2人の男の生き様を見届けた『龍が如く8』クリアレビュー!
2024年1月26日(金)、SEGAから「龍が如く」シリーズの新作RPG『龍が如く8』が発売される。TGS2023開催の前日に公開されたトレーラーでガンが判明した桐生一馬。
この作品と出会ってから今年で19年経つということもあり、トレーラーを見た当時は単なるゲームキャラの病気ではなく親戚のおじさんが病気になったくらいショックを受けたことを覚えている。
それから数ヶ月が経ち、いよいよ『龍が如く8』をプレイする日が来てしまった。
今思えば、ガンということを早めに教えてくれたのは「龍が如くスタジオ」のファンへの配慮だったのかもしれない。時間が経ったことで幾分かは事実に向き合うことができたような気がする。
今回は、特別に先行でプレイする機会をいただけたので、本記事ではそんなプレイヤーの覚悟がいる作品を、ライターとして、シリーズ全作品を遊んできたファンとしてクリアまで遊んだ感想をお伝えしていく。
物語の根幹に関わる部分のネタバレは避けるが、ネタバレが少しでも気になる人は本編をある程度進めてから読むことをおすすめする。
また、今回はストーリークリアを優先してのプレイであることに留意してほしい。
目次
龍が如く8とは?
2005年から続く世界でも評価が高い「龍が如く」シリーズ最新作。今作は、初代からの主人公である桐生一馬と『龍が如く7』から登場した春日一番のダブル主人公となっている。
再びどん底から這い上がる男、人生最期の戦い挑む男という2人の生き様が描かれた超大作として相応しいボリュームとなっており、全てを堪能するとなるとゆうに100時間以上はこえるほどだ。
長く続いている作品ほど新規で始めにくいイメージがあるがストーリー冒頭での振り返りや細かな説明が各所にあるため、今作から遊んでも問題はない。
もちろん、ナンバリング作品を網羅していた方がより楽しめるのは事実だが、最低限『龍が如く7 光と闇の行方』『龍が如く7外伝 名を消した男』の2作品を遊んでおけば良い。
細かな仕掛けが多いのも『龍が如く』の魅力で、それを探すのもまた面白い。本作でいうと各章のタイトルがその1つ。
世代によって気づく段階に違いはあれど、皆が理解できる絶妙なチョイスも良かった。エンディングで全てが回収されるようになっているので、最後までプレイして答え合わせをしてみてほしい。
新たな舞台「ハワイ・ホノルルシティ」
『龍が如く8』でのメイン舞台であり、新たに登場したステージが「ハワイ・ホノルルシティ」。このハワイ、『龍が如く7』のメイン舞台「横浜・伊勢佐木異人町」の3倍の広さを誇る。
「横浜・伊勢佐木異人町」はシリーズおなじみの「神室町」の3倍の広さなので、そう考えると規模の大きさをわかってもらえるだろうか。
徒歩以外の移動手段として、街中を周回する「トロリー」や「OKAサーファー」といういわゆるセグウェイのような乗り物がある。
ハワイはかなり広いが移動のストレスもなく、タクシーでのファストトラベルがもったいないくらいに快適だった。
日本のマップと同様に再現度が高く、有名コンビニチェーンの「ABCストア」や人気のカフェ「DEAN & DELUCA」などハワイに実在するお店が登場。
海外旅行へ行った感覚が味わえるので、少し言い過ぎかもしれないがこれだけでも遊ぶ価値があるのではと思えてくる。
そのほかにも…
なんと、先ほど触れた「横浜・伊勢佐木異人町」や「神室町」へ行くことも可能。
『龍が如く7外伝 名を消した男』に登場した生キャバ嬢オーディション合格者の5名の看板があるなど、街の細かい所にも変化がみられた。
街並みだけでなく、時間の経過がしっかりと表現されているのもリアルさが感じられる要因だろう。
バトルはより戦略的、快適に!
『龍が如く7』で採用されていたバトルシステムが「新ライブコマンドRPGバトル」として進化。
バトルはターン制のRPGバトルということは変わらないが、自由度や戦略性が増し、さらに爽快感が感じられるように。
実際にプレイしてみて、誰でも楽しめる簡単さはありつつ「龍が如く」はアクションバトルでしょという人にも満足してもらえることと思う。
ここからはバトルをもう少し細かくみていくとしよう。
リアルタイムで状況が変化するアクションバトルさながらのライブ感!
戦略性が向上した大きな要因が移動だ。『龍が如く7』にはなかったプレイヤーキャラクターの移動が可能となり、一定範囲内を自由に動かすことができる。
以前は落ちている武器や環境を利用するにしても運要素が多く戦略として組み込めなかったが、今作は落ちているものに任意で近づくことができるようになったので戦い方に幅が出た。
重要になった位置どりは攻撃にも変化を及ぼす。
例えば、敵に近づいた状態で攻撃すると「近接ボーナス」がつきダメージがアップしたり、後ろから攻撃できれば「バックアタック」となりさらに大ダメージが狙える。また、ガードを無視できるという利点もある。
さらに、吹き飛ばし攻撃も進化したことで壁にぶつけてもダメージが入るようになった。吹き飛ばす方向によっては仲間が連携攻撃や追い討ちをしてくれることもある。
対多人数や強敵とのバトルではダメージソースとなる場面が多かったので積極的に狙っていくとよいだろう。
プレイヤーと同様に敵も移動するため、位置を調整しつつ戦っていくのはアクションバトルのような感覚があった。
逃げるくらいなら「クイックバトル」を。
RPGあるあるだと思うが、自分より弱い敵と戦うのが面倒で逃げまくった経験はないだろうか。かといってオートバトルを利用しても結局のところ拘束時間は発生する。
今作から採用された「クイックバトルシステム」は、格下とのバトルに限り、一撃でバトルを終わらせられるようになった。
これが本当にクイックで、逃げるのと大差ないくらい時間がかからない。通常のバトルより得られる経験値は少なくなるものの、テンポを損なわず進められるのが利点だ。
バトル開始前にL2ボタンを押さなければ「クイックバトル」にはならないので、技を試したい時やバトルを楽しみたいという人は通常通り遊ぶことも可能。
見た目にも楽しい新規ジョブが追加!
『龍が如く7』からあるジョブシステムについても、マリンマスターやアクションスターなど新規のジョブが追加。
ほかにも、RPGっぽい召喚士からハウスキーパーといった本当の意味でのジョブまで用意されているのが面白い。
従来のジョブにもなれるので、パーティ編成がより奥深いものになった。
また、新規プレイアブルキャラ×従来のジョブという組み合わせも可能になったため、筆者のようにソンヒをアイドルにしてしまうことだってできるのだ。
桐生一馬専用のジョブ「堂島の龍」は特殊で、ヤクザ、ラッシュ、壊し屋という3つのスタイルを切り替えながら戦える。
さらにはゲージが溜まることで「絆覚醒」が発動でき、一定時間アクション操作で敵を攻撃可能になる。伝説の極道と呼ばれた男はゲームのルールさえぶち壊すのか。
新旧キャラクターが揃い踏み!それぞれの成長や決断に涙。
『龍が如く』といえば登場するキャラがもれなく全員魅力的である。バックボーンまでしっかりと作り込まれているので、言動などからそのキャラが今までどのような人生を歩んできたかまでも見えてくる。
それは本作においても健在で、筆者は終始泣かされっぱなしだった。
まずは、なんといっても『龍が如く7』から春日一番とともに歩んできたキャラクターたちの成長ぶり。今作は一層頼れる仲間として皆が大活躍。
右も左もわからない状況でハワイにいる時の仲間の助けはどれだけ心強かったか。余談だが、筆者は海外に留学していたことがあり、なにもわからず困っていた時に日本人に会ったときのホッとした感じを思い出した。
成長という面では特にハン・ジュンギの「ぶん殴って黙らせましょう」という言葉が印象的で、昔の彼なら到底言わないであろうこのセリフは一番たちと居たからこそ出たものだと思う。
このような場面はどのキャラにも見られ、前作で築いてきた絆が深いものだったんだと改めて感じさせてくれた。
エリック・トミザワや不二宮千歳、そして今作からプレイアブルキャラとして物語に大きく関わることになったソンヒなど、新規キャラクターも負けてはいない。
新規キャラにおいては"決断"というのがキーワード。一番たちに巻き込まれたと言ってもいい状況においても、皆は必ず自分の意志だと言う。
本作では、誰かに決められたからではない、それぞれが選んだ究極の決断に注目してほしい。
新旧キャラクターが絡むことで起きる化学反応も必見。
元看護師として桐生に接するナンバや、千歳と紗栄子、ソンヒの女子同士での交流など、普段は関わってこなかった属性の人たちと接することでキャラの思わぬ一面が見られる。
個人的には、いつもはクールなソンヒの可愛い言動にやられた。ギャップってずるい。
各キャラの魅力を挙げたらきりがないが、本作で好きなキャラを1人選ぶとしたら筆者は山井豊の名を挙げるだろう。トレーラーで見たとき、初めて会ったとき、エンディングまでプレイしたときで山井の印象は大きく変化した。
冷酷でいかにもやばそうな見た目だが、「手の冷たい人は心が温かい」という言葉もあるので。とにかく、「龍が如く」シリーズファンにとっても上位に食い込んでくるほど魅力的なキャラということは声を大にして言いたい。
ちょっと寄り道のつもりが数十時間!サブコンテンツが充実しすぎ!
本編を遊ぶだけでも80時間以上がかかるというのに、サブコンテンツを全て合わせると本編並みのボリュームがある。
不審者スナップやクレイジーデリバリーといった新規で追加になるプレイスポットも多く、まさに時間が溶けていく。
おそらくマッチングアプリで遊べるのはこのゲームだけなのではないだろうか。上手くマッチングできるようにプロフィールを作り、相手を口説ければ直接会うことが可能。
サクラに落ち込むこともあるが、実写の女の子を拝むこともできるので諦めずに挑戦しよう。
ポーカーは専用のプレイスポットが登場し見た目も変わっていたり、カラオケは判定が調整されているようで過去作よりも遊びやすくなっていたりと、これまであったプレイスポットにも細かい変化がある。
カラオケにはハン・ジュンギやソンヒといった初めて歌唱するキャラもおり新鮮だった。ハン・ジュンギの曲に関しては合いの手がすごすぎて曲が全く入ってこなかったが。
ここからは、1つのコンテンツを遊ぶだけでもかなりの時間がはかかるであろう大型のサブコンテンツをみていく。
目指せスジモンマスター!
『龍が如く7』では図鑑をうめるだけだった「スジモン」でバトルができるようになり、一番はスジモンマスターを目指すことに。
「スジモン」とは、その"スジ"の"モン"ということだ。
「スジモン」はハワイでのバトル後、スジモンチャンスが発生すれば捕まえることができる。
捕まえた「スジモン」は強化や覚醒、さらには進化と本格的な育成が可能だ
ある程度「スジモン」が揃ったらバトルに挑む。バトルはハワイの街中にいるマネージャーに話しかけることでおこなえる。
属性の相性や技の駆け引きといった本編とは違った白熱のバトルが楽しめ、うっかり使命を忘れてしまいそうになった。
どん底のシマ「ドンドコ島」を復興!
とあることがきっかけで、一番はかつてリゾート地だった「ドンドコ島」という今はゴミだらけの島の復興を手伝うことに。
このコンテンツは5つ星のリゾート地にするという最終目標はありつつも、のんびり気ままに、ほのぼのライフが楽しめる。
バットでゴミを壊したり資源を回収したり、釣りや虫取りなんかもできる。DIYで集めた資源を使い家具や施設などを作り、自由に配置して島をどんどん発展させていこう。
「ドンドコ島」はサブコンテンツの領域を遥かに超えており、遊ぼうと思えば3、40時間以上は確実に楽しめる。ゲームの中にもう1つゲームが入っている感覚。まさに圧巻である。
プレイ中にゲーム内のカメラ機能で写真を撮ろうとして発見したのだが、「ドンドコ島」の中でカメラを起動すると専用のフレームが現れる。
自慢の島を撮ってSNSで共有する楽しみも増えた。ぜひ公式でフォトコンテストを開催してほしい。
エンディングノートは桐生だけでなくプレイヤーの心残りもなくす!
春日一番がスジモンやドンドコ島だったのに対して、桐生一馬には「エンディングノート」というコンテンツがある。
これは、残された時間が少ない桐生が本当はやりたかったことややり残していることに取り組んでいくというもの。
「エンディングノート」はエンディングドラマ、追憶ダイアリー、未練ミッションの3つから構成されており、こなしていくことで生きる気力が蘇り桐生のステータスが上がっていく。
エンディングドラマは、シリーズ1作目から戦友として桐生とともに苦難を乗り越えてきた伊達さんと会うことから物語が動き出す。
シリーズを通して桐生にゆかりのある人たちが登場しストーリーが展開していくのだが、登場する人物は意外な人が多く、プレイ中思わず「やばっ」と声が出てしまった。
何を言ってもネタバレしそうなので一言だけ言わせてほしい。必ず全て終わらせてから本編をクリアするべき。
桐生一馬だけでなくプレイしている私たち自身の心残りをなくす物語になっているので、シリーズを通して遊んでいる人はやらなければならない。強い言葉を使うなら、「やらないなんてありえない」。
各ストーリーは追憶ダイアリーや未練ミッションをこなしていくことで上がる覚醒ランクに応じて解放される。
とくに街を探索する追憶ダイアリーは過去を振り返るにはもってこいのコンテンツなので、桐生と一緒に思いをはせながら思い出の場所をめぐってみよう。
最後に
エンディングを迎える前は、記事冒頭でもお話ししたように結果がどうであれ桐生一馬に泣くものと思っていた。『龍が如く7外伝』でも桐生と一緒に号泣したくらい思い入れが強かったからだ。
しかし、蓋を開けてみれば春日一番に泣かされてしまった。桐生のガンで盲目になっていたが、一番のストーリーも同じくらい考えさせられる良いものだったことに間違いはない。
ある言葉の意味の変化によっての心情の表現が素晴らしく、最後の一言では涙がとまらなかった。
筆者は泣きはしたものの、クリア後は春日一番を演じた中谷一博さんが完成披露会で言っていた「希望で輝いてる空を笑顔で見られる」ような作品になっているという意味がわかった気がした。
桐生の結末についてもそうだが、やはり1度のプレイで全てを理解するのは難しい。筆者は改めてもう一度遊ぶつもりだ。おそらくこの記事が出る頃にはプラチナトロフィーを取る旅に出ているだろう。
クリア後モードは全キャラを自由に編成できるので、やり込むにはうってつけだ。超ボリュームなので長旅になると思うが、楽しみつつ2人の男の生き様を目に焼き付けてほしい。それでは、ボンボヤージュ。
GameWith編集者情報
天井は救い...! 動画編集兼ライターの異色タイプ。 基本的には1つのゲームをやり込む。好きなゲームはアクション、RPG。 人生に影響を与えたゲームはテイルズ オブ ファンタジア、FFX、モンハン2ndG。 ゲーム以外は食べ歩きが趣味。ラーメン1杯に3時間並んだことも。 |
@ SEGA