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宇宙SFっていいよね。
有名なのだと「謎の黒い物体の秘密を探りに木星に行くやつ」もいいし、「地球にやってきた軟体宇宙人となんとか言葉を交わすやつ」とかももちろん好きだ。
最近話題のだと「記憶喪失の主人公が一人地球の危機に立ち向かうやつ」も最高だった。
どれも作中の学理やら理論を全て理解しているわけではないが、それっぽい宇宙ワードを使われ冒険されるとワクワクする。
地球はどこもかしこもマッピング済みに思えて、大航海時代以降失われたロマンを宇宙に求めているのかもしれない。

The Alters
今回紹介するのは「おじさんを複製して三体惑星から生還を目指すやつ」
▲The Alters | Launch Trailer
さて、今回紹介する『The Alters』も当然、宇宙SFだ。宇宙のロマンもたくさん詰まった作品になっている。
先の表現にならうなら「おじさんを複製して三体惑星からの生還を目指すやつ」となる。最近のSFノルマである量子コンピューターも登場する。もう設定の詰め込み具合が最高だ。

宇宙SF要素を推しているが、ハードコアSFではないので、SFが特段好きでない人にも十全にオススメできる作品になっている。
極寒都市の運営サバイバル『Frostpunk』で有名な「11bit studios」が手掛けただけあって、そのゲーム性も非常に高く楽しかった。
その魅力を今から語っていこう。
▲時間が無い方は筆者謹製のショート動画を見てほしい。このゲーム、まじ面白いから。
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- 8月18日(月)
『The Alters』おじさんを複製して三体惑星からの生還を目指すSFサバイバル『The Alters』
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夏休みゲームレビュー祭まとめ2025
目次

The Alters
まずは生き残るためにおじさんを複製しよう

最初にあらすじを説明したい。
主人公のヤンは資源不足で悩む地球を救うべく、新資源を求めて未知の惑星へ赴く調査隊のメンバーの一人だ。
こう聞くとヤンは偉大な使命を持った人間に聞こえるが全然そんなことはなく、単に企業に雇われた冴えない中年のおじさんである。
その人生も特別だがよくある人生だ。少年期は父親と対立し、結婚生活は失敗してしまうなど、それなりに酸いも甘いも経験している。

宇宙へ飛び立つヤンだったが目的の惑星に近づいた時、ことは起こる。
なんと何らかの事故により着陸ポッドが不時着し、彼以外のメンバーは全滅してしまったのだ。

最悪なことに不時着した惑星は3つの太陽が登り、その太陽達によりあらゆる生き物が灼かれる極限環境にある。
ヤンが生き残るにはホイール型の巨大基地を動かさなければならないのだが、絶対的に人が足りない状況。
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▲最初のオルターズを生み出すと同時にタイトルが表示される。かっこよすぎて拍手した。
複製の具体的な手順としては、この惑星にある目当ての資源「ラピディウム」を用いて自分のクローンを複製。
そこに量子コンピューターでシミュレートした「別の人生を歩んだ自分の人格」をぶち込むというものだ。
この所業は近未来だから許されているとかでもなく、倫理的にも法的にも超絶アウト、技術的にも不安しかない一手だ。

▲科学者のヤンがいたり、医者のヤンがいたりする。
そうこうして生み出された「別の人生を歩んだ自分たち」は「オルターズ」と呼ばれる。
この「オルターズ」は各々異なる専門技能や性格を有しているので、彼らと協力しながら地球への生還を目指していくのが大きな流れだ。

The Alters
死の太陽が緩急をつけるゲームサイクル――探索と基地運営のいいとこどり!

▲ヤン達が居住することになるホイール型の基地。
プレイヤーの目下の目的は「死の太陽から逃れること」であり、基地移動をくり返していく。
道中には大きい溶岩地帯が現れたり、重力異常が道を阻んだり、道のりは険しい。

本作でプレイヤーが行うことは主に2つ。「惑星探索」と「基地運営」だ。
ミッションの達成にはオルターズの協力が欠かせない。
惑星探索
探索パートでは惑星の探査をして資源を回収していくアクションが楽しめる。
だが、この惑星には「アノマリー」と呼ばれる不可思議な現象も存在。

アノマリーには様々な種類があり、触れると危険な放射線を放出するモノや時間を遅らせるモノ、視界に異常を生むモノなどがいる。
その他、不思議現象も満載なので、「未知を既知にする冒険の楽しさ」はたっぷりだ。

▲電線を繋ぐパイロンは好きなところに設置可能だ。
資源回収の施設を動かすには、基地から導線を引かなければならない。
電工屋さん気分で施設をどんどん建てていって、惑星探索を快適にしていこう。
基地運営

▲施設はモジュール単位での管理。重量にもスペースにも限度がある。
基地運営パートでは、施設の建設やオルター達に仕事を振ることになる。
しかし、オルターズ同士が喧嘩したり、資源が不足したり、磁気嵐で設備不良が起こったり、問題は頻発。
人的資源も限られているので理想通りに運営することは難しい。その分、問題を上手いこと切り抜けた時の達成感は確かなものだ。

▲科学者ヤンが研究している様子。
どの技術を研究するかで行えるアクションも変わってくる。
探索用の宇宙服を強化するのか、食品生産の効率を上げるのか、ストレージの容量効率を改善するのか、全てあなたが決められる。
リソースは限られており全ての技術を開放することはできない。どの技術を選ぶかはかなり重要になるだろう。
時間制限が緩急を生むゲームプレイ

▲美しいロケーションもあるが、うかうかはしてられない。
そして、この「探索」と「基地運営」はダラダラとすることはできない。
なぜならプレイヤーは灼熱の太陽に追われているからだ。だが、むしろ時間が限られているからこそプレイにメリハリが生まれている、と筆者は感じた。
加えて定期的に新たな土地に赴くことになるので、プレイの新鮮さは保たれるだろう。死の太陽がゲームサイクルを加速させなかなか憎い仕事を果たすわけだ。

The Alters
ほんとに同じヤンですか?――可能性の塊「ヤン」という男

ヤンが複製する「オルターズ」は見た目や性格、専門技能もそれぞれ異なる。
エンジニアのヤンは設備維持は得意だが職人気質で気難しい性格だ。植物生成が得意な園芸家のヤンは打って変わって温和でとても優しい。

なぜ皆同じヤンなのに、ここまで様相が異なるのかといえば、彼らは別の人生を歩んだからだ。
例えばエンジニアのヤンは父親からの自立を選択できたし、園芸家のヤンは結婚して家庭を大事にした。
人生の選択次第でここまで多様な人物になれることを考えると主人公ヤンは「可能性の塊」と言える。

▲映画は複数本用意されており、かなり凝っている。
ゲーム攻略の鍵はオルターズの得意なことを割り振って仕事を進めることだが、彼らは機嫌を悪くすることも。
そんな時は皆で映画を見たり、ミニゲームをしたりしてご機嫌取りをしよう。
「自分の機嫌は自分で取る」とは金言だと実感できる。

▲オルターズが辿った人生は量子コンピューターでシミュレーションしており、一種の読み物として楽しめる。

オルターズ同士は協力するだけでなく、時に喧嘩もする。
最悪反乱を起こされるとゲームオーバーにもなるので、恐ろしいのは外の太陽だけではない。人間関係の難しさも味わえるだろう。

オルターズの性格は非常によく作られており、全員しっかり長所と短所があり、プレイヤーに完全に都合の良いオルターズはいない。
腹を立てて全然働かないオルターズに苛立つこともあったが、同時に彼らの中に人間味を感じて好きになることもできた。
個人的には、最初の仲間となるエンジニアのヤンは非常に人間くさいやつで、かなりお気に入りのヤンだ。ぜひプレイして彼の動向に注目してほしい。

The Alters
陰謀とかも見え隠れするけど普通に激アツな物語

本作の物語は、ヤンがいる惑星内のみで展開するわけではない。
地球側からは交信という形で、今回のプロジェクトの企業担当者や、元妻との会話も行うことになる。

彼らは地球を救う資源として「ラピディウム」の回収を依頼してきたり、あるいは助力を申し出たりそれぞれの思惑で話しかけてくる。
そもそもオルターズを生み出したきっかけも企業の人間からのアドバイスによるものだった。
今回ヤンを雇った企業も一枚岩ではないらしく、オルターズは一部関係者のみに共有されている事項。少しだけきな臭い動きもある。

また今回の作戦では量子コンピューターが主に宇宙船や基地の舵取りを行っていたのだが、最初の事故に関しても「なぜヤンだけが生き残ったのか」という謎が残っている。
オルターズもそれぞれの考えは異なり、本作の物語には様々な人間の意図が絡む。
物語は怪しくも惹きつけられる展開を見せていくし、取る決断によってプレイヤーの味方は変わってくるだろう。

…と書くと、「疑心暗鬼の物語」みたいに思えるかもしれないが、普通に物語は激アツなので安心してほしい。
オルターズと共に困難を乗り越えたり、お互いの身の上話を交わしたり、絆が感じられる場面も多数だ。

ヤンの人生が多数に枝分かれしたように、道中の問題解決の方法も決して一種類ではない。
どのオルターズを生み出すかもプレイヤー次第なので、人によって辿る過程も迎える結末もガラリと変わるだろう。

The Alters
「プレイする映画」ではなく、「映画してるゲーム」

ゲームを表現する言葉として「プレイする映画」というのはよく聞くだろう。
本作もこの表現を採用できると思う。映像表現は実写に近くリアリティがあったし、演出面でのカッコよさや物語の作りは名作映画を思わせた。
ただ注意したいのは、本作は「プレイする」の配分が多いように思えた点だ。

先述した通り、本作はプレイヤーごとに辿る過程も迎える結末も変わる。
しっかりプレイヤーの選択が作品世界に影響をもたらすのだ。
それは物語だけに限った話ではない。何の施設をどれだけ作ったか、どの技術を研究したのか、どのオルターズを作ったか、どんな風に電力を通したか。
本作は資源も時間も限られているので、一回のプレイングでは全てを網羅することはできない。
それゆえ、クリア後、筆者は「自分だけの道のりを歩んだな」という感覚を存分に味わえた。

これは基本的に道のりや結末が一本筋な映画や小説では絶対に味わえない感覚だろう。
ゲームだからこその体験だ。
これを踏まえて筆者は本作を「プレイする映画」ではなく、逆転させ「映画してるゲーム」と表現したい。

ということで本作は宇宙SF映画が好きな人にもオススメできるし、ゲーマーにも自信をもってオススメしたい。
一人のおじさんをたくさん増やして、地球の生還を目指す体験は唯一無二だ。
もしかしたらあなたの人生を大きく変えるきっかけになり、世界線の分岐ポイントになるやもしれない…
この茹だるような暑さの夏に、「本作に出会った世界線のあなた」になってみてはいかがだろうか。
発売日など基本情報
発売日 |
2025年6月13日 |
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会社 |
11 bit studios |
ジャンル | アドベンチャー |
対応ハード | PS5 / PC / Xbox |
価格 |
PS5 : 3,600円(税抜)
PC : 3,600円(税抜)
Xbox : 3,590円(税抜)
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公式HP | |
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The Alters
GameWith編集者情報

作家性が大爆発しているゲームに食指が伸びる雑食性。 BGMやサントラなど背景音楽も大好物なので、音楽からゲームを買うこともしばしば。 |

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