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【インタビュー】「鉄拳」シリーズの原田勝弘氏がSNKの支援で新スタジオ設立!「VS STUDIO SNK」で目指す「作り手の本気」

【インタビュー】「鉄拳」シリーズの原田勝弘氏がSNKの支援で新スタジオ設立!「VS STUDIO SNK」で目指す「作り手の本気」

最終更新 :
原田勝弘氏インタビュー

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株式会社SNKは「鉄拳」シリーズ元プロデューサー原田勝弘氏を迎え、同社の出資による新スタジオ「VS STUDIO SNK(通称:VSスタジオ)」を設立したと発表した。原田氏が代表取締役CEOを務める。

原田氏は、格闘ゲームシリーズ「鉄拳」を、累計6,400万本以上を売り上げるタイトルに成長させた実績がある。2025年末でバンダイナムコを退職し、次の動向が注目されていた。

原田勝弘氏インタビュー

▲(左から)VSスタジオの米盛祐一氏、原田勝弘氏とSNKの小田泰之プロデューサー(2026年4月30日撮影)

SNKは、2020年に中東資本の長期投資戦略による支援を受け、現在は『餓狼伝説』『KOF』『サムライスピリッツ』などのIPを軸に「第二の創業」を掲げている。

今回、タッグを組むことになった経緯や、新スタジオでの挑戦への思いについて、合同インタビューで原田氏に直撃した。

目次

残された時間への想いと、新スタジオ「VSスタジオ」の船出

── 新スタジオ設立の経緯を教えてください。

原田氏
前職を辞めて、「次どうしようかな」と思っていたところで、SNKの出資元やSNKの方から「一緒に何かできないか」というお誘いをいただいたのがきっかけです。

ありがたいことに他にも多くの企業様や個人様からのオファーはありましたが、(SNKで)ぜひ前向きに考えたいとお返事しました。

ここにいる小田さん(※1)とは以前から親交があって、「いつか何か一緒にできたら面白いね」と、漠然と話していたご縁もありました。

原田勝弘氏インタビュー

さらに、SNKのバック(※2)にある出資元からお聞きしたビジョンが、僕の持っているビジョンと合致したのも大きな理由のひとつです。新スタジオの代表として、ぜひやりたいとお受けしました。

※1 同席した、SNKジャパンスタジオ統括本部、小田泰之プロデューサーのこと。
※2 サウジアラビアのミスク財団傘下のElectronic Gaming Development Company(略称EGDC)のこと。

── それまでのSNKにはどんな印象を持っていましたか。

原田氏
僕が業界に入る前の大学生の頃に「ネオジオ(※3)がドンと出てきて、個人的にファンだったんです。この業界に入ってからもネオジオの印象は強くて、前職でもコラボさせていただいたくらいです。なので、いちファンと同じような感覚で見ていましたね。

※3 ネオジオ(NEOGEO):SNKが1990年代に展開した家庭用ゲーム機。アーケードと同じクオリティのゲームがそのまま遊べる超高性能機だった。

── 新スタジオの概要や名前について教えてください。

原田氏
正式名称は「VS STUDIO SNK(通称:VSスタジオ)」です。

VSには色んな意味があって、一般的には「バーサス」を連想されるかと思いますが、この名前には僕らのルーツも込められています。

原田勝弘氏インタビュー

90年代に僕ら(同席していた米盛氏のこと)が開発を始めた頃に所属していた部署が「VS開発部(※4)という名前だったんです。実は「ビデオゲーム・ソフト(Video game Software)」の略だったんですが、そうした背景を含めて、色んな意味を込めて名付けました

※4 旧ナムコの業務用&家庭用ビデオゲーム開発部門のこと。

── 新スタジオは、どのような体制で運営する予定ですか。

原田氏
SNKさんのいち部署というわけではなく、独立したスタジオになります。独立性を保ったままSNKさんの傘下にいて、バックの財団グループの一員でもありますね。

このビル(SNK東京オフィス)のワンフロアにスタジオを構えます。同じビルにいるわけですから、強固な協力関係にあります。

ただ、契約締結したばかりで、環境作りはこれからという出来立てほやほやの状態です。規模の詳細は言えませんけど、僕が実現したいことができる規模感ではあります。

原田勝弘氏インタビュー

僕は代表取締役CEOという立場ではあるんですけど、20〜30代くらいの頃のように、クリエイティブにもしっかり足を踏み入れて「一緒に作る」ということを、もう一度ちゃんとやりたいです。ですので、(自分自身も)原点に立ち帰るような気持ちで、現場に関われる体制にしたいと思っています。

── SNKさんに関わるようになって、驚いたことやエピソードがあれば教えてください。

原田氏
実はまだ深くは関わっておらず、このフロアにも初めて来たくらいです。ただ、SNKさんは歴史がある会社なので、年代で見え方が違うと思います。僕はずっとネオジオのイメージでした。

いまは「第二の創業」というか、老舗メーカーなのに生まれ変わろうとしていますよね。 傍から見ていても「今からもう1回SNKを始めるんだ」という印象を受けました。先に見据えているものが刹那的ではなく、ちゃんと未来を予感させるんですね。

原田勝弘氏インタビュー

ゲームを真正面から捉えてやっていくという本気度をすごく感じるんです。いまのSNKさんには、そういう雰囲気があります。それも、僕がご一緒したいと思った理由のひとつです。

──前職を退職される際に「開発者として残された時間」というお話をしていました。今回、新天地でのクリエイターとしての最終目標は何でしょうか。

原田氏
最終的な目標はまだわかりません。ただ、同じ会社で長く仕事をしていると、社会人としてのポジションや責任感が積み上がって、50歳を過ぎてから「もう1回仕切り直したい」と言っても、普通は通じないじゃないですか。

だからこそ、今までの実績にあぐらをかくのではなく、頭と身体が働くうちにもういちどやろうと。精神的にも肉体的にも、まだやれる残りの時間を逆算すると「ベストな時間はそんなにないな」と気づいたんです。

原田勝弘氏インタビュー

日本人男性の平均寿命が80代と考えると、僕は50過ぎていますから、これまで生きてきた時間と同じだけをもう生きられないんです。健康面を考えるとさらに短いかもしれない。

最後に1つ、2つ……3つなのか分からないですけど、「これだけはやりたい、実現したいんだよ」という思いと、残された時間を天秤にかけた結果が、「いま」なんです。

SNKの既存IPを活用する可能性は? お互いのナレッジが生むシナジー

── SNKだからできること、ブランドの強みをどう感じていますか。

原田氏
僕のキャリアとSNKさんとは、かなり相性が良いと思っています。

お互い似たジャンルを作ってきたように見えて、実はナレッジが全然違うんです。自分の培ってきた経験を交換し、シナジーとして活かせるんじゃないかと期待しています。

──『餓狼伝説』『KOF』『サムライスピリッツ』など、SNKさんのIPを活用する可能性はありますか。

原田氏
個人的にSNKさんのIPに好きなものがいっぱいあるので「あれいいな、これいいな」はありますが、今すぐ何かを作るというわけではありません。

ただ、どこかのタイミングで言える日が来るかもしれません。そうなったら、面白いことができると考えています。

── 最近の『餓狼伝説』のコラボ(※5)についてはどのような感想をお持ちですか。

原田氏
実は、格闘ゲームに格闘ゲームではない他業種のIPをゲストで最初に迎えたのって、僕が昔作っていた格闘ゲームなんですよね(笑)

当時は「なぜ!?」という声もありましたが、今やああいうコラボは当たり前になりました。 餓狼のコラボは「ようやくみんなもやり出したな」という安心感で見ています

今の餓狼は「次に何が出るか予想できない」ワクワク感に変わってきている気がします。前回のケンシロウは、僕もいちファンとして相当びっくりしました

※5 26年ぶりのシリーズ最新作『餓狼伝説 City of the Wolves』(2025年4月24日発売)。『ストリートファイター』『北斗の拳』『Faaast Penguin』など、注目度の高いコラボを連発している。

── 「鉄拳」シリーズでの経験を、SNKでどう生かしますか。

原田氏
開発当時は「自分がチームを率いているんだ」感を出していましたが、シリーズの実績は、たくさんの人にお世話になった結果なんです。僕1人が来て「こうやればうまくいきますよ」なんて、おこがましいことは言えません。

ただ、成功体験の明確な法則はわからなくても、「勘所」のようなものは自分の中の宝としてあると思います。そこは、共有していきたいです。

逆に僕の方こそ、小田さんをはじめSNKさんから色んな話を聞きたいですね。実は、ノウハウやナレッジよりも「こうなったら面白いよね」という好奇心やワクワク感が重要なんです。

原田勝弘氏インタビュー

過去の実績を語るよりも、年齢と共に失われてしまう、そうした感情が「いま僕の中にある」ということに、凄く大きな意味合いを感じています

それに、これまでの成功体験に囚われると新しいテクノロジーに対応できず、学習もできなくなってしまいます。TVゲームの開発は元々テクノロジーですから、進化に合わせて自分の価値観をアップデートするのがとても重要です。

今までの経験をベースとして役立てつつ、また新たに勉強や技術の探求がしたくて新しい環境に飛び込んだ経緯もあります。これまでの作り方ではなく、今のユーザーに何が求められているのかをもう一度ちゃんと見直して、ものづくりをしていきたいです。

世界市場で戦うための開発環境づくりと、これからのゲームの作り方

── 今後、どんなジャンルのゲームを作りたいですか。

原田氏
個人的にはVRなど、いろいろなジャンルのゲームをプレイしていて、それらにも興味があります。でも、実際に開発するとなると得手不得手もあります。また、世間やSNKさんから期待されているものも理解しています。

原田勝弘氏インタビュー

そういう意味で「対人で対戦するもの」や「アクション」は外せないと思います。また、僕自身もそのジャンルを追求したいという思いが強いです。ですので、ジャンルがどうというより、まずは対戦モノを作りたいですね。

── 開発環境をゼロから構築することになります。どんな環境を目指しますか。

原田氏
若いクリエイターに参加してもらいたいという思いは強くあります。

一方で、この業界を長くやってきてわかったことなのですが、いまの45歳以上のシニア世代の開発者はすごい宝だと思うんです。まもなく定年しちゃうような人も含めて、ベテランにもう一度、集まってもらいたいです。

そして、シニアパワーと若い人の組み合わせで、いいものを作れたらという気持ちでいます。

── 世界市場に向けて、どう戦っていくかなどの戦略はありますか。

原田氏
僕らが若い頃の90年代は「いいゲームを作れば売れる」というピュアな時代でした。しかし、今は世界市場向けとなると、マーケティングやプロモーションなどの届け方でも差がつきます。色んな複合要素が売上という結果に繋がります。だから、「こうやれば絶対売れる」とは言えない難しい時代です。

一方で、ものづくりは芯が通ってないと売れないのも間違いありません。90年代とは違う今の時代に「ゼロからものをつくる」にはどうすればいいか。その答えを、みんなで知恵を出し合って、新しいゲーム体験に繋げるものづくりをしたい、そんな風に考えています。

自分のノウハウだけでは思いつかない新しい売り方を、SNKさんと一緒に模索していければいいなと考えています。

── 手掛けるタイトルの規模(AAAやインディーなど)や、特定の指針はありますか?

原田氏
VSスタジオの理念は「伝統に挑み、極限を創る(Beyond tradition, crafted to perfection.)」です。要は「できるだけいいものを作ろうぜ」ということで、規模にかかわらず、作るものの中身に集中したいです。

原田勝弘氏インタビュー

今はお金をかければAAA(※6)なのかという定義も難しく、インディー(※7)でも支持されて賞をもらうタイトルが出ています。

もうAAAやインディーといった括りではなく、作っている人がどれだけ本気で好きで、やる気でやっているかが伝わる時代なので、そこで勝負したいと思っています。

※6 AAA(トリプルA):多額の開発費やプロモーション費用を投じて制作される、大規模なゲームタイトルのこと。
※7 インディー:個人や少人数の独立系開発スタジオによって制作される、小規模なゲームタイトルのこと。

「生の声」を聴く。コミュニティとeスポーツの現在地と課題

── 原田さんはSNSなどでの発信も人気ですが、コミュニティとの関わりは、今後も継続しますか。

原田氏
市場にいるユーザーの温度感を、誰かからのデータやレポートで間接的に見るだけというのは、僕の性には合いません。

その温度感を直接感じつつ、マジョリティだけでなくマイノリティの意見を聞くことが、ヒントやアイデアの元になることだってあります。手厳しい言葉に刺激されて「だったらやってやろうじゃないか」と奮起することもあるんですよね。

だから、前ほどの頻度かどうかはわかりませんが、今後もコミュニティとは積極的に接触していきたいです。

── 最近のeスポーツ界や格闘ゲームシーンについては、どうお考えですか。

原田氏
今のeスポーツは、業界がシステマチックに生み出したものではありません。僕らが作ってきたタイトルにファンがつき、自発的に行ってきた小さな大会が世界中で大きくなり、うねりのようになって現在の形になったという背景があります。

20年前には考えられない規模にまで拡大し、チャンスもたくさんあります。「ここまで来たか」という気持ちですね。

── 今後のeスポーツにおける課題は何でしょうか。

原田氏
面白いことに、それはコミュニティ側というよりメーカー側の課題なんです。

単に金銭面で支援するだけでなく、 コミュニティをどうサポートし、どんなアプローチができるかを模索しなければなりません。

原田勝弘氏インタビュー

どんなゲームを作るにしても、コミュニティの人たちとは、できるだけ協力関係を構築していかないといけません

スキルよりも「情熱と好奇心」! 原田氏からの熱いスカウト

── どのような開発スタッフを集めたいと考えていますか。

原田氏
詳細はまだ言えませんが、僕がフリーになった時に、先輩後輩かかわらず「次どうするの? 一緒にやる?」とたくさん声をかけてもらいました。そういう仲間を集められたらと思っています。

── こういう人が集まってくれると嬉しい、という人物像はありますか。

原田氏
それで言うと、今日、お越しいただいたメディアの方々は、実は開発にすごく向いていると思っています

僕は今まで、ゲームセンターのハイスコアラー(※8)などを一本釣りでスカウトしてきましたが、彼らに共通するのはゲームへの「情熱と好奇心」です。スキルも必要ですが、僕の中では2.5番目くらいですね。

※8 ゲームセンターのアーケードゲームなどで、全国トップクラスの高得点(ハイスコア)を叩き出すプレイヤーのこと。

── スキルよりも情熱や好奇心が重要ということですか。

原田氏
はい。若い人たちとも当然一緒に開発したいのですが、同じくらい重要なのは、40〜50代のベテランだと思っています。世間では下り坂と言われる世代でも、素晴らしいものを持っている人は多いんです。

若い頃は開発者同士でよく衝突しますが、年齢を重ねると人間が丸くなり、実りのある会議ができるようになるんですよね。時間の価値も理解している人たちですから。

ゲーム開発は極端な話、知的な創造性さえあれば「こうやるとユーザーに響くはずだ」という仮説で勝負できます

開発歴が長くなるとゲームを遊ばなくなる人も多い中で、ずっとゲームに触れ続けているメディアの方は絶対に向いていますよ。あ、別に今日はスカウトしに来たわけじゃないですよ(笑)。

原田勝弘氏インタビュー

でも、年齢を重ねても、ずっとゲームが好きな人は、やっぱり絶対いいです。そういうゲーム好きな人に集まって欲しいですね。

情熱を失っていない業界歴の長い方は、X(旧Twitter)からでも「一緒にやりませんか」と声をかけてくれると嬉しいです。

まとめ

原田勝弘氏インタビュー

原田氏の「規模にとらわれない作り手の本気」で勝負する姿勢が、VSスタジオの作品にどのように反映されるのか、今後の活躍に注目したい。

▲新スタジオ「VS Studio SNK」設立|原田勝弘氏からのメッセージ

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GameWith編集者情報

澤田アツシのプロフィール
澤田アツシ
フリーランス物書き。ドーナツ食べながら子どもとゲームするのが至高。好きなジャンルはインディーズとFPS/TPS。ゲームの腕前は皆無のポテトゲーマー。ジャンルやタイトルにとらわれずゲーム業界全体に興味があります。ゲーム以外にはアウトドア系やローカルニュースなどを執筆中。普段は塾講師、ときどきラジオパーソナリティ。
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