
「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2025 ワールドファイナル – 福岡」取材レポート(前編)
ダンロップ(住友ゴム工業)は、スポーツ事業の大きな柱であるゴルフとテニスに続く第3の柱として、eスポーツを本格的に育てようとしている。
その背景には、成熟市場の伸び悩みへの危機感と、若い世代・グローバルへのブランド浸透という明確な狙いがあった。
今回GameWithは、同社がパートナーシップを結ぶイベント「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2025 ワールドファイナル – 福岡」を取材する機会をいただいた。
まさにレースが始まる直前、eスポーツ事業に携わるダンロップの担当者2名に、この取り組みの経緯と『グランツーリスモ』協賛の意味、現場で感じたプロ選手の共通点などについて話を聞いた。

(左)スポーツ事業本部事業企画部・中村清美さん
(右)スポーツ事業本部事業企画部・安達利也さん
目次
eスポーツを「第3の柱」にした理由:成熟するスポーツ市場と、伸びる市場
――ダンロップのスポーツ事業はゴルフとテニスの印象が強いです。なぜeスポーツへの参入を決めたのでしょうか。
安達さん:ダンロップのスポーツ事業は、世の中的にもゴルフの印象が強いと思いますが、ゴルフとテニスは世界的にも市場が成熟していて、とくに日本国内は基本的には競技人口が減っていくジャンルです。もちろん海外に伸ばす余地はありますが、長い目で見ると縮小は避けにくい。だからこそ、前々から「3本目の柱が必要」という話はありました。
転機は2018年ごろで、社内外から新規事業案を公募したときに、eスポーツ案が出てきました。そこから検討を進め、実際に事業をスタートしたのは2022年末ごろです。つまり、コロナ禍より前から種を蒔いていた形ですね。
――公募でのeスポーツ案は多かったのでしょうか?
安達さん:たくさんあったわけではなく、むしろ数が少ない部類でした。ただ、伸びていく市場が限られる中で、eスポーツはものすごい勢いで成長していました。そこに期待したということです。

※画像はダンロップ公式サイトから引用
『グランツーリスモ』協賛の始まり:社員の熱意が火種に
――今回『グランツーリスモ』への関わり(協賛)は、どういう流れで進んだのでしょうか。
※『グランツーリスモ7』のゲーム内に、タイヤブランドが看板や車両表現として登場する取り組み
安達さん:スタートは、じつはスポーツ事業部ではなくタイヤ事業部なんです。以前は別のタイヤメーカー(ミシュラン)が関わっていた流れがあり、そこから切り替わるタイミングで、社員のひとりが「どうしてもやりたい」と強い熱意を持って動きました。
私たちスポーツ事業部は「eモータースポーツに協賛すると、どんな効果があるか」ということをまとめました。
eスポーツは若い年代が中心です。一方でダンロップブランドは、ゴルフなどのイメージもあって、上の世代が中心です。若い人にも名前は知られているけれど、必ずしも「好き」になってもらえているわけではありません。
eモータースポーツは10代~30代に直接届く分野で、それが私たちがeスポーツに取り組む理由のひとつでもあります。
――当初から「『グランツーリスモ』とパートナーシップを」という計画だったのでしょうか。
安達さん:計画していたというより「いいタイミングが重なった」という部分が大きいです。
具体的には、ダンロップブランドを世界的に、とくにヨーロッパと北米で使用してビジネスできる環境が整ったことですね。スポーツ事業として将来eスポーツで「世界に打って出たい」と考えるとき、ブランド面の土台が揃ってきた感覚がありました。
テニスでは以前からダンロップブランドで活動していて、タイヤ事業との連携で、例えばトーナメントにお客さんを招待するような取り組みもやってきました。そうした経験も、次の展開につながると思っています。

▲2025年ネイションズカップの覇者、スペインのホセ・セラーノ選手と、パートナーシップを推進した栃尾威彦さん(住友ゴム工業 タイヤ事業本部 企画本部 グローバルマーケティング部 ブランド企画グループ 主査)。
現場で感じた「プロの共通点」:eスポーツ選手は“トップアスリート”と似ている
――eスポーツの現場を見て、これまでのスポーツと共通すると感じた点、違うと感じた点を教えてください。
安達さん:選手のメンタリティや勝負への向き合い方が、フィジカルスポーツのプロと同じだと感じました。イベント運営サイドも、競技が違うだけでやってらっしゃることは似ています。
あと印象的だったのは、関わっている人たち(選手だけでなく運営サイドも含めて)の能力が非常に高いと感じたことです。ビジネスとしても、いまですらハイレベルですし、これからさらに上がっていくんだろうと思います。
フィジカルスポーツの世界だと、その競技だけで育ってきた人たちが中心になりがちです。でもeスポーツは、いろんな背景の人が集まっていますよね。だから活性化しているのかもしれません。
――製品開発(選手向けの道具)でも共通点を感じますか?
安達さん:あります。あるスター選手にアームサポーター(腕を支えて疲れや負担を減らすことを狙った製品)を使ってもらい、開発のために話を聞いたことがあるのですが、返ってくるコメントが、他のスポーツのトッププレイヤーと同じなんです。
「同じトッププロなんだな」と思いました。普通の発想ではない、こちらが想像もつかないことを返していただきました。

「社内eスポーツ」も始動:社員の掘り起こし、コミュニケーション、採用にも波及
ーーeスポーツ事業を開始してから社内に変化はありましたか?
中村さん:私たちの社内でも、スポーツ事業部などいくつかの事業部で社内eスポーツ大会をやり始めました。『Pokémon UNITE(ポケモンユナイト)』や、『スマブラ』ですね。運営やMCも入れて、配信までして、本格的にやりました。
やってみると、結構いるんですよね。普段は表に出ていないだけで、開発系の人やシミュレーションをやっている人にも、すごいゲーマーが(笑)。
いまは「全社でeスポーツ大会ができないか」と考え始めています。どの事業部にも、きっと、めちゃくちゃやり込んでる人がいるはずです。
――採用(リクルーティング)にも効きそう、という話もありますよね。
安達さん:eスポーツは若い年代に届きますし、「世界と戦う」という文脈もわかりやすいです。たとえば野球が、海外で活躍する選手が出ると国内人気が再燃するように、これと原理は近いと思います。
ダンロップの製品や取り組みも世界に届きやすいと思っています。いまは国内中心ですが、これをきっかけにヨーロッパや北米にも広げていきたいですね。

▲マニュファクチャラーズカップを制したチームポルシェ。(左からホセ・セラーノ選手、佐藤彰太選手、アンゲル・イノストローザ選手)
まとめ:eスポーツは「若い世代」「世界」「プロの熱量」を一気に結びつける
今回の話を通して見えてきたのは、ダンロップにとってeスポーツが単なる流行ではなく、下記の可能性を秘めた第3の柱として捉えていることだ。
・成熟市場に代わる成長領域
・若い世代にブランドを「好きになってもらう」導線
・世界を視野に入れたグローバル展開
・トップ選手の熱量を起点にした製品開発の可能性
ひとりの社員の熱意と、それを推進した柔軟さ、企業としての危機感、そして事業としての意思決定。今回のパートナーシップはこれらが「タイミングよく重なった結果」と語っていただいたが、決して偶然だけとは思えない、そんな温度感が伝わるイベントと今回のインタビューだった。
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