
生まれ変わった『ビギンズ』の開発陣の思想に迫る
ネオスからSwitch,Switch2,PC対応ゲームソフトとして発売される『カルドセプト ビギンズ』は、ボードゲームとカードゲームを組み合わせたシリーズの10年振りの最新作。
ダイスを振ってすごろくのようにマップを周回し、土地(マス目)をクリーチャーカードで確保。多彩なスペルカードやアイテムカードで戦況を動かし、総魔力を高めて勝利を目指す。

その独自性から長く支持されてきたシリーズで、本作では1作目の前日譚を描く新たな物語とともに、アートやUI、さらにゲームのテンポも変更されている。
今回は、まさに生まれ変わった『カルドセプト ビギンズ』の開発陣にインタビュー。これまでとの違いや変更点について、意図や思想を伺った。

(左)春木場將道氏:リードディレクター(ネオス株式会社)
(中・下)神宮孝行氏:ゲームデザイン
(中・上)ガンツ先生:王立学府セプトアカデミア
(右)長嶋朗氏:プロデューサー/クリエイティブディレクター(ネオス株式会社)
目次
※Steam版は2026年発売予定
「まず素案をドーンと出す」神宮氏の知見が開発全体を支えた
――まず最初に『カルドセプト ビギンズ』の開発で担当された役割から教えてください。
長嶋氏:プロデューサーと、クリエイティブディレクターを担当しました。そもそも今回の「言い出しっぺ」でもあります。企画を立ち上げて、最終的に神宮さんたちと一緒に作るところまで、全体的な統括をやらせていただきました。
春木場氏:ポジションとしてはリードディレクターで、開発全般を見ていました。ゲームの中身はもちろん、神宮さんと一緒にレベルデザインやゲームデザインも含めて、全体を進行していく役割でした。
神宮氏:ゲームデザインという形で参加させていただきました。具体的にはカードラインナップの決定ですとか、マップの素案ですね。あとはバランス調整だったり、レベルデザインだったりっていうのを、ネオスさんやグランディング(開発会社)さんとお話しして作り上げていった感じです。

――カードとマップ、まさにゲームの根幹部分ですね。
神宮氏:もちろん私の考えだけが正解というわけではありませんが、皆さんで試行錯誤する時間がもったいないところもあるので、まずは素案をドーンと出して、そこから議論を深めていこうという形でスタートしました。 私も長い間やっている中で結構悩んだりしたこともありましたので、それをいちから新しい方にやってもらうよりは、こういったやり方がいいだろうと。
――その神宮さんの知見が、開発側としてどう助けになったのかも気になります。
春木場氏:やっぱり歴代シリーズを作ってきた方なので、最初の段階で経験則の部分を提示していただけたのは、同じことを繰り返さずに済んだという意味で大きかったと思います。カードやマップの調整にも、かなりの頻度で最後まで寄り添っていただいたので、本当に助かりました。
――そこは遊ぶ側としても、これまでのノウハウが入っているんだな、という安心感につながりますね。

「往年のプレイヤーをがっかりさせない」開発の軸は最初から明確だった
――『カルドセプト』を作るうえで、これを軸として外してはいけない、という部分があったと思います。
長嶋氏:『カルドセプト』にチャレンジしようと社内で持ち上がった時から、狙いは明確に持っていました。もちろん名作ということもわかっていますし、自分もそれに魅せられた人間ではあるんですけど、やはり非常にマニアックなゲームになりつつあるなとは思っていたんです。
要するに、市場としては深いけど狭いね、と感じていて、これをどこまで広くできるのかというところがすごく難しい課題でした。また、今は日本の市場だけではビジネスが小さいので、いかにワールドワイドで展開するかが大切です。
これに加えて、日本で生まれた名作を世界に発信したい、という使命を持って始めたというところです。

まとめると4つあります。ひとつ目は、往年のプレイヤーをがっかりさせないこと。これはプレイフィールを変えないということです。
ふたつ目は、新規のプレイヤーに古さを感じさせないデザインにすること。3つ目は、海外プレイヤーにも認められること。日本が生んだ文化だよ、アートだよ、ということも含めて発信したい。
4つ目は、もちろん今はゲーム環境ですとかプレイスタイルが変わっていますので、今の世の中に合わせていくことです。
――先日試遊もさせていただいて、もう間違いなく遊びやすいですし、僕自身も10年ぶりぐらいだったんですけれども、すぐゲームになじんで遊ぶことができました。やるべきことがすぐ奥底から引き出されてきて、パパパッと手が動いたような感じがします。

※Steam版は2026年発売予定
試行錯誤をしたうえでのアート刷新
――アートについて伺います。一報の段階ではファンの間でもいろいろな感想があったと思いますが、実際にカードの絵柄やストーリーモードの絵を見て、遊んでいるうちに「これはもう『カルドセプト』だな」とスッと入ってくる感覚がありました。そこはプレイフィールにも支えられていたと思いますが、アート刷新はどういう思いから始まったのでしょうか。
長嶋氏:ありがとうございます。このアートにしようという思いは企画当初からありまして、その時から松浦聖さん(本作のアートデザイナー)に決めていたといってもいいくらいです。

――葛藤はありませんでしたか?
長嶋氏:考え込むところはありましたね。ただ、気持ちは決まっていましたし、私たちの目指すところをユーザーの皆さんにもしっかり伝えていかなきゃいけないと思いました。
カードにしても、UIにしても、情報量が多いとどうしても難しそうに見えますよね。ですから、とにかくシンプルにしたかったんです。最近のUIデザインの方向性とか、高解像度化しているハードウェアの特性も含めて、デザインってどんどんシンプルになっていますから。

――カードデザインでいえば、これまでは属性を色味で見分けていて、本作はパッと見だとちょっと色使いが控えめで視認しにくいのかなという印象もあったんですが、見るべきところを見ればすぐ判別できることに気づいて、そこはすぐ解消されました。
長嶋氏:ちなみに色のバランスや大きさは、100パターン以上のデザインサンプルを並べて検討していきました。じつは、ついこの間までバランスを調整していたくらい延々と……。
春木場氏:色味だけでも何段階も作っていましたね。
長嶋氏:当初はアイテムとスペルカードは黒い石のデザインだったんですよ。クリーチャーカードとほかのカードの見分けをつけようと試みました。ただ、UIの設計上で支障が出てきて、最終的には下地は統一しようということになりました。
いろいろなご意見があることは認識していますが、きちんと試行錯誤はしています、ということはご理解いただけるとうれしいですね。

神宮氏:本作のカードデザインは、情報の見やすさとか統一感とか、むしろボードゲームに寄った印象があって、こういう方法があるんだと感じました。 あと、松浦さんがクリーチャー200体以上を全部描くって聞いた時、物量的に大丈夫なのかと思ったんですけど、まったく遅滞なく終わって、本当にすごいなと。
春木場氏:毎週、何体か上がってくるみたいなスピード感でしたね。
神宮氏:全身、全体が映っている絵が多くて、図鑑的な感じがあるのも個人的にうれしかったですね。絵が上がってくるたびに「おおっ」と感心しながら見ていました。 昔の絵とはまた違うんだけど、ちゃんと原典に合っている、伝承の形に合っているので、安心してお任せできました。
長嶋氏:もちろんリテイクはありましたけど、それでもスムーズでした。過去の資料もお渡ししたうえで「意識しないでやりましょう」ということもお伝えしました。何を残して、何を変えるのか、松浦さんのさじ加減はすごく良かったですね。

※Steam版は2026年発売予定
ベースは初代〜『セカンド』期。「大事にした感触」とは
――過去のインタビューでも、『ビギンズ』では初代から『セカンド』ぐらいの感触を土台にした、というお話がありました。この「大事にした感触」は、具体的にはどういう部分だったのでしょうか。
春木場氏:3DS版から『リボルト』のあたりで、システム的にもいろいろ変わった部分が多かったですよね。それもひとつの形だとは思いますが、これから新しく入ってもらう人も考えたうえでベースにするのであれば、初代から『セカンド』、3DSぐらいのバランスから入ってもらうのが一番遊びやすいんじゃないかと考えて、そこから神宮さんへの相談も始めました。

神宮氏:自分の中では『リボルト』はひとつの完成形として満足していましたが、いま新しく、特に初心者に向けて1本出す時にどっちかと言われたら、やはり『セカンド』がよかったと思います。
『リボルト』は、できることがすごく多いんですね。慣れた人やゲーマーにとってはいいんですけど、考えなきゃいけないことが多い。
長嶋氏:野球で言うと、いつでもワンアウト一、二塁みたいに、つねにプレッシャーがかかる状態ですよね。
神宮氏:そうそう(笑)。『セカンド』だと、できることとできないことが明確で悩みが少ないんです。遊ぶ方としては「パス・パス・やる・パス」みたいにはっきり分かれている方が、スムーズなんじゃないかなと。

春木場氏:確かに『リボルト』ではつねにやれることがあったので、プレイしたあとに疲れましたよね。
神宮氏:それだけ集中しているのかもしれませんが、疲弊はしますからね。全国大会に出ているような方たちは完全にアスリートですよ。とくに『リボルト』はやることが多いですし、やらないと勝てないですし。
長嶋氏:それでも『カルドセプト』は、歴戦のプレイヤーたちに対して初心者が運だけで勝つ、みたいなところも魅力なので、そこは絶対に残したいと思っていました。
神宮氏:「運で勝てる」はずっとあるコンセプトで、このゲームの良さだと思います。サイコロとカードがある以上、運の要素は必ず存在して、それをどう制御していくかも面白さのひとつ。僕もそこが好きですね。

40枚と400枚は全部の課題を考えた結果、この形になった
――今回はカード総数が400枚になっています。どういった思想でカードを選んでいったのでしょうか。
春木場氏:ベースとして3DS版を意識しつつも、新しく始めていただく方も入りやすいように、増やしすぎることは避けました。そのうえでゲーム性が担保できるラインはどこだろう、というところから、おおよその総数を決めて落とし込んでいきました。
具体的なところは、神宮さんにも意見をいただいて、過去作からどういったカードをピックアップするのがバランスがいいのか、新規カードをどういう形で追加していくのがいいのか、ということを順番に詰めていって、最終的に今の枚数に落ち着きました。何が何でも400枚でスタートした、というわけではないです。

――ざっくりでかまいませんので、『ビギンズ』で初登場のカードはどのくらいありますか?
春木場氏:全体の1割ぐらいは新規カードになっています。詳しいことは改めてということで(笑)。
コンセプトとしては世界観から入ったカードが多いと思います。今作の世界観では、こういうキャラクターたちが出てくるから、その人たちはどんなカードを使うだろう、と。
もちろんほかのカードとの兼ね合いもあるので、新カードをどう特徴づけるかは全体のバランスを見つつ検討した、という流れでした。
――本作はブック(デッキ)のカード枚数が50枚から40枚になりました。これはかなり大きな変化だと思いますが、どういう経緯でこの仕様に至ったのでしょうか。
神宮氏:初心者でも触りやすくしようという空気感の中で出てきた話です。50枚をいちから構築するのは、すごく大変だと思うんです。グランディングさんからも「今の一般的なゲーム感覚で考えてもちょっと多い感じがする」という意見があり、では減らすことを考えようと。
30枚、25枚と極端な案も試しましたけど、同一カード4枚入れが上限のシステムを維持したうえで、いい塩梅はどこか探っていき、40枚がいいと判断しました。
40枚にした結果、1枚のカードを引ける確率が上がったので、昔からのプレイヤーも「やりたいことが以前よりやりやすくなった」と感じるのではないかと思います。プレイ感も少し変わっているはずです。

春木場氏:ブック枚数はかなり試しましたね。20枚、30枚、40枚と我々だけでなくグランディングさんのメンバーにも試してもらいながら、「これは少ないよね、多いよね」という話をして、40枚に決まってからも4枚入れなのか3枚入れがいいのか議論しました。とにかく長い時間をかけて決めましたね。
神宮氏:40枚になると、やりたいことができるので、ブックのバリエーションが増えると思っています。どのマップでどのブックを使うか、という戦略も含めて、個人的には良くなった部分かなと。これ以上少ないと、必ず引けるぶん強いけど深さがないんですよ。狙う勝ちパターンが決まってしまう。
『ビギンズ』の40枚は、全部のカードが使える期待値が上がるし、でもダイナミズムはちゃんと残っている。そのバランスがいいと思います。
――お守り代わりの1枚入れカードが輝くかもしれませんね。
神宮氏:いろいろなカードの出番が増えるかもしれません。
長嶋氏:最初に400枚、40枚と決めていたわけではなくて、バランスよくいろいろな課題を詰めていった結果、400枚と40枚になったという感じです。
神宮氏:その通りですね。じつは40枚という発想自体は突然出てきたわけではなくて、『ビギンズ』以前から、次にやるならどうするかという話の中で、ブックに入れるカード枚数の多さは初心者が手を出しにくい要素なんじゃないか、もう減らした方がいいんじゃないか、という話はしていました。この機会にちょうどよく実現できたという感じです。

※Steam版は2026年発売予定
クライマックスに早く突入させるため
――『ビギンズ』で大きなキーワードになっているのが「時短」ですよね。
長嶋氏:かなり大きな課題でした。YouTubeも15分以上の動画は見ないとか、1.5倍で見ているとか、そういうタイパ優先の時代で、ほとんどのゲームが1サイクルの時間をすごく気にしているはずです。本作も1試合が長すぎると受け入れてもらえないのでは、と当初から思っていました。
ただ、単に短くするだけでは意味がなくて、「早くクライマックスを迎えるようにしたい」という狙いもありました。野球で言うと、序盤の1、2、3回を早く終えて、駆け引きが加熱する7、8、9回をすぐに迎えるというイメージです(笑)。
40枚にしたのもそうですし、魔力を得やすくしたのもそうですね。

春木場氏:魔力をこれまでより潤沢に回るようにして、序盤からクリーチャー召喚がしやすいなど、展開が全体的に早くなっています。
1試合のプレイ時間としては、過去作との比較で4分の3ぐらいになるよう意識しました。ラウンド数についても、マップや人数で変わるので一概には言えませんが、20~25ラウンドぐらいで終わることも多いです。
神宮氏:1試合が短いことは体感できるんじゃないかと思いますね。
長嶋氏:もう1回やりたいな、と思える感じです。
神宮氏:なりますなります(笑)。『ビギンズ』はすごくスムーズです。このまえオンラインで対戦して、一人ゴリガンのキャラを入れた3人対戦をしたんですけど、18分ぐらいで終わりましたね。勝ったのはゴリガンだったんですけど……。
長嶋氏:ゴリガン強いですから。
春木場氏:ゴリガン、なにげに強いですよね(笑)。

時短は細部の調整の積み重ねでできている
――時短の話でいうと、収入が大きく影響しますよね。特にボーナス周りはどう設計したのでしょうか。
春木場氏:時短もありますが、ゲームバランスに影響する大事なところですので、慎重に調整しました。
まず、「周回ボーナスを多めにしたい」という案がグランディングさんからも出ていて、何もできないシーンを減らし、やりたい行動をなるべくできるようにしようという狙いで、調整に着手しました。単に周回ボーナスの基礎値を上げるのではなく、土地数に応じて得られる領地ボーナスの方を重視して、試しながら今の数値に落ち着きました。
最初の周回はできるだけ土地を取る。そうすると魔力が一気に増えて、次の周回はその土地のレベルを上げて、また連鎖を……という流れが見えやすくなっています。

神宮氏:土地を取る、連鎖を作る、ということがすごく重要なゲーム性ですが、本作はより強くなったんですね。ゲームの方向性、勝ち筋の方向性みたいなのが結果的にすごくわかりやすくなったと思います。
まずは時短のためにボーナスを増やしたわけですけど、試合の方針とか指針がすごくわかりやすくなった感じがあって、二重に良かったです。

――土地をひとつ確保することの価値が上がっていると。
神宮氏:そうです。土地のレベルアップコストも時短につながるんですけど、コストを下げる、地変のコストを見直す、連鎖の上昇率も変える、ということを行いました。
ひとつの土地だけ押さえてレベル5にして勝つ、みたいな形はできるだけ抑制したかったんです。僕としては、やはり連鎖を作ったうえでレベルを上げて勝ってほしい。その方向に持っていくために、いろいろと変えました。
土地連鎖時の価値の上がり方も緩やかだったところを、本作はもっと素直に上がっていく形にしました。ノンクリーチャーブックは若干使いづらくなったかもしれないですけど、それはそれで別の方法はあると感じています。
時短の狙いも含め、ゲームがダイナミックになるように試したら、それがちゃんと面白くなりましたね。

※Steam版は2026年発売予定
UIと操作性は大きく変更「普通に遊べる」が大事
――10年ぶりということで、現代的な遊びやすさの追求も必要だったかと思いますが、どういった調整を加えたのでしょうか。
長嶋氏:当初からUIも変えたいと考えていました。我々がUIの仕事をずっとやってきたこともありますし、3DS版から年月が経って高解像度化していることもあったので、ベストを追い求めて、丁寧に仕上げたいなと。

春木場氏:時短のこともそうですけれども、新規の方も含めて、すぐプレイになじんでもらいたいので、操作性の向上も強く意識しました。
また、試合中のフェイズの切り方であったり、用語ひとつを取っても、どうすれば伝わりやすいのかを考えました。
あとはパッと見のわかりやすさですね。遊びやすさ、伝わりやすさの調整は広範囲にわたりますが、ベースの『カルドセプト』らしさは維持する、というバランスは強く意識しています。

――「普通に遊べる」が褒め言葉なのかわからないですけど、実際に遊んでみるとすぐに見た目も操作も違和感がなくなって、普通に遊べました。「ここではこれができるんだよ」というのがわかりやすかったです。
春木場氏:それが一番の褒め言葉です。自然に遊べることが理想ですから。
長嶋氏:ゲームの味は大事にしながら、器やデザインを変えたのが本作です。その時に味を守ったのは誰かというと、やはり神宮さんでした。神宮さんが関わってくださったからこそ、我々は安心して器を大きく変えることができました。

© Omiya Soft. ©Neos Corporation
カルドセプト、Culdceptは有限会社大宮ソフトの登録商標です。
発売日など基本情報
| 発売日 |
Switch: 2026年7月16日 Switch2: 2026年7月16日 PC: 2026年 |
|---|---|
| 会社 |
neos |
| ジャンル | その他カードゲーム |
| 対応ハード | Switch / Switch2 / PC |
| タグ | |
| 価格 |
Switch : 通常版5,800円(税抜)/特装版11,800円(税抜)
Switch2 : 通常版6,800円(税抜)/特装版12,800円(税抜)
PC : 未定
|
| 最大プレイ人数 |
4人
|
| 公式HP | |
| 公式X |




