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ここにいると、ゲームがしたくなる。「大カプコン展」で観る「創る側」の思考

「想像したことは、創造できる」をテーマに、カプコン創業40年のゲームクリエイションを総合的に紹介する展覧会「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」が、2025年12月20日(土)から2026年2月22日(日)まで、CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋)で開催中だ。

▲(左から)プロフィギュアスケーターの宇野昌磨氏、カプコン・プロデューサーの牧野泰之氏
一般公開に先立つプレス内覧会には、スペシャルゲストとしてプロフィギュアスケーターの宇野昌磨氏が登場。熱心なゲーマーとしても知られる宇野氏は、展示を通してゲーム開発の裏側やクリエイターの試行錯誤に触れ、その積み重ねの大切さを興奮気味に話した。

▲カプコン40年の歴史が一堂に会する展覧会。(「カプコン ゲームクロニクル」ヒストリー ©CAPCOM)
会場では、企画プロデューサーの牧野泰之氏がメディア向けに展示エリアを巡りながら解説を実施。企画書や開発資料を通じて、発想と工夫を重ねながら作品を形にしてきたカプコンのものづくりの思想が丁寧に語られた。併設カフェでは作品世界を再現したコラボメニューが提供され、東京会場からは新グッズも多数登場する。

▲期間限定のテーマカフェで、コラボメニューが楽しめる。
ゲーム開発の現場で培われてきた創意工夫の軌跡を体感できる展覧会だ。今回は、その内覧会に参加した模様をお伝えする。
■ガチで詳しい!ゲーム愛に溢れた宇野昌磨氏のトークセッション

▲波動拳ポーズを披露する宇野昌磨氏
ここにいると、一刻も早くゲームをしたくなる──
2018年平昌オリンピック銀メダリストであり、熱心なゲーマーとしても知られる宇野昌磨氏が、スペシャルゲストとして登壇。開口一番、その言葉でゲーム愛を炸裂させた。
フィギュアスケートの業界では、ゲームについてどれだけ語っても、その熱量が十分に伝わらないと感じる場面が多々あったという。その点、この日の会場は違った。「ゲームの話を理解してくれる人たちの中で話せるのが嬉しい」と、笑顔を見せる。

▲最近は『ストリートファイター6』にハマっているという宇野氏。
展示の中で特に印象に残った体験として挙げたのが、モーションキャプチャーミラー。自身の動きがリアルタイムでキャラクターに反映される仕組みについて、宇野は「キャラクターがこちらの世界に踏み込んできたように感じた」と話す。操作する側とされる側の関係が曖昧になり、ゲームとの距離が一気に縮まる感覚だったという。

▲一緒にセッションに参加した、カプコン社の牧野泰之プロデューサー。
宇野氏のゲーム観は一貫している。特に熱心にプレイしている『ストリートファイター6』については、「スポーツをしている感覚に近い」と話し、対戦を通じてスキルを磨き続ける点に強い魅力を見出している。
相手の嫌がる行動を徹底するという、現実では避けられる行為が、ゲームでは技術として評価され、尊敬につながる。その構造こそが、ゲームならではの体験だと強調した。

▲宇野氏の「ゲーム愛」が溢れ出すトークショーだった。
思い出深い作品として挙げたのは『ロックマン』。インターネットが今ほど普及していなかった幼少期、友人同士で攻略を試し合い、進行状況を語り合った時間は、今も心に残っているという。
また、つい数か月前までアイスショーのメンバーに『モンスターハンター:サンブレイク』のプレイを“強制”していたというエピソードも披露され、会場の笑いを誘っていた。

▲グッズ詰め合わせをプレゼントされ、時間を忘れてバッグを漁る姿が印象的だった宇野氏。
トーク終盤には、前日に28歳の誕生日を迎えた宇野氏へのサプライズも用意され、グッズや図録を前に思わず表情が緩む場面も見られた。
「いつかはゲームの大会にも出たい。できれば、少しは勝てるように」。
ゲームを遊びとして楽しみつつ、競技として真剣に向き合う。その姿勢は、第一線で戦い続けてきたアスリートならではのものだろう。
■牧野泰之プロデューサーが語る、ゲーム開発は“とんち”の意味とは

▲宇野氏が印象に残ったと話したモーションキャプチャー。前に据えたカメラだけで体験者の動きをキャラクターがトレースする(「モーションキャプチャーミラー」©CAPCOM)。
「大カプコン展」の企画プロデュースと監修を務めたカプコンの牧野泰之氏は、メディアとともに会場を巡りながら、展示に込めた意図を丁寧に解説してくれた。本展で伝えたいのは、完成した作品だけでなく、その裏側にある試行錯誤や工夫の積み重ねだという。

▲(「テクノロジーとアイデアの進化」ゲームでは半透明が難しい ©CAPCOM)
中でも、カプコンの職人芸気質を強く感じさせるのが、技術的制約の大きかったドット絵時代の展示。当時は半透明表現が存在せず、それでも表現したいという思いから、表示のオン・オフを高速で切り替えて透明に見せたり、穴を開けて背景を透過させたりといった工夫が生まれた。
現代では半透明処理も珍しい技術ではない。しかし当時は、開発者の“とんち=創意工夫”によって実装されていた。牧野氏が「気持ち悪いくらいすごい」と驚きを隠さないこうした手法は、制約を発想で乗り越えてきた現場のリアルを伝えている。

▲(「テクノロジーとアイデアの進化」ドット絵時代の創意工夫 ©CAPCOM)
また、初期の『ロックマン』のエピソードも象徴的だ。ファミコンでは1画面で使える色数が限られる中、主人公であるロックマンに2本分のパレットを割り当て、表現をあえてリッチにしたという。その結果、ステージに登場する敵の色は制限されたが、それでも「主人公をどう見せるか」を優先した判断だった。

▲『バイオハザード』シリーズの、視点による恐怖演出の変化を解説。(「ファンタジーとリアリティ」演出効果は視点で変わる ©CAPCOM)
会場には、『バイオハザード』を起点に『ディノクライシス』や『デビル メイ クライ』へと派生していくタイトルの“家系図”も展示されている。一つの成功作を終点にせず、要素を組み替えて新たな遊びを生み出す発想は、カプコン40年の歴史を貫く姿勢として浮かび上がる。

▲『ストリートファイターII』を使って、処理速度を落とさずに当たり判定をする仕組みを解説。(「テクノロジーとアイデアの進化」アタリ判定の世界 ©CAPCOM)
最後に牧野氏は、ゲームは「遊ばれて初めて完成するもの」だと語った。ユーザーを驚かせ、楽しませるために、制約の中でもこだわり抜く。その積み重ねこそが、今日のカプコン作品を形作ってきた。本展は、その歩みを体感できる場となっている。

▲『ロックマン』の原画。令和でも全く色褪せないデザインに驚かされる。(「受け継がれるカプコンらしさ」伝説の企画書たち ©CAPCOM)

▲『ソンソン』元カプコンの岡本吉起氏の作品。これ、めちゃくちゃ貴重な資料だと思う。これだけで入場料の元が取れるレベル。(「受け継がれるカプコンらしさ」伝説の企画書たち ©CAPCOM)

▲海外パッケージと国内パッケージの比較。『ロックマン』はかなり違うと知ってはいたが、こうして並べられると破壊力大。(「カプコン ゲームクロニクル」ポスター/メインアート ©CAPCOM)

▲『ストII』ブランカの強キャラ感が凄い!リュウ絶体絶命。チュンリーは間に合うか!?なんだこのドラマチックな展開。(「カプコン ゲームクロニクル」ポスター/メインアート ©CAPCOM)
■ゲームの世界を「食」で追体験。黒カレーで目頭が熱くなる!?

▲いえ、美味しさに異議はありません……。「【逆転裁判】異議あり!逆転海苔弁」(2,190円)。
展示を見終えたあとや、途中でひと息つきたくなったときに立ち寄りたいのが、東京会場に併設されたテーマカフェ「大カプコン展Food Festival」だ。チケット不要・予約不要という気軽さも嬉しい。いくつか試食してきたので、感想もあわせてざっくり紹介しよう。※価格はすべて税込み。

▲イエローデビル戦の死闘がまざまざと蘇る。これ本当にカレーか?材料は本物のイエローデビルじゃないの!?
筆者のおすすめは、『ロックマン』のボス戦を再現した「【ロックマン】ロックマンvsイエローデビル カレー」(1,890円)。なぜ、カレー!?と、ツッコミを入れてしまったが、イエローデビル戦をイメージしたと聞いてめちゃくちゃ納得。
真っ黒な背景で激戦を繰り広げた日々を思い出して、思わず目頭が熱くなる。ロックマンを自由に配置できるギミックも遊び心満点。食べるだけじゃなくて”遊べる”メニューなのだ。

▲アシュリーと一緒に食べられたら“最高”なパエリア。あ、アシュリーと一緒ならなんだって最高か。
次いで『バイオハザード RE:4』をモチーフにした「【バイオハザード】泣けるぜ…チキンパエリア」(2,190円)もよい。トマトの酸味とローストチキンの香ばしさがたまらない一品。「作中でレオンが食べていたかもしれない」という設定らしい。あの状況下でこれを食べる余裕があるなんて、さすがレオンさま。

▲『モンスターハンター』の、回復薬と元気ドリンコ。
インパクト大なのが、各作品の回復アイテムをモチーフにしたドリンク類。「回復ドリンクバー」(単品990円/セット840円)では、『ロックマン』のE缶(スポーツドリンク風)や、『バイオハザード』の回復薬、レッドハーブ(ハイビスカスティー)といったフレーバーが用意されている。

▲気になるE缶味は、美味しいスポーツドリンク風味のフレイバー。
正直、生きてる間に、リアルにE缶を飲む日が来るなんて、一体、誰が想像しただろうか!?バイオのレッドハーブの美味しさにもびっくりだ。これなら、いくらゾンビに噛まれたっていい。

▲人生に一度は食べたい「【モンスターハンター】上手に焼けるかな?狩人飯」(2,890円)。
このほかにも、「狩人飯」や「逆転海苔弁」など、作品ごとの個性を前面に出したメニューが揃う。ぜひ、自分の舌でその味を確かめてほしい。

▲テイクアウトが可能なメニューもある。
■展示体験を普段使いにできる、オリジナルグッズが秀逸

ゲームイベントの物販コーナーは、単なるお土産売り場ではない。それは、非日常を普段使いに変える至高のアイテム売り場なのだ。※価格は全て税込み。
プロデューサーの牧野泰之氏は、カプコンがおよそ40年かけて築いてきた文化の結晶を、自宅へ持ち帰ってほしいという思いを込めてグッズを用意したと話していた。

中でも象徴的なのが、「大カプコン展公式図録」(3,960円)だ。体験型展示がどのような過程で作られたのかを追う制作ドキュメントや、会場では紹介しきれなかった開発者たちのロングインタビューを収録している。
展示内容がそのまま自宅の本棚に収まり、眺めるたびに思わずニヤニヤしてしまう。そんな意味で、本展をしっかり見た人ほど手に取る価値のある一冊だ。

実際の企画書をイメージしたクリアファイルや、カプコン社内の開発用紙をモチーフにしたメモ帳といった文房具類も普段使いしやすい。持っているだけで「できる開発者」のパッシブスキルが付く気がしてくる。

内覧会で宇野昌磨氏が「すごく可愛い」と笑顔を見せていた、ドット絵ステッカー入りのインスタントラーメン(594円)も印象的だった。展示の緊張感とは対照的な、肩の力が抜けた遊び心もまた、カプコンらしい。

このほかにも、東京会場から初登場となるグッズが多数用意されている。なお、ショップの利用には展覧会のチケットが必要で、商品によっては購入制限が設けられている場合もある。購入前に確認しておきたい。
■なぜ、ゲームが好きなのかを思い出す展示会

▲(「カプコン ゲームクロニクル」©CAPCOM)
筆者が「大カプコン展」を観て感じたのは、完成された名作を並べるだけの展覧会ではない、ということ。制約の中で発想を重ね、工夫によって突破してきたゲーム開発の現場そのものを、体験として見せてくれる。
宇野昌磨氏が語ったように、ゲームは遊びであり、同時に競技であり、創作でもある。牧野泰之氏が解説した“とんち”の積み重ねは、作品の裏側にある人の思考を浮かび上がらせた。

▲(「受け継がれるカプコンらしさ」伝説の企画書たち ©CAPCOM)
展示、食、グッズまで含めて、本展はゲーム文化を立体的に味わえる場だ。プレイヤーも、作り手も、その間にいる人もまるごと巻き込んで。
だからここは、「なぜゲームが好きなのか」を、あらためて思い出させてくれる。そんな居心地のいい場所になっている。

▲現実なら絶対に座りたくない『ファイナルファイト』の地下鉄フォトスポット。(「ファンタジーとリアリティ」ファイナルファイト メトロシティサブウェイ ©CAPCOM)
GameWith編集者情報

| フリーランス物書き。ドーナツ食べながら子どもとゲームするのが至高。好きなジャンルはインディーズとFPS/TPS。ゲームの腕前は皆無のポテトゲーマー。ジャンルやタイトルに捕らわれずゲーム業界全体に興味があります。ゲーム以外にはアウトドア系やローカルニュースなどを執筆中。普段は塾講師、ときどきラジオパーソナリティ。 |
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