第2回:サクラバクシンオーの物語~稀代のスプリンター驀進王~

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【ウマ娘】第2回:サクラバクシンオーの物語~稀代のスプリンター驀進王~

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【ウマ娘】第2回:サクラバクシンオーの物語~稀代のスプリンター驀進王~

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第2回。今回は稀代のスプリンター「サクラバクシンオー」について熱く語ります。

目次

サクラバクシンオーという競走馬

短距離無敵の名スプリンター

バクシン

ウマ娘プリティーダービーでも大人気、『バクシン教』なる言葉まで産まれるほど愛されている、トレセン学園の学級委員長ことサクラバクシンオー。史実では稀代のスプリンターとしてその名を馳せた彼女のバクシンぶりを振り返ってみたい。

※ウマ娘に合わせて彼女と書いたが史実だと牡馬(オス)

サクラバクシンオー

引用元:JRA日本中央競馬会

生涯成績21戦11勝。うち、1400m以下で12戦11勝、1600m以上では9戦0勝という数字を見れば一目瞭然、短距離ではめっぽう強かった。1600m以上がてんでダメだったかというとそうではないのだが、とにかく1400m以下での強さが際立っていた名スプリンターである。

サクラ軍団

ピンクの勝負服でお馴染み

サクラバクシンオー勝負服

さて、サクラバクシンオーと言えば、当時の競馬ファンにはお馴染みサクラ軍団の一員である。サクラは冠名で、ほかにサクラスターオー、サクラチトセオー、サクラローレルなど活躍馬も多数出している。サクラチヨノオーはウマ娘にも登場するダービー馬だ。馬主がさくらコマースという法人で、サクラ軍団の多くは繋がりの深かった境勝太郎厩舎に預けられ、小島太騎手を主戦騎手とすることが多かった。そして、ピンクの勝負服が目印だった。

サクラバクシンオーも例に漏れず境勝太郎厩舎に所属し、デビュー戦からすべてのレースで小島太騎手が手綱を握った。

【用語解説】冠名
馬名につける馬主特有の定型句。名字みたいなもの。
例)ナリタ〇〇、ニシノ〇〇、サクラ〇〇など

デビューからスプリングSまで

進路の分かれ目スプリングS

デビュー戦はダートの1200mで勝利しているが、ダートを走ったのはこれ限りとなった。芝1600mの黒竹賞2着を挟んで、3戦目の芝1200m桜草特別を楽に逃げ切りオープン入り。この時点で短距離路線に進むかどうか迷った末、陣営は皐月賞トライアルのG2スプリングステークス(芝1800m)に駒を進める。そう、ゲーム内のバクシンオー育成において目標レースになっているお馴染みのレースである。

スプリングステークスの前に

実際のバクシンオーは、このスプリングステークスで12着(3番人気)と大敗してしまう。距離だけでなく苦手な重馬場の影響もあったと思われる。いずれにしてもゲームでの育成目標が5着以内とかではなく、出走となっているのはこの結果のためだろう。

晴れの日が好きです

またサクラバクシンオーの台詞「晴れの日が好きです!」というのは、重馬場が苦手であったことが元ネタとしているのかもしれない。

【用語解説】重馬場
雨などの天候により走りにくくなった馬場
ゲーム内でも良,重などで表記されている

同期のライバルたち

ちなみにこの時の勝ち馬はのちの2冠馬ミホノブルボンである。このレースにはライスシャワーとマチカネタンホイザも出走しており、ライスは4着、タンホイザは5着という結果になっている。しかしこれを境に短距離路線を歩むこととなったサクラバクシンオーのライバルとなるのは、この年の桜花賞馬となる名牝ニシノフラワーだった。

歩み始めた短距離路線

成長過程の段階

成長過程

短距離路線に舵を切ったサクラバクシンオーは、G3クリスタルカップ→菖蒲ステークスを連勝。しかし、その後の1600mマイル戦を3連敗と波に乗り切れないまま秋を迎えた。サクラバクシンオーは奥手の血統に加えて、もともと体質が強くなかったためこの頃はまだ成長過程だった。

【用語解説】奥手の血統
成長がゆっくりで、クラシック期の秋以降、またはもっと遅く4歳、5歳になってから才能が開花する馬もいる。血統による親や祖先からの遺伝が影響する言われている。

初G1はライバルに敗れる

ニシノフラワーに敗れる

この後得意の1400m戦を勝って臨んだ初めてのG1スプリンターズステークスでは、逃げてレースを引っ張ったものの6着に終わった。勝ったのは桜花賞馬ニシノフラワーである。ここまで11戦して5勝、うち1400m以下では6戦目にして初黒星となった。

長期休養、そして本格化

年が明けて4歳(当時の5歳)となったバクシンオーは、スプリンターズステークス後に発症した脚元の不安が長引いてしまい、春シーズンを休養せざるを得なかった。

【マメ知識】馬の年齢(馬齢)について
2000年までは、産まれた時点で1歳としていたが、国際基準とズレがあったため2001年に産まれた年を0歳とするようになった。「〇〇3歳ステークス」のようにレース名に馬齢が含まれるレースの名称もこの時にすべて変更された。

しかし秋に復帰したバクシンオーは以前よりたくましさも増して、成長した姿を見せることになる。

復帰後の3戦を、いずれも2,3番手に控えるレースを見せたのだ。それまでの5勝はいずれも逃げ切り。スピードに任せて押し切るタイプだった。

脚質:先行をマスター

1200mオータムスプリント(1着)、1600mアイルランドトロフィ(4着)、1400mキャピタルステークス(1着)と、1400m以下での強さは相変わらず。こうして新たに先行という武器を身につけ本格化を迎えたサクラバクシンオーは、1年ぶりとなるG1スプリンターズステークスに挑む。

【用語解説】本格化
その馬の才能が開花し、真の能力が発揮できるようになることを、このように表現することがある

初載冠

雪辱を果たすG1スプリンターズS

スプリンターズSアイキャッチ

相手は前年優勝のニシノフラワー、そして前年2着のあと、安田記念と天皇賞秋を勝ってこちらも本格化した1番人気ヤマニンゼファー。サクラバクシンオーは、スプリント戦の強さを見込まれ2番人気だ。

先行脚質が板についたサクラバクシンオーは3番手でレースを進め、直線半ばで前を捉え先頭に立つと激しいアクションで追う小島太騎手の檄に応えそのまま1着でゴール。2着のヤマニンゼファーに2馬身半の差をつけた完勝。新しい短距離王が誕生した瞬間だった。このレースが引退レースとなったニシノフラワーは3着。前走のマイルチャンピオンシップ13着から巻き返して力を発揮した。

引用元:JRA公式チャンネル

実はこのレースの8日前、馬主であるさくらコマース代表の全氏が亡くなっていた。"親父"と慕っていた小島太騎手は、レース後に次のように語った。「この一週間、寝ても覚めても親父のことばかり考えていた」並々ならぬ思いでレースに臨んでいた騎手と、それに応えたサクラバクシンオーだった。

短距離無敗、バクシン街道

新たなライバル

充実した状態で5歳シーズンを迎えたサクラバクシンオー。春初戦となったG3ダービー卿チャレンジトロフィー(1200m)で順当に勝利すると、安田記念に向かう。この頃は、高松宮記念※が1200mのG1として生まれ変わる前の時代であり、春には大目標と言える短距離レースがなかったのが悔やまれる。サクラバクシンオーは相変わらず1400m以下では敵なしだったからだ。

【用語解説】高松宮記念
高松宮記念が1200mのG1になったのは1996年のことである。この年に短距離レースの体系が大きく見直された。

1600m以上ではあと少しというところで勝利にこそ手が届かないが、それでもこの時4着だった安田記念や秋のマイルチャンピオンシップといったG1戦でも必ず見せ場を作ってみせた。安田記念を勝ったのは、新たに現れたライバル、ノースフライトという牝馬。のちにマイルチャンピオンシップも制して文字通りマイルの女王となった馬だ。

驚異の日本レコード

5歳秋、1800mのG2毎日王冠で4着のあと、続く1400mのG2スワンステークスに出走。安田記念で後塵を拝したノースフライトと人気を分け合うものの、1400mであればバクシンオーの得意舞台である。快速馬エイシンワシントンがハイペースで逃げる展開を2番手で追走したバクシンオーは、直線入り口で楽々と抜け出すとそのままノースフライト以下を抑えて優勝した。勝ちタイム1分19秒9は、1400mで初めて1分20秒を切る日本レコードだった。

マイルでは逆転される

続くマイルチャンピオンシップでは、ノースフライトの反撃を受けて2着。ちなみに単勝170円、馬連260円という超堅い決着だった。3連単どころか馬単もない時代、穴党には実に厳しい時代だったものである。

【用語解説】単勝,馬連,馬単,3連単
競馬における馬券の種類、単勝は1着、馬連は1,2着の組み合わせ、馬単は1,2着を着順通りに、3連単は1,2,3着を着順通りに予想するもの。

【用語解説】穴党
大穴となる高配当の馬券を追いかける人たちのこと

2連覇、そして最強のまま引退

連覇のかかったスプリンターズS

1着アイキャッチ

さて、そうして迎えたサクラバクシンオーにとって3度目のスプリンターズステークス。バクシンオーのバクシン街道の集大成であり、先に結論を言ってしまうがその圧勝ぶりが伝説的なレースである。すでに翌春の種牡馬入りが決まっていたサクラバクシンオーは、このレースが引退レース、ラストランとなった。

この年から国際レースとなり外国から強豪馬が参戦したおかげで盛り上がりを見せていたが、最強スプリンターとして完成の域に達していたバクシンオーにとって、相手は関係なかった。

3,4番手の好位追走から先頭を見るポジションで直線を迎えると、抜群の手応えで前を捉えにかかる。抜け出す時の脚がすごかった。あっという間に先頭に躍り出るとグングンと後続を突き放して圧勝してしまった。

引退レースで日本レコード

2着に4馬身の差をつけ、勝ちタイムの1分7秒1はまたしても1200mの日本レコード樹立となった。従来の記録を0.5秒更新する驚くべき記録だったのだが、この従来の記録は3年前に同じ「小島太騎手xサクラx境勝太郎」で父サクラユタカオーまで同じのサクラミライの記録だったことは興味深い。

こうしてサクラバクシンオーは一番強い時に、最強のまま惜しまれつつ引退した。

ありがとう、ウマ娘。
ありがとう、サクラバクシンオー。

史実のサクラバクシンオー

基本情報1989年4月14日生 牡 鹿毛
血統父 サクラユタカオー
母 サクラハゴロモ(父 ノーザンテースト)
馬主(株)さくらコマース
調教師境勝太郎(美浦)
生産牧場社台ファーム(北海道・早来町)
通算成績21戦11勝
主な勝ち鞍93スプリンターズS(GI)
94スプリンターズS(GI)
94スワンS(GII)
94ダービー卿チャレンジT(GIII)
92クリスタルC(GIII)

エピソード①

性格は史実とのギャップあり?

バクシンオーの性格

私たちがウマ娘で知っているバクシンオーはいつも元気一杯、実直でハツラツとした元気娘だが、実際のバクシンオーは父サクラユタカオーに似ておとなしく素直な性格だったそうだ。

また、一般的に短距離を得意とする馬はムキムキの筋肉質で、回転数の早いピッチ走法で弾丸のように走る馬が多い。ところがバクシンオーは大柄なわりに薄いシルエットの馬体、それに柔軟な筋肉があり、走り方はゆったりと大きなストライドで走る。1200mの短距離レースを、まるで1600mとか2000mの中距離を走るようなイメージで走ったと言われる。

参考書籍:名馬を読む 3 /江面弘也著・三賢社

長距離レースへの憧れは?

長距離レースへの憧れ

ゲーム内で長距離を走りたがるシーンが多く見られるが、ハッキリとコレと言えるものは考えられなかった。あれはどこから来たのだろう?筆者なりに推理をしてみた。

説1.血統から思い込みをしている

実際のサクラバクシンオーの血統を見てみると、母サクラハゴロモはアンバーシャダイという天皇賞春、有馬記念を勝った名馬の妹である。アンバーシャダイは晩成の中長距離馬というイメージで知られている。ここからの思い込みが1つとして考えられる。

説2.キタサンブラックに対する憧憬

史実のキタサンブラックは、母の父サクラバクシンオーという血統のために、当初は長距離向きとは思われていなかった。それが3000mの菊花賞を制し、古馬になってからは3200mの天皇賞春を連覇するような万能ぶりを見せたのだ。

長距離は向いていないと思われていたにもかかわらず、それを覆していった孫のキタサンブラックに憧れのようなものを抱いていた。そんな説もロマンがあっていいではないか。

エピソード②

長期休養を支えた厩舎スタッフ

4歳時に脚元の不安で長期休養を余儀なくされた際に、担当の厩務員は寝る間も惜しんでバクシンオーの脚元のケアをしたそうだ。小島太騎手いわく、その献身的なケアがあったからこそ、バクシンオーはG1馬となり時代を代表するような名スプリンターになれたとのこと。

参考書籍:名馬を読む 3 /江面弘也著・三賢社

エピソード③

バクシンオーとキタサンブラック

バクシンオーとキタサンブラック

ウマ娘にも登場するキタサンブラックには、サクラバクシンオーの血が流れている。

キタサンブラック立ち絵

なお、ウマ娘に登場するキタサンブラックの衣装デザイン、お気づきの方も多いと思う。着物の柄にサクラのモチーフが用いられている。これはサクラバクシンオーとの繋がりを表現したものと思われる。ちなみに髪飾りは事実上の馬主である北島三郎氏の家紋が由来だと言われている。

キタサンブラックの血統
キタサンブラックブラックタイド(父)サンデーサイレンス(父父)
ウインドインハーヘア(父母)
シュガーハート(母)サクラバクシンオー(母父)
オトメゴコロ(母母)

サクラバクシンオーの主戦騎手だった小島太氏は、雑誌の対談でキタサンブラックについて次のように語っている。


「立派な体格をしていて、フォームもしなやかで、スピードも抜群。キタサンブラックを見ていると、バクシンオーの面影を感じるよ」引用元:NumberWeb

そのキタサンブラックの第1世代目となる子どもたちが、今年(2021年)デビューである。JRAでも続々と新馬戦に登場、つい先日6/24には北海道競馬所属のウン(父キタサンブラック 母マリブウィン)が地方競馬の門別で記念すべき初勝利をあげた。

小話:バクシンオーとビコーペガサス

バクシンとビコペ

サクラバクシンオーの引退レース、1994年のスプリンターズステークスで2着に入ったのは、皆さんも御存知のビコーペガサスである。この時3歳(当時の4歳)だったビコーペガサスは、短距離マイル戦線の名脇役として長く活躍することになる。

余談だが、私はウマ娘に登場するビコーペガサスというキャラクターが大好きだ。

彼女のサポートカードを編成しておくと、マヤノトップガンとのちびっ子コンビでワチャワチャしていつも元気をくれる。いつかビコーペガサスを育成できる日が来たら(願わくば星2か配布で…)ヒーローにしてあげたいと思っている。

この記事を書いたライター

ライターE
すっぴんちゃんBNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

ライターEについて

  • 年齢:マルゼンスキーの1コ下らしい
  • 初恋の相手:エアグルーヴ
  • 推しウマ娘:ミホノブルボン、マルゼンスキー、会長、ビコーペガサス・・・みんなかわいい
  • 好きな競馬場:東京競馬場、大井競馬場(トゥインクル最高)

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