
▲じょせふ氏が手がけた恋愛風ノベルゲーム『陰キャラブコメ インシツマシマシ』。
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陰キャラブコメ インシツマシマシ
ネガティブなレッテルを排除して楽しんで欲しい『陰キャラブコメ インシツマシマシ』プレイレビュー
個人クリエイター・じょせふ氏が2022年に手がけた恋愛風ノベルゲーム『陰キャラブコメ』。一癖も二癖もある「陰キャ」を攻略するゲーム性が話題になった作品だ。
そんな本作をブラッシュアップしたものが、2025年5月5日に発売された『陰キャラブコメ インシツマシマシ』(販売:Phoenixx)である。2022年に発売された本編と新規エピソードを収録し、フルボイスで再構築された完全版だ。対応プラットフォームはPC(Steam)で、価格は5,500円。
筆者は、じょせふ氏のインタビュー取材を機に『陰キャラブコメ インシツマシマシ』をプレイ。最初は「陰キャと恋愛するゲームって本当に面白いのか?」といささか懐疑的であったが、実際に本作をプレイしてみたところ、恋愛ゲームの常識を覆すほどの衝撃を受けてしまった。
この驚きを多くの読者に知ってもらいたい、あわよくばプレイしてもらいたい。そこで本稿では、『陰キャラブコメ インシツマシマシ』のレビューをお届けしたい。
▲2025年5月5日発売!恋愛風ノベルゲーム『陰キャラブコメ』PV。
目次

陰キャラブコメ インシツマシマシ
癖が強すぎる陰キャたちと交流する面白さがここに
陰キャとは「陰気なキャラクター」の略称だ。人見知りや寡黙、根暗など、陽キャ(陽気なキャラクター)と真逆の存在と言ってもいい。陰キャときくと、「近寄りがたい存在」「社会の輪に入れない存在」といったネガティブなワードを思い浮かべる人がいるかもしれない。そんな陰キャに焦点を当てたのが、今回紹介する『陰キャラブコメ インシツマシマシ』だ。
本作は「登場人物が全員陰キャ」という設定がウリとなっていて、陽キャ主体の恋愛ノベルゲームと全くかけ離れているのは確かだ。脇役同然の陰キャが主役を張る恋愛ノベルゲームは、現時点で本作だけではないだろうか。

▲冒頭はシャカパチの音で始まる。この時点で、『陰キャラブコメ』がただの恋愛ゲームでないことがよくわかるはずだ 。
前置きが長くなったが、ここで『陰キャラブコメ インシツマシマシ』のあらすじを解説しよう。
本作の主人公は、「叡聖大学ゲーム同好会(以下、叡ゲ同)」の会長(デフォルトネームは加賀美とおる)。陰キャをこよなく愛し、陽キャをこよなく嫌う稀代のヒロインだ。容姿端麗な美女でありながらニックネームは「オス筋肉」、一人称は「ワイ」、陰キャ成分マシマシのハートなど、ただ者ではないことがうかがえる。

▲主人公は、陰キャを心から愛する陰キャオタクだ。

▲本作の陽キャは害悪な存在として描かれている(フィクションです)
改めて、主人公を演じたファイルーズあいさんは適任だったと感じられる。
テンション高めのセリフから母性本能をくすぐる落ち着いたセリフまで、メリハリのある演技に圧倒された。

▲陰キャたちをやさしく包み込むお姉さん、もしくはお母さん的存在と言える。

▲残念なヒロインらしさを堂々と見せつけるところも魅力。
本題に戻すと、主人公はひょんなことから叡ゲ同の4代目会長に任命され、同サークルに所属する3人の陰キャ+1人の陽キャ(?)と出会う。

▲叡ゲ同の4代目会長に任命された主人公は、癖が強い陰キャたちと陰色のキャンパスライフを過ごすことに。
『陰キャラブコメ インシツマシマシ』に登場する陰キャは、唾を飛ばしながら早口でしゃべりまくる「だいだい(大橋大河)」、サークル随一の常識人だが闇を抱えている「番井孝人」、毒舌ゲーマーの「ash」、そして、唯一の陽キャ(?)である「西村陽日」の4名だ。そんな陰キャたちを1人1人攻略することが、本作の目的となっている。

▲情報工学科1年のだいだい(大橋大河)。唾を飛ばしながらしゃべりまくり、ときにはマウントを取る陰キャオタクだ。

▲哲学科3年の番井孝人。叡ゲ同の中で唯一の常識人だが、何か裏があるようで……。

▲学科不明のash。部室のソファでいつも寝ていて、いつもスマホをいじっていて、いつも毒舌を吐いている陰キャ。

▲商学部2年の西村陽日。陰キャの楽園である叡ゲ同にやってきた陽キャだが……。
本作の魅力のひとつは、リアリティあふれる陰キャたちの存在だ。男性目線で『陰キャラブコメ インシツマシマシ』をプレイしていると、陰キャ成分が高めだった頃の自分を思い出すことがしばしばあった。心に隠していた恥ずべき黒歴史が、ゲームプレイ中にフラッシュバックした覚えも……(心が痛い)。
共感性羞恥心を抱いてしまうぐらい、本作の陰キャたちは限りなくリアルなのだ――とくに、だいだい。そういった陰キャたちと触れ合えることが、『陰キャラブコメ インシツマシマシ』の醍醐味ではないだろうか。

▲ギャグ全開だが、ときおり見せる心の闇に共感することも。
陰キャは近寄りづらい存在、相容れない存在と思われがちだ。しかし本作をプレイしていると、彼らの不器用ぶりに対して不思議と愛着が湧いてくる。陰キャたちを見てかわいいと感じる人もいるかもしれないし、面白いと感じる人もいるかもしれない。不思議なことだが、彼らを見ると「自分は陰キャとして生きてもいいんだ」と前向きな気持ちになれるのだ。
本作の陰キャたちは外見も内面も癖が強すぎるが、彼らの気持ちを知った瞬間、放っておけないぐらい特別な存在に様変わりする。陰キャたちの第一印象が劇的に変化するところも、『陰キャラブコメ インシツマシマシ』の醍醐味だと感じた次第だ。だからこそ、本作は多くのファンに愛されているのではないか。

陰キャラブコメ インシツマシマシ
抱腹絶倒のギャグと心を揺さぶられる人間ドラマ
最初の魅力として『陰キャラブコメ インシツマシマシ』の陰キャたち(キャラクター)を取り上げた。次に取り上げる本作の魅力は「ゲーム性」だ。
冒頭で軽く述べたが、『陰キャラブコメ インシツマシマシ』は本編と追加エピソードを含む完全版である。本編と追加エピソードは最初からプレイでき、どちらから始めても問題ない。
ただし、本編のネタバレが多少含まれているため、本編をクリアしたあとに追加エピソードをプレイすることをおすすめしたい。

▲2022年に発売された『陰キャラブコメ』本編。

▲4人の陰キャから1人を選んで攻略していく。
本編の流れは、プロローグで4人の陰キャの特徴に軽く触れ、攻略対象の1人を選んでエンディングまで進めていく。必要な操作はテキストを読み進めたり、選択肢を選んだりするだけとなる。操作は一般のノベルゲームと同じだが、筆者が特に驚いたのは、これまでのお約束をぶっ壊す独自のゲーム性だった。
通常の恋愛ゲームは、攻略対象の男性・女性が積極的にアプローチを仕掛けてくるものだ。しかし、『陰キャラブコメ インシツマシマシ』はそうではない。なぜなら、本作の陰キャたちはきわめて内向的なので、自分からアプローチができない属性だからだ。「これこそ陰キャだ!」と共感した自分がいる。
そのため「ワイから、陰キャを愛しに行かねば……」と、主人公が行動を起こすことに。恋愛ゲームっぽい印象的なイベントがなかなか発生しないところも、本作らしさと言えるかもしれない。

▲主人公から積極的に攻めていくストロングスタイル。
本作をプレイして印象的だったのは、凄まじい勢いで繰り出されるギャグだ。陰キャあるあるネタやネットミームネタなど、抱腹絶倒の笑いが多く詰め込まれている。じょせふ氏のギャグセンスには、ただただ脱帽させられた。どうやってそんなギャグを思いついたのか、不思議でならない。

▲嵐のごとく繰り出されるギャグの数々。

▲画面いっぱいに表示される陽キャ警報発令に爆笑。

▲爆笑しつつも、「このギャグ、どう思いついたのだろう……?」と感心することもあった。
とくに、だいだいのマシンガントークは破壊力が高い。まくしたてるように話すため、大量のセリフがテキストウインドウからはみ出る始末だ。ノベルゲームの枠を超えた演出に何度も爆笑してしまった。彼と出会った瞬間、『陰キャラブコメ』の洗礼(と唾)を浴びることになるだろう。

▲最初に驚いたのは、だいだいのセリフがテキストウインドウからはみ出る演出。
次に印象的だったのは、プレイヤーの心をぎゅっと掴むストーリーテリングだ。笑いを交えながら陰キャの個性を少しずつ掘り下げ、やがて訪れるクライマックスで真の魅力が解放される。ストーリーのテンポやキャラクターの掘り下げ方が絶妙で、気がつけば陰キャたちの虜になっていた。
建前上は陰キャを落とす恋愛ゲームだが、実際のところは、陰キャたちの心を見つめる人間ドラマではないかと深く考えてしまった。彼らが抱えている葛藤には胸を締め付けられたし、強い共感すら覚えた。

▲陰キャたちが織り成すコメディに大笑い。

▲陰キャたちの苦悩が明らかになるシリアスな展開。
最初はギャグで攻めまくり、後半はシリアスな展開でしんみりとさせる。最終的には「みんなちがって、みんないい」の精神にたどりつき、本作の奥深さを思い知ることになる。恋愛ノベルゲームと断言せず、恋愛風ノベルゲームと銘打った理由も納得がいく。

陰キャラブコメ インシツマシマシ
学園祭とデートが楽しめる追加エピソードもマストプレイ
『陰キャラブコメ インシツマシマシ』の追加エピソードは、「叡大祭編・デート編」だ。交際中の陰キャと一緒に、学園祭とデートを満喫するというもの。4人の陰キャから1人を選ぶと、専用のシナリオが始まる形だ。

▲叡大祭とデート編の追加エピソードも最初から遊べる。

▲プレイ開始時、4人の陰キャから1人を選ぶ必要がある。
追加エピソードは本編の後日談、もしくは続編として楽しむことができる。陰キャと過ごす青春のひと時と恋愛模様はもちろん、ひとりひとりの苦悩もしっかり描かれていた。ボリュームは短いが内容はとても濃厚で、本編込みでプレイすれば各陰キャの魅力がより一層深まるはずだ。

▲前半は、叡ゲ同の面々が学園祭で執事喫茶を催すエピソード。後半は、交際中の陰キャとデートを満喫するエピソードがそれぞれ展開される。
なかでも、ある陰キャのシナリオは絶句するほどの衝撃を受けてしまった。本編の内容を踏まえると合点がいく結末だったが、他のシナリオと比較すると落差が激しいと感じた。あのシナリオだけは、いまもなお脳裏に焼き付いて離れずにいる。

陰キャラブコメ インシツマシマシ
まとめ:陰キャ愛が存分に詰まった、“陰キャ賛歌”ゲームだ!
『陰キャラブコメ インシツマシマシ』は、陰キャたちの生態を観察するゲームであり、彼らの内なる気持ちを見つめるゲームでもある。常軌を逸するギャグもそうだが、ネガティブなレッテルを剥がし、唯一無二の個性として受け入れる人間賛歌的なストーリーに引き込まれた。
また、さまざまな個性を持つ陰キャたちも印象に残っている。陰キャあるあるをそのまま絵に描いたようなキャラクターばかりで、彼らを見ていると黒歴史を思い出すほどの共感を覚えたものだ。Steamのユーザーレビューにちなんで、「圧倒的にリアル」と評したい。
ただ、『陰キャラブコメ インシツマシマシ』に登場する陰キャたちははっきり言って強烈そのものだ。序盤の段階で、彼らに対して不快感や嫌悪感を抱く人は割といるかもしれない。現時点では購入の手段しかないが、どんな作品なのかを軽く試してみたい人向けの体験版があると良かった。
そんな陰キャの魅力を面白おかしく、そして人間味あふれるタッチで表現した『陰キャラブコメ インシツマシマシ』。じょせふ氏が描く人間賛歌ならぬ、”陰キャ賛歌”を心ゆくまで味わってほしい。
なお、じょせふ氏のインタビュー記事には、『陰キャラブコメ インシツマシマシ』の制作秘話や作者の思い、そして陰キャ愛などが綴られている。本作をクリアしたあとにインタビュー記事を読めば、余韻が深まること請け合いだ。

今後発売の注目作をピックアップ!
2025/9/30 発売

/PS4/PS5/PC
ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ
5,272円(税抜) 2
2025/9/25 発売

SILENT HILL f
7,800円(税抜) 3
2025/9/18 発売

/PC/Xbox
トワと神樹の祈り子たち
3,600円(税抜)