マブラヴ オルタネイティヴ
これはお前が読み始めた物語だろ...?
『マブラヴ オルタネイティヴ』を知らないのに『進撃の巨人』をオモロイって言うのは法律で禁止されていますよ!!!
みなさまどうも、過激派ゲームライターのきゅ〜へいと申します。
突然思想強めの主張をしてしまいすみません。だけど、これだけはどうしても言っておかねばならなかった。
アガサ・クリスティを読まずにミステリを語る、運動方程式を知らずに物理を語る。それくらいの禁忌として、『マブラヴ オルタ』を知らずに『進撃』を語るのはあってはならないことだと考えています。
『進撃の巨人』は『マブラヴ オルタネイティヴ』をパクって作ったことを白状しなければなりません。
本当にすいませんでした!
(中略)作品の造り手に殺されると思ったのは始めてです。
ーー原文ママ。電撃コミックス刊『マブラヴ オルタネイティブ』7巻の巻末コメントより抜粋。
もう100万回くらい擦られた話なのですが、実は『進撃』の作者諫山創氏は、この『オルタ』を真似して漫画を描いたと公言しています。つまり、「オルタなくして進撃は生まれなかった」ということ。
「えー?そんなスゴいゲームのことなら知りた〜い!」というギャルの声がどこかで聞こえました。
ではでは簡単に説明しますと・・・
- ロボットでエイリアンと戦うSF超大作
- 異世界転移かつループもの
- 過去作のエ◯ゲーヒロインたちがオールスター出演!
とまぁ、かなりザックリですが概ねこんな感じ。
(マッドサイエンティストが作ったキメラか???)
こんなん進撃より面白いわけねーだろ
って思いましたね?
だけどこの作品、発表から16年も経った現在において新作TVアニメが絶賛放送中なくらい凄まじく根強い(根深い?)人気があるんです!!
そんな、もはや狂気とも言えるファンの熱量で支えられた『オルタ』という作品の魅力を、今回は僕の魂から染み出した文章で余すことなく感じていただこうと思い、筆を執らせていただいた次第。
アニメが放送中の今こそまさに始めどきなので、ぜひぜひ最後まで読んで購入を決意いただければ最高に幸せです。
※本記事はライターの熱意と愛によってお送りしております。なりゆきで進撃の話も多分に含んでいますがご了承ください。
これから早口で語るオタク
光州作戦と同じ98年生まれの九州男児。マブラヴに出会ったのは兄の影響で小3のころ。本格的にプレイしたのは中学生からだが、おかげで性癖が歪みまくり同級生たちと感性が合わなくなった悲しい過去をもつ。 |
マブラヴ オルタネイティヴ
改めて:マブラヴ オルタネイティヴとは?
――それは、語られなかった他なる結末。 とてもちいさな、とてもおおきな、とてもたいせつな、 あいとゆうきのおとぎばなし――
2003年に発売されたPC向け青春恋愛アドベンチャーゲーム『マブラヴ』の続編として、2006年にリリースされたのが本作『マブラヴ オルタネイティヴ』。
※以降、無印版を『マブラヴ』、オルタネイティヴについては『オルタ』で統一してます。
『マブラヴ』はそのジャンル名に違わぬ王道ハーレム展開が待ち受ける作品で、主人公「白銀武(しろがねたける)」の目線で、隣の家に住む幼馴染「鑑純夏(かがみすみか)」に毎朝起こしてもらったり、突如現れた大財閥のお嬢様「御剣冥夜(みつるぎめいや)」が家に転がり込んできたりなどなど、ハートいっぱい夢いっぱいな学園生活が楽しめるのです。
広辞苑に「ラブコメ」という項目があったならば、「マブラヴを参照。」と書かれていることでしょう。
さて、そんなウキウキハーレム学園ライフが送れる『マブラヴ』ですが、ちょっとした弾みでうっかり別のルートに突入してしまうと
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平和の対極にある世界にぶっ飛ばされちゃうんです!!!!!!!!
こんなに平和な生活を謳歌していた女の子たちが(1人男の子だけど)・・・
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おい、どうしてこんな見事な敬礼をぶちかましてんだよ!!!!!!
こんな冗談みたいな髪型と格好の癒やしポジ的女の子が・・・
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なんで、対物体狙撃銃(アンチ・マテリアルライフル)が似合う軍人になってんだよォォォォォオ!!!
当然主人公も発狂もんです。
「寝て起きたらパラレルワールドに来てるし、人類はエイリアンとの戦いで10億人まで減ってるし、通ってた学園も軍の基地になってて、いったい俺どうなっちゃうんだ〜?」って感じ。
元の世界に帰る手段も分からない白銀は、ただの高校生であるにも関わらずこの世界の戦いに否応なく巻き込まれていくことに。
そしてそれから3年間を国連軍の訓練生・軍人として過ごします。
さぁ、異世界からの来訪者である主人公の力で、これから人類の反撃の狼煙が上がるのだ!
と思いきや、物語はここまで。世界は救われません。
本日3回目の「は?」がどこかで聞こえた気がしますが、話を続けます。
白銀はロボットの操作に関してはめちゃくちゃ長けているのですが、それだけで絶望的な戦況が覆るわけもなく。
リヴァイ兵長がいても何の成果も得られなかった調査兵団みたいなもんです。
詳しい話は『マブラヴ』のネタバレになるので省きますが、とにかく世界は救われません!!!!!
前置きがメチャ長くなりましたが、ここからが『オルタ』の物語。
終わりを迎えたはずの主人公ですが、ふと物語の始まりの瞬間に巻き戻ります。しかも記憶や鍛えた肉体はそのまま、強くてニューゲーム!
ずぶの素人だった前回と違い、滅亡の運命を知っている白銀は記憶にある出来事をすべて先回りして解決し、必死に人類を救うために動いていきます。
さすがにその状況なら俺TUEEEE無双でしょ(笑)と思われるかもですが、マジで敵エイリアン「BETA」の物量・戦力が圧倒的すぎて、結局ギリギリの戦いを強いられます。
なんならむしろ1周目の世界より展開は残酷。「こんなのってないよ・・・」と思ったところから、何度も何度も絶望の底に叩きつけられ死体蹴りされるのが、『オルタ』というゲーム。
「原作者には人の心がないのか?」という、フランス革命みたいなクレームも吐かれる始末。
主人公はもちろんですが、見ているプレイヤーも文字通り「心がぐちゃぐちゃにされる」ようなショックを受けます。
今やみんなのトラウマになっている有名シーンがあるのですが、僕もプレイしていた当時、そこで落ち込みすぎて1週間くらいずっと頭を抱えてため息をつき続けてました。
こっちの精神をじっくり磨りつぶしたあとに、ちょっとの飴を与えてまた精神を追い詰めにくるという、他では決して味わえないゲーム体験ができます。
そんな激ヤバストーリーなので心臓が弱い人には本気でオススメしませんが、心臓が強い人はぜひプレイして己の精神力を試しましょう。
マブラヴ オルタネイティヴ
設定こりすぎな世界観。エ◯ゲーの延長ってレベルじゃねぇぞ!
突然ですが、「ハリー・ポッター」や「スターウォーズ」シリーズが世界中で愛されている理由は何だと思いますか?
キャラクターやストーリーなど色々な意見があると思いますが、僕個人としては「細部まで形作られた世界観」こそが一番大きな理由だと考えています。
1つ1つの設定に至るまで理由や背景を用意し、まるでその世界が本当に存在しているかのように見せる。それによって見ている人が没入しやすい土壌を作っているのが偉大な作品が偉大たる所以なのではないかというのが僕の持論。
もちろん『オルタ』の世界観設定も尋常じゃありません。手っ取り早くユーザー参加型Wikiサービス「@wiki」で有志ファンが作成したページを見ていきましょう。
!?
このように、白銀たちが乗り込むロボット「戦術機」などの兵器、敵エイリアン「BETA」にもそれぞれ細かい設定・背景・歴史が用意されており、思わず「俺はいまなんのゲームをプレイしているんだ...?」という気持ちにさせられるのは必至。
舞台となる日本に至っても、BETAの侵攻によって敗戦国にならず「大日本帝国」のままだったり、征夷大将軍が残っていたりなど世界観に合わせて大きく修正されています。
作中ではあまりキャラの心情などが描かれることはないのですが、こうした緻密な設定や、『マブラヴ』という前作があるからこそ、「なぜこのキャラがこの行動をしたのか」自分なりに考察することもできます。
そうした作品群全体を通した奥深さが、物語を味わったあとの極上の余韻に繋がっているわけです。ちなみに購入ページは下のボタンから飛べるのでよろしくお願いいたします。
Steamで詳細を見るマブラヴ オルタネイティヴ
地球の未来は臆病な少年に託された! 胸を打つ展開とアツすぎるキャラクターたちを刮目して見よ
さて、『オルタ』が絶望的なゲームであることは既にお分かりいただけたかと思いますが、この作品で一番重要なのは絶望そのものでありません。守りたいもののためにその身を投げ打って戦う者たちの姿こそが美しいんです。
ただ、本作の世界においては「死は日常茶飯事」。
他の世界から来た白銀はともかく、他のキャラクターたちは旧日本軍よろしく「お国のために戦って死ぬのは当然」という常識を刷り込まれて生きてきました。
だからといって「死」に対する抵抗は薄れているわけではなく、どのキャラも恐怖を押し殺しながら戦っていきます。
なんたって戦ってる相手は異形のエイリアン。めちゃくちゃ大群で押し寄せるバケモンに喰われて死んでいく味方の断末魔なんかも容赦なく聞かされるんですよ。
しかも新人パイロットの平均生存時間は8分という絶望すぎる事実。
僕なら「お腹痛い」っつって全力で逃げるところですが、本作のヒロインたちは、ただただ毅然と立ち向かっていくのです。
どんなに状況が絶望的になろうが、人類や日本のために自分ができることはなにか、と考え最善を尽くしていきます。
もうこうなると「エ◯ゲーのヒロイン」だなんて関係ねぇ!立派な英雄だろうがよ!
このゲームを始めたとき、まさか悲しいとか嬉しいとかじゃなく、人類への献身に対する「感謝」で涙を流すなんて誰も予想できなかったでしょう。
自分としても、戦いが終わったあとに「みんな死ななくてよかった・・・」って本気で安堵したのはこの作品が初めてでした。
そしてヒロインたちを差し置いて、主人公「白銀武」が圧倒的な魅力を見せつけてくれるのが本作の面白いところ。特にその成長からは目が離せません!
エ◯ゲーの主人公というこの世で最も軽薄な存在の1つでありながら、比喩じゃなしに「世界から拒絶される」レベルでひどい目に遭わされメチャクチャ凹まされる白銀。
松岡修造氏でさえ「諦めていいぞ」って言ってくれるであろうツラさ。
少年漫画ならここで「ツラくても逃げねェ!ドンッ!」てなるんですが、等身大の男の子である白銀はこっちが情けなくなるくらい逃げまくります。
そんな弱さを100%むき出しにした主人公だからこそ共感と投影を生み、物語が進むにつれて覚悟を決めて成長していく姿がより誇らしく感じるわけです。
そして『オルタ』における白銀のカッコよさはそれだけでなく、惚れた女へのブレない想いも決して見逃せないポイント。
もちろん単純な惚れた腫れたの話ではないのですが、ただただ互いを想い合うというシンプルすぎる純愛模様だけで泣けるとは思わなかったです。
冒頭にも書いた通り、本作は「あいとゆうきのおとぎばなし」という子どものようなサブタイをどこまでも本気でなぞっていきます。
こんだけ設定や世界観モリモリにしといて、つまるところ描いているのは超絶一途な愛と、絶望に立ち向かう勇気。その究極系がここにあるのです。
マブラヴ オルタネイティヴ
「明日の平和への礎となれ」心震わせる劇中歌&BGM!
「ペルソナ」シリーズ然り、『クロノ・トリガー』然り、古くから「名作ゲームには名曲がついてまわる」ことは周知の事実ですが、ご多分に漏れず『オルタ』もそんな名作の1つ。
OP曲となったJAM Projectの「未来への咆哮」って曲はニコニコ全盛期の人間ならかなり馴染み深いと思うんですが、その豪華すぎるメンツがなんと劇中歌まで歌ってくれています。
主な楽曲
■OP曲「Name~君の名は~」:JAM Project
■OP曲「0-GRAVITY」:GRANRODEO
■挿入歌「翼」:影山ヒロノブ(ドラゴンボールなど)
■挿入歌「Carry on」遠藤正明(勇者王ガオガイガーなど)
彼らの血湧き肉躍るような楽曲がかかるのは戦っている最中ではなく、きまって戦場へ向かう直前。
死にゆく決意を固めた若者たちを鼓舞するように歌がかかり、プレイヤーの目頭を熱くさせてくれるのです。
BGMも雰囲気にマッチしており場面転換がスッと入ってくる相性の良さ。さながら紅茶にケーキ、焚き火にマシュマロといった具合。
特に泣かせにくる場面では、「あ〜このBGM泣かせにきてんな」って分かっていても目尻を拭う羽目になるほど感情を掻き立ててくれる有様。
僕はティッシュ2箱は消費しましたし、真夜中に床まで垂れるくらい号泣してたので彼女にはかなり心配されました。
マブラヴ オルタネイティヴ
まとめ
さて、ここまでで勘のいい読者諸賢はうっすら『進撃』と『マブラヴ』に共通する設定に気づいたのではないでしょうか。
- 世界を救うために尽力する未熟な主人公
- 正体のわからない力
- 敵の圧倒的な物量
- どこまでも続く絶望感
- 次々死んでいく仲間たち
- 緻密に練り上げられた世界観
『進撃』ももちろん独立した作品として尋常ではない魅力をもつ作品ですが、その物語の根幹・骨子にはやはり『オルタ』の影が見え隠れしています。
「 『マブラヴ オルタ』を知らずに『進撃』を語るな」は言い過ぎにしろ、なぜ僕がこんな主張をするのかもうお分かりでしょう。
『進撃』を面白いと思える感性なら『オルタ』にもハマるはずなんです。
惜しむらくは物語にたどり着くまでのハードルの差。
既に世間一般に浸透したマンガというプラットフォームと、元18禁のコテコテPCゲームとでは大衆に伝播する絶対量が違いすぎるんです。
しかも『オルタ』が発売したのはもう16年も昔。進化の早いゲーム業界において10年という月日は名作を古典にするのに十分すぎる時間。
ただ、それらを差し置いても能動的なプレイ感、臨場感のあるBGM・劇中歌、真に迫るキャラクターボイスによる没入感はゲームでしか得られないもの。
何十時間もの長い旅路をともにすることで、感動はより深く、大きく増幅されるのです......
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なんてツラツラと並べ立ててきましたが、こんなネタバレを恐れたありきたりな文章や美辞麗句じゃ本当の魅力は語り尽くせねぇんだ!!!!!
ここまで読んでいただき恐縮ですが、僕の言いたいことは結局ただ一言。
全人類に『オルタ』をプレイしてほしい。
©Muv-Luv: The Answer