角満のゲー漫 第7回更新!飛ぶ鳥を落とす勢いで売れている『あつまれ どうぶの森』。遊び方無限大のゲームに隠された魅力とは?
ただいるだけで楽しい
3月20日に発売されたNintendo Switch用ソフト『あつまれ どうぶつの森』の勢いが止まらない。
いやここに来て、さらに人気に拍車がかかって、販売本数が天井知らずになっている印象すらある。
ファミ通が発表した最新の販売本数データによると、『あつ森』は発売から10日間(3月20日~3月29日)でなんと、260万8417本を売り上げたという
Nintendo Switch用ソフトの販売本数ナンバーワンは『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の362万本とのことだが、早くもコレが射程距離に入ってきた。
もう、驚きを通り越して呆れるしかない勢いである。
またこれに伴い、Nintendo Switch本体の販売台数もうなぎのぼりで、3月だけでじつに、83万6094台を記録。
プレイステーション4が6万4000台ほどなのでいかに売れているかがよくわかるが、一方で店頭在庫が少なくなってきて、品切れのお店が目立ってきたと聞く。
新型コロナウイルスの影響で自宅待機を余儀なくされている人も多いので、場所を選ばずゲームで遊べるNintendo Switch(と、『あつ森』)の需要にブーストがかかっているのだろうが、これに供給が追い付いていないのは何とも歯がゆい話。
1日でも早く欲しい人にいきわたって、ゲームの中だけでもほがらかなスローライフを堪能してほしいなぁ……と思う次第である。
さてそんな『あつ森』を、俺も毎日のようにプレイしている。
いや、“毎日のように”どころじゃないな。“毎時のように”かな。
……んにゃ、正直に言おう。
“毎分のように”かもしれん(苦笑)。
とくに急ぎでやることもないのに、気が付けばNintendo Switchのスリープモードを解除して、パタパタと島の中を走り回っている。
本当に、ただ走っているだけ。
もちろん、ときには魚釣りをしたり木材を拾ったりもするけど、それほど資材に困っているわけでもない。
ただ走ることが目的。
「それって、目的と言えるの?」
と問われたら、「考えてみたら、目的じゃありませんでした」と答えるしかないんだけど、“その空間にいるだけ”で無性に楽しいので、今日も元気に「わーわーわー!」と走り回っている。俺、48歳のおっさんなのに。
本当に自由なのか
それにしても、なんで『あつ森』はこんなに人を惹きつけるのだろうか?
しかも、ふだんからゲームに親しんでいるコアなファンだけじゃなく、そういったものとは縁遠かった女性や年配の方にまでプレイヤー層を広げて。
いま、一般のメディアもこのブームを嗅ぎ付けて“なぜ、どうぶつの森は売れるのか?”という分析記事を載せたりしているが、書かれがちな論のひとつに“自由に、なんでもできるゲームだから”というものがある。
確かに、『あつ森』の物量は凄まじい。
俺なんて早くも、「出てくるアイテムを網羅するのは……あきらめた^^;」と匙を投げているくらいで、「よくぞまあ、これだけのデータをブチ込んだなぁ……」とプレイするたびに呆れているレベルだ。
これに、服などを自由にデザインできる“マイデザイン”の機能を使えば、文字通り無限の新アイテム(デザインだけど)を制作できるわけで、分析記事にある“自由に、なんでも”の部分に大いに頷くこともできる。
でも、実際に深く遊んでいると、ところどころで「おや?」と思うシーンがある。そして、
「それほど……自由というわけじゃないな」
と感じさせられてしまうのだ。
不自由という味付け
たとえば、本作のウリである“DIY”。素材を集めて任意で道具や家具を作れる……という機能だけど、よく壊れてしまうスコップや釣り竿なんかは、10本とか20本の単位でまとめて作ってしまいたくなる。
しかし、それはできない。少なくとも現時点の俺は、1本1本作っている。
また同じくDIYのときは、必要な素材は収納から出して、手持ちアイテムにしておかなければならない。
収納には100個も200個も入っているからそれでいいだろ……というわけにはいかず、わざわざ引っ張り出してこないといけないのだ。
これらは序の口で、じつは要所で、
「ここ、もっと便利にできるのになー」
と思わせられるポイントがある。それも、ちょっと遊べばすぐにぶつかる要のシーンに、“痒いところに手が届いていない仕様”が目立つのである。
「うーむ。コレがわからぬ開発陣が、こんなスゴいゲームを作れるわけがない」
道具を1個1個作りながら、俺は考えた。そして、ハタと気づくのである。
「あ、これ……! “あえて”面倒な作りにしているのかも……!」
えっちらおっちらと作業をしつつ、俺は思った。
「まあでも、手作業でスコップ100個をまとめて作るなんて、不可能だもんな」
「材料を収納にブチ込んだままじゃ、作業に入れないよな」
と……。
そう、『あつ森』の制作陣はあえて、“ひと手間かかる工程”をゲームの中に残しているのだ。
そこはかとないリアルさと、モノ作りの手触りを演出するために。
それは“自由度”とか“なんでもできる”とは相反することだが、その“不自由さ”によりプレイヤーは“遊んでいる感”を刺激され、今日も飽きずに島にくり出していくのではないだろうか。
便利にチャチャっとできてしまうことだけが、ユーザーフレンドリーなのではない。そして、“不自由”が味付けになることもある--。
『あつ森』には、教えられてばっかりだ。
(おおつかかどまん)
20年以上にわたりファミ通で記者、編集長などを務めつつ、自ら著者としてゲームプレイ日記の単行本、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズなどを上梓。ベストセラーとなる。2019年より独立し、パズドラのストーリーダンジョンのシナリオ担当を務めるなど、活動の幅を広げている。 |