競馬好きのライターが送るウマ娘コラム。今回は秋のG1シーズンに合わせた番外編。名牝達の競演・秋華賞とエリザベス女王杯の名勝負を振り返ります。
「秋華賞特集」はこちら名牝たちの競演!秋の牝馬G1路線
注目の秋華賞
G1シーズン開幕で盛り上がる秋競馬。今週末に行われる秋華賞は、ソダシという白毛のヒロインの登場で例年以上に注目を集める一戦となった。筆者も昨秋から彼女の走りと可愛さから目を離せないでいるファンのひとりである。
走るたびに評価を高めてきた彼女の強さは、かつてのダイワスカーレットのようだな、と思ったりもする。その当時はどちらかと言うとウオッカ派だったりするのだが、この話は長くなるのでまた機会があればじっくり語りたい。
なお、今回の秋華賞については下記の記事でまとめているので、気になる方はこちらをチェックしてほしい。
「秋華賞特集」~牝馬三冠の最終戦~秋華賞とエリザベス女王杯
さて、話を戻そう。秋華賞というG1レースは比較的歴史の浅いレースである。1995年まで三歳牝馬の三冠最後のレースはエリザベス女王杯だった。1996年に牝馬三冠路線の三つ目のレースとして秋華賞が新設され、エリザベス女王杯は同年から4歳以上の古馬も交えて世代を超えた牝馬チャンピオン決定戦として生まれ変わったのだ。
その変遷期から、ウマ娘のモデルとなった多くの名牝たちも両レースの歴史に名を刻んでいる。今回はこの二つの牝馬限定G1に焦点を当ててウマ娘版の歴代勝ち馬、名勝負を振り返っていく。
ウマ娘版・歴代勝ち馬の紹介
名牝ずらり
それでは早速、秋華賞とエリザベス女王杯の両レース歴代勝ち馬の中から、ウマ娘のモデル馬たちを抜粋してみる。
エリザベス女王杯(1995年以前)
1994年ヒシアマゾン(第19回)
秋華賞
1997年メジロドーベル(第2回)
2002年ファインモーション(第7回)
2004年スイープトウショウ(第9回)
2006年カワカミプリンセス(第11回)
2007年ダイワスカーレット(第12回)
エリザベス女王杯(1996年以降)
1998年メジロドーベル(第23回)
1999年メジロドーベル(第24回)
2002年ファインモーション(第27回)
2005年スイープトウショウ(第30回)
2007年ダイワスカーレット(第32回)
こうしてみると、ウマ娘に登場する牝馬がモデルとなっている馬は90年代、2000年代においてかなりの割合でどちらかのレースまたは両方を制覇していることがわかる。秋の牝馬限定G1は、当然ながら牝馬にとっては目指すべき女王の頂ということだろう。
ヒシアマゾン
1994年のエリザベス女王杯は、ヒシアマゾンにとってようやく訪れた頂点を争う舞台だった。なぜなら、外国産馬にクラシックレースの門戸が開かれていなかったため、3歳の春シーズンは桜花賞やオークスの出走権がなく、ひたすらにG3、G2レースに出走していたのだ。連戦連勝、重賞5連勝で待望の大舞台を迎えたヒシアマゾンは、同年のオークス馬チョウカイキャロルと初対決。このエリザベス女王杯で牝馬の頂点を争うこととなった。
ヒシアマゾンとチョウカイキャロルの頂上決戦は予想以上の熾烈な戦いとなる。人気薄の逃げ馬がハイペースの大逃げで引っ張る縦長の展開のなか、後方待機の追い込み策のヒシアマゾンと、中団待機のチョウカイキャロル。ともに最終コーナーで外から徐々に進出すると、直線では先に抜け出したアグネスパレードめがけて鋭い末脚で襲いかかる。三つ巴の叩き合いの中からわずかに二頭が前に出たところでゴール。
オークス馬との熾烈なタイマン勝負をハナ差で制したヒシアマゾンは、この後有馬記念で三冠馬ナリタブライアンにタイマン勝負を挑むのだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
メジロドーベル
まだ育成ウマ娘としては未実装のメジロドーベルだが、エアグルーヴのストーリーやジューンブライドイベントのサポートカードでも登場したファンも多いキャラクターだ。これらの登場シーンで垣間見える少し自身のなさそうな控えめな性格や男性が苦手といったキャラクター設定は、彼女の戦績に由来するところだろう。97年の第2回秋華賞と、98、99年エリザベス女王杯連覇からわかるように、牝馬同士のレースでは能力をいかんなく発揮してG1を5勝した名牝だが、牡馬混合のレースとなると気難しい面を見せて大負けすることも多かった。
そのメジロドーベルの勝ったG1レースからひとつだけピックアップするとしたら、私は1998年のエリザベス女王杯を挙げたい。ひとつ上の女傑エアグルーヴとは何度も対戦し、4度目にして初めて先着して勝ったのがこのレースだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ファインモーション
アオハル杯の開始以降、ますます評価を上げているサポートカードに賢さ属性のファインモーションが挙げられるだろう。筆者もフレンド枠で完凸ファインモーションを借りることが非常に多くなった。そのファインモーションは史実で秋華賞、エリザベス女王杯を連勝している。
ファインモーションと言えば、3歳の秋に突如として現れ、瞬く間に秋華賞とエリザベス女王杯まで無敗のまま制覇したことが鮮烈な印象として残っている。ヨーロッパのチャンピオンホースを兄に持つ良血馬でデビュー前から評判ではあったが、クラシック出走権のなかった外国産馬ということもあり無理せずじっくりと育成されたファインモーション。初めて大舞台に登場したのは3歳秋の秋華賞だったが、前哨戦であるG2ローズステークスまで4戦無敗。そのすべてで3馬身差以上の楽勝という結果を残してきた彼女は、本番の秋華賞もあっさり勝ってみせた。単勝オッズ1.1倍、3馬身半の差をつけての圧勝は底知れない強さを感じさせるものだった。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
スイープトウショウ
魔女っ子ウマ娘として独特の存在感を放つスイープトウショウも、秋華賞とエリザベス女王杯の両方を制した実績を持つ。
スイープトウショウと言えばハマった時に見せる強烈な末脚だ。勝った秋華賞とエリザベス女王杯は、どちらも後方待機策から目の醒めるような末脚を繰り出して差し切っている。こんな位置から届くのか、という位置から末脚一閃。追い込み馬ならではの爽快なレースを見て欲しい。
育成ウマ娘としての実装が待ち遠しい一頭である。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
引用元:JRA公式チャンネル
カワカミプリンセス
最近実装されたばかりのカワカミプリンセスは、史実では2006年のオークスと秋華賞を無敗で制した二冠牝馬だ。キングヘイロー産駒として初のG1馬であり、ウマ娘内でもその関係性が描かれている。
そして秋華賞の後に出走したエリザベス女王杯で1位入線しながらも進路妨害により降着となってしまったことでも有名だ。G1レースで1着からの降着は珍しく、1995年のメジロマックイーンの天皇賞(秋)以来となる15年ぶり2度目というレアな出来事だった。
この降着以降、勝ち運に見放されてしまったかのように勝利から遠ざかってしまったという印象だ。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
ダイワスカーレット
牝馬のライバル関係として永遠に語り継がれるだろう二頭、ウオッカとダイワスカーレット。それぞれが記憶においても戦績においても競馬史に名を残すいずれ劣らぬ名馬である。直接対決の回数は5回。3歳時の秋華賞では牝馬として64年ぶりにダービーを制したウオッカと、そのウオッカを桜花賞で破って対戦成績1勝1敗のダイワスカーレットの再戦ということで大変な注目を集めることとなった。
2番手から早めに先頭に立ち抜け出すダイワスカーレットに、後方待機から追い込むウオッカ。対象的なレースぶりを見せる二頭の勝負は、最後まで追撃をかわしたダイワスカーレットに軍配が上がる。
続くエリザベス女王杯でも再び直接対決が見られるはずだったが、当日の朝になりウオッカの歩様に異常が見られ出走取消。勝負はおあずけとなった。1番人気となったダイワスカーレットは、先手を奪う積極策でそのまま押し切る強い競馬。スイープトウショウら並み居る年上の牝馬をおさえて女王の座についた。
レース映像
引用元:JRA公式チャンネル
エアグルーヴ
ここまで秋華賞、エリザベス女王杯の歴代勝ち馬について取り上げてきたが、もう一頭どうしても触れておきたい馬がいる。筆者が愛してやまない馬、エアグルーヴだ。エアグルーヴはオークスで母娘制覇を成し遂げ、天皇賞(秋)を制覇して年度代表馬にも選出された女傑である。
そんなエアグルーヴは秋華賞、エリザベス女王杯にも出走してどちらも栄冠を逃しているのだが、自身が勝てなかったエリザベス女王杯を娘のアドマイヤグルーヴが2連覇(2003,2004年)。そして今年の秋華賞で有力馬の一頭と見られているアンドヴァラナウトはエアグルーヴの孫にあたる。
また、同レースに出走予定のホウオウイクセルは父方の祖母がエアグルーヴ、母方の祖母がメジロドーベルというロマンの塊のような血統である。ライバルには冒頭で触れたソダシに、ゴルシの娘でオークス馬であるユーバーレーベンなど実に見どころの多い秋華賞になりそうだ。
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