2023年「GOTY」を獲得した年末の超話題作!
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※ 一部物語冒頭のネタバレを含んでいます
2023年12月8日(金)に開催されたThe Game Awards 2023にて『バルダーズ・ゲート3(Baldur's Gate 3)』が「Game of the Year(GOTY)」に輝いたのは記憶に新しい。
しかしそんな本作は、日本国内で高い知名度があるとは決していえず、The Game Awardsにノミネートされた作品として、初めて本シリーズを知ったという人も多いのではないだろうか。ゲーム誌などのメディア方面ではたびたび話題に挙げられていたタイトルだが、ここに来てその注目度は一層高まった。
今作はLarian Studiosが開発するタイトルで、「TPRG(テーブルトークRPG)」のように事細かなキャラクター設定から多岐にわたる選択肢、ダイスロールで決まる運命など、プレイヤーがその世界にのめり込めるロールプレイング要素の特色を強く引き出した一作品だ。
世界最古のRPGと名高いTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』をベースにしており、前作の発売からおよそ23年ぶりの新作タイトルになっている。
もちろん、TRPGに触れたことがなくても本作は問題なく楽しめる。筆者はTRPGについてミリしらだし、話を聞く限り“人生ゲームのファンタジー版”と認識していた程度のレベルだ。それでも本作の理解が深まれば深まるほどゲームの奥深さにどハマりしていき、陽が登る前から早起きして遊んでいたくらい沼にハマっている。
本稿では、2023年12月21日(木)にスパイク・チュンソフトから発売のPS5版『バルダーズ・ゲート3』の先行プレイレポートをお届けしていく。そして、読者にはまったく関係ない話で恐縮なのだが、一言だけ文句を言わせてもらってからゲームの紹介に入るとする。
「このゲーム、遊ぶ時間が全然足らないよ編集部!!!」
キャラクタークリエイトでは、美人キャラはもちろん“ぼくのかんがえたさいきょうの主人公”まで色々と作れそう
本作では、種族・クラス・能力・外見などを自分で決められる【カスタム】と、既にプリセットが用意されてすぐにゲームをプレイできる【オリジン】の2種類が選択できる。
ちなみに選ばれなかったオリジンは、一部を除き作中のNPCキャラクターとして登場。今回のプレイでは“カスタム”を選ばせてもらった。
キャラクタークリエイトに時間をかけるプレイヤーは多い。何故なら自分の代わりにゲームの世界を冒険する“分身”だし、ゲーム側がそれをウリにして細部まで決められるのであれば、なおさらこだわりたくなってしまうのがゲーマーの心理というもの。はじめは「よし、美少女キャラを作るか!」と、息巻いていた自分。
しかし、よく考えてみたらプレイ時間と本稿の執筆に充てられたスケジュールはややタイト気味だった。美少女キャラクターをつくろうなんてこだわり出したら、いつゲームが始められるかわからないではないか。ゲームライターとはいえ、遊ぶ時間は限られている。今回は個人的な事情を置いといて、少しだけカスタムしたキャラクターでプレイを進めていくことに。
そうして出来たのが原宿あたりでサブカルチャーに酔いしれていそうな「ハーフオーク(男)」だった。
本当は最低限のキャラクリで見栄えの良さそうなキャラクターが出来さえすれば良かった。
種族には【ヒューマン】や【エルフ】【ドワーフ】に【ドラゴンボーン】など、実に多様な種族が用意されているし、実際途中まではかっこいい外見の「ドラゴンボーン」で制作を進めていたのだ。
しかし、ほんの出来心でハーフオークの外見を【ランダム】にしてみたら、ちょっとこれで遊びたくなってしまった自分がいる。なにより目立つし、女性的なヘアスタイルをそのまま選択できるのも興味深い。
欲を言えばもっと中性的でモテそうなビジュアルにしたかったのもあるが、現実問題SNSでそんなハーフオーク探しても参考になりそうなものは見つけられなかった。方向性を変えて、「強さ」と「ギャル感」の両立を目指した結果があれである。
キャラクリでは【クラス】に【初期呪文】、キャラクターの人物像を設定する【背景】まで事細かく決められる。本来であれば、「ぼくのかんがえたさいきょうの主人公」を文字通り作れてしまう非常に魅力的な要素なので、これから遊ぶプレイヤーたちには、ぜひとも時間をたっぷり使ってもらいたい。
なお、ゲームをプレイしていて後から存在に気づいたのだが、1度作ったキャラクターの外見は、後々プレイヤーの拠点となる【野営地】に設置された「鏡」から、変更できそうだった。
自分の分身を作り終えたら、最後は物語のキーパーソン的な存在になる「守護者」を制作開始。
こちらはかなり容姿端麗な女性キャラクターが順調に出来上がり、どうしてこの創作力を自分のキャラクターに活かせなかったのかと、今では悔しくて仕方がない。外見、交換させてくれませんかねぇ......?
樽も死体も使えるものは何でも使うシミュレーションバトルがマジでなんでもできそう!
ゲーム開始時、邪悪な蛸顔の種族こと、“マインド・フレイヤー”に捕まっていたプレイヤーは、寄生すると最終的に宿主を同じマインド・フレイヤーに変えてしまう「幼生」を脳に埋め込まれてしまう。
冒頭では空飛ぶアンモナイトのような飛行船に囚われていたが、ドラゴンの攻撃を受けて船は損壊状態に。墜落しそうな状況から一刻も早く逃れるために行動を開始する。
本作は操作性やフィールド内オブジェクトのアクセス方法などが少し特殊で、慣れるまでにしばしもたついていた。意味なくしゃがんだり、火に近付いて火傷したり、滲み出る冒険者ビギナー感......。移動はアナログスティックだが、各種アクションはR1ボタンを押すことで出現するメニューの中から選択して実行するスタイルだ。
アクションゲームのようなワンボタンでの「しゃがむ」「ジャンプ」「攻撃」が出来ない代わりに、バトルでも活躍する魔法を始めとした、さまざまなアクションが平時に利用できてしまう。
そして、フィールド上に設置されたオブジェクトに対し、そういったアクションの数々で“何かしらの作用”を引き起こせるのもゲームのポイントだ。例えば、攻撃で柱を破壊して足場を崩落させたり、アイテムの移動・投擲でトラップをわざと起動させたり、木箱を積み重ねて高所への足場にするなど、プレイヤーの工夫があらゆる箇所で活きる。
さらに、怪しい場所を調べた場合やキャラクターとの会話における選択肢次第では、ダイスロールによってそのときの運命を決めていく。これらの条件分岐で無数のアプローチが浮かび上がるため、ほかの人と全く同じ物語にはなり得ない。
この辺りが、TRPG的と言われる底なし沼のような奥深い魅力と言えよう。しかし正直に白状すると、最初の触りだけで「あれ、ひょっとしてこのゲーム超難しいんじゃね?」と、不安になったのも事実。
ゲーム開始時に敵からの襲撃を受け、ボロボロになったマインド・フレイヤーたちの船内では、プレイヤー以外にも多くのキャラクターが捕まっている。先に進むと装置に拘束された人々を発見した。
解放してやろうと思い、近くの操作パネルを適当に弄っていたら、装置が起動して拘束された彼らの精神をうっかり崩壊させてしまった。考えなしに色々動くと状況を悪化させる良い例かもしれない。
こうしたアクシデントが作中では頻繁に起こり得る。プレイヤー側へ不利に働くケースもあれば、思いもよらない収穫となる場合もあり、その特色を理解できるようになると、“このゲームはこういうもの”と割り切れて、次第に気にならなくなる。そうなれば、あなたも『バルダーズ・ゲート3』の魅力に取り憑かれた冒険者の1人だ。
その後はカプセルに閉じ込められていた女性・シャドウハートを救出し、パーティメンバーに加える。最奥の制御室では、マインド・フレイヤーと襲撃者が戦いを繰り広げており、プレイヤーもザコと戦いながら船の墜落を防ぐために操作盤へ到達を目指す。
本作の戦闘は、ターン制のシミュレーションRPGバトルだ。敵にエンカウントすると、現在冒険しているフィールドがシームレスにバトルマップへ切り替わる。
最寄りの段差は高所から敵を狙い撃つための高台代わりになり、先ほどまで漁っていた樽は敵に投げつけられる凶器に変貌する。あらゆるものを駆使して、敵との戦いを有利に進めていくのだ。
R1ボタンで出現するアクションの出し方、できることなどは基本的に平時と同じ。戦闘中に装備を着替えるといったことも可能である。
ただし、バトルでは何か行動するたびにそのキャラクターが持つ【アクションポイント】が減る。これはキャラクターの“行動力”のようなものと言えるだろう。
クラスによっては強力な魔法を扱うための【呪文スロット】も消費する。呪文スロットは野営地で寝泊まりしたり、【小休憩】【大休憩】などを行ったりすることで回復するので、次なる戦いに備えて冒険中の休息も適度に求められるというわけだ。
周りのザコを倒して、無事に船の操作盤を修復することに成功したが、ドラゴンの度重なる攻撃を受けた飛行船は結局墜落してしまう。その途中でハーフオーク(筆者)も投げ出され、荒れ果てた浜辺で目を覚ますことに。同じく脳に幼生を植えつけられた仲間との出会い、そしてその幼生がもたらす不思議な力の数々。
マインド・フレイヤーの強大な力を受け入れるか、それとも幼生を取り除くために奔走するか、あるいはそのほかの手段を模索するか。物語の全てはコントローラーを握るプレイヤー自身に委ねられている。ここから『バルダーズ・ゲート3』の冒険は本格的なスタートを迎えていくのだ......。
プレイ時間は15時間を突破。ゲームの仕組みや冒険・探索のコツもだんだんと見え始め、やめどきが見つからなくなる
本稿執筆時点でのプレイ時間は15時間を超えた。風のたよりに聞いたところ、1周クリアまでの時間はおよそ100時間以上になるという。まだまだ果てしない道のりと困難が待ち受けているわけで、この膨大なボリュームを考えると、どうやら年末年始を生け贄にしなければならないらしい。
そう、すでに取り決めていた年末年始の予定を全てキャンセルするか、『バルダーズ・ゲート3』のプレイに充てるか、ここに来て今更うんうんと悩み続けているのだ。それほどまでに本作が持つ冒険の魔力は蠱惑的(こわくてき)。人生はひょっとしたら『バルダーズ・ゲート3』なのかもしれない(?)
冒険中、ゴブリンに襲われている街を助けるも良いし、そのままゴブリン側に着いて共に荒らしても良い。利益を求めて途中から裏切ることもできるし、俺こそが魔王だと言わんばかりにどちらも蹂躙したって良い。もちろん、そもそも関わらないというのも1つの選択肢だ。
現実の自分自身とゲーム内の分身を切り離せれば、多様な選択肢によってもっと色んな遊びが楽しめるのだろうが、そういった遊びをしようにも、ついつい筆者はゲームの世界に没入してしまう。ちょっとヤバい見た目のハーフオークなのに、感情移入してヒロインとロマンスを楽しんじゃったりしている。
しかも、プレイヤーを誘惑するさまざまな要素が、冒険の目的を見失わせてくるのだ。本来なら急がないとならないはずなのに、目前にある未知のダンジョンに足を踏み入れたり、NPCとの会話に同情して依頼を受けてしまったりと、旅の指針はもうメトロノームくらいに行ったり来たりのブレブレ状態。
特に酷かったものは、物語冒頭で脳に埋め込まれた幼生を除去する旅を続けていたら、夢の中で自分がキャラクリした守護者が現れて、「力を得るために幼生をもっと取り込め」とか助言してくるイベントである。
断ろうと思ったのだが、実は守護者が人知れずプレイヤーの冒険を見守り続けて陰ながら守ってくれていたというではないか。おまけに容姿端麗な美人女性にしてしまったので微妙に断りづらく、守護者をスキンヘッドのドワーフにしていれば......などと2度目の後悔を味わっている最中である。
もっとこう、気楽な珍道中を楽しもうと思って見た目の圧が強いハーフオークにしたのだが、プレイ時間が増えるたびに「もう、自分がハーフオーク側に寄せていけば良いのでは?」と思うようになってきている。
今では邪な力に溺れながらも、弱きを助け強きを挫く任侠に溢れたギャル男。目指す方向性は、闇の力に手を染めた水戸黄門のような旅の一行である。
さて、冒頭でお伝えしたが『バルダーズ・ゲート3』は、世界でもっとも古いTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をベースにしている。言うなれば“全てのRPGの始祖になる作品のエッセンス”をゲームソフトに落とし込んだタイトル。プレイヤーが没入するためだけの世界がそこに広がっているのだ。
ただひたすら自由度が高いという作風ではなく、冒険するための大きな動機があって、キャラクターとの出会い、プレイヤーの行動選択がその冒険の行末と過程を無数に分岐させているイメージに近い。TRPGのことは未だによくわからないが、本作はアナログゲーム(TRPG)の果てしない可能性をデジタルゲームに上手く昇華して、誰でも触りやすくした...と、解釈している。
遊べば遊ぶほど、よくこんなゲームが作れるなと感嘆せずにはいられない、良い意味での過剰な作り込み。そして、どんなカラクリを駆使すれば、本作を8,580円(税込)の価格帯で遊ばせてくれるのか実に興味が尽きないところだ。
プレイヤーを意のままにゲームの世界へ連れ出して行ってくれる『バルダーズ・ゲート3』は、月並みな表現でもやはり「スゲェ作品」といわざるを得ない。
数多くの強力なGOTY候補が並ぶ中、本作の飛び抜けたゲーム体験とクオリティは、プレイ時間を費やすことで身に染みて理解できるようになるだろう。年末年始はぜひ、ダイスロールで命運の決まる『バルダーズ・ゲート3』の沼にどっぷりと浸かってほしい。
追伸:実はマルチプレイもできるよ!
『バルダーズ・ゲート3』とは?
『バルダーズ・ゲート3(Baldur's Gate 3)』は、世界最初のRPGと呼ばれるテーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」第5版の世界観を楽しめるファンタジーRPG。前作『2』から実に23年ぶりの新作となる作品だ。
舞台となるのはフォーゴトン・レルム(忘れられた領域)。プレイヤーは迫りくる敵を仲間と協力して倒し、冒険を繰り広げる。
本作においてどのような物語が描かれるかは、プレイヤーの行動次第。さまざまな行動がダイレクトにゲームに反映され、やがて世界へと大きく影響していくこととなる。まるで映画のように生き生きと描かれるファンタジーの世界を自由に探索し、自分だけの旅を繰り広げよう。
発売日など基本情報
発売日 | PS5:2023年12月21日 |
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ジャンル | RPG |
価格 | PS5:7,800円(税抜) |
最大プレイ人数 | 4人 |
公式HP | バルダーズ・ゲート3公式 |
GameWith編集者情報
東京都福生市生まれのゲームライター。そしてお酒と革靴が好物でソロキャンプが趣味のミニマリスト気質おじさん。サ終ゲームのヒロインをAIで復活させてニヤニヤしたり、国語辞典を持ち歩いて山中フラフラしたりしています。ULキャンプに傾倒しているためSNSは大体キャンプの話題が多め。 |
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