誰もまだ自◯者自身の心理をありのままに書いたものはない。……僕は今、一番不幸な幸福の中に、あらゆる僕を虐待する現象を——しかし又同時に、僕を悦ばせる現象をも楽しんでいる。……僕はこの二二年、ただ死ぬことばかりを考えつづけて来た。……恐らくは僕の将来に対する、唯ぼんやりした不安である。

僕は復一歩も歩けなくなった。僕の視野は狭いせいか、そこいらにあるあらゆるものが——例えば街路樹の葉だの、例えば道行く人のネクタイだの、例えば電柱の碍子だの、あらゆるものが僕を刺戟せずにはいなかった。

僕はいつの間にか僕の視野のうちに奇妙な歯車がまわっているのを発見した。歯車は数かぎりなくあるらしい。それが僕の視野の半分を塞ぎ、激しくまわりつづけている。……僕はこれをもどこかに感じていた。或(ある)頭脳の病理的現象として。

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