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筆者は子どもの頃「いつか仲間と冒険に出たい」と割と本気で考えていた。まあ現実には「冒険なんてない」と薄々は思っていたし、そもそも、そんなことをしてくれる友達もいなかった。「つまらない」がデフォの日常だ。
そんな時に出会ったのがコンピュータRPG（以下CRPG）だ。ゲームの中で繰り広げられる大冒険に魅せられ、親に隠れて夢中でプレイした。
テーブルトークRPG（以下TRPG）『ダンジョンズ＆ドラゴンズ』をPC上に再現する試みからスタートしたCRPG。しかし、無限の想像力で、人間がプレイヤーをナビゲートするTRPGとは違い、PCには限界がある。
ところが近年、ハード性能の向上とAIの進化が、こうした欠点を解決するかもしれないのだ。
今回は、常軌を逸した台詞と選択肢の物量でマウントを取ってくる、アーケードライクなARPG『Avowed（アヴァウド）』を紹介する。
RPGを知り尽くした老舗メーカー、Obsidian Entertainmentとは
▲『Avowed』は同社の過去作『Pillars of Eternity』と世界観を共有する。
『Avowed（アヴァウド）』は、ファンタジー世界を舞台にしたセミオープンワールドARPG。2025年2月18日に発売。対応機種はPC、Xbox Series X/S。
開発はカリフォルニアのデベロッパー、Obsidian Entertainment（オブシディアン・エンターテイメント）。Xbox Game Studioがパブリッシャーを務める。
Obsidianは『Outer World（アウターワールド）』『Fallout: New Vegas（フォールアウト：ニューベガス）』などで知られるデベロッパーだ。設立は2003年と古く、PCゲーム界隈ではカルト級の老舗メーカーだろう。
▲近年はSF作品を多く手掛けてきた同社。約7年ぶりのファンタジーRPGの発売で話題となった。
前身はBlack Isle Studios（ブラックアイル・スタジオ）。初代『Fallout』の開発メンバーなどが参画し、後に『Fallout2』を開発した。BioWearの『Bulder’s Gate（バルダーズゲート）』シリーズのパブリッシャーも手がけたRPG色の濃いメーカーだ。
Obsidianは、そのRPG愛を背景に、ただ広いだけの薄っぺらい世界ではなく、みっちりと情報を詰め込んだ密度の濃い世界の構築を得意とする。その中でプレイヤーは、自分の好みを行動として選択できる。いわゆるロールプレイに主軸を置く「わかっている」メーカーなのだ。
『Avowed』は、そんなObsidianが得意とするファンタジーRPGに原点回帰した待望の一作だ。
サクサク動く良質アクション！ 剣と魔法とパルクール
▲密度感のあるグラフィック。現実に存在する世界かのような錯覚を覚える。
本作は一人称、または三人称のARPGだ。両手にさまざまな武器を取り、どう立ち回るかはプレイヤーが決める。戦闘の自由度の高さは折り紙付き。
近接から遠距離にいたるまで武器種は豊富で、片手武器と盾なら的確なガード、両手武器ならステップしながらの接敵、遠距離なら環境を利用しつつ距離を保つなど、戦い方はプレイヤーの手の中だ。
直感的な操作や比較的安定したFPSで動作することもあって、アーケードライクなキビキビとした戦闘に手に汗握る。本作は他の同様のタイトルと比べても、戦闘の面白さはピカイチだ。
▲好きな武器を手に取り、思いのままに戦える戦闘が面白い！
敵は「勝敗を決めるのは数じゃ」と言わんばかりに徒党を組んで挑んでくる。プレイヤーは最大2人までのNPCと共闘し、これに対抗する。泥仕合を呈した乱戦から抜け出し華麗に敵を仕留めるなど、悦に浸れるムーブには思わず「ムフフ」と笑みがこぼれる。
そして本作のアクションパートをより魅力的にするのがパルクールの存在だ。マップは平面だけではなく縦に多重構造になっている。こうしたギャップをパルクールでひょいひょい登る爽快感がたまらん。
想像以上にいろいろな場所によじ登れて、単なる移動になってしまいがちな探索に、強烈なスパイスとして効いている。施錠された小屋に侵入したり、唐突に始まるアスレチックを飛び越えたりと、秀逸なギミックが満載だ。
旅の仲間は超おしゃべり！？ 無口な人間より喋るNPCたち
▲登ってくださいと言わんばかりの塔。縦方向の探索がやみつきになる。
本作最大の魅力は、なんと言ってもObsidianが紡ぐ濃密なストーリーだ。謎の疫病「ドリームスカージ」が蔓延するリビングランドを舞台に、プレイヤーは皇帝から密命を受けた特使として調査にあたる。
さまざまな人に出会い、数限りない選択を繰り返す中で、プレイヤーの紐解く物語は刻々と変化する。選択肢は膨大だ。いいですか、大事だから2回いいますよ。マジでバグってるのかと思うぐらい「膨大」なのだ！
台詞の量も尋常じゃない。プレイヤー一行は途中、体力回復などを目的にキャンプを張る。NPCたちはキャンプファイアーを囲んで、冒険の雰囲気を盛り上げてくれるんだけど、みんなすげーおしゃべりだ。
▲この量の選択が一度の会話で何度も訪れる。自分の態度を表すだけのものから、ストーリーに影響を与えるものまでさまざまだ。
冒険の道中でもNPC同士が勝手に会話を始めて、とにかくにぎやか。もうずっとしゃべってる。しかも毎回内容が違うのだ。これだけベラベラしゃべれるNPCたちなら、ワンチャン、無口なTRPGのGMより有能なんじゃないの？と思う。
いまはまだ無理でも、将来AI技術と組み合わせたら、プレイヤーのあらゆる行動に反応するCRPGが登場するかもしれない。本作のシナリオ・システム周りは冗談抜きで、そんな未来を想像させるに十分な出来だ。
こうしたディテール満載のストーリーを、マップデザインや戦闘周りなどのシステムが、がっぷりよつに組んで受け止める。アンリアルエンジン5がグラフィックを彩るド直球なファンタジー世界が、いやが上にも気分を盛上げる。
由緒正しき正統派ARPG プレイヤーの想像の数だけ冒険がある
▲施錠された小屋でもこの通り、舐め回すように世界を探索しよう。
本作はObsidianらしい堅実な作りの由緒正しきファンタジーARPGだ。すべてのプレイヤーがゲームを始めてすぐに、その世界に引きずり込まれてしまうだろう。
リリースに日本語が間に合わなかったのは残念だが、同社は「翻訳のクオリティ不足」を理由にしている。１ヶ月延期してでも修正を掛けるところ。Obsidianのこだわりが垣間見えて、むしろ好感が持てる。素直に座して待ちたいところだ。
▲あの峠を越えた先にはどんな景色が待っているんだろう。湧き上がるワクワク感を止められない！
ところで筆者も、現実世界のクエストをこなして無数の経験値を稼いできた。ハナタレだった子どもの頃よりは、だいぶ勇者さまに近付けたと思う。
そしてレベルアップして初めて、人はレベルの高さで見える景色が変わるってことに気が付いた。なぜなら、いま周囲を見回してみると、「日常」は人生という名の冒険に満ちていて「楽しい」と心の底から思えるから。
そうか、RPGって「人生」なんだ。
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『Avowed』とは？
『フォールアウト:ニューベガス』『アウター・ワールド』の開発が贈る、古代の秘密を解き明かすアクションRPG！
Xbox Game Studiosから発売のPC,Xbox Series X|S対応ゲームソフト『Avowed』は、王国の使者が謎と危険に包まれた島を冒険するアクションRPG。
開発は、『フォールアウト:ニューベガス』『アウター・ワールド』などを手がけてきたObsidian Entertainmentが担当する。
本作は、架空の世界「Eora」のとある島「Living Lands」が舞台。主人公は王国「Aedyr」から使者として島に訪れ、広がりつつある疫病の調査をしていく姿が描かれる。
剣や銃のような打撃ができる武器と、敵を凍結させるなど足止めにも有効な呪文を自由に組み合わせて、自分に合ったスタイルで戦略を立てられるのが特徴の作品だ。
発売日など基本情報
| 発売日 |
2025年2月19日 |
|---|---|
| 会社 |
Xbox Game Studios |
| ジャンル | アクションRPG |
| 対応ハード | PC / Xbox |
| 価格 |
PC : 8,800円(税抜)
Xbox : 8,800円(税抜)
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