
大阪オフィスを新設し、完全オリジナルの次世代AAAアクションゲームの開発体制を本格始動しているLightSpeed Japan Studio。
▶LightSpeed Japan Studio公式サイト同社の代表であり、「デビルメイクライ」シリーズなど多数のタイトルを手がけてきたゲームディレクターでもある伊津野英昭氏へのインタビューの後編をお届け。
未来への展望やゲーム開発に対する想いを語っていただいたので、ぜひ前編と合わせて読んでいただきたい。

未来への展望と、ゲーム開発に対する想い

ゲーム業界の現状と、理想の立ち位置
GameWith:
LightSpeed Japan Studioは、ゲーム業界においてどんな立ち位置でありたいですか?
伊津野氏:
LightSpeed Studiosは会社とかスタジオの規模はめちゃくちゃ大きいですが、コンシューマーゲーム開発の実績もノウハウも少ないです。なので、新しいタイトルをどんどんこのLightSpeed Japan Studioから発信していきたいと思ってます。
「リビングルームに幸せなゲーム空間を」みたいなのを掲げてて、「僕らが小学校のときに、テレビを取り合ってゲームをやっていたような、幸せな空間にしたいよね」みたいなのはチーム内で言っているので、そういうゲームをたくさん作っていけるようになりたいなと思っています。
元気なうちに!
GameWith:
現在は、リビングルームよりも自室でプレイする環境が主流になってきているように思いますが、その点についてはいかがでしょうか?
伊津野氏:
もちろん、生活スタイルが変わって、今の環境がテレビ1台しかないリビングルームだとは思っていないです。
それこそ『ドラゴンズドグマ2』を作ったときもそうなんですけど、その人の思い出になるようなゲームを作っていきたいと思っています。
「あのゲーム良かったよね」と印象に残るようなゲームを作るスタッフでいたいなと思います。
GameWith:
今のゲーム業界について、何か思っていることはありますか?
伊津野氏:
今回のスタジオに移籍したこともあるんですけど、やっぱり今の、特に現世代機対応のタイトルとかは初期投資がえげつないボリュームになってます。
そうなると、失敗できないですよね。
となってくると、安定して売れそうなナンバリングとか、ゲームそのものもシステムも絵面も冒険できないじゃないですか。
初期投資がでかすぎて、なかなか新規IPが出にくい状況ですよね。
売れるかどうか分からない新しいものがドーンと出てきて、売れて広がってどんどん大きくなるという機会が少ないのが残念だなと思っています。
どうやったらそれができるのかは分からないけど、今回みたいにチャンスがあれば積極的に参加したいなと思ってます。
10年前でもそんな状況だったのに、いまはさらに新規タイトルを作りにくい環境になってますね。
新規に対する優しさがあればいいのにな、とは思いますけどね。
ユーザーさんもそうですし、開発的にもそうですし。
PlayStationが1994年に発売されてから2000年ぐらいまでの間に、初めてゲームを作るような会社から、面白い・斬新なタイトルがいっぱい発売されていたと思います。
それが土台にあったからこそ、業界も大きくなったんですよね。
そんな、「カオスな時代」がまた来たらいいなと。
インディーゲーム業界について
GameWith:
個人的な見解ですが、冒険する舞台はインディーゲーム業界に寄っていっているのかな、と思っています。
伊津野氏:
そうですね。
とはいえですよ、「真の意味でのインディーゲーム」を指していることもあれば、「大手が小規模な予算で作る作品」のことを指している場合もありますよね。
本来の意味でのインディーが、もっと盛り上がればいいのになって思います。
それこそ『Clair Obscur: Expedition 33』は、最初は少人数で本当にインディーの作り方だったところから、大きくするタイミングがあり、メジャーパブリッシングができるようになりました。
本当にインディーの作り方からの大ヒットみたいなのがもっといっぱい出れば、チャレンジしやすい環境ができるかなと思いました。
GameWith:
伊津野さんの中で、「冒険してるなぁ」と思うタイトルは具体的にありますか?
伊津野氏:
大きいタイトルだと……(考えている様子)……あんまりないですね。
インディーゲームではちょくちょくあるんですけどね。去年だと、集英社ゲームスさんの『都市伝説解体センター』もインディーっぽい作り方で面白かったし、ちょっと新しい切り口のゲームを見つけたら、喜んで触っていますね。
あと、最近勢いで『未解決事件は終わらせないといけないから』を一気にクリアしましたね。
面白かったですし、新しかった。
韓国の方が作ってるんですが、ローカライズも全部完璧だったし、体験が新しかったんですよ。
あの手のやつはもっと巡りあいたいですね。
GameWith:
通底するのは、「このゲームでしか体験できないもの」ですかね?
伊津野氏:
今までゲームで体験したことのない感覚、面白さというのが入っていてほしいですね。
全部っていうのは難しいと思うけど、慣れ親しんだゲームの中にちょっと新しい感覚があると、いいなって思います。
『ドラゴンズドグマ2』でいうと、スフィンクスですね。
もともと『ドラゴンズドグマ(無印)』では、「RPGの面白さをアクションゲームのルールに置き換えて作ろう」というテーマがありました。
『ドラゴンズドグマ2』では、「アクションゲームのルールの中だけで謎解きをさせる」というのが新しい感覚だなと思っています。
『ドラゴンズドグマ2』ではそういうのをいっぱい入れたんですが、今までのゲームで味わったことのない「新しい面白さの感覚」をどっかに入れたいと思っています。
もちろん、今回のタイトルにもちゃんと入ってます。
GameWith:
今回のタイトルについて、何か目標はありますか?
伊津野氏:
僕らの今回の目標としては、「LightSpeed Studiosって遊ぶに値するゲーム出すんやな」って世界中のユーザーに思ってもらうこと。
「次もやってみようかな」と思えるだけの結果や信頼を得るっていうのが目標ですね。
信頼を得ると、新しいチャレンジをもっとやりやすくなるので。
それをやっていきたいなと思っています。
ゲーム制作でのこだわり
GameWith:
ゲーム制作において、これだけは譲れないというこだわりはありますか?
伊津野氏:
ちゃんと発売することですね。
中々それを言う人は少ないと思うんですけど、どんだけ素晴らしい計画とか構想を立てたところで発売できなかったらゼロなんですよね。とにかくどんなゴールであれ、ちゃんと発売できるっていうのが大事。
こだわりも何も、発売できなかったら話にならないので、なるべく早く届けるようにしています。
普通すぎると思うかもしれませんが、ゲームって発売するのが一番難しいんですよ。
カプコンの時に「一番偉いディレクターは発売できたディレクター」や「発売できるだけで100点」って後輩にいつも言ってたんですけど、それくらい無事発売にたどり着くことってのは難しいことなんで、ちゃんと発売できるっていうのは、こだわりというか当たり前のことですが重要ですね。
あとはさっきも言ったとおり「新しい経験/体験」っていうのを必ず入れようと思っています。
インプットについて
GameWith:
伊津野さんが、過去のインタビューで「ゲームからゲームを作らない」と語られていたのを目にしました。ゲーム開発に活かしている日々のインプットについて、お聞きしたいです。
伊津野氏:
30年前くらいに「ゲームを見てゲームを作らないでね」と先輩から教わりました。
その時は漫画を例に説明されましたけど、漫画を書く時に漫画を見て勉強するのはいいんだけど、漫画をお手本に漫画を書くなって。
「漫画じゃない他のものを漫画にする」って。
ゲームも同じで、ゲームをプレイして「俺もこんなん作りたい!」ってなるのはいいけど、ゲームからじゃないどこか別のところで経験した感動とか楽しさみたいなのもゲームに入れ込むことは非常に大切しているし、それはめっちゃ重要だなと思っていて、後輩にもずっと伝えています。
ゲームを作るのにゲームしたり研究したりするのは当たり前なんで、時間作ってでもゲームじゃない体験を経験したい。
例えば、「パラグライダーをやってみる」とか。僕はやってないですけど(笑)。
あと、伝統芸能とか何十年何百年も続いてるエンタメ。
例えば、どこかのお化け屋敷とかもそうかもしれないですけど、それってすごいからちゃんと見てね。
50年続いてる遊園地ってすごいんですよ。
ちゃんとお金稼いで投資して、お客さんがそれで来てくれて、それを50年回せてるってこれはすごいこと。
その理由があるんですよ。一過性じゃない。それこそ歌舞伎とかずーっと続いてるエンタメでしょ。
サイクルが回ってるから続けられてる。
歌舞伎も、伝統芸能だからって胡坐かいてないわけですよ。
新しい人に対してアピールしたり時代に合わせてちょっとずつ変えたりしていってる。
それを見て勉強しといでって皆に言ってます。
ゲーム作ってたらわかるでしょって。
こんなぎょうさんお金もらって、売れて儲かるから次を作れてる。
それを続けていくってどんだけ大変か。
30年前にヒット作を作ったからって、いま同じやり方でやっても売れない。
常にユーザーの変化を見ながら回していくのを勉強したいですね。
GameWith:
伊津野さんの具体的なインプットとしては何がありますか?
伊津野氏:
常に新しいものを見る・チャレンジすること。
僕の場合は、スポーツ系が多いですね。
転職の合間の有給消化期間に大型バイクの免許を取って、去年つなぎ着てサーキットデビューしたりとか。
脳みその今まで使ってない新しいところを使って、今まで経験してこなかったエンタメを体験する。
見たことのないジャンルの映画を見に行ったり。あと、最近歌舞伎を見たんですが、やっぱり「おー!」ってなりますよね。
読者へのメッセージ

▲左から、森橋ビンゴ氏(ナラティブリード)、伊津野英昭氏、池野大悟氏(アートディレクター)
GameWith:
最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。
伊津野氏:
スタッフもスタジオも割と揃ってきて、本格的に新規タイトルを作り始めています。
僕のゲームもそうですし、一緒に「デビルメイクライ」とか「ドラゴンズドグマ」とかを作ってきたアートディレクターの池野大悟もいたりするので、ユーザーの皆さんは情報を出すまで楽しみにしていてください。
我々と一緒に新しいゲームを作りたいと思ってくださる業界関係者の皆さんは、興味があればぜひご連絡お願いします!
▶LightSpeed Japan Studioの採用情報はこちらその他の新作ゲームもチェック!
今後発売の注目作をピックアップ!
2025/8/28 発売

METAL GEAR SOLID Δ
: SNAKE EATER
7,800円(税抜) 2
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PS5/PC
スーパーロボット大戦Y
8,900円(税抜) 3
2025/8/29 発売

Lost Soul Aside
7,980円(税抜)