読者の皆さんは普段、どんな気持ちでコンセントにプラグを差し込んでいるだろうか?
筆者はいつも心の中で、こう叫んでいる。
「プラグイン!! ロックマン.EXE トランスミッション!」
この話に共感できる人は、2022年6月28日(火)に発表された『Nintendo Direct mini ソフトメーカーラインナップ 2022.6.28』を見て、狂喜乱舞したのではないだろうか。
ゲームのロゴマークとともにスライドして現れた「いまでもボクらは、つながっている」というフレーズは、かつての少年たちの思い出を掻き立て、SNSを中心に歓喜の叫びがこだました。
では、なぜ『ロックマンエグゼ』はそれほどまでに絶大な支持を得ているのか。
本記事では、シリーズ全作を完全クリアし、バリアブルソードのソニックブームコマンドをたまにしかミスらないほどやり込んでいる筆者が、本作の魅力を存分に解説していく。
目次
『ロックマンエグゼ』とはどんな作品か
インターネットが発達した「近未来」が舞台
2001年3月21日(水)に第1作『バトルネットワーク ロックマンエグゼ』が、ゲームボーイアドバンスのタイトルとして発売。以降は「6」までのナンバリングタイトルとして登場し、「3」以降は2バージョンで発売、外伝作品を除き10タイトルが世に送り出された。
本作は、ネットワーク技術が発達した近未来の社会が舞台。あらゆる電子機器がインターネットに接続、また管理されているという世界だ。
その世界で巻き起こる事件に、小学生である「光熱斗(以下、熱斗)」と、後述する"ネットナビ"の「ロックマン.EXE(以下、ロックマン)」のW主人公が立ち向かうというストーリーとなっている。
アクションとカードバトルの融合
本作が支持されている要素として、独特なバトルシステムが挙げられる。
バトルは3×6マスの、自分・敵の半分ずつ分けた状エリア上で行われるリアルタイムアクション。
「ロックマン」シリーズではおなじみの「ロックバスター」に加え、さまざまな武器をロックマンに付与する「バトルチップ」が存在する。
「バトルチップ」は、カードゲームにおける「武器カード」のような役割を持ち、デッキを組む要領でバトル前に「フォルダ」を作成することで、バトル中に使用することができる。
このチップの組み合わせがキモで、複数のチップによるコンボを組み立てるのがとにかく楽しい。チップのコンボとアクションが融合した独特のバトルシステムが、ファンの心を掴んで離さないのである。
「現代」と「エグゼ」はどこまで近づいたのか
インターネット上で電子機器を管理したり、AIに作業を指示したり…デジタル技術が生活に浸透した現代において、これらは当たり前の景色となりつつある。
だが、そんな光景を20年以上も前に、且つリアルに描いたゲーム作品こそが「ロックマンエグゼ」だ。
ここからは、エグゼの世界と現代の技術を比較しながら、どのくらい違いがあるのか紹介していこう。
①「ネットナビ」と人間が共存する世界
「ロックマンエグゼ」の世界は、前述した「ネットナビ」を中心に回っている。
「ネットナビ」は「PET」という、この世界では主流の携帯端末にインストールされている「擬似人格プログラム」を指す。
人間と同じように意思の疎通ができ、かつ自律行動を行うAI…いわば「自分で歩き回るSiri(※)」のようなもの。
※AppleのiOS、iPadOS、watchOS、macOS、tvOSにそれぞれ搭載されているバーチャルアシスタントである。ユーザーは各デバイスを物理的に操作するか、音声コマンド「Hey Siri(ヘイシリ)」でSiriを起動させることができる(Wikipediaより引用)。
Siriは、話しかけることでメールの送受信やスケジュールの設定など、身の回りの生活をサポートしてくれる。
対するネットナビは、それらのサポートに加えて電子機器に接続してバグを取り除いたり、インターネット上に蔓延するウイルスを排除したりなど、より幅広い役割を担っている。
そんなネットナビが、社会全体のあらゆる事象に介在する構造になっており、人間の生活になくてはならないものとなっている。
②暮らしの中に溶け込んだネットワーク技術
「インターネットに接続する物」と聞けば、多くの場合はパソコンやスマートフォンを連想するだろう。
しかし『ロックマンエグゼ』の世界では、家具や家電、公園の像に至るまで、ありとあらゆる物体がインターネットにつながっており、そこに存在する「電脳世界」上で機能の管理などが行われているのだ。
代表的なのは、主人公・熱斗の家にある「犬小屋」だろうか。
一見、ただの犬小屋のように見えるが、実は不審な人物が家屋に侵入しないための防犯システムとなっている。
また、中には「ツボ型の空気清浄機」なんていう驚きのオブジェクトもある。
こういったネットワーク技術の粋が町の風景に溶け込んで、それぞれの役割を果たしているのだが、現実でも思わぬものがインターネットに接続され、管理されていたりする。
③ゲームと現代の「ネットバトル」の違い
ネットナビの役割は、日々の生活のサポートからインターネット上のウイルスと戦うなど、実に様々だ。
そして『ロックマンエグゼ』の世界では、ネットナビをバトルチップや強化パーツでカスタマイズし、ナビ同士で戦わせる「ネットバトル」が全世界でブームの競技となっている。
一方で、現代ではインターネットを介したゲームのオンライン対戦や、『リーグ・オブ・レジェンド』や『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』など、今やれっきとした競技となっているゲーム競技「e-Sports」などが日常化。
e-Sportsは、基本的に一つのゲーム機にコントローラーを接続し、あらかじめ用意された画面上のキャラクターを操作することで対戦を行う。
一方、ネットバトルは各々でカスタマイズしたナビを「PET」に入れて持ち寄り、電脳世界にナビを送り込んで、その中で対戦を行う。
様式は違えど、どちらも電脳空間を共有して競技を行う。ネットバトルは、現代における「仮想空間の中で戦う行為」の先駆けにもなっているのだ。
④技術の発展による「事件」の数々
しかし、便利な技術が用いられている一方で、インターネットを利用した「犯罪行為」も頻発している。
例えばインターネット経由で、家庭にある電子レンジを意図的に発火して火事を起こしたり、街中の水道をストップさせたり、さらには国の頭脳と呼ばれる大型コンピューターをハッキングしたりと、その種類はさまざま。
それらの事件を引き起こす「WWW」や「ゴスペル」などといった、作中に登場する「ネット犯罪組織」の標的になったりもしている。
⑤先進技術と開発時期のユニークなギャップも
このように、我々が生きる現実の世界が「ロックマンエグゼ」の世界に近づきつつあるのがわかるが、それでも現代よりも進んだ技術が作中に多く盛り込まれている。
人間の「脳波」をインターネット世界に直接接続するシステム「パルス・トランスミッションシステム」や、地震や天候を制御する「環境維持システム」、PETにいるネットナビを現実世界に具現化させる「コピーロイドシステム」など、実現までまだまだ遠い未来になりそうな技術が、作中では描かれている。
そのくせ、情報保存デバイスは「フロッピーディスク」を使っているなど、開発時期が透けて見えるのも、ギャップがあって面白いところだ。
これだけ優れた技術の数々がフロッピーディスクの容量に収まるのは、ある意味スゴいことだったのかもしれない。
20年の時を経てやってきたのは、全シリーズ搭載の「コレクション」だった
斬新なバトルシステムや近未来を描いた世界観が、当時のプレイヤーの心を掴んで離さず、やがて思い出として刻まれた「ロックマンエグゼ」。
そんな思い出のゲームが、シリーズすべてを収録した「コレクション」として現代によみがえるのは、まさにシリーズを愛した我々にとっての吉報であり、最善の選択であっただろう。
そして、今なお画期的とされるバトルシステムは、これから始めたいと興味を抱いたプレイヤーを決して置き去りにはせず、近未来とされた世界観は、むしろ初めて本作に触れる方が「共感」を得られるかも知れない。
2023年発売という「近未来」を心待ちにしながら、筆者はいそいそとバリアブルソードのコマンド入力練習に励むのであった。
「いまでもボクらは、つながっている」!!
GameWith編集者情報
「物心がつく前からコントローラーを握っていた」自称生粋のゲーマー。初めて遊んだゲームは『ドラゴンクエストⅥ』で、その後、RPGやアクションゲームを中心にいろんなゲームをプレイしてきました。そして現在は『スマブラ』を極めることに夢中な、戦闘狂兼ゲームライターに。 |