ってきたが、試金石となる牡牝混合の一戦を快勝。秋の目標レースが決まった。

天皇賞へ

札幌記念での戦いぶりから、秋の目標レースは天皇賞に定められた。牡馬の一線級相手でもエアグルーヴは十分に戦えるという判断だった。

歴史的名牝へ

天皇賞(秋)

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迎えた秋の天皇賞。牝馬が天皇賞を勝ったのは、1980年のプリティキャストまで遡る。秋の天皇賞が2000mで実施されるようになってからはまだ牝馬による勝利はなかった。

1番人気はバブルガムフェロー。エアグルーヴとは同期で、前年に3歳馬ながら天皇賞を制して歴史に名を刻んだ名馬だ。鞍上は名手・岡部幸雄騎手。2番人気にエアグルーヴと武豊騎手。札幌記念で負かしたジェニュインや本格化前のサイレンススズカは伏兵という存在で、実質的に二強対決という構図だった。

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サイレンススズカが後続を離して逃げる展開。バブルガムフェローは好位3番手につけ、エアグルーヴは中団から。サイレンススズカが5馬身のリードを保ったまま直線へ向く。エアグルーヴが外からバブルガムフェローに並びかけ、ともに上がってくる。

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2頭が馬体を併せてサイレンススズカを交わすと、そこからはマッチレース。前に出るエアグルーヴ、差し返そうと食い下がるバブルガムフェロー。岡部と武豊、二人の名手による叩き合いが続き、わずかにエアグルーヴ優勢のままゴール。

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17年振りに牝馬の天皇賞馬が誕生した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

3着のジェニュインを5馬身離した2頭の一騎打ちは名勝負のひとつに数えられる。人気2頭の馬連払い戻しは290円。まだ馬単や3連単の発売はなく、もっとも高い払い戻しだったのはエアグルーヴの単勝4.0倍であった。

王道ローテーションを歩む

ジャパンカップ

今では天皇賞やジャパンカップ、有馬記念など古馬中距離の王道路線で牝馬が活躍することも当たり前となったが、当時は決して容易い挑戦でなかったことは何度も書いてきた。天皇賞馬となったエアグルーヴは、その道を歩んでいく。

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続くジャパンカップでは、バブルガムフェローに加えて世界の強豪を迎え撃つ。その筆頭格と見られたのがピルサドスキー。アイルランド産まれ、イギリス調教馬のピルサドスキーは米ブリーダーズカップターフ制覇をはじめ、凱旋門賞でも2年連続2着などヨーロッパ各地の大レースでも勝ち負けを演じてきた正真正銘の強者だった。ちなみに妹はウマ娘でもお馴染み、ファインモーション殿下だ。

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レースではただ一頭の牝馬エアグルーヴが再びその底力を示す内容となったが、前述のピルサドスキーがその前に立ちはだかった。

バブルガムフェローとともに先行集団につけたエアグルーヴ。直線でバブルガムフェローを競り落として抜け出すと、勝利は目前に思われた。しかし、中団から強烈な末脚で迫ったピルサドスキーにインから交わされ、最後まで食い下がったがクビ差届かなかった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

有馬記念

暮れのグランプリ有馬記念。武豊騎手がマーベラスサンデーに騎乗したためフランスのペリエ騎手とチューリップ賞以来となる2度めのコンビとなった。

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1番人気は武豊騎手が選んだマーベラスサンデー。骨折明けで宝塚記念以来の出走だったが、状態は悪くなかった。エアグルーヴは2番人気。有馬記念もまた牝馬にとっては高い壁というレースだった。

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

5,6番手のインコースにつけたエアグルーヴは、最終コーナーで手応えよく上がっていくと直線入り口で早くも先頭に並びかける。ボコボコに荒れた馬場をものともせずに抜け出すエアグルーヴに、マーベラスサンデーと武豊騎手も並びかけてくる。マーベラスサンデーが交わしにかかると、また食い下がるエアグルーヴ。そこにシルクジャスティスが強襲して3頭の熾烈な叩き合いとなり、ゴールまでもつれ込んだ。

勝ったのはシルクジャスティス。アタマ差2着にマーベラスサンデー、エアグルーヴはマーベラスサンデーにクビ差遅れて3着だった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

26年振りの牝馬年度代表馬

この年、G1を2勝以上した馬は3頭いた。皐月賞・ダービーの二冠馬サニーブライアン、オークス・秋華賞の牝馬二冠のメジロドーベルと、マイルチャンピオンシップとスプリンターズステークスを勝ったタイキシャトル。しかし年度代表馬の選考において絶対的な評価を得る馬はいなかった。

そして、牝馬として天皇賞を制した功績をはじめ、秋の古馬中距離G1すべてで僅差3着以内に入ったエアグルーヴが年度代表馬に選出された。牝馬として年度代表馬に選ばれたのは1971年のトウメイ以来26年ぶりのことだった。

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5歳時

女王対決

5歳になると、G2産経大阪杯(G1昇格前)から始動。メジロドーベルとの新旧樫の女王対決となったが、ここはエアグルーヴが年度代表馬の貫禄を見せて完勝した。

宝塚記念

不良馬場のG2鳴尾記念での2着を挟んで、春の目標レースである宝塚記念へ。牝馬として史上初めてファン投票1位の得票数で選出される。

ここでは、稀代の逃げ馬として覚醒したサイレンススズカがG1初制覇をかけて参戦してきた。武豊騎手は2頭のお手馬からエアグルーヴを選択。サイレンススズカには代打の南井克巳騎手が騎乗した。

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スタート直後から先手を取って逃げるサイレンススズカ、エアグルーヴは中団7番手あたりを追走。3馬身ほどのリードを保ったまま直線に入るサイレンススズカに対し、いつもより反応が鈍いエアグルーヴは中団のまま。

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最後は外から鋭い伸び脚で追い込んだものの、サイレンススズカに逃げ切りを許して3着がやっとだった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

札幌記念連覇

夏は前年に勝って勢いに乗った縁起の良いレースG2札幌記念に出走。重い負担重量を背負いながらも、圧倒的な支持に応えて3馬身差の快勝で連覇を達成。

痛恨の騎乗停止

秋は、前年に勝った天皇賞ではなくエリザベス女王杯からジャパンカップというローテーションが選択された。これにより主戦騎手の武豊騎手が騎乗できる見込みだったが、エリザベス女王杯を目前に控えた新馬戦で騎乗したアドマイヤベガで痛恨の進路妨害をおかしてしまい3週間の騎乗停止処分に。エリザベス女王杯とジャパンカップの騎乗が不可能となってしまった。

エリザベス女王杯

こうして横山典弘騎手に乗り代わったエリザベス女王杯。とは言え、牝馬同士の一戦では実績は一枚も二枚も上のエアグルーヴは単勝1.4倍の断然人気。2番人気メジロドーベルの挑戦を堂々と受けて立つ。これまで3度の対戦成績ではすべてエアグルーヴが先着していた。

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ところが、牝馬限定戦でめっぽう強いメジロドーベルが意地を見せて会心の走りを見せる。ほぼ同じ中団の位置取りで最後の直線を迎える。直線では内を突いたメジロドーベルが切れ味で上回り、エアグルーヴに初めて勝って4つ目のG1タイトルを獲得した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

黄金世代の台頭

ジャパンカップ

続くジャパンカップでは前年2着の雪辱を果たしたいところだったが、黄金世代からスター候補生たちが次々に台頭してくる。

1番人気はダービー馬スペシャルウィーク。2番人気エアグルーヴに続くのは無敗でNHKマイルカップを制し、前走は伝説のG2毎日王冠でサイレンススズカの2着だったエルコンドルパサー。海外招待馬よりも日本馬同士のハイレベルな戦いが見どころだった。

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最内1番枠から4,5番手につけ、インコースで脚をためる。スペシャルウィークはほぼ同じ位置取り、エルコンドルパサーは前方2番手にいる。最後の直線に入ると、エルコンドルパサーに並びかけていくが、前に出ることができない。逆に突き放されると、最後は2馬身半差をつけられてゴール。スペシャルウィークの追い込みは凌いで2年連続の2着にとどまった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

有馬記念

2年連続での参戦となった有馬記念が引退レースとなるエアグルーヴ。騎乗停止が明けたパートナー武豊騎手を背に引退レースに臨んだ。

そして黄金世代からはセイウンスカイとグラスワンダー、キングヘイローらが参戦。牝馬の出走はエアグルーヴとメジロドーベルの2頭。牝馬同士、比較されることも多かったメジロドーベルともこれで5度目、最後の対戦だ。

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好スタートから6,7番手につけるエアグルーヴと武豊騎手。先手を取って引っ張る1番人気セイウンスカイを見てレースを進める。エアグルーヴの直後にぴったりとグラスワンダーという態勢。後方集団からはキングヘイローやメジロブライトが末脚にかける。

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最終コーナー手前で逃げるセイウンスカイと後続の差が縮まると、グラスワンダーとエアグルーヴも同時に上がっていく。後続を引き付けたセイウンスカイが再び引き離すかと思われたが、直線半ばではグラスワンダーにつかまる。エアグルーヴは思ったほど伸びない。

完全に抜け出したグラスワンダーに、追い込み勢からメジロブライトが食らいついていくが大勢は決した。骨折休養明けで不振だった秋のうっぷんを晴らす復活の走りでグラスワンダーが大一番を制した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

エアグルーヴは5着。レース中に落鉄していたことがわかり、残念な引退レースとなってしまった。

引退

女帝として

エアグルーヴはこれまで、どんな条件でも力を発揮して勝ち負けを演じてきた。たとえ相手が牡馬の強豪であろうと、レース中に不利を受けようとも不屈の根性で常にトップを守り続けた。

これこそが後に続く男勝りの女傑たちの先駆者、エアグルーヴの女帝たる姿だった。

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

いちょうステークスで衝撃を受けて以来ずっと彼女を追いかけたが、それはこれからも続いていくだろう。今回コラムを書いて改めて思ったことは、繁殖牝馬としても大成功を収めたエアグルーヴの一族を今後もずっと追い続けていこう。そして、チャンピオンズミーティングでは毎回エアグルーヴを育成しよう、と。「貴様、わかってきたじゃないか」と褒められることを期待して。

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、エアグルーヴ。

史実のエアグルーヴ

基本情報1993年4月6日生 牝 鹿毛
血統父 トニービン
母 ダイナカール(父ノーザンテースト)
馬主㈱ラッキーフィールド
調教師伊藤雄二(栗東)
生産牧場社台ファーム(早来町)
通算成績19戦9勝
主な勝ち鞍’96オークス、’97天皇賞(秋)
生涯獲得賞金8億2196万円

エピソード① ヒーロー列伝

JRAポスター「ヒーロー列伝」のキャッチコピーを見てみよう。(ポスター画像はリンク先で見られる)


引用元:JRAポスター ヒーロー列伝(No.44)

ポスターには天皇賞制覇時の凛々しい写真が用いられている。見栄えのいい馬体と特徴的な鼻の流星、この勝負服に武豊騎手という組合せを見ると、今でもあのいちょうステークスやバブルガムフェローとの叩き合いを鮮明に思い出す。

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

エピソード② 母としても偉大

エアグルーヴが年度代表馬に選ばれた翌年ぐらいだっただろうか。牧場関係者の話としてこんな意見を聞いたことがある。「エアグルーヴが牡馬だったら、トニービンの後継種牡馬になれたのに」というような内容だった。

その時は、生産者やオーナーの立場だったらたしかにそうなのかも知れないな、と思った。しかし、ファンの意見としては「否!」である。彼女が牝馬だったからこそ数々の偉業として歴史に刻まれたし、ドラマチックな物語が産まれた。

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

そして、エアグルーヴは繁殖牝馬としても大成功を収めたことで自らその偉大さを証明してくれた。

エアグルーヴ一族

エアグルーヴは母としてアドマイヤグルーヴやルーラーシップといった多くの一流馬を排出した。そしてまたその仔から仔へ、ドゥラメンテ(母アドマイヤグルーヴ)、タイトルホルダー(父ドゥラメンテ)、スターズオンアース(父ドゥラメンテ)と現在まで繋がるエアグルーヴの血脈は、エアグルーヴ系という名牝系として末永く繁栄していくだろう。

エピソード③ 東京巧者

種牡馬トニービンの仔は東京コースが得意な産駒が多いことを紹介したが、エアグルーヴも例に漏れず大の東京巧者だった。

東京競馬場での通算成績は5戦3勝、2着2回。勝利の内訳は、衝撃のいちょうステークス、オークス、天皇賞(秋)。2着2回はともにジャパンカップである。

今週の一枚

今週も撮影機能を使って撮った渾身の一枚がこちら。

第43回:女帝、エアグルーヴの物語の画像

エアグルーヴとサイレンススズカが再び天皇賞で相まみえたら、というifの物語を想像して撮った一枚。97年天皇賞時のエアグルーヴとバブルガムフェローの一騎打ちを彷彿とさせる場面に、個人的に色々な想いが重なった。

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ライターE
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BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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