第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語

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【ウマ娘】第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語

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【ウマ娘】第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第92回。今回は平成の三強BNWのダービー馬、ウイニングチケットについて熱く語ります。

目次

平成三強のダービー馬

チケゾー再び

第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語の画像

1993年のクラシック三冠レースを分け合った三頭。皐月賞馬ナリタタイシン、ダービー馬ウイニングチケット、菊花賞馬ビワハヤヒデは通称BNWと呼ばれて語り継がれてきた。当コラムでは第7回目でBNWについて取り上げているが、今回はウマ娘での新衣装追加に合わせてウイニングチケット単独で再登場となる。改めて、平成三強世代のダービー馬ウイニングチケットの史実を追っていく。

名手をダービージョッキーに

ウイニングチケットと言えば、名手・柴田政人騎手に悲願の日本ダービー制覇をもたらした馬としてあまりにも有名なダービー馬だ。そして同世代のライバルだったナリタタイシン、ビワハヤヒデとの三強対決も重なり、歴代ダービー馬の中でも有数のドラマチックな馬の一頭として知られる。

第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語の画像

血統・生い立ち

ウイニングチケットは父トニービン、母パワフルレディ(父マルゼンスキー)という血統。名牝系スターロッチの血を引くパワフルレディと凱旋門賞馬トニービンの初年度産駒として生まれた黒鹿毛の牡馬は、血統的な魅力に違わず誕生して間もなくして名伯楽・伊藤雄二調教師に素質を見出されたほどである。

のちに伊藤雄二調教師の紹介により太田美實氏の所有になると、「ウイニングチケット」と名付けられた。

第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語の画像

2歳時

メイクデビュー

9月の函館、芝1200mの新馬戦でデビューを迎える。デビュー戦の鞍上は関東で有数の名手であった柴田政人騎手が務めた。この初戦では仕上げ途上、距離不足に加えてあいにくの不良馬場でもあり、7番人気で5着という結果に終わった。

初勝利

連闘で挑んだ2戦目は距離を延長して1700m。ひと叩きの効果もあって調子は上向き、乗り替わりの横山典弘騎手が騎乗して1番人気に応えて勝ち上がった。

初勝利のあとはソエ(骨膜炎)が出て休養に入り、約3ヶ月の休み明けで挑んだ1勝クラスの葉牡丹賞(中山芝2000m)を楽勝。2連勝でオープン入りを果たした。

柴田政人騎手とのコンビ再び

連勝で波に乗ったウイニングチケットは、暮れのホープフルステークス(中山芝2000m)に出走。当時はオープン特別のレースだったが、ここで再び柴田政人騎手とのコンビで断然の1番人気に支持されると、その期待に応えて3馬身差をつける快勝で3連勝。皐月賞と同じ中山2000mの舞台で連勝し、クラシック候補に名乗りを上げた。

3歳時

弥生賞

2歳のシーズンを3連勝で締めくくったウイニングチケットは、クラシックに向けた3歳初戦を皐月賞トライアルのG2弥生賞に定める。ここで、クラシック三冠を争うことになるライバルの一頭ナリタタイシンが登場。

2強

重賞初挑戦ながら3連勝中と勢いのあるウイニングチケットと、暮れのG3ラジオたんぱ杯の覇者でシンザン記念2着から出走してきたナリタタイシンが初対戦。人気を分け合った。

タイシンとチケゾー
タイシンとチケゾー

二頭はともに後方待機策の末脚勝負を演じ、直線で先に抜け出したウイニングチケットがナリタタイシンに2馬身の差を保ってゴール。4連勝で重賞初制覇を果たし、おまけに勝ちタイムは従来のレースレコードを大幅に更新する好記録。一躍、皐月賞の最有力候補となった。

チケゾー

皐月賞

タイシンの切れ味

第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語の画像

いよいよクラシック三冠レースの一冠め皐月賞。弥生賞を勝って4連勝中のウイニングチケットが堂々の1番人気。2番人気は共同通信杯2着のあと若葉ステークスを勝ってここまで堅実なレースぶりで駒を進めてきたビワハヤヒデ。弥生賞でウイニングチケットに差をつけられたナリタタイシンは少し離れた3番人気となった。

これがBNW三頭揃い踏みとなった最初のレースだった。

スタート
タイシン

ゲートが開くと、ビワハヤヒデが先行集団の好位につけ、ウイニングチケットは中団から。ナリタタイシンは後方待機策で脚をためる展開。

チケゾー
ハヤヒデ

レース中盤からウイニングチケットが早めに仕掛けて最終コーナーでは先行集団まで進出すると、ビワハヤヒデと馬体を並べて最後の直線へ。

タイシン
タイシン

直線に入ると二頭が互いに譲らない一騎打ちになるかと思われたが、ほどなくしてウイニングチケットは手応えが怪しくなり失速。ビワハヤヒデが競り合いの中から抜け出してそのまま勝利を手にするかに思われた次の瞬間、ナリタタイシンが驚異的な切れ味を発揮して追い込み、わずかにビワハヤヒデを差し切って混戦を制した。

ウイニングチケットは5位で入線したが、上位で入線したガレオンが斜行によって降着処分となり4着で着順が確定した。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

日本ダービー

勝利のチケットを柴田政人に

第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語の画像

世代の頂点を競う日本ダービーは、この1993年のクラシックにおいて最高の舞台に相応しい最高のレースとなる。

第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語の画像
ダービー

スタートすると、ビワハヤヒデは6,7番手の好位につけ、ウイニングチケットは中団のインコースで折り合いをつける。皐月賞馬ナリタタイシンは最後方から二冠を狙う。

ハヤヒデ
チケゾー
タイシン

隊列は変わらず馬群は最後の直線へと向かう。有力各馬が馬場のいい外へと進路を取っていく中、ウイニングチケットと柴田政人騎手はまだインコースでじっと我慢。そして内側がパッと開けたその時、直線を待たずして柴田政人騎手の仕掛けに応じて進出を開始する。

チケゾーの夢
ダービーへの道筋

進路の開いたスペースを目掛け、ゴーサインに応えて鋭く反応するウイニングチケット。

チケゾー
BNW

ほどなくウイニングチケットのさらに内へと切り込んで迫りくるビワハヤヒデと、外から追い込むナリタタイシン。早めに抜け出したウイニングチケットが、皐月賞とは異なり最後まで驚異的な粘り腰を発揮。

チケゾー

内と外から襲いかかるライバル二頭を振り切って先頭でゴール板を駆け抜けた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

コール

場内には、19度目の挑戦で悲願のダービー制覇を成し遂げた柴田政人騎手を称える「マサトコール」が響き渡った。

菊花賞

第92回:運命のダービー馬、ウイニングチケットの物語の画像

最後の一冠、菊花賞。三強が三たび顔を揃えるが、順調にきていたビワハヤヒデとウイニングチケットに対して、ナリタタイシンは体調不良で予定していた京都新聞杯に出られずぶっつけでの出走となった。

三冠最後のレースは、皐月賞・ダービーともに二着と涙をのんだビワハヤヒデが、見事にその鬱憤を晴らすかのような圧勝劇を演じて見せた。

チェックメイト

先行して2番手につけたビワハヤヒデが直線で楽に抜け出すと、後続をまったく寄せ付けず2着に5馬身差をつける圧勝。ウイニングチケットは中団から差してなんとか3着まで進出するのがやっとだった。ナリタタイシンは自慢の末脚を繰り出すことなく17着に沈んだ。

ハヤヒデ

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

これにて1993年のクラシック三冠レースはBNWで一つずつ分け合う結果となり、幕を閉じた。

ジャパンカップ

菊花賞のあと、ウイニングチケットはジャパンカップに参戦し、歴戦の古馬と初対戦。舞台はダービーを劇的に制したのと同じ府中の2400mということもあり、ウイニングチケットは強力な海外勢に次ぐ4番人気と期待を集めた。

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レースでは、メジロパーマーが引っ張る比較的ゆったりした流れの中、中団馬群のインで折り合いをつける。直線に入ると、2番手から早めに先頭に立ったレガシーワールド目掛けてジワジワと差を詰めるが、なかなかその差が縮まらない。後ろから強襲する外国馬コタシャーンとプラティニとのデッドヒートの末、3着でゴールした。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

日本馬古馬勢の大将格として見事に勝利したレガシーワールドから1馬身ちょっと遅れたが、強力な海外勢を相手に激しい2着争いを演じ、当年のダービー馬の力を見せた。

4歳時

ダービーをピークに引退

ジャパンカップ善戦後、トウカイテイオー奇跡の復活で湧いた有馬記念で初めての大敗(11着)を喫すると、4歳になってからはなかなか体調が万全にならなかったこともあって勝ち星が遠のいてしまう。

4歳時は、秋にオールカマー(当時G3)でビワハヤヒデに食らいついての2着というのが最高着順で、次戦の天皇賞8着後に屈腱炎が判明して引退となった。

名手もまた

結局ダービー以来の勝利を挙げることは叶わなかったウイニングチケットと、時を同じくして柴田政人騎手もまた騎手生活にピリオドを打つ。この年の春に落馬で負った重傷がきっかけだった。

ウイニングチケットとともに最後の挑戦で手に入れたダービージョッキーの称号。ウイニングチケットが「柴田政人にダービーを勝たせるために生まれてきた」とまで評された所以でもある。

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ダービー制覇時のインタビューで語った「世界のホースマンに、第60回の日本ダービーを勝った柴田政人ですと伝えたい」という言葉は、ダービーを勝つことの難しさ、その計り知れないほどの栄誉と喜びを伝える名言として今なお語り草だ。

引退後

偉大な功績

ダービー馬として競馬史に名を刻んだウイニングチケットは、現役生活を終えたあとも多大な功績を残した。トニービンの後継種牡馬として期待されたほどの成績を残したとは言えなかったが、2005年(当時15歳)に種牡馬を引退してからは功労馬として北海道浦河町のうらかわ優駿ビレッジAERUで晩年を過ごし、2023年に33歳で亡くなるまで過ごした。

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「柴田政人騎手にダービーを勝たせるために生まれた」ウイニングチケットは、いつしかみんなのチケゾーになっていった。功労馬としてスタッフや競馬ファンに愛され続け、さらに長い時を経てウマ娘ファンに競馬の魅力や馬の可愛さを伝える伝道師となった。

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とりわけナイスネイチャやタイキシャトルといったほかの人気者とともに、引退馬について興味を抱かせる象徴として在り続けた功績はとてつもなく大きい。

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、ウイニングチケット。

史実のウイニングチケット

基本情報1990年3月21日生 牡 黒鹿毛
血統父 トニービン
母 パワフルレディ(父 マルゼンスキー)
馬主太田美實
調教師伊藤雄二(栗東)
生産牧場藤原牧場(北海道・静内町)
通算成績14戦6勝
主な勝ち鞍’93日本ダービー

エピソード①馬名の由来は当たり馬券!?

馬名のWinning Ticketは日本語訳で「当選券、当選くじ」つまり、競馬においては「当たり馬券」が馬名の由来であった。掴め、当たり馬券!まさかそれがダービーの勝利の切符になろうとは。

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エピソード②チケゾーダッシュ!

チケゾーが余生を過ごした牧場でもスタッフや訪れるファンに大切に可愛がられていたことはよく知られている。放牧場で元気いっぱいに「チケゾーダッシュ」を見せて駆け回る様子は、30歳を過ぎた晩年でもダービー馬としての風格と活力に満ち溢れていた。

ありがたいことに、生前はもちろん今でもうらかわ優駿ビレッジAERUさんのXアカウントなどでたびたび投稿される当時の写真や動画から、みずみずしい思い出とともに窺い知ることができる。

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この記事を書いた人
ライターE
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BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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いただいた内容は担当者が確認のうえ、順次対応いたします。個々のご意見にはお返事できないことを予めご了承くださいませ。


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