「軌跡」シリーズ20周年の集大成となる大作『英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-』をプレイレビュー!
2024年9月26日(木)に発売された、『英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-』(以下、界の軌跡)。
「軌跡」シリーズは日本ファルコムが展開するRPGシリーズで、『界の軌跡』は最新作かつシリーズ生誕20周年記念作品として位置づけられている。
本シリーズは「ゼムリア大陸」と呼ばれる世界を舞台としており、本作は前々作『英雄伝説 黎の軌跡』から始まった“カルバード共和国編”の一作だ。
また主人公「ヴァン」だけでなく『軌跡』シリーズで活躍を見せてきた「リィン」や、「ケビン」も主役として据えられており、20年の歴史の集大成とも言えるタイトルになっている。
本記事ではシリーズファンで全タイトルをプレイしている筆者が、シリーズの集大成としてという観点を軸にしながら、気になっている方に向けて「軌跡」シリーズの紹介を交えて、本作について触れていきたい。
ストーリーが売りの作品のため中盤以降の詳しいシナリオ内容には触れないが、何も情報を入れずにプレイしたいという読者は注意してほしい。
目次
「軌跡」シリーズとは?
まず「軌跡」シリーズについて紹介したい。処女作『英雄伝説 空の軌跡 FC』が2004年に発売されてから、今まで20年に及び紡がれてきたシリーズであり、その特徴はなにより第1作から『界の軌跡』に至るまで、地続きで時系列が繋がっているということだろう。
架空の暦として「七耀暦」というものが使われているが、『英雄伝説 空の軌跡FC』が七耀暦1202年、『界の軌跡』が七耀暦1209年に設定されており、作中で7~8年ほどの歳月が流れている。たとえば『空の軌跡』で初登場した少女「レン」が『黎の軌跡』で高校生として再登場するなど、長寿シリーズだからこそキャラクターの描写1つで積み重ねた歴史を感じられるのだ。
ただシリーズをプレイしたことがない人にとっては、その歴史こそが過去作をプレイしていないと十分に楽しめないかもしれないという、ハードルの高さに繋がっている側面もあるだろう。
ただ筆者は気になったタイトルからプレイすればよいと考えている。
たとえば『界の軌跡』は20周年記念作品の集大成ということで、今までのキャラクターが登場し過去作を前提とした意味深な会話を繰り広げる場面が多数存在する。
「軌跡」シリーズはその入り組んだストーリー構造とキャラクター同士の関係性から、筆者も本作からプレイしてシナリオ理解にまったく問題ないとは口が裂けても言えない。
ただ最低限の情報はアーカイブから確認できるため、まったく話が分からないことはないだろうし、「昔すごい人だったんだ~」「以前こういうことがあったんだ~」と飲み込みながら、気になったら過去作にさかのぼることも可能だとは考えている。
ストーリー重視のRPGではあるが、それは『界の軌跡』の魅力の一側面に過ぎず、「バトルが爽快で楽しい」「演出が派手でカッコいい」など初心者でも楽しめる要素が多数存在している。
そのため気になっている人がいたら、本作からでもあまり気構えせずにプレイしてほしいと考えている。
『黎の軌跡』から地続きの集大成ストーリー
本作はタイトルこそは仕切り直されているが、『黎の軌跡3』と言ってよいほど『黎の軌跡』の続編のため、おさらいを兼ねて本作が属する“カルバード共和国編”について触れたい。
カルバード共和国はゼムリア大陸中央部に位置する大国家であり、周りを他国に囲まれた土地柄から移民問題がささやかれる多様な人種が暮らす社会。
また新たな大統領ロイ・グラムハートの政治改革の影響もあり、情勢が不安定になっている。
そんな一触即発の空気のなか、民間人の安全と地域の平和を守る「遊撃士(ブレイサー)」や、警察だけでは解決しにくいグレーな案件を担当する「裏解決屋(スプリガン)」を営んでいるのが『黎の軌跡』および『界の軌跡』主人公のヴァンである。
ヴァンはヒロイン「アニエス」より依頼された曽祖父の遺産「オクト=ゲネシス」の捜索を皮切りに、共和国が抱える問題に切り込むこととなる。その道中でさまざまな人種や思想を持つ仲間を集めながら、強大なマフィア「アルマータ」などに立ち向かっていく様子が描かれていた。
『界の軌跡』ではグラムハート大統領が秘密裏に進めていた、宇宙進出を目的とする「スターテイカー計画」にまつわる出来事が中心に描かれる。「軌跡」シリーズには、ゼムリア大陸の外の世界を登場人物が意識することができない、大陸の外に出ようとしても不思議な力で辿り着くことができないというミステリアスな設定が存在していたが、本作でついに「宇宙」という大陸外へフォーカスがあたり、シリーズにおける多くの謎が明らかになる。
そしてストーリー規模に比例するように、過去作から多数のキャラクターが参戦するという、「シリーズファンとしてワクワクせざるを得ない」ストーリー内容になっている。
このような世界観の作り込みや、プレイヤーがシリーズを通してプレイすることで世界情勢の動きを肌で感じ、その壮大なドラマを自らの手で体験している感覚こそが「軌跡」シリーズの魅力だ。
また本作から「タイムリーワーズ」というゲーム中に、作中用語が登場したタイミングで意味を確認できる要素だ。
過去作プレイ済みの方が設定を思い出すときや、初心者がシナリオの輪郭を確かめる際に便利な機能も追加されている。
魅力的なキャラクターは健在!過去作の主人公も主役として登場
主人公ヴァンはスイーツ・車・サウナをこよなく愛すアラサー青年で、“ハードボイルド”を目指す裏解決屋。
ドライでリアリストを気取りながらも、元来の面倒見の良さと自らの信念に乗っ取って行動するカッコよさから、周りから愛されているキャラクターだ。
自らが営む「アークライド解決事務所」には、清楚かつ柔和な雰囲気ながらも父親であるグラムハート大統領ゆずりの意思の強さを魅せる「アニエス」、独自の文化を持つ民族「クルガの民」で猟兵団に所属する少女「フェリ」、共和国の東方人街で名をはせるチャラ男青年「アーロン」などが在籍。
そのほかにもヴァンの元カノかつ気鋭の遊撃士「エレイン」や、政府直属のエージェント「ルネ」など仲間には個性豊かな面々が揃っている。
他民族国家が舞台ということで民族間差別や、抗争を繰り返すマフィアなど一筋縄ではいかない問題が山ほど存在するが、そのたびに依頼人と向き合い、自らの最善を尽くそうとするヴァンたちの姿に、「彼らならなんでも解決してくれるだろう」という信頼と、「自分も事務所メンバーになってみたい」という憧れが抱けるような好感が持てるキャラクターばかりだ。
またヴァンは変身ヒーローのような「 グレンデル」という姿に変身する能力を持っており特撮ドラマさながらのアツい戦いを繰り広げる物語はプレイヤーの心を熱くさせてくれる。
『界の軌跡』ではそんな彼らが引き続き登場するほか、過去作『閃の軌跡』主人公「リィン」や『空の軌跡 the 3rd』主人公「ケビン」が主役として帰ってきたのが注目ポイント。
本編第2部からはリィンルート・ヴァンルート・ケビンルートと分岐したストーリーを選択することができる。
「スターテイカー計画」というゼムリア大陸の一大事業を、懐かしのメンバーの3視点から遊べるのはファンサービスとしてうれしいと同時に、「あのキャラがこんなに大きくなって…」という喜びや、「このキャラとあのキャラにこんな繋がりが!?」という驚きが感じられる。
本作の魅力を紹介!
ブーストゲージの駆け引きが楽しさを加速させるコマンドバトル
バトルは『黎の軌跡』から導入された、アクションバトルからコマンドバトルへとシームレスに移行できるシステムが特徴のため、メインとなるコマンドバトルから重要な部分をピックアップして触れたい。
本作のバトルはコントローラーの方向キーや〇△□×ボタンにコマンドが割り振られており、ダイレクトかつスピーディーなコマンド選択式バトルを楽しめる。
戦闘ではキャラクター固有技の「クラフト」や魔法にあたる「アーツ」を使用しながら、必殺技「Sクラフト」を駆使するのがセオリー。
側面や背面から攻撃すると「特攻」として、通常よりも大ダメージを与えることができるクラフトの存在。
そしてコマンドバトル中に味方のキャラに近づくことで青い輪が表示され、クラフトやアーツの威力強化や通常攻撃時に追撃してくれる連携システム「S.C.L.M.(スクラム)」により、位置取りが重要なバトルになっている。
『界の軌跡』からコマンドバトルに導入された主なものとして、「B.L.T.Z.(ブリッツ)」「シャードコマンド」「Z.O.C(ゾック)」の3つが挙げられる。
本作のパーティーメンバーは8人を選出し、その中の先頭4人がスタメンとしてバトルに登場するという形だが、「B.L.T.Z.(ブリッツ)」は控えメンバーから支援を受けることができるシステムで、仲間同士で協力している絆が直接感じられるものになっている。
「B.L.T.Z.(ブリッツ)」の詳細は下記の記事を参照してほしい。
そのほかに戦闘画面左下のブーストゲージを利用する「シャードコマンド」と「Z.O.C(ゾック)」も追加行動だ。
先述した必殺技「Sクラフト」はゲージを1つ消費して「Sブースト」状態になることで発動可能だが、シャードコマンドはパーティーへのバフ効果、「Z.O.C(ゾック)」は連続で手番を獲得できる行動ができる仕様だ。
どれもブーストゲージを“取りあう”システムになっており、今どこに消費するのが一番良いのか行動ごとに考えさせられる戦略性がある。
「覚醒」で遊びやすく進化したフィールドバトル
フィールドバトルは、『界の軌跡』における追加要素で最も進化した要素と言ってもよいだろう。
『黎の軌跡』シリーズでのフィールドバトルの立ち位置は、コマンドバトルと比較するとおまけという印象だった。
使い道としてはアクションで攻撃をくり返し、敵をスタン状態にするとコマンドバトルに移行した際に先制攻撃できるため、あくまでコマンドバトルに至るまでの作業というイメージが強かった。
しかし『界の軌跡』ではアクション時の戦闘力を大幅に強化する「覚醒」が追加。
フィールド上でブーストゲージを消費することで発動し、覚醒中は外見が変化し攻撃力やスピードが上昇するため、強敵にもサクサクと攻撃を通すことができる便利機能だ。
このシステムによりボス戦以外はフィールドバトルのほうが良いのでは?と思えるほどにコマンドバトルとの立ち位置が変化しており新鮮だ。
また覚醒中のゲージはフィールドのオブジェクトを破壊することで回復するため、探索ルートの選定やオブジェクトの破壊タイミングを工夫する必要があり、ダンジョン攻略の単調さを解消することにも繋がっている。
また「Z.O.C(ゾック)」はフィールドバトルでも存在し、効果中は敵のスピードが遅くなり、攻撃力と与えるスタンダメージが上昇する。
防御力が高い敵に対してもスタンを狙いやすくなり、敵へ一方的に攻撃することができるのだ。
「覚醒」と併用することも当然可能で一方的に敵を攻撃可能な爽快感抜群なアクションを味わえる。
以上のようにフィールドバトルが爽快感を重視して大きくテコ入れされている。
従来シリーズからの魅力であるコマンドバトルの戦略性と合わせ、たとえ本作が初プレイの人でも楽しめる要素だ。
そのためシリーズ初心者でも、「凝ったバトルを体験してみたい」「とにかく面白いバトルがプレイしたい」という方は、本作に触れてみてほしい。
遊びきれない?大ボリュームの探索要素
「軌跡」シリーズの恒例として膨大な探索要素も存在するため、その一端を紹介したい。
ヴァンはスイーツ好きということは先述したが、本作からの新要素で「スイーツブログ」を運営できる。
ショップで限定スイーツを購入し使用することで、ブログにアップ可能になるという形だ。
こちらは一人ひとりから添えられた一言がキャラクター性を補完しており、こちらも一定数記事をアップすると報酬が用意されているなど、「寄り道をすればするだけゲームが有利になる」という、探索・収集要素が有機的にシステムと絡み合っている。
また作中に登場する各地域には細かな文化の違いがあり、NPC一人一人にも名前や性格といったパーソナリティが設定されているのも特徴で、一つのイベントを完了すると街の住人全員のセリフが更新されるなど膨大なセリフ差分が用意されている。
「軌跡」シリーズのNPCは単なる同じことをくり返し話す街の住人ではなく、シナリオが進むごとにプレイヤーがあずかり知らないところでNPC同士が交流し、成長していることも多い。
そのため主人公たちが壮大で劇的なマクロなストーリーを扱うのに対し、多民族国家を舞台にした『界の軌跡』であれば人種や身分の違いで発生する軋轢などを、ヴァンたちに代わりNPCがサブクエストや日常会話で掘り下げるミクロなドラマを担当しているとも言えるだろう。
やり込み要素「グリムガルテン」で世界観を掘り下げ
「黑の庭城(グリムガルテン)」は、作中世界を牛耳る謎の結社「身喰らう蛇(ウロボロス)」が仮想空間を乗っ取ったことで形成されたもの。
領域を取り戻すために仲間キャラで自由にパーティーを編成して、最奥部に潜むボス攻略を目的としている。
こちらはローグライク風のコンテンツとなり、毎ターンアバターを前方マスに動かしながらランダムに配置された宝箱やバフ・ステージマスを踏破していく。
進めることで獲得できる「グリムトークン」というアイテムを消費すると、いわゆるガチャ方式で強力なアクセサリーやキャラクターの衣装などの特典が得られる。
「グリムガルテン」は序盤においてはクリア必須のメインストーリーとして組み込まれているが、中盤からは任意のやりこみコンテンツとして位置づけられるが、ダンジョンで手に入る宝珠「メメントオーブ」を使用することで特別なストーリーを鑑賞できる。
公式サイトでは、「「軌跡」シリーズ全体に関わる“超重要”な情報だ」と記しているように、ファンとしてもぜひ見ておきたい内容になっている。
つまりゲーム攻略が楽になる「直接的な報酬」と、ゲームをさらに深掘りできる「間接的な報酬」両方が用意されており、任意ながらも是非ともクリアしたいというモチベーションを生み出していると言える。
まとめ
本記事ではシリーズの流れを追いつつ、『界の軌跡』についてレビューさせていただいた。
やはり「軌跡」シリーズの魅力は20年にも及ぶ時間のなかで練り込まれた世界観を活かした大河的で壮大なストーリーテリングとキャラクター、歯ごたえと戦略性が感じられるバトルだと再確認できた一作だった。
その分初心者がシリーズに参入するには少々ハードルが高く、本作も20周年記念の集大成作でコアなファンアイテムという側面が強い。
だが「軌跡」のように同一の世界観で物語が展開していくRPGタイトルは他には見られず、唯一無二の代えがたい魅力なのも事実。
シリーズ第1作『空の軌跡 FC』が2025年にリメイク予定であるため、気になったら本作だけではなく、リメイク作からシリーズ全体を振り返ってみるのも良いだろう。
『英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-』の基本情報
会社 |
Falcom |
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ジャンル | RPG |
対応ハード | PS5 / PS4 |
公式HP |
今後発売の注目作をピックアップ!
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