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なぜ、ゲームの主人公はみんな物覚えが悪いのか。
青い服を着た伝説のあの人も、起きたら何も覚えていなかった。世界を救った勇者さまも、続編ではこれまでの経験やスキルをすっかり忘れてレベル1から再出発するなど、ポンコツ記憶力の例は枚挙にいとまがない。
ただ、いくら物覚えが悪いヒーローたちでも、自分の名前くらいは覚えていた。しかし遂に、自分の名前すら覚えていない主人公が登場する「ど忘れ系ゲーム」のリーサルウェポンが発売された。
今回は一人称視点のサバイバル・アクション『アトムフォール(Atomfall)』を大紹介。自分の記憶をなくした主人公が、美しいイギリスの田園地帯を舞台に繰り広げる、SFミステリー冒険譚を「ガチ」で堪能しよう。
目次
■名前すら知らない主人公が巻き起こす「ど忘れ」冒険譚

▲イギリスの田園地帯とポストアポカリプスの組み合わせが新鮮。
本作の開発と販売を手掛けるのはイギリスの開発会社、Rebellion。『スナイパーエリート』シリーズなどで知られる。
イギリス北西部のウィンズケールを舞台に、プレイヤーは隔離された架空の地域カンバーランドを調査・探索する。クラフトで消費アイテムの生産や武器強化を行いながら、隔離空間からの脱出を目指す。
ゲームはプレイヤー扮する主人公が「謎」の地下壕のベッドで、「謎」の血まみれ科学者に叩き起こされる「謎」の展開から始まる。
いやいや、正直 ─
主人公が一番「謎」なんだが!?

▲開口一番がこの台詞。こっちが聞きたい気分だ。
なんせ、なぜ自分がここにいるのか、何者なのか、名前すらも覚えていないゲーム史上最強のど忘れくんだ。そのくせ、親切にキーカードを授けてくれる科学者の背後に主人公が近づくと、おもむろに表示される「テイクダウン」の文字 ─
いやいや、人を一瞬でお星さまにしてしまう暗殺スキルはしっかり体得しているのに、自分の名前は忘れてんの!?まだ超序盤もいいとこなのに、いきなりの面白展開にワクワクが止まらない筆者。「なにこれ、ひょっとして世界中のNPCをテイクダウンできちゃうヤツ?」と、本作の自由度の高さを前に歪んだ興味が尽きない模様。
そんなこんなで、チュートリアル的な地下壕を後にした、ど忘れくん(名前がわからないからこう呼ぶ)。地上では血で血を洗う「ガチ」ベンチャーが待ち受けていることを、まだ知らない。
というか、名前も知らない。
■あの、マジで殺りにくるの止めてもらっていいスか?

▲特に序盤の戦闘難易度は高い。だがそこがいい。
地上でど忘れくんを待ち受けるのは、緑が一面に広がる美しい田園風景だ。草木がそよ風に心地よく揺らめいている。ほどなくして、この夢見心地な気分を切り裂くように、少し間の抜けた口笛が聞こえてくる。
アウトローだ。
本作の敵対勢力で、警告を無視して不用意に近づいたり、彼らのエリアに侵入したりすると戦闘状態となる。本作は「ガチ」だ。序盤から手加減しない。彼らは徒党を組んでプレイヤーを本気でボコりに来る。あっという間に囲まれてからの瞬殺が普通だ。
「あの、マジで殺りに来るの止めてもらっていいスか?」と思わずつぶやいてしまいたくなる程の本気モードなのだ。
いわゆるゲーム的な手加減を露骨にしてこない敵やモンスターが大好物な筆者。終始ニヤニヤしながら興奮気味にプレイ。ことごとく返り討ちにされながら、ゴリ押しが無理だということにようやく気が付く。ならばと、遅まきながら巻き道を探したり、ステルスで各個撃破を狙ったりと試行錯誤し始める。
こうなると俄然ゲームが楽しくなってくる!

▲障害物にまぎれて背後から各個撃破していく。
そうなのだ。本作に限らず、ゲームは受け身でやるより能動的にプレイした方がはるかに楽しい。失敗と挑戦を繰り返しながら、少しずつ積み上げる成功体験がたまらない。ゲームはそのサイクルを効率よく学べる最高の教材なのだ。
本作は、ゲーム全体から「サバイバルを楽しんでほしい」という、開発者側からのメッセージがビシバシ伝わってくる「ガチ」さが魅力の作品だ。一方で、プレイアビリティを高めようとする配慮も随所に施されていて、質の高いゲーム体験を保証している。
そんな本作のガチ・ベンチャーを味わうために欠かせないものといったら、なにかね?ワトソンくん。
もちろん「英国紳士」と「紅茶」なのだよ。
■極限のサバイバル状態でもアフタヌーンティーは超重要

▲アウトローは、えんじ色のジャケットをお揃いで着る、お洒落集団だ。
血みどろの科学者。本気で殺りにくるアウトローたち。そう聞くと、本作の舞台が殺伐とした荒廃世界かと思われそうだが、実は少し違う。ネジが2、3本ぶっ飛んでいる狂った世界であることは間違いないのだけれど、さすがはイギリス。世界全体が醸し出す振る舞いがエレガントなのだ。
同ジャンルでは、映画『マッドマックス』みたいな装備品がステレオタイプだと思うが、本作のアウトローたちは、キューブリック作品の『時計仕掛けのオレンジ』に登場する、アレックスみたいないでたちだ。ウェーイ系のパリピではなく、狂気と哀愁が同居するピエロといった塩梅で、敵のくせに「英国紳士・淑女」っぽいのだ。
それは、生き残りを懸けた極限のサバイバルに身を投じながら、合間のティータイムを忘れない主人公のど忘れくんも同様だ。各地に設置された無料のティーポットでハブ・ア・ブレイクすれば、たちどころに心拍数と体力が全回復する。絶賛、血祭り中でも、そこは英国紳士。名前は覚えていなくとも、ティータイムはけっして忘れないのだ。

▲茶葉が気になるティータイム。ダージリン、それともアールグレイか?
NPCたちの会話もウィットに富んでいる。イギリス人らしい、皮肉をたっぷり効かせたダイアログが楽しい。目まぐるしく変わるNPCの表情や、天秤を採用したユニークな物々交換システムなど、本作の雰囲気を醸成する独自の世界観は、プレイヤーをグイグイ引き込んで虜にする。
また本作では、プレイヤーが散発的に見つける重要な会話やキーアイテム、各種証拠などを細かくタグ付し、スレッドに分けて整理してくれる。このクエスト管理が本当に秀逸で、重層的なストーリーでも迷子になることなく先導してくれる。
こうした細かいおもてなしの配慮を忘れないところも、英国紳士らしくていいじゃないの。
■どこを切り取っても絵画のように美しい世界

▲そこはかとない品格が漂う廃墟。絡み合うアイビーすらエレガント。
前述のエレガントさはグラフィック面にも溢れている。
ポストアポカリプスが支配する、荒廃したゴミ溜めみたいな世界は他作品と共通しているんだけど、どこかこじゃれた品格がにじみ出ているのが不思議。ゴミにも気品を感じるって、なぜ!?でも感じてしまうもんはしょうがないのだ。
本作はロードを挟んで複数マップが繋がる、セミオープンワールドを採用。随所に制作者の思い入れが感じられる、手作り感のあるレベルデザインに感嘆する。箱庭と表現した方がしっくりくるかもしれない。広いマップではないが、隔離空間という設定やファストトラベルがないことを考慮すると、オーダーメードのスーツかってくらい丁度いい。

▲各地に点在する謎の電話ボックス。主人公にしか聞こえない呼び出し音が鳴り響く。
その眼前に広がるグラフィックは、イギリスの田園風景から地下の医療施設にいたるまで、ため息が出るほど美しい。すかさずインベントリーから紅茶を取り出してすすりたくなること請け合いだ。
プレイする前に紅茶とビスケットを用意しておくと、きっと幸せになれると思う。
■「知らない」は素晴らしい

▲扉の先に待つものは、希望か絶望か、それともティータイムか。
それにしても「知らない」って、実はとっても素晴らしい。
だって、今日あった嫌な出来事を、自分の都合でポンポン忘れることができたら、もっと生きやすい世界になると思う。
知らないからこそ人は、さまざまな挑戦と失敗を繰り返し成長していく。知らないから見えるものって、絶対にあると思うのだ。ゲームにせよ現実にせよ、「知らない」を楽しむちょっとした心の余裕って、大切なのかもしれない。
さて、原稿も終わったことだし、紅茶でも淹れようか。
おい待て、提出するのを忘れてないかい?
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発売日など基本情報
発売日 |
PS5: 2025年4月17日 PS4: 2025年4月17日 PC: 2025年3月27日 Xbox: 2025年3月27日 |
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会社 |
Rebellion |
ジャンル | アクション アドベンチャー |
対応ハード | PS5 / PS4 / PC / Xbox |
価格 |
PS5 : 7,700円(税抜)
PS4 : 7,700円(税抜)
PC : 5,000円(税抜)
Xbox : 6,363円(税抜)
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