
強烈すぎるコントラストが魅力を生む
正反対のモノを組み合わせているのに、なぜかその矛盾が魅力を倍増させることがたまにありませんか?
例えばカフェラテ。ほんのり甘いミルクに、苦いエスプレッソを組み合わせたビター&スウィートがじんわりくる。または、寒い夜にわざわざ風呂で食べるアイスクリームの至福感など。
「あと30分が朝まで続くシミュレーション」とか、「1000回ゲームオーバーになってもぶっ倒したいボス」とか、「好きなのになぜか別れちゃう恋愛ドラマ」とか、矛盾しているからこそ世界は面白い。筆者はそんな気がするのだ。

この独りよがりな矛盾論を繰り広げていたところに、特盛級の矛盾を抱えた作品がリリースされた。その名も『少女と学園城』だ。
……いや、だから「学園」と「城」って、同列に並べて語られるものじゃないと思う。だって、朝起きて「学校に行ってきまーす」と家を出て、お城に向かう人はいない。 それを成立させてしまうのが本作の凄みだ。
ゲームの舞台となる「カーメル」は、ユートピア的な学園都市。勉強に、部活に、誰もが青春を謳歌している。一方で、学園内は「弱肉強食」が支配する戦場でもあるのだ。

アニメ調の可愛くて高品質なビジュアルと、攻めを主体としたハードコアな戦闘のギャップが最大の特徴。それでいて、初心者にも遊びやすいという、まさに矛盾の塊みたいなゲームなのだ。
この強烈過ぎるコントラストに、プレイ中の筆者はクラクラしっぱなしだった。 今回は、筆者が大注目する本作がなぜ面白いのかを、メトロイドヴァニアというジャンルの魅力と共に紹介しよう。
目次
学園なの?城なの?どっちなの!?

▲学園内を走る次元列車「アルカディア号」でエリアを移動しながら探索する。
『少女と学園城』は、2P Gamesが販売し、Atomstring Gamesが開発する、3Dメトロイドヴァニアの最新作だ。
プレイヤーは主人公のタマを操作し、学園都市「カーメル」を探索して、すべての学生が憧れる最高の称号「カーメルスター」の獲得を目指す。
本作はタイトルからすでに矛盾している。「なぜ学園? なぜ城?」という問いが、頭の中をぐるぐると渦巻いて止まらない。結局、カーメルは学園なのか城なのか。
答えは、どっちもである。

▲ストリート感あふれる、現代的なグラフィティアートの描かれた廊下。
見た目は学園そのもの。ほんわか&のほほんとした学園の雰囲気が見て取れる。
しかし、探索し始めるとすぐにプレイヤーは、ここがとんでもない巨大迷宮、つまり城であることを実感する。しかも、時間の概念も組み合わさっていて、さながら時空城の様相を呈している。
どこかのネコ型ロボットが夏休みに冒険しそうな大迷宮だが、ここはカーメルだ。学園というキーワードから想定されるクエストをこなしながら、実は城を探索するという、一見ちぐはぐに思える矛盾を、本作はジャンルの魔法で違和感なくミックスさせている。

▲うって変わって洋館風のシックな雰囲気。さまざまなロケーションがあってプレイヤーを飽きさせない。
例えば、学校にいて「2段ジャンプが必要」な廊下とか、「空中ダッシュ」がないといけない教室などがあったら、即、転校したくなるはずだ。普通に考えて「探索しないといけない部屋だらけ」の学校に通いたい生徒なんていない。
しかし、プレイヤーは「これはメトロイドヴァニアだから」と、謎の説得力ですんなりと受け入れてしまう。筆者も同様で、開始してからしばらく、自分のプレイしている世界のおかしさに気づかなかった。
それくらい本作は、ジャンルの持つパワーを上手く使いこなしている。

▲さまざまな困りごとを解決して、生徒たちの支持を集めよう。
本作は、困っている生徒たちに手を差し伸べて悩みを解決し、小さな善行の積み重ねが結末に影響を及ぼす繊細な物語でもある。
一方で、候補者たちとの壮絶なバトルを制して、暴力で支持をつかみ取っていく荒々しさも同居する。
つまり本作の「学園なの、城なの、どっちなの!?」という矛盾は、手先の器用さがモノをいう骨太なアクションと、知力がモノをいう探索が同居するメトロイドヴァニアそのものなのだ。
筆者はこれを、開発陣の「だって、メトロイドヴァニアは、そういうものでしょ!?」という宣言だと受け止めた。
大迷宮を探索して、迷って、行ったり来たりして、途中でアイテムやスキルを発見して、気が付いたらプレイスキルが上達していて、結局、やめたいのにやめられなくなった。その矛盾こそが、メトロイドヴァニアだ。

▲さまざまなスキルを駆使して道を切り開くワクワク感は健在。
本作はジャンル直伝の矛盾をとことんまで煮詰めた直系の子孫なのだ。そして、その中毒性を戦闘側から加速させるのが、独自システム「フローバースト」だ。
これも含めて本作の戦闘の面白さは、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」華麗なアクションにある。いや、羽も針もいらない。主人公のタマは「パラソル」でぶん殴るのだ。
攻めて攻めて攻めまくる!フローバーストの爽快感

「なぜ、傘(パラソル)で戦う!?」
これも本作の魅力を決定づける矛盾のひとつ。
肩に担ぐ巨大な剣、正確無比に敵を貫くレールガン、考古学者が振り回すムチ。強そうな武器なら世界中に無数にある。
なのにタマが手にするのは、RPGで最初の王様がくれる「ひのきのぼう」よりも貧弱そうな傘だ。この武器、「アンブレラスピア(傘槍)」は、傘なのか槍なのか、実にちぐはぐな存在だ。
だが、その矛盾がプレイヤーの「攻撃しつつ、守って、さらに滑空もする」という爽快なアクションを可能にしている。
なぜなら、連続攻撃で押し込める攻撃力、ほとんどの敵の攻撃をはじいてしまう防御力、空中で傘を開いて滞空時間と距離を稼ぐ滑空力。この三拍子が揃った、万能すぎる頼もしい武器だからだ。
プレイヤーはこうした特徴的な武器を状況にあわせて使い分け、降りかかる敵をバッサバッサとなぎ倒していく。この爽快な戦闘が本作最大の魅力なのだ。

▲フローバーストを駆使して攻撃しながら回復を狙う。
この気持ちよさを最大限に高めているのが、本作ならではのシステムであるフローバーストだ。
これは、通常攻撃を当て続けることで敵をピヨり状態(フローカバー)にして、そこに強烈な一撃(フローバースト)をぶち込んで大ダメージを与えるというもの。
さらにフローバーストで敵を倒すと「何か」を吸収してタマのHPも回復できる。 回復まで持っていけると気持ちよさとお得感が一気に来るが、欲張って殴り続けると被弾も増える。ハイリスク、ハイリターンがせめぎあう、つい攻めたくなる秀逸さが熱い。
プレイヤーは、攻めて、攻めて、攻めまくる戦闘種族となって、タン、タン、タン、ターンと4連コンボをリズミカルに叩き込む。敵の遠距離攻撃が飛んできたらジャンプ。即座に傘を開いて滞空時間を調整。敵の背後に回り込んだら、もう一度連打を重ねる。この繰り返しが超絶に楽しい。

▲敵の目がキュピーンと黄色く光るときがパリィのチャンスだ!
では防御はどうするのか?
パリィ一択でひたすらはじき返す。この仕組みが本作の戦闘を恍惚の高みに昇華する。
攻撃は防御ボタンでいつでもキャンセルできる。さらに本作は、他のゲームと比べて、パリィの入力時間に余裕がある。つまり「あ、危ない」と思ってからでも、まあまあ敵の攻撃をパリィできてしまう、絶妙な無双感があるのだ。
だから、本作の戦闘はめちゃくちゃ気持ちいい。
正直これは、高難易度にシフトしがちな現代のメトロイドヴァニアとは、一線を画すアプローチだ。しかし、筆者には最適解に思える。本作の戦闘は気持ちよくても、けっして甘くはない。「やさしい=歯ごたえがない」には全くなっていない。

▲ボス戦は歯ごたえ満点、途中で攻撃パターンをダイナミックに変化させてプレイヤーを翻弄する。
それは、ジャンルの心臓部ともいえる探索にも如実に現れている。なんせ、学園の皮を被った時空城だから、一筋縄でいくわけがないのだ。
時間を巻き戻して謎を解く!リワインドで深まる探索

▲プレイヤーは雰囲気の異なる4つのエリアを探索する。何度も言うがここは学園内だ。
メトロイドヴァニアの面白さの真髄は探索にある。
物理的に進めない場所を、探索で獲得したアイテムやスキルを駆使して突破する。そのワクワク感がプレイヤーの探求心に火をつける。
そのためジャンルの常として、多くの場所に行けるようになる中盤以降から、加速度的に面白くなる。

▲行けそうで行けない場所。この時点ではスライディングのスキルがなく、左のスペースには行けない。
プレイヤーはマップとにらめっこして、あそこが、ここがと、怪しそうな場所をしらみつぶしに探索する。開発陣はそれをあざ笑うかのように無数の隠し部屋や通路をマップにちりばめて、プレイヤーの予想を煙に巻く。
つまり、開発陣とプレイヤーが、バチバチに火花を飛ばす読み合いがメトロイドヴァニアの面白いところ。
しかし、たまにこの火花を飛ばし過ぎてしまうことがある。すると、強烈な難易度となってプレイヤーに襲いかかってくることになるのだ。
これを、パズル的な謎解きの面白さへ転換しようと、ユニークなシステムを導入した。それが、時間を巻き戻す「リワインド能力」だ。

▲中央の丸いのがリワインド装置。時間を巻き戻したり進めたりしながら探索する。
本作には、他のメトロイドヴァニアではあまり見かけない、時間の概念がある。特定の時間のみ入れる部屋や通路、その時間だけ現れるキャラクター、特別な行動などが設定されている。

▲左下に時間が表示される。別の部屋に入るたびに1時間経過する。
プレイヤーはこの時間を操作して謎解きを行うのだが、本作の時間は、待てば進むものではなく、部屋を移動したときに1時間進む。言い換えると、2部屋先へ移動する場合、確実に2時間かかる。
なお、一度通った部屋は何度行き来しても時間は進まない。 つまり、特定の時間に特定の部屋に行くには、どこをどう通ってその部屋に着くかをパズル的に考えなくてはならない。
迷路としての謎解きに寄りがちなジャンルの中で、これは斬新な試みではないだろうか。
本作ではゲーム進行に必要なルートを隠さず、パズル的なアプローチで解決させる場面が随所に見られた。だからこそ、いきなり大迷宮に放り出されて途方にくれる……みたいな状況は起こりにくい。そういう意味では初心者向けの作りといえる。

▲リワインド能力でどんなに最深部にいても、一瞬で拠点に戻れる。ストレスフリーだ。
さらに、リワインド能力は単なる謎解きに留まらず、倒した敵の復活、最深部からでも一瞬で戻れるワープ装置としても使われる。プレイ時のストレスを軽減する役割としても優秀だ。
一方で筆者は、通常マップには表示されない隠し部屋も大量に発見した。雑魚ラッシュに阻まれて小一時間足止めを食らうこともあった。 そんなときだって、本作の可愛らしいキャラクターたちが、ぷにぷに励ましてくれるから大丈夫。
……で、ぷにぷにってなに? 次はそこを話したい。
グリグリ、いや、むしろ、ぷにぷに動く!アニメ調のビジュアルに釘付け

本作に登場するキャラクターは総じて魅力的だ。 なにより凄いのは、主人公のタマはもちろん、道中で出会うゆるふわ少女から姉御肌の先輩に至るまで、全キャラクターが高品質なアニメ調イラストで描かれていること。
ゲーム画面では3Dのキャラクターモデルなのだが、会話中やメニュー表示では2Dで描かれたキャラクターたちが、Live2D的な演出でグリグリ動く。筆者は次々と登場するキャラクターに引き込まれて、それが探索意欲に変化する好循環を体験できた。

人食いエイリアンの惑星や、ヴァンパイアが巣くう古城など、とかくジメジメしていそうな場所が舞台になりがちなメトロイドヴァニアにおいて、学園、さらにアニメ調で鮮やかに描かれるゲームは珍しい。
2Dイラストの繊細な表情変化と、3Dモデルの柔軟なアクションが同居するのは本作ならではの体験だ。攻撃時や待機時のアイドルアニメーションの可愛さと、戦闘の過酷さのギャップが強烈なコントラストとなって筆者を揺さぶってくる。
さらに、開発陣がグラフィックにこだわりまくった結果、主人公のタマが激しい戦闘でダメージを受けると衣装が破れてボロになる演出まで実装。しかもこれ、3D表示される操作キャラだけじゃなくて、メニューを開いたときに表示される2Dキャラにまで反映される。

▲敵のダメージで2Dイラストにもダメージ表現が入るこだわりよう。
過酷なバトルでボロボロになっていくほど、「次は勝って立て直したい」という気持ちが素直に湧いてくるから不思議だ。この手のアニメ調表現が刺さる人には、探索と戦闘を続ける動機そのものになる。
一瞬たりとも止まっていられないその姿は、「グリグリ」などというありがちな形容詞を通り越して、「ぷにぷに」動くと表現するにふさわしい滑らかさをたたえている。
動くたびに体中が揺れまくって、体の70%は水でできてるんじゃないかと思うほどだ。 ……あ、体の70%が水分なのは普通か。
まとめ:人はなぜ、平和な学園を戦場にしたがるのか?

▲学園内でなぜか「魚群のヌシ」と対決。カオスである。
本作に限らず、ゲームには学園が度々登場する。しかし、その学園はなぜか、戦禍に巻き込まれがちだ。 学園都市カーメルも例外ではない。
ただ本作は、その核に「学園なのに城」という世界観の矛盾を据え、オリジナリティとして作品に落とし込んだ。アニメ調の色鮮やかなキャラクターや舞台は、メトロイドヴァニアに慣れたユーザーには新鮮に映るはずだし、初めて触る人でも入り口として踏み込みやすい。

攻めて起爆し、回復してまた攻める「フローバースト」は、守りより攻めで生き残る設計を徹底していて気持ちいい。
探索側も、時間を巻き戻す「リワインド」を、便利な移動装置で終わらせず、時間とルートのパズルとして機能させているのが上手い。「そうきたか」と思わず唸ってしまうはずだ。
学園なのに城、その矛盾にニヤッとできたなら、手に取って存分に「ぷにぷに」をぷにるのだ。
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