角満のゲー漫 第34回!今回は世にも珍しい“ハイキング”がテーマのオープンワールド『A Short Hike』をプレイ!実少年登山家だった角満さんがうっかりハマってしまった“自由&まったりライフ”をチェック!
総評!「ココ」が凄かった!
戦闘や殺伐さとは無縁な、“のんびり”、“ほのぼの”といった方向に全振りした近年稀に見る平和な作品。疲れた人に遊んでほしいですw
滑空度 | ★★★★★(5) このゲームの最大のウリが、主人公・クレアがくり出す滑空。高台があったら積極的に飛び降りて、「すぃ~~~www」を堪能して! |
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ほのぼの度 | ★★★★★(5) 山頂を目指すというメインの目的はあるものの、ぶっちゃけ登らずにウロウロしているだけでもオッケー!自由度の高さはかなりのもの。 |
ロー度 | ★★★(3) 登山やキャンプを楽しむゲーム……と思って手を出すと、「え、ぜんぜん違うじゃん!」と驚くと思う。でも、クライミングはできますよ。 |
いい季節になったからね
俺はこう見えて、小学校高学年から中学3年のときまで登山会に所属し、地元の山によく登っていた“少年登山家”であった。
故郷の群馬県下仁田町は“九峰(きゅうほう)”と呼ばれる九つの山に囲まれた自然豊かな場所で、有名なところでは妙義山や荒船山、すそ野がない“くりっぺ”と呼ばれる砂場で作った土の山みたいな峰々など、登る山に事欠かなかったことが俺の登山熱の背景にあったんだと思う。
そんな登山会の恒例行事に、“荒船山・初日の出登山”があった。
荒船山ってのは、“東洋のエアーズロック”と(地元で)呼ばれる宇宙戦艦のような岩山で、登山愛好家のあいだでは非常に有名な存在である。
この岩のカタマリに大晦日の夜中に取り付き、ガチガチに凍った斜面をエッホラエッホラと登って山小屋に入って、やがて現れる初日の出を拝む……という、じつに浮世離れしたイベントに毎年参加していたのである。
思えば、いい時代であった。
このように、俺は子どものころから山登りには親しんでいた人間なのだが……そんな俺に“山登の依頼”が舞い込んできた。
「ぜひとも、君に上ってほしい山があるねん」
事務所のスタッフが、ニヤニヤと笑いながら俺に言う。さては……俺が山に通じた人間ってことを、このスタッフは知らないな?
「ふふんwww 老いたし、痛風だし、ふしぶしの痛みには悩まされているけど、まだまだ山登りでは若い者には負けないぜ?? 望むところだ!!」
鼻息荒く、俺はスタッフに詰め寄った。
「で、どの山だ?? まさか、高尾山ではあるまい。剣岳か? 鋸山か? もしかして、富士山か!?」
勢い込む俺に、なぜかスタッフはNintendo Switchの画面を突き付けてきた。そして、こんなことを言うのだ。
「君に登ってほしいのは……この山や!!!www」
……って、これハイキングのゲームじゃねえか!!!w
魅惑のほのぼのオープンワールド『A Short Hike』と俺が出会った瞬間でありましたw
究極ののんびりゲー
『A Short Hike』は、インディー開発者であるAdam Robinson-Yuさんが作った“山登り”もしくは“ハイキング”がテーマのオープンワールド(!)アクションアドベンチャーゲームだ。
主人公は、都会で暮らす小鳥の女の子・クレア。思春期の少女にありがちな悩みを抱えてふさぎ込んでいたのを母親が気に掛け、夏休みを利用して叔母が暮らす小さな島へとバカンスにやってくる。
でも、そこは自然豊かなド田舎で、携帯の電波も入らないといういまどき珍しい環境。
それでも、どうしても電話を掛けたいクレアが叔母に相談すると……!
島の山頂“ホークピーク”を目指すといいと提案される。
そういえばせっかく島にきたのに、その自然を満喫していなかったな……と気づいたクレアは、気晴らしもかねてポクポクと山頂目指して歩き出したのであった……。
もう、この概要を書いているだけで、ちょっと涙が出てきそうなんだけど(苦笑)。
コロナ禍の影響は当然ながら、それ以前から不景気やら異常気象やら物騒な事件やらで、どうしてもふさぎ込んだり、荒んだりしがちな時代にあって……これほどほのぼのと牧歌的な世界観が(ゲームの中とはいえ)存在したとは……。
プロローグと序盤の展開を見ただけで、すっかり心が洗われた気がしちゃったよw
さて具体的なゲームの内容だが、主たる目的はもちろん、山頂であるホークピークまで登り詰めることだ。
とはいえ……。
あくせくと必死こいて、山登りをしなければいけない……なんてことはもちろん“ない”。
くり返し“このゲームはオープンワールドだ”と強調してきたけど、島にはクレアのほかにも多くの住民やハイカー、登山家なんかもいて、それぞれがのんびりと暮らしている。
道すがら、誰かと出会ったら積極的に会話をし、ときにはお使いを手伝ったり、釣りエサをもらって釣りをしたり、またはハイキングに役立つアイテムを売ってもらったりと、多くのオープンワールド系ゲームと同じように、
“自由な行動を楽しむ”
ことが、『A Short Hike』の最大のポイントとなっているのである。
そして! 特筆したいのが、クレアがくり出す“滑空”だ。
クレアは鳥なので、ジャンプボタンを押しっぱなしにしているとグライダーのような滑空状態になり、自由に、そして見える範囲だったらどこまでも、
すぃ~~~~……ww
と飛んでいくことができるのである! これ、スクリーンショットだと伝わらないかもしれないけど、まるで風の一部になったかのようなスムーズな滑空はクセになり、何もない場所でもついつい、
「すぃ~~~~www」
と飛んでしまいたくなるくらい気持ちがいい。
そして飛んでいると、思わぬ場所に置かれている宝箱やお金を見つけることもあり、よりいっそう“冒険感”を高めてくれる。
インディーゲームでありながら、これほどキラリと光る武器を持っていることに驚かされてしまうわ。
グラフィックはパッと見、90年代のゲームの匂いすらするレトロな雰囲気だが、前述の滑空のすばらしさや、ウィットに富んだ登場人物との会話パターンなどいちいち考えられていて、非常に丁寧に作られたゲームだなと好感が持てる。
初代プレイステーションの名作登山ゲーム『蒼天の白き神の座 GREAT PEAK』のような“ガチ”を求めて手を出すと肩透かしを食らうと思うが、
「浮世のごたごたを忘れ、とにかく現実逃避したい……」
なんて人には、『A Short Hike』は持ってこいだろう。たまには肩の力を抜いて、こんなゲームをのんびりと遊びたいものだ。
(おおつかかどまん)
20年以上にわたりファミ通で記者、編集長などを務めつつ、自ら著者としてゲームプレイ日記の単行本、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズなどを上梓。ベストセラーとなる。2019年より独立し、パズドラのストーリーダンジョンのシナリオ担当を務めるなど、活動の幅を広げている。 |
今回のゲーム『A Short Hike』
配信日 | 2020年9月24日 |
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メーカー | Whippoorwill |
ジャンル | オープンワールド |
プレイ人数 | 1人 |
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