競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第56回。今回は、風水でラッキーを呼び込んでダートG1を勝ちまくった!?「コパノリッキー」について熱く語ります。
目次
ダート戦国時代の覇者
最多記録保持
ついに育成ウマ娘として実装された風水ウマ娘、コパノリッキー。ウマ娘の育成ストーリーでも主軸となる「風水」の要素がクローズアップされがちだが、その実力は本物でダート戦国時代の覇者と言ってもいい。
コパノリッキーと同時にウマ娘への登場を果たしたホッコータルマエやワンダーアキュートらと凌ぎを削り、ダートG1(Jpn1※を含む)11勝という最多勝利記録を打ち立てた。
※Jpn1とは・・・グレード競争の国際的な格付けではG1に認定されていないが、日本独自の格付けで最高位に位置するレース。もともとはG1と区別されていなかったが、外国馬が出走できないことなどを理由に国際的な格付けであるG1という表記を使えなくなったレースにJpn1~3までの新たな格付けが与えられた。日本国内ではG1と同義と考えて問題ない。
風水エピソードにも注目
とは言え、ウマ娘コパノリッキーのキャラクターにふんだんに盛り込まれた風水要素にも注目しないわけにいかない。競走馬としての輝かしい実績に加え、オーナー由来の風水エピソードを混じえながらコパノリッキーの史実を追っていく。
オーナーは風水で有名なあの方
馬主としての歴史も長い
とても有名なオーナーなので紹介するまでもないかも知れないが、コパノリッキーの馬主はDr.コパさん(本名:小林祥晃氏)。風水を軸とした開運術で著名な同氏はJRA、地方の馬主としても多くの競走馬を所有してきた。
神職や建築家、作家など多くの肩書きをお持ちだが、同氏の馬主としての歴史は2002年から始まっている。その年の干支は午年だった。
オーナー自身の風水エピソードも反映
ウマ娘のコパノリッキーに反映されている風水エピソードの多くはオーナー自身の体験が基になっており、例えば幼少期に川で溺れそうになったところを龍神様に助けられたエピソードなどがまさにそうだ。
競走馬の史実と馬主やジョッキーのエピソードをミックスさせるキャラクターづくりが上手なウマ娘。今回もその手法でとても魅力的なキャラクターとして登場したコパノリッキーについて、そろそろ本馬のほうの史実を見ていこう。
仔馬時代
血統
コパノリッキーは父ゴールドアリュール、母コパノニキータ(母父ティンバーカントリー)という血統。父のゴールドアリュールは大種牡馬サンデーサイレンス唯一のダートG1勝ち馬で、種牡馬としても本馬のほかにスマートファルコンなどダートの大物を多数排出した名馬だ。
母父のティンバーカントリー産駒もダートでの活躍馬が多く、コパノリッキーはバリバリのダート血統であることがわかる。
2歳時
メイクデビュー
栗東の村山明厩舎に入厩したコパノリッキーは2歳の12月にデビュー。阪神のダート1800m新馬戦に登場するも11頭立ての8番人気という人気薄でのデビューだった。結果も後方からそのまま流れ込んで8着と人気通りだった。
3歳時
人気薄で初勝利
年が明けて3歳になったコパノリッキーは1月の京都競馬場ダート1800mの未勝利戦に出走。新馬戦と同じ8番人気だったが、こんどはレースぶりが一変。2番手につけてスムーズに追走すると直線で難なく抜け出して5馬身差快勝。単勝35.9倍の高配当だった。
連勝
才能の片鱗を見せた未勝利戦から中一週で臨んだ1勝クラス(東京ダート1400m)は前走の勝ちっぷりから1番人気の支持を集めた。そしてまたもや2着を5馬身ちぎる圧勝で連勝を飾ったのだが、このときの2着馬サウンドトゥルーはのちにコパノリッキーのライバルの一頭にまで這い上がってくる馬だ。
オープン勝ち
2連勝でオープン入りしたあとはヒヤシンスステークス3着を経て、3月の中山開催でオープン特別の伏竜ステークス(ダート1800m)を1番人気で勝利。オープンクラスでも順調に勝利を挙げた。
交流重賞へ
そして条件の合うダートの重賞レースを求めて地方交流重賞へ進出。園田競馬の兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)に出走し、単勝1.5倍の圧倒的1番人気に応えて圧勝した。2着ベストウォーリア(この馬ものちにJpn1を勝つ実力馬)に6馬身の差をつけ、3着はさらに9馬身の差がついていた。
休養
交流重賞を圧勝したコパノリッキーは日本ダービーで芝コースに挑戦するプランもあったが骨折が判明し長期休養を余儀なくされる。全治6ヶ月を要して復帰は11月だった。
復帰後連敗
復帰戦の霜月ステークス10着、次戦のフェアウェルステークス9着と精彩を欠くレースが続き、春までの勢いは完全に消えてしまっていた。骨折の影響で元の走りは見られないのかとまで思わせる敗戦だった。
4歳時
驚きのフェブラリーステークス
4歳を迎えたコパノリッキーは少し間隔をとって2月のダートG1フェブラリーステークスに挑戦。連敗の内容からすっかり人気も落としてしまい、なんと16頭立ての最低人気、16番人気。
人気は前年のJRA最優秀ダート馬ベルシャザールと、すでに地方交流重賞を勝ちまくっていたホッコータルマエの2頭に集まる。8歳の古豪ワンダーアキュートの姿もあった。
13番枠から好スタートを決めたコパノリッキーは2番手を追走。ピタッと折り合い、抜群の手応えで直線を迎える。そして早めに先頭に立ったコパノリッキーは追いすがるホッコータルマエを最後まで抜かせずそのまま先頭でゴール。2着ホッコータルマエ、3着ベルシャザールの人気2頭を見事に封じ込めた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
最低人気でJRAの平地G1を勝ったのは史上3頭目、単勝の配当27,210円は史上2番めの高配当、三連単は驚きの90万超えという大波乱の立役者となった。
馬主の小林祥晃氏(Dr.コパさん)はこれがJRAのG1初勝利。乗り替わりで大仕事をやってのけた田辺裕信騎手にとっても初のG1制覇だった。
実力を証明
G1馬となったコパノリッキーは再び地方交流重賞へ目を向け船橋のJpn1かしわ記念へ。1番人気のワンダーアキュートに再び勝ってフェブラリーステークスの激走がまぐれではなかったことを証明したいところ。
よりによって出遅れ気味のスタートから得意の先行策ではなく中団待機になったが、3コーナーから4コーナーで早めに進出を開始すると直線で前を捉えて突き放した。
フェブラリーステークスに続き地方交流のJpn1競争に勝利。この日、5月5日は馬主の小林祥晃氏(Dr.コパさん)の誕生日だった。
帝王賞
続いて大井のJpn1帝王賞に参戦。今度はワンダーアキュートが健在ぶりをアピールする勝利。コパノリッキーはワンダーアキュートに差されて2馬身離された2着に終わった。
帝王賞のあとは連戦の疲れを癒やすため休養に入って秋に備えた。
JBCクラシック
秋初戦は盛岡で行われたJBCクラシック。ワンダーアキュートや3月のドバイワールドカップ挑戦以来の国内復帰戦となるホッコータルマエといった強豪が揃った好メンバーのなか、コパノリッキーは果敢に逃げてそのまま後続を寄せ付けずにレコードタイムを叩き出すという強いレース内容で勝利した。
チャンピオンズカップ
ジャパンカップダートから名称が変わって生まれ変わったG1チャンピオンズカップでJRAダートG1の春秋連覇を狙ったが、こんどは出遅れて後方のまま12着に終わった。勝ったのは復帰2戦目のホッコータルマエ。ドバイで惨敗した影響が長引いたが、見事に復活を果たした。
ホッコータルマエに連敗
年末の東京大賞典では、さらに盤石の強さを発揮したホッコータルマエに4馬身差をつけられる完敗。ライバルに水を開けられて年越しを迎えた。
5歳時
新コンビ
5歳のシーズンを迎え、連覇を狙うフェブラリーステークスの前哨戦としてG2東海ステークスへ出走。
ここは新たに鞍上に迎えた武豊騎手に導かれて快勝。2番手追走から早めに先頭に立ってそのまま押し切った。
フェブラリーステークス
前年に16番人気であっと言わせる勝利を挙げたフェブラリーステークス。今年はチャンピオンとしてライバル達を迎え撃つ立場だ。最大のライバルであるホッコータルマエはドバイワールドカップに2年連続参戦のため不在。1頭抜けた1番人気に支持された。
まずまずのスタートからスーっとポジションを上げて2番手で折り合う。そのまま最後の直線に入ると、早々と先頭に躍り出るコパノリッキー。まるで前年のリプレーかのようなレースぶりでそのまま押し切って連覇を達成した。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
フェブラリーステークスの連覇は史上初。最低人気と1番人気でそれぞれ優勝しての2連覇だった。
怪我で離脱
フェブラリーステークスのレース後に骨折が判明し、再び全治6ヶ月の診断で長期休養に入った。
復帰
復帰戦は8ヶ月後、10月の船橋競馬場で行われたJpn2日本テレビ盃に1番人気で出走し3着だった。勝ったのはかつて3歳1勝クラスで2着に下したサウンドトゥルー。地道に勝ちを積み重ねてオープン入りし、これが重賞初制覇だった。
JBCクラシック
骨折明け2戦目はJBCクラシック連覇に挑むコパノリッキー。ドバイから帰ってきたホッコータルマエも前走で帝王賞を勝って万全の態勢。断然の1番人気に支持されていた。
好スタートから先手を取ったコパノリッキーと武豊騎手。ホッコータルマエが3~4コーナーにかけて早めに並びかけてくるがコパノリッキーの手応えがいい。最終コーナーを持ったまま周って直線へ入ると、追いすがるホッコータルマエを突き放して独走状態に。最後は後方から追い込んできたサウンドトゥルーに2馬身半差をつけて先頭でゴール板を駆け抜けた。
レース映像
引用元:NAR公式チャンネル
盛岡と大井で行われたJBCクラシックを連覇。これで武豊騎手とのコンビで4戦3勝とした。
スランプ
JBCクラシックのあとは、1番人気で7着と人気を裏切ってしまったチャンピオンズカップ、年末の東京大賞典4着と連敗で年をまたいだ。いずれも先行から失速という、らしくない負け方だった。
6歳時
3連覇をかけて
スランプ状態で年を越し6歳となったコパノリッキーは、3連覇をかけてフェブラリーステークスに出走。
しかし復活の兆しは見られず7着に沈んだ。
5月5日はかしわ記念
間隔を開けて立て直し、2年ぶりに船橋のかしわ記念に参戦。2番手追走から直線で3馬身抜け出して勝利。久しぶりにコパノリッキーらしい走りで連敗を脱出した。毎年オーナーの誕生日である5月5日に行われるかしわ記念で嬉しい復活を遂げた。
連勝
続く帝王賞では3年連続でドバイワールドカップに参戦したホッコータルマエらをやぶって連勝。春シーズンをいい形で締めくくった。
休養を挟んで秋初戦のマイルチャンピオンシップ南部杯では久しぶりに田辺裕信騎手とのコンビで快勝。3連勝とした。
連敗
ところが3連覇をかけて臨んだJBCクラシックで5着に敗れると、相性の悪いチャンピオンズカップで13着と大敗。暮れの東京大賞典でも5着と再びスランプに陥った。
7歳時
もうひと花
7歳を迎えたコパノリッキー。ここまでG1・Jpn1競争を8勝とすでに輝かしい成績をあげていたが、現役を続行するからにはもうひと花咲かせたいところだった。
3度目のかしわ記念
フェブラリーステークスで武豊騎手と再コンビを組んで挑むも14着と大敗。
過去最長の4連敗となかなか復活の兆しは見られないままだったが、5月5日のかしわ記念で劇的な復活勝利。オーナーの誕生日には何か不思議な力が働くのだろうか?何はともあれ連敗を脱出した。
最後の秋シーズン
7歳の秋は、コパノリッキーにとって充実のシーズンとなる。秋初戦のマイルチャンピオンシップ南部杯で連覇を達成して通算のG1・Jpn1勝利数を大台の10勝に乗せる。
7歳にして初めて挑んだ短距離スプリント戦、JBCスプリントではアタマ差の惜しい2着。
過去3度挑戦して12,7,13着と鬼門のチャンピオンズカップでは、相性の悪さから9番人気と低評価だったが、過去最高着順となる3着と馬券圏内に入り意地を見せた。
有終の美
そして最終戦、年末の風物詩である東京大賞典に参戦。このレースも4年連続での出走になるが2,4,5着とあと一歩のところで勝利に届いていなかった。
これが引退レースのコパノリッキーの鞍上は、16番人気のフェブラリーステークスで初G1勝利の喜びを共有した田辺裕信騎手。
スタートすると、果敢に先手を奪ったコパノリッキーが逃げる展開。1番人気の4歳馬ケイティブレイブが2番手でマークする中、コパノリッキーと田辺裕信騎手は一度も先頭を譲ることなく鮮やかに逃げ切った。
3馬身差の2着に追い込んだのは1勝クラスからずっとダート界を引っ張ってきたライバルの一頭、サウンドトゥルーだった。
これで歴代最多のG1・Jpn1競争11勝とし、自ら引退の花道を飾った。
ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、コパノリッキー。
史実のコパノリッキー
基本情報 | 2010年3月24日生 牡 栗毛 |
---|---|
血統 | 父 ゴールドアリュール 母 コパノニキータ(父ティンバーカントリー) |
馬主 | 小林祥晃 |
調教師 | 村山明(栗東) |
生産牧場 | ヤナガワ牧場(日高町) |
通算成績 | 33戦16勝(中央16戦6勝、地方17戦10勝) |
主な勝ち鞍 | ’14,15フェブラリーステークス(G1)、’17東京大賞典(G1)、’14,15JBCクラシック(Jpn1)、’14,16,17かしわ記念(Jpn1)、’16帝王賞(Jpn1)、’16,17マイルチャンピオンシップ南部杯(Jpn1) |
エピソード① キタサンブラックとは同郷
コパノリッキーを生産したヤナガワ牧場といえば、キタサンブラックの生産牧場として聞いたことがある方も多いだろう。
ウマ娘のゲーム内では幼なじみのように描かれているが、実際にはコパノリッキーが2010年生まれでキタサンブラックが2012年生まれのため、リッキーのほうが2年先輩ということになる。
ヤナガワ牧場生産馬でリッキーと同じ年には同じ冠名を持つコパノリチャードという馬がおり、リッキーがフェブラリーステークスで初G1制覇を記録した2016年の高松宮記念を制し、同一馬主・同一牧場によるG1連勝という快挙を成し遂げている。
エピソード② 種牡馬として
種牡馬としてのコパノリッキーはまだ結果が出るのはこれからだが、種牡馬入り当初かからかなりの人気ぶりを見せている。2021年に初年度産駒がデビュー。父と同じくダートを中心に勝ち馬を出しており、中央はもちろん全国の地方競馬からも活躍馬が現れることが期待される。
エピソード③ コパノニキータの2020
リッキーの母コパノニキータはコパノリッキーの後もゴールドアリュールやアグネスデジタルといったダート巧者の種牡馬と交配して仔を産んで活躍馬も出している。
そして2020年に産まれた牡馬の父はなんとホッコータルマエ。このロマンあふれる血筋の牡馬は、無事に成長していれば今年デビューを迎えるはずだが今のところあまり情報がないため続報を待ちたい。
エピソード④ 益々アツくなる、ダート路線
コパノリッキーやホッコータルマエ、ワンダーアキュートらがしのぎを削った数年間、ダート路線は中央・地方交流重賞ともにダート史上でもかなり盛り上がった時代と言える。
さらに時代は進み、2021年にはJRA所属のマルシュロレーヌという馬がダートの本場、米ブリーダーズカップ・ディスタフを勝つ快挙を成し遂げ、俄然ダートレースに注目が集まった。
そして今年発表されたのが、3歳ダート三冠競争の創設だ。羽田杯、東京ダービーという南関東三冠レースのうちの二つを新たにJpn1に格付けし、ジャパンダートダービーと併せてダートクラシック三冠とするものだ。
賞金や報奨金も大幅に上乗せされ、この路線を目指す馬のレベルアップが見込まれる。全国からダート界のホープたちが集結するダート三冠路線が芝のクラシック三冠に負けないくらいの盛り上がりを見せれば、そこからまた世界へ羽ばたく馬が出現することだろう。
2023年デビュー組が最初の世代となる。今年のセリではダート血統の仔馬たちの落札額も上がっているようで早くも盛り上がりを見せている。
エピソード⑤ ウマ娘に積極的なオーナー
馬主のDr.コパさんはコパノリッキーで本格参戦を果たしたウマ娘にも積極的なオーナーだ。Twitterでウマ娘をプレイしていることを度々つぶやかれているし、先日は自身が会長代行理事を務める東京馬主協会の公式YouTubeチャンネルでCyberAgent(Cygamesの親会社)藤田社長をゲストに招いて対談する動画が公開されたばかりだ。
オーナーズラウンジ 藤田晋氏【東京馬主協会】
引用元:東京馬主協会公式チャンネル
今週の一枚
地方交流重賞ならではのナイター競馬を疾走するコパノリッキーとワンダーアキュート。群雄割拠のダート界でともに一時代を築いた。
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