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暗殺してる場合じゃない。『アサクリ』のメインコンテンツは「タイムスリップ」である【アサシンクリード ミラージュ プレイレポート】
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2023年10月5日 発売中
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カジュアル
ゲーマー

暗殺してる場合じゃない。『アサクリ』のメインコンテンツは「タイムスリップ」である【アサシンクリード ミラージュ プレイレポート】

最終更新 :
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目次

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それは「何」のゲームなのか?

好きなゲームに『アサシンクリード(Assassin's Creed)』シリーズを挙げると驚かれることがある。

たしかに筆者は豆腐メンタルで、ゴア表現や暴力的なシーンに弱い。FPSやTPSをやってみようと思ってもちょっとした流血表現で参ってしまうので『スプラトゥーン』が発売されたときこれならできる! 革命的! と目を輝かせたことがあるくらいだ。

なので、『アサクリ』ってバンバン人殺すゲームでしょ? そんなゲームして大丈夫? と心配されるのも無理はない。

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▲ボタン一つで「暗殺」可能。こんなことがあっていいのだろうか。

実際のところ『アサクリ』において、誰も殺さないという縛りはなかなか困難だ。ときには、やむなく見張りを排除して目当てのブツを手に入れたり、門番を暗殺して脱出したりといった荒っぽいプレイも必要になる。

そんなとき、「こ、殺してしまった……」と豆腐メンタルがぷるぷる揺れているのも偽らざる事実だ。

▲ときにはやむなく……と言ったが実際のところ、筆者はアクションが下手なので、だいたいの敵を殺さないと先に進めない。上手な人ならステルスすれば最低限のキルで済ませられるだろう。

しかしそれでもなお、筆者は『アサクリ』を愛してやまない。それは、『アサクリ』が「殺し」のゲームではなく、「タイムスリップ」のゲームだからだ。

敵の喉を掻っ切ることではなく、歴史のなかに確かにあった一場面、都市のありさまをこの目で確かめ、この足で歩くことにこそ、このゲームをプレイする喜びがある。

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▲シリーズの主人公は、暗殺を生業とする「アサシン」。

折しも10月5日、本シリーズの最新作『アサシンクリード ミラージュ』が発売された。もちろん今回も喜び勇んでプレイし、舞台となる9世紀のイスラーム世界を骨の髄まで堪能しているところだ。

この記事では、『アサクリ』に「ステルスしつつ、あの手この手で敵をキルしていくゲーム」というイメージ(これはこれで間違いではない)を持っている人のために、それ以外の『アサクリ』の魅力――世界史のロマンへ誘う旅としての『アサクリ』を紹介したい。

※この記事はPRでもステマでもなんでもなく、『ミラージュ』が楽しすぎるので業務のスキマを縫って書いたものです。

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歴史ロマンあふれる『アサクリ』シリーズ

▲実は昨年、15周年を迎えたところ。世界中多くのファンに長く愛されている。

『アサクリ』はUbisoftによるステルスアクションゲーム。アサシン=暗殺者を主人公とする歴史SFだ。人類史上さまざまな局面の背後で繰り広げられてきた、自由を掲げる「アサシン教団」と規律を是とする「テンプル騎士団」との何世代にもわたる争いが描かれる。

基本的に舞台は現代で、過去の物語は「主人公の遺伝子に刻まれた先祖の記憶を追体験している」という建て付けになっている。もちろんフィクションだが、歴史好きにとってはなかなかロマンにあふれた設定だと思う。

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▲たとえば初期の主人公はデズモンドというアメリカの若者なのだが、彼の先祖にエルサレムやフィレンツェで活躍したアサシンがいたという設定。不思議な機械でその記憶に没入し、「まるで自分が動かしているように感じている」というわけだ。

注目してほしいのは、その衝突の舞台として描かれる歴史上の局面だ。過去、『ミラージュ』を含めて13作品で紡がれてきた本作は、以下のような舞台を取っている。

  • 十字軍時代のエルサレム
  • イタリア・ルネサンス時代のフィレンツェ
  • 独立戦争期のアメリカ
  • 「海賊の時代」のカリブ海
  • フランス革命下のパリ
  • ヴィクトリア朝ロンドン
  • プトレマイオス朝末期のエジプト
  • ペロポネソス戦争中の古代ギリシア世界
  • 9世紀北欧のヴァイキング

シナリオの都合上、イスラーム・キリスト教世界に偏っていることは認めなければならないが、それを差し引いても「おおっ、これは……!」となること必至のチョイスだ。どれも珠玉といえる歴史上の一瞬で、その時もこの時も歴史が動いている。

想像したことはないだろうか。

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もし革命下のパリに生きて、自ら歩きまわって何が起きているか調べられたら。

パルテノン神殿の画像

いまではもっぱら真っ白な古代ギリシアの遺跡を、当時の色彩のまま鑑賞できたら。

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完成したばかりのビッグ・ベン(時計塔)を身一つでよじ登り、華々しい大英帝国の中心部を一望できたら。

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『アサクリ』では、

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その夢がすべて、

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叶うのだ。

PlayStation4のキャッチコピーに「できないことが、できるって、最高だ。」というものがあったが、本作はまさにこれ。過去という絶対に行くことのできない場所へ、ゲームという媒体を通じて旅することができる。こんなにすばらしいことがあるだろうか。

さて、ここからはそんな『アサクリ』シリーズの最新作について紹介していこう。今作の舞台もまた、歴史上に咲いた花のようなすばらしい時代のひとつだ。

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産業革命以前最大の都市を舞台とする最新作『ミラージュ』

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▲本作の主人公・バシムは物語開始時点で17歳。菅原道真よりも1歳年長だ。

物語のはじまりは861年。日本でいうと平安時代、中国でいうと唐王朝時代。ヨーロッパではフランク王国という国が3つに分かれて、ドイツ、フランス、イタリアの元になっていく過渡期にあたる。

人物で見れば、菅原道真が16歳、在原業平が36歳、のちに唐を滅ぼす朱全忠が9歳、その後ロシアになる国を作った英雄リューリクが30歳前後、イングランドの基礎を作ったアルフレッド大王が13歳といったところ。今から1000年ちょっと前、わたしたちにとっては60人ほど先祖を遡ってようやくたどり着く時代だ。

さて、『ミラージュ』の舞台は、この時代に世界でいちばん大きく、いちばん豊かだった街。その名を「バグダード」という。

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▲ちなみにこのときの正式名称は「マディーナ・アッ=サラーム」。意味は「平安の都」で、同時代日本の平安京と偶然の一致を見せている。

いまではイラクの首都として知られるバグダードだが、この時代にこの街を首都として栄えていたのは、押しも押されもせぬ大国「アッバース朝」。歴史に詳しくない人でも、「千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)」の、もしくは「アラジン」のモデルとなった時代といえばピンと来るだろう(※)。

中央アジアの交通網を支配して交易に富み、学問や芸術を奨励し、さまざまな人種・宗教の人々が入り混じった、歴史上でも有数の経済的・文化的豊かさを誇った超巨大帝国だ。

▲すごくざっくり言うと、当時のバグダードは今で言うニューヨークみたいなイメージ。産業革命以前で最大とも言われるほど、大陸中の人・物・金が集結した大都市だ。

『アサクリ』ではこの時代のバグダードを自由自在に走り回れる。これがいかにすばらしいことかは、どれだけ大きな声で叫んでも強調しすぎということはない。なぜなら、このバグダードはここから400年後の1258年、チンギス・ハーンの孫フレグによって徹底的に破壊されたからだ。

残存していたら紛れもなく一級の世界遺産になっていたであろう数多くのスポットが、このとき地上から姿を消している。そんな、本当ならお目にかかれなかったバグダードが再現されて、自由に歩けるというのだ。繰り返すようだが、『アサクリ』とはなんと唯一無二の価値を持つゲームなのだろう

▲制作陣による、失われた都市バグダードをゲーム内によみがえらせるプロジェクト。『アサクリ』を作ることはほとんど歴史学の研究を行うことと同義だ。

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古地図を片手に、夢のバグダード探索ツアー

そんな熱い想いを語ったところで、そろそろ実際にこの街を散策してみよう。せっかくなので、こんなものを用意してみた。

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▲The city of Baghdad between 150 and 300 AH(767 and 912 AD), William Muir.
※パブリックドメインの画像を使用しています。

これは19世紀、イギリスの学者が作った767年〜912年ごろのバグダードの地図

もちろん失われた都市のことだからこれが正確と言い切れるわけではないが、さしあたってこれを片手に歩いてみるのはなかなか楽しそうだ。

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見れば、円形都市の北東に「Palace(宮殿)」の文字がある。

王族(カリフの一族)の住むこの街には間違いなく数多くの宮殿があるはずだが、円形都市からすこし外に出た、いわば郊外に広い立地を持つ宮殿というのはやや特徴的。いったいどんな人が住んでいるのか、試しにここに出かけてみるとしよう。

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▲中央を円形に囲うのは、古代オリエントから続く伝統的な都市設計。東京の山手線なんかもちょっと近いかもしれない。

これが『アサクリ』ゲーム内で表示されるバグダードの地図だ。先ほどの地図と照合すると、街の東側を流れるティグリス川も、円形都市を中心とする区画も、実に正確に再現されていると言わねばならない。

ちなみに今いるのは、円形都市を挟んで反対側にある「知恵の館(バイトゥ・ル=ヒクマ)」という場所。王立の研究所・図書館で、高名な学者が集って研究を繰り広げたという非常に重要な場所だ。

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▲ここで培われた科学的思考がのちにヨーロッパ・アメリカへと渡り、産業革命やIT革命に繋がっていく。現代文明の故郷のようなスポットだ。

まずは門から円形都市のなかへ入ってみよう。そこでは商人が品物を売りさばき、市民がその品定めをする。あちこちからおしゃべりの声や、ときには怒号が聞こえてくる。彼らの衣服、家屋、言語にいたるまで、さまざまな文化的背景がしっかりと再現されたフィールドは、まるでその息遣いが聞こえてくるかのようだ。

ちなみに『アサクリ』の伝統として、移動はパルクールで行う。市民が(あっけにとられて)見ている中で、現実世界だったら触ってはいけないような貴重な建物をクイッと足蹴にして走る快感はなかなかのもの。

▲「タイムスリップしてゴツいフード被ってパルクールで走ったらイケてんじゃね?」って、よく考えるととんでもない発想である。

なお、ただいま諸事情でお尋ね者状態。街中の至るところに主人公の手配書が貼ってあるという、観光するにはなかなかシビアな状況に置かれている。

そこらじゅうウロウロしている衛兵に見つかると襲撃されてしまうので、ここは逃げの一手。立ち向かってもよいが、本作の主人公は人並みに弱いので、一人vs多数の戦いではほぼ殺されてしまう。自慢のパルクールで衛兵を煙に巻いていくことにしよう。

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▲こちとらただ観光したいだけなのに、どうしてこうなってしまうんだ。

なんとか衛兵の猛追を退け、円形都市を抜けた。古地図によると、ここに「Palace」と記載されているようだ。

しかし着いてみるとここは「ハルビヤ」、どちらかというと治安の悪い区画ではないか。はたしてこんなところに宮殿が……。と思った矢先。

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▲夜の景色に映える、美しい青色。

目に入ってきたのはまさしく「宮殿」と呼ぶにふさわしい、豪奢な造りの建築物。ゲーム内での説明によると、ここは王子が住まう宮殿なのだそうだ。

なるほど、もしかしたら郊外の大土地を王子の居城にあてることで、城の内外に王族の威厳を見せつけつつ、一方で王と王子の確たる差を絶妙に示している、というわけかもしれない。

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▲正面から見たところ。また衛兵に目をつけられている。

もちろん現実の歴史上、この位置にどんな建物があったのかは想像するよりほかない。けれど、そこにこの建物がある理由がなんとなく想像できる――もしかしたらこの通りだったのかもしれない、と思わせてくれる。

それにしても古地図に「Palace」とある場所に行ってみたら本当に宮殿があるなんて、『アサクリ』のこだわりっぷりはやっぱりすごいなぁ。

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ぜひ、ゲームプレイに飛び込んでみよう

▲歴代アサシンの得意技、下に藁さえあればどこからでも無事に飛び降りられるすごいジャンプ(正式名称「イーグルダイブ」)。

歴史は、好き嫌いが分かれるジャンルだと思う。少なくとも「ちょっと難しくてよくわからない」と思ったことのある人は多いだろう(筆者自身もその一人だ)。

おそらくそれは、歴史が「文献」に頼らなくてはいけないからだ。難しい外国語と渦巻く政治情勢がすべて文字情報として流れ込んできたとして、それをすぐに理解して楽しめる人というのはそうそういるものではない。

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▲ちなみにバグダードの周囲では、野生のフラミンゴが生息しています。すごくない?

でも『アサクリ』ではどうか。『アサクリ』では、歴史を「今そこにあるもの」として享受することができる。美しいモスクや、そこで暮らしている人々、そこに透けて見える政治的な趨勢さえ、ゲームプレイのなかでは紛れもない現実として、体験すべきものとしてそこにあるのだ。

この記事を読んでちょっとでも『アサクリ』に興味を持ってくれた人は、ぜひ! ぜひ!! ぜひ!!!! 『ミラージュ』でも過去作でもプレイしてみてほしい。きっとそこには他では得難い感動を得られることだろう。

▲なお、いよいよ「日本」を舞台とする『アサクリ』も開発中の模様。楽しみで体が爆散しそうである。

※実際には、『千夜一夜物語』にはギリシャから中国まで各地・各時代の民話が収められている。『アラジンと魔法のランプ』についてももとは中国が舞台。

発売日など基本情報

発売日

PS5: 2023年10月5日

PS4: 2023年10月5日

PC: 2023年10月5日

Xbox: 2023年10月5日

アプリ: 2024年6月6日

会社

Ubisoft

ジャンル アクション アドベンチャー
対応ハード PS5 / PS4 / PC / Xbox / アプリ
タグ
価格
PS5 : 6,000円(税抜)
PS4 : 6,000円(税抜)
PC : 6,000円(税抜)
Xbox : 6,000円(税抜)
アプリ : 6,364円(税抜)
最大プレイ人数
1人
公式HP
公式Twitter
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GameWith編集者情報

サイートのプロフィール
サイート
考察厨。好きなジャンルはRPG、アドベンチャー、謎解き。ゲームのシナリオや構造のことであーでもないこーでもないと考えるのが好き。
幼少期から好きなソフトを周回しまくる習性があり、「ドラゴンクエストⅤ」「ドラゴンクエストⅥ」の通算クリア回数はそれぞれ30回を超えている。

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