
外れ弾すら計算通り。戦場を数値で支配する『MENACE』

「この1発を外したら即ゲームオーバー」みたいな瞬間、ゲームでありますよね?
FPSでも、RPGでも、ソウルライクでも。 残弾数はわずか、HPもワンパンで轟沈のゲージ1目盛り分。しかもあと15分でバイトが始まる……みたいな状況で、その渾身の一撃を盛大に外してコントローラーをぶん投げた。
そんな経験のあるゲーマーのみなさん、安心してください。 今回紹介する『MENACE(メナス)』は、外した弾丸にすら意味があるゲームだ。え、全弾外しても、これまでの努力が無駄にならないの? そんな優しさにあふれたゲームが、この世界に存在していいの?
……あれ、なんだろ、涙が止まらない。そんな感動が止まらない筆者だが、Steamのストアページを確認していると、なんだか雲行きが怪しくなってきた。

開発はドイツのインディーメーカーOverhype Studios……ん? んん!? まさか、超激ムズ・鬼リアル・情け無用の中世バトルシミュレーター『バトルブラザーズ(Battle Brothers)』を手掛けた、あのメーカーじゃないの!?
はい、そのまさかです。『MENACE』もガチなノリはそのままに、舞台を宇宙に移し、歩兵や車両、巨大なメカまで投入して戦うSFターン制タクティカル・シミュレーションだ。
本作も、ゲーム内で起こる地獄絵図がすべて「確率」と「数字」に支配される、優しさ不在の戦場をプレイヤーに突きつけてくる。生粋のバトルシムガチ勢も唸りそうな本気モード全開なのだ。

……のはずなのに、プレイ中の筆者の心には、奇妙な感覚が芽生えていた。
それは、泥臭い人間ドラマと、手塩にかけた部下への猛烈な愛着だ。親バカの「推し活」と言ってもいいくらい。
そんな『MENACE』をリリースに先んじてプレイする機会をいただいた。本稿では、冷たい数字で殴り合う「ツン」と、育成愛が爆発する「デレ」が同居する、今年最大の謎(?)タクティカルシムの中身を見ていく。
その「冷たさ」は、愛ゆえの厳しさだったのか? まずは「外した弾丸にも意味がある」ってどういうことなのか。それを説明していこう。
「外れ弾」も戦略!?制圧射撃で敵の行動を圧倒せよ

じつは筆者には大好きな言葉がある。それは「弾幕」だ。もう座右の銘にしてもいいくらいロマンを感じる。
ただ、冷静にゲームタイトルを眺めてみると、弾幕を真正面から扱う作品は案外少ない。代表的なのは弾幕シューティングと呼ばれるジャンルだが、アレは画面を覆い尽くす弾幕を華麗に避けるゲームなので、ちょっと趣旨が違う。
筆者がやりたいのは、ありったけの弾丸を一点に叩き込んで、その隙に仲間を有利な位置へ運ぶ「制圧射撃戦」なのだ。マガジンをバリバリ消費して敵を釘付けにしているときの、あの共闘感が激アツなのである。

『MENACE』は、この「ジャンジャン弾幕を張って敵を黙らせる」ムーブが、システム的にめちゃくちゃ強い。相手の行動そのものを縛って主導権を取るのが、とても大事なゲームだ。
例えば、2部隊で進撃中に敵のエイリアンと遭遇戦になったとしよう。 これまでのターン制タクティカルシムなら、命中率とにらめっこしながら「頼む、当たってくれぇ!」と祈らんばかりに、敵のアーマーを削って撃破するのがド定番だった。
でも本作は違う。弾が当たらなくても、とにかく射撃して敵ユニットの「制圧ゲージ」を上げにいく。すると敵は段階的にAP(行動力)が削られて動きが重くなり、命中率も落ちていく。さらにゲージを溜め切れば、その場に釘付けにして無力化できる。
その間に残りの部隊を攻撃しやすい位置に移動させたり、後ろに回り込んで挟撃したり、できることが一気に増える。大混乱に陥って敗走する敵を、別部隊が冷静にスナイピングして仕留める……みたいな、エモ過ぎるプレイもできちゃうのだ。
はい、もうこれは、絶対に楽しいヤツ。筆者はプレイして、そんな手ごたえを感じた。

もちろん、本作でも敵を確実に仕留めていくのは重要だ。従来のように、確率と数字が戦場を支配しているのも変わらない。
ただ本作はそこから一歩踏み込んで、「運を天に祈る」とか、「外したせいで全部パー」みたいな要素ですら、ゲームシステムに組み込んでくる。地味だけど、「これって発明なのでは」と、筆者は思った。
外した弾丸にロマンを感じるのは筆者だけですか?
そうですか。 では、同じくタクティカルシムの定番の「待ち伏せ」が、本作では「できない」と言ったらどうでしょう? 次項で詳しく解説するが、まずは頭の中で「待ち伏せなし」の作戦を組み立ててほしい……。
ああ、ワクワクが止まらない。
「待ち伏せ(Overwatch)」は甘えだというのか!? 悩ましい戦闘システム

戦闘では、各ユニットに割り当てられた100AP(行動力)を使って行動する。各アクションには必要なAPが定められていて、プレイヤーは、ユニットのAPが尽きるまで行動が可能だ。
APによる行動システムは他のゲームでも採用されているが、本作はその一歩先を行く細かさがある。ユニットの制圧状況でAPが減少し、しゃがむなどの防御態勢にもAPが割り振られているなど、先読みして適当に行動するとあっという間にやられてしまう。
特徴的なのは、味方全員が動いてから敵に交代するターン制ではなく、敵味方が1部隊ずつ交互に行動するシステムを採用している点だ。
素早さなどによる行動順の決定がないぶん、プレイヤーは部隊全体もさることながら、「いま動かすべき分隊はどれか?」の選択につねに集中することになる。

1手打つたびに手番が敵に渡るということは、待ち伏せで安全を確保する定石が通用しないということ。つねに即時の反撃リスクを考慮しながら優先順位を決める、一手ごとの緊迫した駆け引きが半端ない。
つまり、チェスや将棋に近いルールなのだ。だから、従来のように、全員で一斉に壁を作って守りを固める準備の時間なんて、全然ナッシングである。
そんなわけで本作は、最近のタクティカルシムの多くが採用する、敵ユニットが味方の射線を横切ると自動的に攻撃する便利な戦術、「待ち伏せ(Overwatch)」を、敢えて廃止している。

ほかのゲームの多くは、待ち伏せコマンドを選んでおいて、プレイヤーはコーヒーを飲みながら敵がノコノコ出てくるのを待っていればよかった。それはゲーム側が用意したプレイヤーに対する優しさだったのかもしれない。
だが本作は、そんなプレイヤーの甘えを許さない。「デスクの前で電話を待つくらいなら、飛び込みで営業してこい」と言わんばかりに、ブラック企業さながらでありつつもリアリズムを追求したスパルタでプレイヤーを煽ってくる。

ええ、わかってます。ここまでの説明で「すげー難しそう」と、思っているんでしょう?
はい、このゲームの難易度は「ごんぶと」です。なんせ、味方の誤射や、強力な範囲攻撃の着弾が逸れて、味方兵士がバンバン死ぬ。
ゲーム開始当初はバックアップ態勢も乏しく、敵がどこに潜んでいるのかもわからない。筆者は、何度も血反吐を吐いて敗走した。
でもね、こんな激戦を乗り越えて手塩にかけて育てた隊員たちが、愛おしすぎてやめらんないのよこのゲーム。……次はその話をしようか。
攻略の鍵は親子!? 分隊長を愛し、地獄に叩き落とせ!

本作の隊員たちは、使い捨ての「ユニットA」や「歩兵B」ではない。名前があり、顔があり、そしてまあまあ厄介なメンタルを持った、愛すべき部下たちだ。
本作には、タクティカルシムによくある汎用ユニットとは別枠で「分隊長(Squad Leader)」がいる。
例えば、共和国に絶対の忠誠を誓うカタブツの職業軍人「パイク(Pike)」や、過去の傷でトラウマを抱え、なんだかつねに怒り散らしてる「レワ(Rewa)」。パイクに命を救われて以来、彼以外を信用しない海兵隊至上主義者の「リム(Lim)」など、個性的な面々だ。

本作が魅力的なのは、彼らがちゃんと「人」として面倒なところ。
固有のバックストーリーがあって、戦況やプレイヤーの采配で士気が上下し、パフォーマンスも露骨に変わる。プレイヤーが下手こいて部下が全滅しようものなら、分隊長はたちまち自信を喪失して、しばらく使い物にならなくなることさえある。
「なんだこいつらガラスのハートかよ……」とボヤきながら、回復するまで「休暇」を与えるか、社畜のごとく無理やり戦場へ送り出すかはプレイヤー次第。
こういう人間臭いマネジメントをするうちに、彼らをデータ以上の「なにか」に感じてしまう不思議。え、やだ……これって親心?

プレイヤーはゲームを通じて、その「うちの子」をビシバシ育てられる。RPG的なビルド要素があり、各分隊長は独自の属性やパークツリーを持っている。
もうそれこそ「推し活」のごとく、好みに合わせて激推しする「親バカムーブ」が攻略のカギだ。
さらに装備の着せ替え遊びが妙に熱い。映えるコンバットアーマーはもちろん、アクセサリ枠には「偵察ドローン」や「グレネード」。武器はSMGかショットガン、いや火炎放射器も似合うわね……なんて、おしゃれし放題だ。え、違う?
本作では分隊長を中心に最大8人の兵士を連れて出撃する。こんな名もなき兵士にも、開発陣は「名前」を与えている。
任務中に彼らが死亡すると、名前に取り消し線が引かれるのだ。そんな切なさも本作のエモさのひとつ。

……いや、感傷に浸っている場合ではない。本作は兵士が撃つ弾丸の命中判定を個別に計算して、分隊の火力を決定する。
だから、物理的に弾丸数が減ってしまう兵士の死は、分隊にとって死活問題。「兵士は減ったけど攻撃力はそのまま」なんて、ゲーム的な甘えは一切、忘れてほしい。
「パイクは堅実にタンク役で」 「レワには火炎放射器を持たせてストレス発散させよう」 などと手塩にかけて育てた「わが子」を、あなたは戦場に送り込むことができますか!?
……はい、よろこんで! だって分隊長は、苦しめば苦しむほど強く、たくましく育つんだから。
傷つくほど強くなる!? 仲間の死を乗り越え成長する、ドSな分隊長たち

分隊長たちは、戦場で「何をしたか」「どれだけ痛い目に遭ったか」という実体験でしか成長しない、常軌を逸したドSばかりだ。スキルを使えば敏捷さが上がり、敵にダメージを与えれば武器の腕が上がる。
ここまでは、まあ理解できる。だが問題は「頑強さ」だ。
これは分隊長の「打たれ強さ」を表すステータスで、上げるには「部隊がHPを失う」必要がある。
何が地獄かって、「分隊のHP=兵士数」だという点。つまり兵士が死ぬ。銃口が減る。火力が落ちるという、最悪の三段活用を乗り越えた先にしか、成長はないのだ。
なにこれ。さっき「名もなき兵士の死が切ない」って話をしたばかりなんですが……辛すぎるだろ!
しかも分隊長は、若手や新兵ほどグングン成長する。「若手に無茶振りしとけば勝手に育つだろ」みたいな昭和サラリーマンの悪しき慣習が、本作にまで根付いているというのか。というか、ベテランの立場は一体!?

で、本作のいやらしいところは、その「成長」がいい感じに「物語」になってしまうことだ。
安全策で勝てば死ににくい。でもその分、成長の見返りは薄い。逆にギリギリの綱渡りを経験させれば育つのだが、いつ死ぬかわからない。しかも分隊長は死んだらそれっきり。
はい、切ない。
「この局面、攻めたら伸びそう。でも危ない」 「ここは温存して勝つ。でも成長も捨てがたい」 みたいな胃がキリキリするような二択が、楽しくも悩ましい。
うちの子を愛でる要素と、数字が支配する冷徹な戦場。この強烈なコントラストこそが、筆者が本作を推す最大の理由なのだ。
戦略と感情を天秤に掛けて、プレイヤーの心に弾幕を張って釘づけにしてしまう──まさか、ゲームそのものが制圧射撃だったというオチ。マジで開発陣は侮れない。
まとめ:宇宙船に帰るまでが、戦争です

分隊長が強くなっても、世知辛い現実は続く。精鋭になればなるほど、分隊の出撃コストが跳ね上がり、出撃させるだけで財布が悲鳴を上げるようになる。
しかも、正規のルートで装備を手に入れるのが難しい。通信が途絶したこの星系では、怪しげな「ブラックマーケット」を通じて、胡散臭い海賊製の改造武器や横流し品を買い漁るしかないのだ。
稼いだ金で母艦「TCRNインペタス号」を改修して軌道支援を取り付け、最終的には戦車や巨大な「メカ(Walker)」まで配備して、分隊にいろんなバフを盛っていく……。
この経済パートも本作の醍醐味なのだが、とてもじゃないがここでは説明しきれない。気になる人は、自分の目で確かめてほしい。

結局、泥臭い金策も、冷徹なコスト計算も、すべてはこの愛すべき部下たちを「五体満足で家に帰す」ための手段だった。そう気づく頃には、もうこの沼から抜け出せなくなっているはずだから。
© Overhype Studios GmbH
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GameWith編集者情報

| フリーランス物書き。ドーナツ食べながら子どもとゲームするのが至高。好きなジャンルはインディーズとFPS/TPS。ゲームの腕前は皆無のポテトゲーマー。ジャンルやタイトルに捕らわれずゲーム業界全体に興味があります。ゲーム以外にはアウトドア系やローカルニュースなどを執筆中。普段は塾講師、ときどきラジオパーソナリティ。 |
