第115回:世界から愛を届けた、ラヴズオンリーユーの物語

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【ウマ娘】第115回:世界から愛を届けた、ラヴズオンリーユーの物語

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【ウマ娘】第115回:世界から愛を届けた、ラヴズオンリーユーの物語

競馬好きのライターが送るウマ娘コラム第115回。今回は多くの人の夢を乗せて世界へと羽ばたいた、ラヴズオンリーユーについて熱く語ります。

目次

世界からみんなへの愛を

2019世代のオークス馬

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名牝揃いで知られる2019年世代のオークス馬ラヴズオンリーユー。同世代のグランアレグリアやクロノジェネシス、一つ上のアーモンドアイらとともに牝馬の時代を彩った名馬である。

世界へ羽ばたき、世界からみんなへ愛を届けた名牝、ラヴズオンリーユーの史実を追っていく。

ウマ娘のラヴズオンリーユー

オークス開催週に合わせるようにラヴズオンリーユーが待望の育成ウマ娘実装となった。すでに育成したトレーナーも多いことと思うが、まだ育成できていないというトレーナーもまずは彼女の公式プロフィールや無料で観られるウマ娘ストーリー4話までを視聴してみてほしい。それだけでも史実と密接にリンクしたラヴズオンリーユーの物語を垣間見ることができるのだ。

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公式プロフィール

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ネット上で自分のファンクラブを運営しており、会員登録してくれているファンのために、よく動画配信などの活動をしている。夢は世界中のファンと『愛』を分かち合うこと♡ファンからは応援という名の『愛』をもらい、自分は勝利という名の『愛』を返すのだとか。

9927人の夢

ファンクラブ、コミュメン

ラヴズオンリーユーを知るうえで欠かせないのが、ウマ娘で「ファンクラブ」や「コミュメン」と言われている独自の世界観。これは、史実のラヴズオンリーユーが一口馬主クラブ「DMMバヌーシー(馬主登録の法人名はDMMドリームクラブ)」の所属馬であるということが由来となっている。

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DMMバヌーシーは当時発足したばかりの新しいクラブであり、最大1万口という超小口方式とそれによる敷居の低さが大きな話題となっていた。

9927口

2017年夏のセレクトセール(競走馬のセリ)において、DMMドリームクラブが3頭の良血馬(いずれもG1馬の全弟または全妹)を競り落としたことは大きな話題となったが、同時期に発表されたのがDMMバヌーシーという一口馬主サービスの開始。そのDMMバヌーシーの初期募集馬として購買されたうちの一頭がドバイターフを勝ったリアルスティールの全妹である1歳の牝馬、のちのラヴズオンリーユーである。

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落札価格は1億6千万円(税抜)を超える高額だが、1口当たりの募集額は3.2万円。最終的な出資口数は1万口の募集に対し満口まであとわずかという9927口。「口数=人数」ではないかもしれないが、そこはゲーム内と同じく9927人の出資者と仮定するのが分かりやすいだろう。9927人の出資者がラヴズオンリーユーとともに見る夢を共有することとなった。

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ラヴズオンリーユーのウマ娘ストーリーを観てみると、彼女が運営するファンクラブに登録しているコミュメンは9927人。つまり、出資者の皆さんがコミュメンとしてウマ娘に登場していると捉えることもできるわけだ。

幼少期~デビューまで

血統

ラヴズオンリーユーの母ラヴズオンリーミーは、未出走ではあったが名牝Miesque(ミエスク)を祖母に持つ良血馬で、ノーザンファームに購入されて日本で繁殖牝馬として第二の馬生を過ごすこととなった。

初仔の持込馬が生まれたあとは続けてディープインパクトと交配され、3番仔のリアルスティールはのちにG1ドバイターフを勝つ。その兄がドバイターフを勝ったまさにその日、2016年3月26日に生まれた牝馬がのちのラヴズオンリーユーである。

みんなへの愛を

そして前述のセレクトセールで見初められてバヌーシーの初期メンバー入りすると、ラヴズオンリーユーと命名された。馬名の由来は「みんなへの愛を込めて。母名より連想。」とある。

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入厩先は兄リアルスティールも手掛けた矢作厩舎。厩舎の元エースの全妹とあって、幼少期から師が気にかけていた様子はメディアやバヌーシーアプリを通じて伝えられていた。

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所属馬の状態や関係者のコメントといった最新情報をマメに発信するというのもバヌーシーの特徴の一つとして知られる。ウマ娘のラヴズオンリーユーがファンクラブ向けの配信を大事にしているのはこのことが由来であろう。

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2歳時

じっくり育成

ゆるやかな成長曲線を描いた兄リアルスティール同様に比較的晩成タイプであることを見越した矢作調教師の育成プランにより、デビューを急ぐことをせずじっくり成長を待ってのデビューだったことはラヴズオンリーユーのウマ娘ストーリーにも反映されている。

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メイクデビュー

そして待望のデビュー戦は2歳の11月、京都競馬場の芝1800m新馬戦にC.ルメール騎手とのコンビで出走することが決まった。

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ラヴズオンリーユーともう一頭、母系にシーザリオを持つ良血馬アーデンフォレストの2頭が人気となり、最終的にアーデンフォレスト1.9倍、ラヴズオンリーユー2.3倍でスタートを迎えた。

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ゲートが開くと、テンションが高めだったラヴズオンリーユーはスタートで出遅れて後方から。しかしスピードに乗るとすぐにポジションを4番手まで押し上げて流れに乗る。2番手につけたアーデンフォレストを見ながら終盤へ。

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最後の直線に入ると、ルメール騎手の合図に応えてスパート。インを突いてアーデンフォレストを交わすと、最後まで余裕のある手応えで完勝した。

連勝

2戦目は11月の京都開催最終週、1勝クラスの白菊賞(京都芝1600m)に中2週で臨んだ。デビュー戦で手綱を取ったルメール騎手は同日府中で開催されるジャパンカップに出走するアーモンドアイに騎乗するため岩田康誠騎手へ乗り替わりとなった。

スタートすると、再び出遅れ気味のスタートとなり後方からの競馬。道中は内ラチ沿いを徐々に進出して中団につける。そして最終コーナーから一気に大外へ進路を取って加速。最後の直線に入ると大外を鋭く伸びて豪快に差し切ってみせた。

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これでデビューから2連勝。スタートに課題を残しながらも素質の片鱗を覗かせる走りでオープン入りを果たした。ただし、馬体重が-14キロと減っていたことやレース間隔が詰まることから阪神ジュベナイルFには向かわずに年内は休養し翌年のクラシックへ備えることとなった。

3歳時:牝馬クラシック路線へ

脚部不安で一頓挫

放牧でリフレッシュしたラヴズオンリーユーは、当初桜花賞へ向けて2月のレースでひと叩きされるプランだったが、帰厩しようかという矢先に脚元にトラブルが発生。細菌が入って腫れてしまい、治療に時間を要することとなってしまった。

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これにより桜花賞前にレースに使うことはおろか、ぶっつけで本番に向かうにしても賞金順で出走は困難な状況。指揮官は目標をオークスに切り替え、桜花賞当日の忘れな草賞出走を決めた。

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治療により脚元の不安は解消したものの調整は十分とは言えず仕上がり途上の状態での出走を余儀なくされた。それでもオークス出走のためには勝って賞金を上積みする必要がある。

忘れな草賞

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桜花賞の2レース前の第9レース、忘れな草賞(阪神芝2000m)に登場したラヴズオンリーユーは、万全とは言えない状態ながらも1番人気に支持された。鞍上はミルコ・デムーロ騎手に乗り替わり。3戦連続で初騎乗のジョッキーとのコンビだったが、これが第一の主戦騎手との出会いとなる。

スタートに不安のあるラヴズオンリーユーはやはり出遅れ。そして他馬と接触してテンションがあがってしまい引っかかりそうなところをミルコ騎手がなだめて落ち着きを取り戻す。

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それからはスムーズにレースを運び、直線で外に持ち出されるとあっという間に抜け出して独走態勢に。2着に3馬身差をつける圧勝劇を見せつけ、桜花賞を控えた阪神競馬場に強烈な印象を残した。

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無敗のオークス馬

オークス

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忘れな草賞のあとは短期放牧を挟んでオークスに備えた。ラヴズオンリーユーが出走できなかった桜花賞を快勝したグランアレグリアが距離適性からNHKマイルカップへ向かうことが発表されると、牝馬クラシック二冠目のオークスは混戦模様が予想された。

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オークスでは桜花賞組を差し置いてラヴズオンリーユーが1番人気の支持を集めた。忘れな草賞の勝ちっぷりが高く評価されてのものだろう。ミルコ・デムーロ騎手の継続騎乗で戴冠を狙う。ライバルには阪神JF2着、桜花賞3着と世代上位の実績を誇るクロノジェネシス、桜花賞1番人気4着からの逆転を狙う2歳女王ダノンファンタジー、さらには別路線組にもチャンスありといった多彩なメンバーにより争われる。

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スタートを互角に出ることに成功したラヴズオンリーユーとミルコ騎手は中団馬群の中で折り合いをつける。前が軽快に飛ばして早いペースで進む展開の中、折り合いを欠くことなく中団で我慢して脚を溜める。

最終コーナーに差し掛かると、先行集団も仕掛けてペースが上がる。ラヴズオンリーユーは変わらず中団の外から直線へ向けて動いていく。

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早めに仕掛けていったカレンブーケドールが抜け出しを図り、これを追ってクロノジェネシスやダノンファンタジーもスパートをかける。しかしカレンブーケドールが単独先頭に立つと後続との差を広げそのまま押し切り態勢に入った。

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そこへ馬場の外目を突いて、ただ一頭際立つ末脚を繰り出して差を詰めてくるのはラヴズオンリーユーだった。一完歩ごとに差を縮めると、カレンブーケドールに外から馬体を併せて抜き去る。

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カレンブーケドールも差し返す根性を見せてもうひと伸びして食い下がる。最後はクビひとつ抜け出したラヴズオンリーユーがカレンブーケドールを競り落として先頭でゴールした。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

記録的な勝利

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勝ちタイムはジェンティルドンナの従来記録を大幅に上回る2分22秒8を掲示。今も記録に残るレースレコードで制したラヴズオンリーユーが無敗のまま世代の頂点、樫の女王の座に就いたのだった。兄が果たせなかったクラシック制覇を見事成し遂げた。

無敗でのオークス制覇は2006年のカワカミプリンセス以来、史上5頭目。オークス初勝利のミルコ・デムーロ騎手はクラシック完全制覇を達成。インタビュー後のお約束、お立ち台からジャンプオフして喜びを爆発させたシーンはいつにも増して印象的だった。

9927人が歓喜

DMMバヌーシーにとってはこれが重賞初制覇。クラブの発足と、初参加のセレクトセールでラヴズオンリーユーを落札してからわずか2年足らずである。記念すべき重賞初勝利にしてクラシック制覇という快挙を達成したDMMバヌーシーの会員向け掲示板は喜びの書き込みで溢れ返り、オークスからしばらく経っても歓喜のコメントが止むことはなかったという。

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秋華賞を回避

オークス後は放牧に出されて秋に備えた。秋初戦は牝馬三冠のラスト、秋華賞へ直行する予定だったが牧場で蹄を痛めてしまい無念の回避が決まった。その後は目標をエリザベス女王杯に切り替えて調整が進められた。

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エリザベス女王杯

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復帰戦のエリザベス女王杯。オークス以来約半年ぶりのレースとなったが、無敗のオークス馬が古馬牝馬を相手にどのような走りを見せるか注目が集まった。

アーモンドアイやリスグラシューといった現役最強クラスの牝馬は不出走。それでも、秋華賞で悲願のG1制覇を果たしたクロノジェネシスに、古馬勢からはアーモンドアイ世代の2歳女王ラッキーライラックが久しぶりの栄冠を狙う。

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休み明けでイレ込み気味のラヴズオンリーユーがスタンド前でのゲート入りに手間取ったものの、無事にゲートイン。心配されたスタートをポンと出ると、2番手につけて先行する形に。

逃げるのはこのレース2年連続2着のクロコスミア。人気薄でも侮れない、父ステイゴールド譲りの堅実さに意外性を持ち合わせたファンの多い馬である。

クロコスミアが軽快に飛ばし、その後ろ2番手で折り合ったラヴズオンリーユーが追走する。クロノジェネシスはその後ろ4,5番手から、ラッキライラックは中団の位置取りだ。

終盤に差し掛かると、いつの間にかクロコスミアのリードは5,6馬身と大きく拡がり逃げ切り態勢で最後の直線へ。ラヴズオンリーユーも仕掛けて直線の末脚にかける。

クロコスミアが驚異的な粘りを見せ、なかなか差が縮まらない。ラヴズオンリーユーも2番手から差を詰めるがなかなか交わせないでいると、内ラチ沿いを一直線に伸びてきたのがラッキーライラックだった。

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ラヴズオンリーユーを抜き去ると、そのまま一気にクロコスミアも捉えて先頭でゴール。かつての2歳女王が、アーモンドアイの前に涙をのんだ3歳シーズンから続いた長いトンネルを抜けて復活の勝利を挙げた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

ラヴズオンリーユーはクロコスミアを捉えることができず3着まで。5戦目にして初黒星を喫し、3歳シーズンを終えた。

4歳時:長いトンネル

ドバイを目指すも

ラヴズオンリーユー陣営は、4歳の初戦として海外G1ドバイシーマクラシックへの挑戦を発表。3月に同レース出走に向けて現地入りした。

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ところが、この年の初頭から世界的に蔓延していた新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令される中で、競馬界も無観客開催など大きな影響を受けていた。

そしてこの年のドバイ国際競争はすべてのレースで中止が決定され、現地で調整されていたラヴズオンリーユーほか日本馬たちはレースに出走することなく帰国することとなった。

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ヴィクトリアマイル

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帰国後は検疫などを経て仕切り直し。無観客が続く春のG1シーズン真っ只中のヴィクトリアマイルに出走した。

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このレースで7冠を目指す絶対女王アーモンドアイに挑んだが、結果は7着。最内1番枠から終始馬群のインで我慢を強いられ、最後まで抜け出す脚を見せることはできなかった。

遠ざかる勝利

そして、勝利の女神に見放されてしまったかのように連敗は続いてしまう。必勝を期したG3鳴尾記念でハナ差の2着で春シーズンを終えると、秋に入っても府中牝馬ステークス5着と1番人気に応えることができない。

エリザベス女王杯

オークス以降勝ち星のないまま迎えたエリザベス女王杯。前年3着の雪辱を晴らしたいところだったが、ラッキーライラック、サラキアとの壮絶な叩き合いの末にまたしても3着だった。

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有馬記念

4歳最終戦は、年末のグランプリ有馬記念に出走。1番人気は前年クラシックでしのぎを削った同世代のライバルの一頭クロノジェネシス。春には大阪杯2着から宝塚記念を勝ってグランプリホースに。ラヴズオンリーユーとは対象的に、4歳になって大きく飛躍を遂げていた。

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そのクロノジェネシスが春秋グランプリ連覇という偉業を成し遂げる一方でラヴズオンリーユーは10着に大敗。結局この年は未勝利に終わり、結果的に8戦継続した主戦ミルコ・デムーロ騎手とのコンビもこれが見納めとなった。

5歳時:復活・海外で躍動

京都記念で復活V

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明けて5歳になったラヴズオンリーユーは京都記念から始動。川田将雅騎手を新たなパートナーに迎え、1番人気に支持されていた。

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ダービー馬ワグネリアンや、矢作厩舎の同僚ステイフーリッシュといった牡馬勢を相手にどのようなレースを見せるか。

ゲートが開くと、好スタートをきってスッと好位へ。ハッピーグリン、ステイフーリッシュの二頭が引っ張る速い流れを離れた4番手で追走する。最終コーナーに差し掛かると、早め先頭から押し切りを図るステイフーリッシュを追ってスパートをかけるラヴズオンリーユーと川田騎手。

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しぶとく粘る僚馬ステイフーリッシュに迫るラヴズオンリーユー。残り100m付近で差し切ると、最後は1馬身¼差をつけてゴール。オークス以来久しぶりに先頭でゴールし、復活を遂げた。

レース映像

引用元:JRA公式チャンネル

終わってみれば、強敵と思われた牡馬勢をねじ伏せるような強い競馬で一蹴してみせた。

ドバイシーマクラシック

京都記念快勝後は、ドバイシーマクラシックに出走が決定。前年にCovid-19の影響で中止となったため1年越しのチャレンジである。鞍上にはO.マーフィー騎手を迎える。

同レースには春秋グランプリホースのクロノジェネシスも出走する。未だコロナ禍の影響が残る情勢もあって9頭立てと少頭数となったが、日本の牝馬二頭の走りに注目が集まった。

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レースでは中団にクロノジェネシス、その後ろにラヴズオンリーユーという並びで進み、最後の直線勝負へ。ラヴズオンリーユーはいい手応えでラストスパートすると、堂々先頭に立つ。しかしクロノジェネシス、イギリス調教馬のミシュリフが直後から迫り三頭の激しい叩き合いに。

最後はミシュリフが叩き合いを制して1着でゴール。クビ差でクロノジェネシス、さらにクビ差でラヴズオンリーユーと続いた。

香港で海外G1初制覇

クイーンエリザベス2世カップ

ラヴズオンリーユーは香港のG1クイーンエリザベス2世カップ出走のためドバイから香港へ転戦。このレースには出走馬7頭という少頭数のうち日本から4頭が参戦した。前年の三冠牝馬デアリングタクトと、同じシャティン競馬場で香港ヴァーズを勝っているグローリーヴェイズ、菊花賞馬キセキといういずれが勝ってもおかしくない豪華な布陣で挑む。

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ラヴズオンリーユーとコンビを組むのは地元の名手ホー騎手。当時ゴールデンシックスティとのコンビで香港のビッグレースを勝ちまくっており、この日もG1チャンピオンズマイルを勝ったばかりである。

レースが始まると4番手で折り合いをつける。レース終盤から徐々に仕掛けて最終コーナーで3番手に並びかけて最後の直線へ。前年の勝ち馬エグザルタントを挟んでデアリングタクトと三頭が馬体を併せて激しい叩き合い。そしてラヴズオンリーユーが二頭を競り落として先頭に立つと、追い込んだグローリーヴェイズの追撃も及ばずそのまま力強くゴールまで駆け抜けた。

レース映像

引用元:HKJC公式チャンネル

スタート後間もなくしてラヴズオンリーユーは落鉄(蹄鉄が外れてしまうこと)していたことが分かったが、それをまったく感じさせない走りで海外G1初制覇。オークス以来二つ目のG1タイトル獲得となった。

鞍上のホー騎手は記念撮影時にハンドサインでハートマークを作って見せ、画面越しに見守ったバヌーシーの出資者と日本のファンを喜ばせた。

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札幌記念

香港から帰国したあとは春は休養に充てられ遠征の疲れをリフレッシュ。秋には米ブリーダーズカップ挑戦プランが明かされており、その壮行戦として札幌記念が選択された。

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夏の札幌を盛り上げるG2札幌記念は、時にG1級の好メンバーが揃うこともありスーパーG2と呼ばれるレース。この年は、あのアイドルホースの参戦が話題となっていた。

白毛のアイドル、ソダシだ。無敗のまま桜花賞を勝った稀代のアイドルが、初黒星となったオークス以来となる出走を決めたことで一躍注目の一戦に。1番人気のラヴズオンリーユーと人気を二分する支持を集めていた。

ほかにもブラストワンピースやペルシアンナイトといったG1馬も集まり豪華メンバーで行われた。

レースは人気の牝馬二頭によるマッチレースに。ソダシが先行策から早め先頭で押し切りを図るところへ、大きく外を回らされる不利がありながらも直線で鋭く追い込んだラヴズオンリーユーが猛追。それでもソダシが最後まで凌ぎきって札幌記念を制した。

歴史的快挙

BCフィリー&メアターフ

札幌記念のあとは正式に米ブリーダーズカップ挑戦が決定。川田騎手とのコンビで挑むことも発表された。

米デルマー競馬場の芝11ハロン(約2200m)で行われたBCフィリー&メアターフ。ラヴズオンリーユーにとって左回りも距離も問題なく、現地ブックメーカーでも3番人気と高評価を集めていた。

現地での調整過程も順調にいき、万全の状態でレースを迎える。

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ゲートが開くと、好スタートを決めて好位4番手の外につけた川田騎手とラヴズオンリーユー。絶好のポジションでレースを運び終盤を迎える。有力各馬が最後の直線へ向けて動き始めポジション争いが激しくなると、ラヴズオンリーユーは外から被されて馬群に包まれる厳しい展開に。デルマー競馬場の直線は長くない。

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川田騎手の仕掛けでラストスパートをかけながら最終コーナーを回り最後の直線へ。前には3頭ほどが壁になっていたが、わずかな隙間に突っ込んで進路を見出すとラヴズオンリーユーは抜群の瞬発力を発揮。一気に馬群を割って抜け出し先頭でゴール。

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控えめに拳を握る川田騎手と、歓喜に湧く矢作調教師ら関係者の様子が交互に映し出される。歴史的な瞬間だった。

レース後の記念撮影では川田騎手がハートのサインを手で描いた。いつからか恒例になっていたラヴズオンリーユー陣営のハートサインの中で最も有名なシーンが生まれたのだった。

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この瞬間を各地から見守ったDMMバヌーシーの出資者9927人の興奮と喜びはどれほどだっただろうか。多くの人がハートのサインで記念撮影を撮ったことだろう。想像するだけで鳥肌が立つような羨ましい体験である。

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香港カップ

ブリーダーズカップ後はアメリカから香港へ渡りG1香港カップに出走。これがラヴズオンリーユーの引退レースとなることが発表された。

日本からはラヴズオンリーユーのほかにレイパパレとヒシイグアスが参戦。レイパパレは同年春に川田騎手とのコンビで大阪杯を勝った1歳年下の牝馬。日本馬が人気の中心となった。

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ゲートが開くと、好スタートから4,5番手のインで折り合いをつける。馬群が一団のまま終盤に差し掛かるが、ラヴズオンリーユーが外に出すタイミングとスペースはなく進路を探しながら最後の直線へ。

川田騎手はラヴズオンリーユーの進路を内に取り、狭い隙間を割って出るコースを選択。その間にも先に抜け出したロシアンエンペラーが単独リードを拡げていく。ようやく馬群から割って出てきたラヴズオンリーユーは一気に加速し外から追い込んできたヒシイグアスと一緒にロシアンエンペラーに迫る。

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3頭の熾烈な追い比べの末、ロシアンエンペラーを競り落とし、ラヴズオンリーユーがヒシイグアスより頭一つ前に出たところがゴールだった。

レース映像

引用元:HKJC公式チャンネル

なんと劇的な引退レースか。これで海外G1を3連勝として有終の美を飾ったのだった。

表彰、そして引退式

日本・香港・アメリカと3カ国のG1を、それも同一年に勝った日本で最初の馬になったラヴズオンリーユーはJRA賞で最優秀4歳以上牝馬に選出されたほか、エクリプス賞(北米地区のJRA賞にあたる表彰)で最優秀芝牝馬にも選出された。エクリプス賞を受賞するのは日本調教馬として初の快挙だった。

最後のシーズンを充実の海外遠征で過ごしたラヴズオンリーユーには引退式の場が設けられ、年が明けた1月30日、東京競馬場開幕週の最終レース後に執り行われた。

長いコロナ禍の影響から活気を取り戻しつつあった東京競馬場のパドックにはラヴズオンリーユーの最後の勇姿を見るために多くのファンが残った。もちろんそこには、ラヴズオンリーユーとともに大きな夢を見たコミュメンの皆さんも多く参加され、彼女から受け取った大きな愛に最大限の感謝を伝えた。

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ありがとう、ウマ娘。

ありがとう、ラヴズオンリーユー。

史実のラヴズオンリーユー

基本情報2016年3月26日 牝 鹿毛
血統父 ディープインパクト
母ラヴズオンリーミー(父Storm Cat)
馬主DMMドリームクラブ
調教師矢作芳人(栗東)
生産牧場ノーザンファーム(北海道安平町)
通算成績16戦8勝(中央競馬12戦5勝、海外4戦3勝)
主な勝ち鞍19’オークス、21’QE2世C(香港)、BCフィリー&メアターフ(米)、香港カップ(香港)

エピソード①母として

競走馬としての華々しいキャリアを終え、繁殖牝馬となったラヴズオンリーユー。初年度はエピファネイアとの間に牡馬が誕生し、今年その初仔がデビューを迎える年齢となった。

ラヴズプレミアムと名付けられ母と同じくDMMバヌーシー所属馬として矢作厩舎からデビュー予定である。

現役時代は未対決だったグランアレグリアや、もっとも多く対戦したクロノジェネシス、オークスで名勝負を演じたカレンブーケドールら同世代ライバルたちとの二世対決も楽しみである。

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エピソード②僚馬とともに

ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを勝ったその日、あとに行われたBCディスタフを矢作厩舎の同僚マルシュロレーヌが勝った。ラヴズオンリーユーと同い年で牧場時代から一緒に過ごした仲良しの牝馬は、親友の走りに触発されたか自身も一世一代の素晴らしい走りを見せて勝利を掴んだ。ダート競馬の本馬アメリカで牝馬ダート界の頂点に立つという歴史的な快挙を成し遂げた。

米競馬の祭典ブリーダーズカップを2勝という日本馬2頭の快挙に、日本中の競馬ファンが酔いしれた日だった。

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エピソード③実は嫌われていた?

ラヴズオンリーユーとキャリア終盤の名コンビを組んだ川田将雅騎手。実は自他ともに認めるほどにラヴズオンリーユーからは嫌われていたという。川田騎手が近づくと露骨に怒りをあらわにするため、レース以外ではなるべく近寄らないようにしていたそうだ。

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BNW世代(93年~)から競馬を追いかけているガチガチの競馬ファン。最近は少し離れ気味だったが、ウマ娘をきっかけに競馬への情熱を取り戻す。
持ち前の競馬知識を活かして、ウマ娘ファンと競馬の間の橋渡しに少しでも貢献したいと思っている。

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