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ギャンブルが好きではない人に、死に物狂いでスロットマシンをやらせるにはどうすればいいか。そんな矛盾に満ちた質問に、イタリアのインディーデベロッパー「Panik Arcade」が導き出したのは──
「プレイヤー自身の命を、賭け金にしてしまえ」という、非常にシンプルで明快な回答だった。
今回は、まさに「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」ばりの信長節を炸裂させる、ローグライト系スロットゲーム『クローバー・ピット(CloverPit)』の体験版を紹介する。
ぶっちゃけると本作はスロットマシンを回すだけのゲームだ。
能力を付与し、ルールをぶっ壊して攻略する最近のローグライトの影響下にあるタイトルではあるが、そもそも題材がスロットマシン。できることはお察しの通りである。
「それのなにが面白いの?」いま皆さんが疑問に思うのと同様に、筆者も最初はそう思っていた。いや、みなさん以上に思っていたかもしれない。なぜなら筆者は、ギャンブルが「嫌い」だから。ポーカーやブラックジャックならいいのだ、ゲームとしても一級品だから。でもスロットは…運だけでしょ?

ところが本作は、スロットを回すという無味乾燥な行為を、「逃げ場のない部屋」や「コインが足りなければ即死亡」「一縷の望みを賭けた能力」といったギミックを使って、一流のエンターテイメントに仕立て上げてしまった。
なんのゲーム性もないスロットを回す行為に、面白さのすべてを一球入魂してしまった快作なのだ。
目次

インディゲーム100選!

CloverPit
「一体何があったの!?」すべてが謎に包まれた部屋で、命を賭して回すスロットマシン

▲命を賭けた遊びとはいったい…。
プレイを開始すると、プレイヤーはいきなり部屋に放り出される。もちろん説明は一切ない。部屋の真ん中にいれば、その部屋にあるものすべてに手が届くくらいの狭さだ。一つだけある扉は鍵がかかっていて開かない。
目の前には謎のATM。その左には「やれよ」と言わんばかりにスロットマシンが置かれている。電話、鍵付きの引き出し、トイレ、監視カメラ、正体不明の汚物が入った箱…雑然としていて不快な部屋。
当然だがプレイヤーはここからの脱出を目指す。だが、どうやら借金があるらしく、完済しなければ解放されないばかりか、期限に間に合わないと殺されるという理不尽っぷり。

▲なぜプレイヤーは借金しているのか、謎のままゲームは進む。
本作が秀逸なのはここから。なにしろ部屋にはスロットしかない。特に説明がなくとも、なにをすべきなのかプレイヤーはすぐに理解する。このように本作は、極限まで選択肢を提示しないことによって、通常ではありえない無茶ぶりを、自然とプレイヤーに強要させてしまう見事な導入に目を見張る。
この不快な空間から一刻も早く脱出するためにプレイヤーは、一心不乱にスロットを回し続け、幾度となく奈落のそこへ落とされ死亡する。そんな最中、背後にある特殊能力を付与してくれるチャームの存在に気がつくのだ。

CloverPit
チャームを駆使してルールを捻じ曲げろ!スロットを回すカタルシスに酔いしれる

▲部屋のどこにいてもすべてにアクセスできそうな狭小すぎる部屋。
スロットは5連リール。3つ以上の絵柄が揃えば既定のコインがもらえる。揃えるパターンはオーソドックスな縦、横、斜めに加え、山・谷状のジグ・ザグ、全部を同じ柄にするジャックポットなど計11種類。
賭けたコインの枚数に応じてスロットを回し、排出されたコインをATMに入金して借金を返済する。入金総額から一定の割合で利子が支払われるため、「宵越しの銭は持たぬ」とばかりにATMへ入金して利子へと還元するのが攻略のカギ。
ところが返済には期限があって、ATMにラウンド数として表示されている。期間内に完済できなければ…警告音と共に床がバカっと開いて、プレイヤーは奈落のそこに叩き落される。文字通りデッドエンドである。

▲地方のビジネスホテルの冷蔵庫にありそうなケース。
そんな、悲惨すぎるプレイヤーを助けてくれるのがチャーム。これはランダムで出現する、特殊能力を付与してくれるお助けアイテムだ。ビジネスホテルの冷蔵庫に備え付けられている、有料飲料の販売ケースみたいなのに入っていて、定められたチケットと引き換えに購入できる。
利子が15%上昇する「グラマンの財布」、ランダムに運気を+7する「グリーンペッパー」、7の出現率を+2する「セブンの絵」など効果はさまざま。出現率やルールを捻じ曲げ、雪だるま式に繋がるコンボを呼び寄せて一発逆転を狙う。
本作の醍醐味は、あらゆる策を講じて有利な状況を作り出したうえで、それでもなお運を天に任せるしかない宿命を受け入れ、最後にスロットのレバーを倒すその瞬間にある。例えるなら、高校3年間を必死に勉強してあらゆる対策を施した、その受験当日に試験官から「半分の答えはサイコロで決めてください」と告げられるようなものだ。

CloverPit
粗さ最強のローポリグラフィックが煽りまくる、不気味なストーリーの片鱗

▲手に汗握るスロット回し。絵面は地味だが超白熱するゲーム性。
この筆舌に尽くしがたい絶望感のなかで、結局はそれを受け入れ、祈りながらレバーを倒す。確かにその行為にゲーム性はない。しかしそこに至るまでの過程には、乱高下する感情が渦巻く大冒険が繰り広げられる。そして、狙い通りのパターンが来たときのカタルシスに狂乱する。
これぞ最強の心理ゲームだと筆者は思う。しかも賭けているのはプレイヤーの「命」だ。本作はシンプルでミニマルなギミックを巧みに組み合わせて、ただの「スロットを回す」行為を上質のエンターテイメントに仕立て上げてしまった。
まるで魔法のようだが、これは開発者の狙い通りだったようだ。Steamのストアページで開発者は「私たちはギャンブルが嫌いです」「このスロットマシンは、失敗しても最終的に攻略できるように設計されている」と言及しているように、本作はスロットマシン・シミュレーターではないのだ。

▲壁には”Don’t Trust Everyone”と意味深なメッセージが刻まれている。
開発者は本作をローグライト系ホラーゲームとカテゴライズしている。つまり唯一のゲーム性であるスロット自体も、ゲームを彩るギミックのひとつでしかないということ。
残念ながら体験版ではそのストーリーの詳細はわからない。しかし、汚物にまみれた部屋に漂う死の予感と、息が詰まりそうになる閉塞感から、不気味なストーリーの片鱗をまざまざと感じることができる。
さらに、初代PlayStationを彷彿とさせる、粗いテクスチャにまみれたローポリグラフィックが恐怖感を煽りまくってくる始末。
「借金の総額はいくら?」「なぜ、なんの借金をしたの?」「リサイクルボックスの肉片は?」「扉の先にはなにが?」堰を切ったように流れ込む疑問の数々に、押しつぶされてしまいそうな期待感に胸が膨らむ。

CloverPit
プレイヤーは「Pit(どん底)」から這い上がることはできるのか!?

▲妙に作りこまれたトイレ。名作の証だ。
本作は、シンプルで単純明快なゲーム性、狂気に満ちた先が気になるストーリー、センスのよいグラフィックと、三拍子そろった期待作だ。
Steamで体験版がダウンロード可能。要求スペックも高くないので、気になった人は、ものの数十分で終わるスピード感と、高いリプレイアビリティに裏打ちされたタイパのよさを、その手で実感してほしい。
リリースは2025年夏を予定している。

CloverPit
GameWith編集者情報

フリーランス物書き。ドーナツ食べながら子どもとゲームするのが至高。好きなジャンルはインディーズとFPS/TPS。ゲームの腕前は皆無のポテトゲーマー。ジャンルやタイトルに捕らわれずゲーム業界全体に興味があります。ゲーム以外にはアウトドア系やローカルニュースなどを執筆中。普段は塾講師、ときどきラジオパーソナリティ。 |

CloverPit
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発売日など基本情報
発売日 |
2025年9月4日 |
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会社 |
Future Friends Games |
ジャンル | シミュレーション |
対応ハード | PC |
価格 |
PC : 未定
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公式HP | |
公式Twitter |
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