第107回:平成三強世代の名脇役、ロイスアンドロイスの物語

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【ウマ娘】第107回:平成三強世代の名脇役、ロイスアンドロイスの物語

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【ウマ娘】第107回:平成三強世代の名脇役、ロイスアンドロイスの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第107回。今回はBNW世代の個性派名脇役、ロイスアンドロイスについて熱く語ります。

目次

BNW世代の名脇役

ブロンズコレクター

第107回:平成三強世代の名脇役、ロイスアンドロイスの物語の画像

1993年のクラシック三冠を沸かせた平成の三強BNW。先日ウマ娘の新キャラクターとして発表されたばかりのサクラチトセオーも同世代の一頭。そして今回は同じくBNW世代から、ウマ娘では個性派集団カノープスに所属するロイスアンドロイスに注目。世代を代表する名脇役、ブロンズコレクターとしても有名なロイスアンドロイスの史実を追っていく。

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ウマ娘での活躍はこれから

ロイスアンドロイスがウマ娘に初登場したのはアニメ第三期からで、アプリのほうでSRサポートカードが実装されてからは早1年が経とうとしている。しかし育成ウマ娘としては本コラム執筆時点で未実装のため、本格的な活躍はまだまだこれからのウマ娘である。

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個性派揃いのカノープスに所属していることからもわかるとおり、史実のロイスアンドロイスも例に漏れずG1未勝利ながらも記憶に残る名馬。「ブロンズコレクター」や「最強の3勝馬」といった称号が与えられてファンに愛された馬である。

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血統

トニービンの初年度産駒

ロイスアンドロイスは父トニービン、母ザッツマイパル(父Key to the Mint)という血統。父トニービンは伊ダービーや凱旋門賞など欧州の大レースを勝った後、タマモクロスやオグリキャップと戦ったジャパンカップをラストランに引退し日本で種牡馬入り。

その初年度産駒からは多くの活躍馬が出ることになるのだが、ロイスアンドロイスもそのうちの一頭である。

2歳時

関東の名門厩舎へ

2歳になると美浦の松山康久厩舎へ入厩。三冠馬ミスターシービーやダービー馬ウィナーズサークルを育てた名門厩舎である。

デビューから惜敗続き

ロイスアンドロイスは12月の中山開催でデビュー。芝1600mの新馬戦で5番人気ながら2着に好走すると、中一週で出走した返しの新馬戦(中山芝2000m)でも2着。2戦続けて惜敗を喫し初勝利はお預けのまま年を越した。

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3歳時

善戦マン

3歳になると未勝利戦でさらに惜敗を重ねることになる。3戦目は東京ダート1600mの未勝利戦。初ダートで勝利を目指したが1番人気で3着に敗れ、これ以降ダートのレースを走ることはなかった。

芝に戻ってもなかなか勝ち上がることはできず、中山の未勝利戦で3戦続けて2着。ここまで通算6戦して2着5回、3着1回という善戦マンぶりだった。

未勝利からダービー出走を目指す

未勝利から脱出できないながらも素質を高く評価していたロイスアンドロイス陣営は、ここで驚きの策を実行する。未勝利馬のまま重賞やG1に出走することはできないが、わずかに春のクラシックに間に合う可能性がある方法があった。トライアルで勝って未勝利を脱出すると同時に優先出走権を獲得すればダービーに出走できるのだ。

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そこで、デビューから7戦目、ロイスアンドロイスは未だ勝利のないままダービートライアルの青葉賞に出走することとなったのである。

※当時の青葉賞は重賞昇格前のオープン特別だったため、2着では本賞金を加算することができない。2着までにダービーの優先出走権が与えられるが、ロイスアンドロイスが未勝利クラスを脱するためには1着になる必要があった。

青葉賞

そうして青葉賞に出走したロイスアンドロイスは、6番人気の支持を得てただ勝利のみを目指す。1番人気のステージチャンプとて1勝馬。秘めた能力を発揮すれば勝てない相手ではないと踏んだ陣営の運命はいかに・・・

結果は、ステージチャンプから半馬身+2馬身ほど遅れての3着。残念ながら一足飛びでのダービー出走は叶わなかったものの、少なくとも上のクラスでやれる力があることは確認された。

初勝利へ

未勝利戦圧勝

改めて未勝利戦に戻ったロイスアンドロイスがついに惜敗に終止符を打つ時が訪れる。6月6日の東京競馬場・芝1800mの未勝利戦に後藤騎手との初コンビで出走すると、単勝1.2倍の1番人気に応えてついに初勝利をあげた。それも2着に5馬身差をつけ、これまでの鬱憤を晴らすような圧勝であった。

この1週前に行われた日本ダービーを同じトニービン産駒のウイニングチケットが勝ち、牝馬戦線ではベガが春二冠を達成。トニービンの初年度産駒が旋風を巻き起こしていた最中であった。

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善戦マンは相変わらず

待望の1勝を掴んでトントン拍子に階段を登りたいところだったが、それ以降は相変わらずの善戦マンぶりを発揮。

初の重賞挑戦となったG3ラジオたんぱ賞で3着と善戦したものの本賞金を上積みできず。続いて自己条件の1勝クラスから地道に勝利を目指したが2戦連続で2着と勝ちきれないレースが続いた。

菊花賞の切符

夏の間に2勝目をあげることができなかったロイスアンドロイスだったが、格上挑戦で三冠レース最後となる菊花賞への優先出走権獲得を狙いトライアルのG2セントライト記念に挑む。

ここでは7番人気の低評価だったが、相手なりに走るロイスアンドロイスにとって人気は関係ない。中団から上がり2位タイの末脚を繰り出して2着に入り、菊花賞への切符を手にしたのだった。

菊花賞

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ついに出走が叶ったクラシック三冠最後の菊花賞。皐月賞馬ナリタタイシン(3番人気)、ダービー馬ウイニングチケット(2番人気)、そして春二冠ともに2着のビワハヤヒデ(1番人気)ら三強に1勝馬が挑む。

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これまで12戦1勝、2着8回、3着3回。崩れず堅実に走ってきたロイスアンドロイスは、最強の1勝馬として穴人気を集めBNWの三頭に次ぐ4番人気の支持を集めた。

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スタートすると道中は中団の後方に待機して折り合いに専念。脚をためて直線に向かったが切れる脚を発揮することができず7着でゴールした。レースは夏を越して成長著しいビワハヤヒデが2番手から抜け出し、三冠ラストにして悲願のタイトルを手に入れた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ロイスアンドロイスにとっては13戦目にして初めて掲示板を外す結果となった。

2勝目ならず

菊花賞後は暮れの中山で準オープンの1500万下条件(現在の3勝クラス相当)の冬至ステークス(中山芝2500m)に出走するも5着に終わり、1勝馬のまま3歳のシーズンを終えた。

4歳時

最強目指して

古馬となったロイスアンドロイスは、デビュー以来使い詰めだったこともあってじっくり間隔を空けてリフレッシュが図られ、5月の東京開催で復帰。

復帰初戦は1500万下の薫風ステークス(東京芝2000m)。11ヶ月前の初勝利時以来となる後藤騎手とのコンビで2着とすると、続くむらさき賞(1500万下・東京芝1800m)で待望の2勝目をあげてオープン入りを果たした。

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重賞挑戦

オープン入りしたロイスアンドロイスは、2勝をマークした得意の東京コースで重賞制覇を目指しエプソムカップに出走。2番人気と期待されたが8着と案外な成績に終わり、加えて本賞金を加算することができず夏競馬開幕とともに1500万下クラスに降級となった。

降級して3勝目

秋にG1の大舞台で走るためには、夏の間にもう1勝してまずは1500万下クラスを卒業したいところ。そして必勝を期して札幌のサロベツステークス(札幌芝2000m)に出走すると、これをクビ差でものにして3勝目。横山典弘騎手は菊花賞以来二度目の騎乗で、これ以降ロイスアンドロイスの主戦騎手となった。この価値ある勝利によりロイスアンドロイスは再びオープンクラス入りを果たして秋を迎えることとなった。

降級制度について

ここで、現在は廃止された降級制度について簡単に解説する。「降級」とは、2019年に同制度が廃止されるまで長らく続いていたJRA平地競走のクラス分けに関わる制度で、ざっくり言うと4歳の夏競馬開幕を迎える時点でそれまでの本賞金が半減扱いされてクラスが降級するというもの。

ロイスアンドロイスがむらさき賞で1500万下クラスの競争を一度は勝ってオープン入りしたにも関わらず、すぐさま夏競馬開幕とともに降級して再び1500万下条件となったのは降級制度によるものだ。仮にエプソムカップで本賞金を上積みできればオープンを維持できたというわけだ。

2019年に降級制度が廃止されて以降は、1勝クラス、2勝クラス、3勝クラスというように一つ勝つごとにクラスが上がっていき、一度卒業したクラスに下がることはない分かりやすいものになっている。

最強の3勝馬

オールカマー

オープン馬として迎える秋初戦は、G2オールカマー。同世代の最強馬ビワハヤヒデとウイニングチケットが顔を揃え、8頭立ての少頭数とはいえ3番人気が30倍を超えるという異常なほど2頭に人気が集中する一戦となった。

そんな一騎打ちムードの二強に対して、ただ一頭食い下がってみせたのがロイスアンドロイスだった。スローペースで逃げて最終コーナーではビワハヤヒデに早々と並ばれたものの、そこからずるずると後退せずに最後まで粘りを見せて2着のウイニングチケットから1馬身差の3着。菊花賞ではまるで敵わなかったビワハヤヒデに対し、ロイスアンドロイス自身も成長した力を見せた。

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天皇賞・秋

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菊花賞以来となるG1の大舞台、天皇賞・秋。三強から古馬最強へと君臨していたビワハヤヒデに、ダービー馬ウイニングチケット、そして前走で毎日王冠快勝のネーハイシーザーや同期の遅れてきた素質馬サクラチトセオーといったハイレベルなメンバーが集まった。

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さすがに重賞未勝利の3勝馬ロイスアンドロイスは13頭中11番人気という伏兵扱い。しかしながら、持ち前の堅実な走りはここでも即通用。絶対視されていたビワハヤヒデが伸びあぐねる波乱の中でも中団から持続力のある末脚を繰り出して際どい2着争いを演じ、見事3着に入ってみせたのだった。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

結果的にビワハヤヒデとウイニングチケットのラストランとなってしまった波乱の天皇賞を制したのは3番人気のネーハイシーザー。8番人気セキテイリュウオーが2着で馬連は8860円の高配当となったが、3着のロイスアンドロイスは11番人気だったのだから、もしも3連系の馬券があれば大波乱となっていたことだろう。

ジャパンカップ

ビワハヤヒデとウイニングチケットが天皇賞後に引退を発表したことで中心的存在がいなくなってしまった古馬G1戦線。その結果、世界の強豪を迎えるジャパンカップに出走を予定していた日本馬にはG1馬がいないという事態となってしまった。

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だからこそ重賞未勝利の3勝馬であるロイスアンドロイスがジャパンカップ出走馬に選出されたわけだが、ロイスアンドロイスは稀代の善戦マンとしてこれに応える激走を見せる。

好スタートをきると、道中は中団を追走。1番人気の外国馬サンドピットと日本のフジヤマケンザンが主導権争いで競り合って淀みのないペースで流れる。

直線に入ると、粘るサンドピットに内からマーベラスクラウンと2番人気の外国馬パラダイスクリークが襲いかかる。そしてサンドピットの外から馬群を割ってロイスアンドロイスも伸びてくる。一旦は先頭に立ってそのまま突き抜けるかに思われたが、内の二頭が差し返して最後は激しい叩き合い。

ロイスアンドロイスはわずかに遅れを取って3着でゴールした。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ハナ差の接戦を制したのは、日本馬マーベラスクラウン。下馬評を覆して日本勢の意地を見せた。8番人気の低評価ながら天皇賞に続いて3着となったロイスアンドロイスは、誰もが認める「最強の3勝馬」となった。

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5歳以降

遠い4勝目

ジャパンカップの後は休養に入り、5歳の春は大阪杯4着の1戦のみ。昨秋のG1激走の疲れからか、なかなか本調子に戻らず再び休養に入った。

秋に復帰すると、オープン特別の富士ステークスで3着。その後は重賞戦線を歩んだが、ナリタブライアンやヒシアマゾン、マヤノトップガンといった下の世代の台頭の前に定位置の3着にも入れないレースが続いた。

悲報

悲しい知らせは突然だった。6歳となったロイスアンドロイスは春の天皇賞で11着に敗れた後、放牧に出されていた。

放牧先でそのロイスアンドロイスが腸捻転のため急死したとの知らせが入る。悲報を伝えた競馬中継番組内では在りし日のロイスアンドロイスの特集映像が放送されるなど、平成三強世代の名脇役としてファンに愛されたロイスアンドロイスを追悼した。

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ウマ娘での活躍に期待

ウマ娘では、ナイスネイチャやツインターボ、マチカネタンホイザ、イクノディクタスといった名脇役たちと同じカノープスに所属。まだまだ未知な部分が多いロイスアンドロイスだが、そこは自身も負けず劣らずファンに愛された名脇役。

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見た目とのギャップも楽しみな愛すべきキャラクターとして我々トレーナーを楽しませてくれることだろう。

ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、ロイスアンドロイス。

史実のロイスアンドロイス

基本情報1990年3月10日生 牡 鹿毛
血統父 トニービン
母 ザッツマイパル(父Key to the Mint)
馬主(株)テンジン
調教師松山康久(美浦)
生産牧場社台ファーム(北海道早来町)
通算成績28戦3勝
主な勝ち鞍むらさき賞、サロマ湖特別(主な3着:’94天皇賞(秋)、ジャパンカップ)

エピソード①すべては自己演出?

ロイスアンドロイスについて当時の関係者によるコメントで多く聞かれたのが「賢い馬」だということ。曜日ごとの調教メニューすら覚えていて、乗り手のいうことは聞かなくともきちんと調教メニューをこなしたというから驚きである。

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また、ロイスアンドロイスとのコンビで2勝をあげ、その能力を高く評価していた後藤騎手によると、「わかっていて2着、3着に負けていたのでは」というのだ。勝つ力はあるのに、相手に合わせて最後にちょっとだけ負ける。2番手、3番手のほうが居心地がよかったのだろうか?ウマ娘のロイスアンドロイスが口にするセルフプロデュースってそういうことか。

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エピソード②トニービン初年度産駒

現役時代はイタリア調教馬として凱旋門賞を勝ちヨーロッパの頂点に。タマモクロスやオグリキャップが待ち受けたジャパンカップにも参戦したトニービンは、同レースを最後に引退後は社台ファームで種牡馬入り。

ロイスアンドロイスの同期となる初年度産駒のおもな活躍馬には、ダービー馬ウイニングチケットを筆頭に二冠牝馬ベガ、マイル女王ノースフライト、サクラチトセオーといったG1馬やアイリッシュダンス(ハーツクライの母としても知られる)などがいる。

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初年度産駒から活躍馬を数多く輩出し、のちにブライアンズタイム、サンデーサイレンスとともに種牡馬御三家と呼ばれる名種牡馬になっていった。

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この記事を書いた人
ライターE
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BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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いただいた内容は担当者が確認のうえ、順次対応いたします。個々のご意見にはお返事できないことを予めご了承くださいませ。


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