
小説家の視点で物語が進み、事件の真相へと迫っていく
株式会社colyは2025年4月24日にPC(steam)とNintendo Switch用ミステリーノベルパズルゲーム「金田一耕助シリーズ 本陣殺人事件」を発売した。
本作はタイトルの通り、横溝正史氏が執筆した「本陣殺人事件」(角川文庫)を題材とした作品となっている。
また、KADOKAWAによる協力と韓国のインディーゲームを手掛けるクリエイター・SOMI氏より正式な公認を受けて制作された作品だ。
文学とゲーム、そして国境を越えたコラボレーションにより、戦後日本の空気を現代のプレイヤーが追体験できるような作品になっている。
プレイヤーは本作を執筆した小説家の視点で物語を進めていく。事件の覚書をまとめていくことで事件の真相へと迫っていくことになる。もちろん物語の主人公は金田一耕助であるが、本作をプレイしたときに感じるのは金田一の視点ではなく、もっと俯瞰的な視点だ。

基本的にはノベルゲームであるため文章を読むことが多くなる。しかし、物語の合間では本作の情景がわかるイラストと音響で物語の理解度をぐっと上げてくれる。
発売から半年経過した今、秋の夜長にもってこいの名作推理小説を題材とした本作をプレイしてみたので、その体験をお伝えしたい。
多少のネタバレも含むので、完全未プレイの方はご注意いただきたい。
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雪の夜に起きた「密室殺人」──昭和の空気が蘇る
本作は小説家横溝正史による推理小説「本陣殺人事件」を元にこの世界観を追体験できるものになっている。 この小説での舞台は戦後間もない昭和の日本、岡山県の山奥にある一柳家の本陣だ。結婚式の夜、新郎と新婦が布団の上で血まみれになって死亡している。屋敷は雪に閉ざされ、足跡ひとつ残っていない。探偵・金田一耕助が現場に呼ばれ、村人たちの証言をもとに事件の真相を探る。という物語となっている。

この原作小説では日本家屋では実現不可能と言われた密室殺人が題材となっており、完成度の高いトリックが登場することで有名な作品だ。本作では本で読むのとは違う本作ならではの体験で、トリックを楽しむことができる。
また、この「本陣殺人事件」は金田一耕助が登場する初めての小説となり、ここから有名な「八つ墓村」までの物語が岡山県を舞台にした「岡山もの」と呼ばれている。昭和12年の出来事として描かれている本作は現代とは違った大正昭和の建物や雰囲気、今とは違う人間模様などノスタルジックであり、新鮮にも感じる時代そのものも楽しむことができる。
本作はアドベンチャー作品だが、「空気を感じる推理劇」という印象が強い。本作独特の空気感が昭和の人との関係性を感じさせ、今の世の中とは違う世界観を楽しむことができるのも特徴だ。
推理を“つなぐ”体験!証言から真実を紡ぐゲームシステム
初心者でも無理なく“金田一の頭脳”を追体験できる設計となっており、新しい金田一耕助の体験ができる。
本作のメインはノベルゲームとなっており、小説をじっくりと楽しむというよりは登場人物それぞれの証言を聞きながら、重要な点を追究していくというものになっている。
それぞれの証言には重要なキーワードが設置されており、そのキーワードは文字の色が異なる仕様となっている。このキーワードを選択すると次の証言が表示されるようになる。またこの証言の中には映像やイラストを含むものもあり、物語の合間でドキッとするような演出があるなどサスペンスとしての楽しみもあると感じた。

小説を組み立てていくという新しい体験
そして本作の最大の特徴は、プレイヤー自身の手で物語をつないでいくということだ。
それぞれの証言が一節一節表示されて物語が進んでいく。しかし、必ずしも今の証言者が語っているものとも限らないし、時系列も正しくないことがある。そのため、時に証言を時系列で入れ替え、証言者を変え、パズルのように入れ替えて正しい物語をつないでいく。正しくつながると前後の文章がくっ付いて1つの時系列にまとまる。この入れ替える作業は物語の主人公である金田一耕助の発言にも適用される。あくまでも金田一耕助も登場人物の1人に過ぎない。
覚書をまとめて事件の真相に迫るという目的において、「この証言は誰のものか」という整合性を取っていく作業は、非常に合理的でおもしろいと感じた。


また、新たな証言を得るために、今までにあった証言からさらに重要なものを確認する質問もあり、この質問に答えられないと次の証言が得られない。今までの証言を思い出したり、読み返したりして最適解を探し出すというのはミステリーらしい演出だと感じた。

本作はそれぞれの章に分かれており、章に付けられたサブタイトルにちなんだ証言がメインとなっている。証言によってはその章ではまだ見ることのできない紫色のキーワードを含んでいることもあり、このキーワードが今後どういった証言になるのか、先に進む楽しみもある。

次の章に進むためには、プレイ中の章での全ての証言を引き出し、時系列や人物を全て正しいものにする必要がある。今の証言が本当は誰のものか、どの証言と前後関係にあるのかを考えながら右往左往するのも推理を楽しむという上ではおもしろいと感じた。
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静寂が語る恐怖と美を感じる演出
本作のグラフィックは淡い照明と重厚な影が使われており、雪に閉ざされた屋敷の寒気を見事に表現している。 人物立ち絵の作画も上品で、古典的な日本美を感じさせるが、現代的でもあるタッチとなっている。


このグラフィックがプレイヤーを一気に物語の不気味な“閉じた世界”へと引き込む。映し出されるイラストが事件の凄惨さと不可解な謎を目で実感させ、小説を読むのともムービーを見るのとも違う静止画ならではの演出で本作の世界を楽しむことができる。


静止画ではあるが、そこに音が加わることで臨場感が増し、物語に引き込まれる印象を受けた。本作では音響も本作の大きな魅力の1つとなっていると感じた。 吹雪の音、障子を開く音、足音の反響、そのすべてが物語をより深く感じさせる。展開によっては音響も相まってホラーに近いほどの怖さを感じることもあり、ハラハラドキドキ感を楽しめるようになっていると感じた。
原作とは違うエンディングも楽しめる
本作をプレイしていくと、途中から原作とは違う流れになっていることに気が付いた。原作とは違うストーリー展開に少し戸惑ったが、戦後に発表された作品ということもあり、現代に沿ったエンディングなのかもしれないと飲み込んでしまった。
しかし、実際にはそのエンディングすらも物語の一部となっていた。そこから「真相編」へと繋がった時は正直そう来たかと思ったが、このエンディングがあるからこその真相の異質さが際立つ印象を受けた。
最初のエンディングについては賛否が分かれる気がするが、これも覚書をまとめるといったところに紐づいてくる。1つ目のエンディングにたどり着く理由も明瞭でわかりやすいし、その点についてはおもしろい着眼点だと感じた。
マルチエンディングではないが、1つの作品で2つのエンディングが楽しめるのは、既存の小説を原作としたエンターテインメントとしてはおもしろい試みだと感じた。
本作は難易度としては決して難しくはなく、誰でも簡単にプレイできる作品だと感じた。また、小説や映画やドラマとも違う、新しい形での名作推理小説へのアプローチのように感じた。特に終戦から間もなく発表された原作小説は、現代において少し理解しがたい風習などもありどうしてもとっつきにくさを感じることもあるが、本作ではそういったところが分かりやすくなっており、物語に入りやすくなっている印象を受けた。
横溝正史氏の小説の世界観に興味はあるが、小説を全部読むのはハードルが高い…といったプレイヤーにもおすすめの作品となっている。
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発売日など基本情報
| 発売日 |
2025年4月24日 |
|---|---|
| 会社 |
coly Inc. |
| ジャンル | パズル アドベンチャー |
| 対応ハード | Switch / PC |
| タグ | |
| 価格 |
Switch : 1,363円(税抜)
PC : 1,363円(税抜)
|
| 最大プレイ人数 |
1人
|
GameWith編集者情報

| 幼少期にファミコンに出会い、そこからスーパーファミコン、ゲームボーイ、プレステなどと一緒に成長。ぼっちだったが大学生でゲーム仲間、FPS、ネトゲ、洋ゲーと出会う。好きなのは「ゼルダの伝説」「Gears of War」「バイオショック」「バトルフィールド」など。FPSは好きだが上手くない。下手の横好き。 |
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