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探偵小説で、ろくに調査もしていないのに、犯人をズビズバ吊るしあげちゃう主人公っていますよね。犯人が残した些細なほころびから、謎をつまびらかにして、最後は「〇〇さん、犯人はあなたですね」の決め台詞ドーン!みたいな。
ミステリー用語で「安楽椅子探偵」と呼ぶこのジャンル。読者が知り得た以上の情報を探偵は持っていないはずなのに、想像を超えた名推理で事件を解決に導く。
今回紹介する『都市伝説解体センター』は、オカルト満載の都市伝説に、安楽椅子探偵のエッセンスを取り入れた新機軸だ。
目次
「都市伝説×安楽椅子探偵」で紡ぐ、墓場文庫の新たな挑戦に、注目せよ
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▲墓場文庫は『和階堂真の事件簿』シリーズで知られるインディーズ・デベロッパーだ。開発チームは少数精鋭の4人。
『都市伝説解体センター』は、インディーズ・デベロッパーの墓場文庫が手掛けるミステリー・アドベンチャーだ。手軽に本格ミステリーが楽しめるこれまでのテイストは継承しつつ、本作では都市伝説という新たなテーマに挑戦している。
販売は集英社ゲームズが担当。発売前にイベント出展や体験版配信など、積極的なパブリシティを展開して話題を呼んだ。ドット絵にこだわったビジュアルと、先の気になるストーリー展開が魅力の作品に仕上がっている。
怪しい所は「メガネ」をかけて。2度見3度見、調査せよ
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▲調査はポイント&クリック。怪しい箇所はガンガン調べてゲームを進める。
主人公は大学生、福来(ふくらい)あざみ。都市伝説解体センターの長、廻屋渉(めぐりや・ゆむ)から依頼された怪異を、サポート役の先輩、止木休美(とまりぎ・やすみ)、通称「ジャスミン」と共に調査する。
廻屋は、自身が現場に赴くことのない典型的な安楽椅子探偵だ。特殊能力「千里眼」を使ってあざみの調査をウォッチして、間接的に情報収集を行う。
プレイヤーはポイント&クリックで調査にあたる。ただし、必要な箇所は初めからマーキング済み。怪しい箇所をしらみつぶしに探す必要がなく、楽ちんだ。
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▲メガネをかけると景色が一変。見えなかった残留思念が可視化される。
調査のキーアイテムは、なんと「メガネ」。といってもただのメガネではない。主人公のあざみは、人の残留思念を感じる「念視」の能力がある。メガネはこれを可視化するお助けアイテム。ワンボタンで着用して、現場で起こった出来事を断片的に知ることができる。
しかし調査が進展するほど、ある疑問がプレイヤーの脳裏には渦巻く。はたしてこの依頼は噂通り「都市伝説」なのか?それとも人為的な「事件」なのか?と…。
「都市伝説は噂からうまれる」。SNSで謎の枝葉を、追跡せよ
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▲SNSを駆使して情報収集する。膨大な数のポストにあざみとジャスミンの個別コメントが用意されていて、開発の作り込みがうかがえる。
ご近所の出来事が即時性を持ってSNSを駆け巡る現代。インターネットは現実の一部だ。オカルトの世界でもそれは変わらない。
本作では、SNSと現実が薄壁を隔て密接にリンクする。プレイヤーは現地の情報に加え、ネットの、ともすれば愚にもつかない大量の情報の中から、有益な物だけを洗い出していく。
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▲検索して新たな情報を探る。調査では2つのワードを組み合わせる場合も。
調査は超簡単。あざみの能力により、ぷるぷると震えているタイムライン上の怪しいワードを見つけたら、すかさずメガネをかけて念視。すると「検索ワード」が立体的に浮かび上がる寸法だ。
プレイヤーはこれらをヒントに、数珠繋ぎの関連トピックを掘り出すことで新しい場所や人物、展開などに至る。
シャーロック・ホームズは作中で新聞を情報源にしていた。令和の時代はSNSが新聞代わりというわけである。
調査と検証を積み重ねて、都市伝説の真相に、肉薄せよ
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▲選択肢で仮説を立てて検証を進める。とはいえ、総当たりすればいずれは正解に辿り着く。
調査の要所では主人公あざみの「検証」や、廻屋とスマホを介して行う都市伝説の「特定」シークエンスが始まる。これらはちょっとした選択パズルのようなもので複数のパターンがあるが、やることは同じだ。
さまざまな問いに対し用意された回答の中から正解を選ぶ。選択を間違えてもペナルティは特になく、間違った箇所にはバツ印が表示されるので、これまた楽ちん(2度目)。
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▲検証結果が調査メモにまとめられ、いつでも閲覧できる。蓄積したデータベースで迷子になることはない。その充実っぷりは読み物としても優秀だ。
プレイヤーは、調査と検証を繰り返しながら、徐々に都市伝説の真相に迫っていく。過去と現在、虚構と現実が交錯する複雑なストーリーのなかで、こうした定期的な検証シークエンスがストーリーを交通整理する。徹底した遊びやすさの追求が、本作の手軽なプレイ感を生み出す。
そして、ついに最大の見せ場「都市伝説解体」が幕を切るのである。
独自の切り口で都市伝説を「解体」する。秀逸なストーリーに、刮目せよ
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▲プレイヤーの目の前で都市伝説が現実のものとなっていく。虚構か現実かの見極めが攻略の鍵だ。
「解体」パートの基本的な流れは検証と同様のパズルだ。関係者が一堂に会し、安楽椅子探偵の廻屋がスマホ通話で登場。謎解きすらスマホで済ます徹底ぶりに、筆者はニヤケ顔だ。
ここで「天眼錠(アイ・オープナー)」なる謎のアイテムが唐突に出現。謎が解き明かされるごとに解錠され、すべてが解明すると都市伝説「解体成功」となる。
一見、各々が無関係に思える情報の「点」が、推理によって「線」として紡がれていく様は、さすが安楽椅子探偵の真骨頂で見事。名推理に胸が空く瞬間だ。
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▲本作の見せ場「解体」。プレイヤーの調査と廻屋の推理が邂逅する。
本作は、眉唾の都市伝説を「実在するもの」として、真正面から受け入れるところからスタートする。そのうえで、物理的にどう実現可能かを、探偵の視点でロジカルに考察する点がユニークだ。
プレイヤーは「現実」と「虚構」の間に横たわる人の業を、たえず垣間見ることになる。単なるオカルトでは片付けられない奥の深いストーリーは圧巻だ。
序盤から張り巡らされた伏線の数々をどう回収していくのか、ぜひ皆さんの目で確かめてほしい。
8bitの色パレットを彷彿とさせる美麗グラフィックに、涙せよ
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▲まるでポップアートのような美しいグラフィック。額に入れて部屋に飾りたいくらいだ。
ドット絵のグラフィック表現に定評のある墓場文庫。ブルーやグレーを基調にしたあえて抑えた色みに加え、反対色を使った差し色が映えるデザインが美しい。
レトロな雰囲気をまといつつ、絵柄は現代風なキャラクターたち。ゲーム中は常にどこかで、なにかがアニメーションしていてにぎやかだ。
懐かしさと新しさが同居するグラフィックは見た目の美しさだけでなく、要求スペックの引き下げにも寄与する。仕事用のノートパソコンでも楽々プレイできちゃうあたりが、本作の遊びやすさに拍車を掛けている。
お気に入りの小説を1ページずつ読み進めるように、プレイせよ
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▲全員が腹に一物ありそうな登場人物たち。先の展開が全く予想できない。
「きさらぎ駅」「異世界エレベーター」「ディス・マン」。都市伝説は純粋に物語として面白い。真実を煙に巻いて立ちはだかる闇に、車椅子の安楽椅子探偵が挑む。子どものころに図書館で夢中になって読んだ、あの探偵物語みたいでワクワクしまくりなのは筆者だけだろうか?
パッとプレイして、スッと止められる本作。Nintendo SwitchやハンドヘルドPCにうってつけのタイトルだ。
ベッドやソファー、カフェ、はたまたお風呂で(落とさないでね)ちょっとした隙間時間をプレミアムにしてくれる、味わい深いタイトルだ。
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発売日など基本情報
発売日 |
2025年2月13日 |
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会社 |
集英社ゲームズ |
ジャンル | アドベンチャー |
対応ハード | PC / Switch / PS5 |
価格 |
PC : 1,800円(税抜)
Switch : 3,400円(税抜)
PS5 : 3,400円(税抜)
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公式HP | |
公式Twitter |
今後発売の注目作をピックアップ!
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モンスターハンターワイルズ
9,000円(税込) 2
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/PC/Xbox
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/PC
龍が如く8外伝
Pirates in Hawaii
6,300円(税抜)