アニメ『甲鉄城のカバネリ』がゲーム化!原作スタッフが集結した『甲鉄城のカバネリ -乱- 始まる軌跡-』
TVシリーズと劇場中編アニメーション『甲鉄城のカバネリ 〜海門(うなと)決戦〜』をつなぐ正統続編がゲームに!
『甲鉄城のカバネリ』は、2016年4月から6月までフジテレビ“ノイタミナ”枠で放送されたWIT STUDIO制作のオリジナルアニメ作品。
我々の歴史とは異なる蒸気技術が発達した世界、極東の島国「日ノ本(ひのもと)」を舞台に、不死の怪物「カバネ」と戦う人々を描いた物語で、ゾンビ・時代劇・アクション・スチームパンクなどを取り入れた独特な世界観と、アニメーション作画の美しさが大きな話題を呼んだ。
すでに劇場中編アニメーション『甲鉄城のカバネリ 〜海門(うなと)決戦〜』制作も決定している『甲鉄城のカバネリ』だが、TVシリーズと『〜海門(うなと)決戦〜』をつなぐ新章『甲鉄城のカバネリ -乱- 始まる軌跡(みちあと)』が、今夏ゲームとなって、DMMGAMESからリリース予定となっている。
『甲鉄城のカバネリ -乱- 始まる軌跡』には、『甲鉄城のカバネリ』監督の荒木哲郎氏、設定統括の笠岡淳平氏、アニメーションキャラクターデザイン/総作画監督の江原康之氏ら、アニメ主要スタッフが参加。アニメの正統続編となる注目のゲーム企画だ。
今回GameWithではゲームの制作打ち合わせ現場に潜入取材し、主要スタッフへのインタビューを行うことができたので、その模様をお伝えしよう。
公式サイトはこちら『甲鉄城のカバネリ -乱- 始まる軌跡』制作打ち合わせに潜入取材!
某月某日、アニメーションスタジオ「WIT STUDIO」内で行われた『甲鉄城のカバネリ -乱- 始まる軌跡』制作打ち合わせ。
会議室には原作監修を務める荒木監督をはじめ、原画マン、シナリオライターらアニメ制作スタッフが集まった。
会議はゲームの脚本/クリエイティブディレクターを担当する笠岡氏の進行で、各キャラクターの上がり確認や、各シーンのスチル発注などが行われていく。
アニメからゲームに変わるとはいえ、『甲鉄城のカバネリ』の正統続編に位置付けられる『甲鉄城のカバネリ -乱- 始まる軌跡』。
会議は和やかな雰囲気ながらも、皆真剣に資料に目をやり、一つ一つのクオリティを入念に確認していく。「カバネリ新章」を生みだそうとするアニメスタッフたちの、原作への思いと「新たなカバネリ」への意気込みがひしひしと伝わってくる会議となっていた。
『甲鉄城のカバネリ』主要クリエイターインタビュー
100年後の人が見ても古臭くない、王道のアニメを
−−まず原作の『甲鉄城のカバネリ』がどんなコンセプトで作られたのかお聞かせください。
荒木:初めに「WIT STUDIOのアクションアニメーターを生かすオリジナルアニメーション」というオーダーがあって、自分としては「ゾンビもの」に馴染みがあったので、「アクション」を「ゾンビもの」でやろうという話になりました。
そこから今回は活躍するのが主にヒロインであるという「アクションヒロイン」に路線を定め、ドラマの主人公として彼女が尻に敷く男の相棒を作るというところを決めました。
−−時代設定などは?
荒木:時代設定は、同時期にみんながやっていない作品を狙うという点で時代劇を選びました。
また江戸時代が舞台ですが、移動要塞はあった方がいい。その時代なら、ギリギリ蒸気機関が出せるんじゃないか…。という感じで、「時代劇」で「ゾンビもの」、「蒸気機関車に乗って逃亡する」というコンセプトが生まれました。
さらに主人公とヒロインが人間とゾンビのハーフというところまで決まって、『甲鉄城のカバネリ』というタイトルが決まりました。
−−カバネリは様々な要素が組み合わされ非常に独特な世界観が作られていますよね。
荒木:自分ではすごくシンプルだと思っています。「江戸時代にゾンビから移動要塞で逃亡する」という要素がメインで、あとはそこから付随していったものですから。
蒸気機関車が出てくるなら、それを基盤にした江戸時代の生活があるんだろうし、カバネ(ゾンビ)を倒す武器も蒸気機関を使用するのだろうし。
ですから要素を詰め込むということではなく、最初のベースを作って、それをしっかり構築していったという感じです。
--『甲鉄城のカバネリ』で、もっとも描きたかったポイントは?
荒木:どの作品でもそうなんですけど、「みんなに見下されている青年が、みんなを見返す」ということをやりたいんです。
何かしら鬱屈を抱えている男子が何かしらの力を見つけて、みんなを見返す。その瞬間を描きたいんです。
『甲鉄城のカバネリ』では主人公である「生駒(いこま)」に降りかかる受難とその解決、解放についての話がメインテーマです。
最初はヒロインの「無名(むめい)」が生駒の「マスター」として彼を導いていきますが、最後は主人公がヒロインを救う展開になる。非常にオーソドックスな、王道な物語です。
ですから「キャラクター」がメインなんです。世界観はそれに付随しているという感じで。やりたいことは常にオーソドックスで王道な、主人公の成長物語なんです。
それと、「100年後の人が見ても古く感じない、普遍的なもの」「時代に耐えるもの」というコンセプトも、制作していくうちに生まれました。
そのために、絵柄はむしろ流行に合わせないで、だけど最先端なものに見せるということも意識していました。
原作アニメとゲームの関連性
--ゲームはTVシリーズ最終話以降の話が展開するとのことですが、ゲームの舞台設定をお教えください。
笠岡:もともと「日ノ本」は一枚岩だったわけではなく、西日本を納める「天鳥(あまとり)幕府」とそれ以外の諸国とで分裂していたんです。アニメの舞台となったのが天鳥幕府の治める「西ノ国(にしのくに)」ですね。
そして最大勢力である天鳥幕府が崩壊して、いよいよ日ノ本は群雄割拠となります。今回の「新章」では、中部地方から北陸にかけての「中ノ国(なかのくに)」が舞台となります。
--ゲームの主人公はオリジナルキャラに?
笠岡:ゲームでは「要(カナメ)」「葉矢(ハヤ)」「千尋(チヒロ)」という3人が新たな主人公として登場します。
彼らの住んでいた駅がカバネに襲われたところを生駒と無名に救われ、一緒に甲鉄城に乗って旅するこにとなります。
--3人の主人公についてそれぞれお教えください。
笠岡:アニメの主人公・生駒が「まっすぐで雑草魂を失くさない」のに対し、要は自分というものが確りとしていない、まだ世の中について何も知らない人間です。
要、葉矢、千尋は幼い頃に親を亡くし、孤児として助け合って生き抜いてきたんです。自分たちが生き抜くことが第一で、悲惨な境遇で育った要は、ある種「間違った価値観」を持っています。
要は葉矢、千尋という「家族」のためならば、どんな行為にも良心の呵責を抱きません。「家族」のために生きることが至上命題で、そういう意味では「まっすぐ」ですね。
葉矢も要と同じく「家族」が第一です。ただ要と違うのは、他人への思いやりも持ち合わせているところです。
葉矢は「家族」で生きていくためにも、仲間を増やしたいと考えています。だからこそ、自分のできる範囲で他人への優しさを見せることがあります。
千尋は3人のリーダー格です。自分たちだけで生きていくために強くならなければならないと考え、そのためなら手を汚すことも厭わない。
要と葉矢にとっては頼りになる存在ですが、そのほかの人間に対してはシニカルな判断を下すこともあります。
シンメトリーにしない美樹本晴彦先生のデザイン
--3人の主人公は、アニメと同じく美樹本晴彦先生原案ですよね。美樹本先生の原案をアニメ、ゲームに落とし込む上で注意した点は。
江原:初めにアニメ作画した際に「美樹本先生らしさ」というものを表現するのに苦労しました。それでも本編をワンクール終えた段階で、自分の中である程度感覚を掴んだので、今回のゲームへの落とし込みに関しては割とすんなりできた印象です。
--美樹本先生原案以外のキャラクターデザインで気をつけた点は?
江原:「美樹本先生らしさ」というのは「キャラクターをシンメトリーにしない」点だというのが、自分の解釈でありまして。
ワンポイントでなんか違うんですよね、右と左で。その辺をポイントとして入れるということを試みてみました。
あとは「美樹本先生らしさ」を加えながら、ゲームキャラクターにどんな差をつけようかとか、和装なので突拍子もない格好にしないようになど、毎度毎度考えながらやっています。
--その他、江原さんがデザインを担当されたキーキャラクターはいますか?
江原:「香姫(こうひめ)」という3人に同行するキャラクターと、ゲーム全体のナビゲートキャラでもある「八鳥(やとり)」を、僕が原案からデザインしました。
これも「美樹本先生らしさ」を考えながらデザインするんですが、「美樹本先生らしいキャラクター」を考える方が大変だった気がしますね。
特に八鳥に関しては、アシンメトリーをテーマとして、本当に、右と左でガラッと衣装のデザインを変えています。自分でやっておきながら「アニメ本編だと動かせないかも」とか思いながらも(笑)、結構面白いデザインになったんじゃないなと思っています。
※編集部注:新キャラクター情報は今後、「甲鉄城のカバネリ-乱-公式ツイッター」(@game_kabaneri)で公開されます。
『甲鉄城のカバネリ』の続編として広げるものと守るもの
--「カバネリの新章」となる『甲鉄城のカバネリ -乱- 始まる軌跡』を作る上でこだわった点は?
笠岡:新章・続編を作るということは、「世界を広げる」ことが大命題だと思っています。しかしその一方で「カバネリ」であることも守らなければなりません。
この2つをいかに両立させるか、「広げつつ守る」ということをどうやるのか、常に荒木さんと相談しながらバランス取りに腐心しました。
また今回は「ゲーム」という枠組みが決まっていて、ゲーム側で「こういうことをやりたい」と提示された要素があります。それが実現できる世界観を組み上げなければならず、そこも時間をかけました。豊富な舞台バリエーションやキャラクター数も重要です。
単純にアニメのゲーム化ではなく、続編でありなおかつゲームであるというところは、普通のアニメの世界観を作ることとは全く違う発想が必要でした。
ただ、世界観に入れ込む「ドラマ」は、ストレートで王道なものであり、アニメに近い作り方をしています。ですからゲームをプレイした方が、日頃体験しているゲームストーリーより、「普通のアニメみたいだぞ、このドラマ」と感じてもらえると嬉しいです。
ゲームならではの演出を
--今回ゲームオープニングが非常に素晴らしいクオリティとなっています。
江原:基本的には「カバネリらしさ」を入れつつ、「ゲームならではの演出はできないか」ということもテーマとして考えました。
通常のTVシリーズではやらないような演出や、笠岡さんから伺った本編中のドラマの展開なども入れ込めたらなと。そうやって色々やった結果、かなりカットが早いオープニングになりました(笑)。
笠岡:先のことを相談しながらっていう話だと、「なるほど江原さんはこういうことやりたいんですね。だからむしろドラマをこうしましょう」みたいなこともありましたね。
江原:そうですね(笑)。映像先行で結構相談させてもらいました。そういう意味で、面白く作業しております(笑)。
笠岡:ゲームならではという点では、FPS視点みたいな要素もありますし、コンテを描くときにいろんなゲームのムービーやプレイ動画を参考にしたり。
荒木:テレビアニメだと大変すぎて普通やろうとしないよね。
江原:やろうとしないんですけど(笑)、でもいいものができたと思います。
アニメではなく、ゲームだからこそできる新しい表現
--「カバネリ」に限らず、アニメ原作をゲーム展開することが昨今多く見られます。アニメのゲーム展開について、アニメクリエイターとしてどう思われますか。
荒木:僕らもそんなにたくさん作れるわけではないため、アニメだけでやろうとすると限界があります。
アニメ作品を別メディアで展開してもらえるのはありがたいし、大変助かるなと(笑)。素晴らしいことだと思います。
江原:アニメは尺が決まっているので、描けるキャラクター像も限られるんです。
今回はゲームということもあり「ちょっとした味付け」みたいな、口癖や言動といったキャラのイメージ作りが色々できました。ゲームにすることでアニメではできない様々なキャラクター像を描くことができるので、すごく面白いと思います。
笠岡:昨今のアニメって割と短いんですよね。1クール13話、長くても26話。描ける物語のボリュームが小さくなってしまっている気がするんです。
昔のような「1年もの」など、規模の大きな物語がアニメでは難しくなっています。今はゲームの方が、ボリュームのある物語が展開しやすいのではないかと思います。
アニメにはアニメに相応しい、ゲームにはゲームに相応しい「物語の形」があると思うので、アニメをゲーム展開すれば、ゲームにしかできないことを利用して表現の幅を広げることができる。そういう意味でゲーム展開はすごく素晴らしいことだと思います。
--本日はお忙しい中本当にありがとうございました。『甲鉄城のカバネリ』の新章を楽しみにしております。
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